TS聖女は理想の『聖女』を演じたかった   作:ほうき星

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タイトル付けるネタが尽きた!
曇らせはまだです…すみません…
でも冗長になりすぎるのもあれなので巻きでいきます。


15. 変装はすぐに見破られるのが決まってる

 夏が終わる。

 

 秋の産声が上がり、猛烈な暑さはなんだったのかと思うほどに影を潜めていた。

 平和になった世界で、年を跨ぐ時期が近づいてきている。

 教会では冬の祝祭に向けて水面下で準備が進められ、関係者たちも少しずつ動き出していた。

 季節の移ろいとともに、俺の引きこもり生活もようやく終わりを迎えつつあり、街への外出が許可されるようになっていた。

 ──期間中はおとなしくしていたからね!

 

 今日はルシアンと別行動。

 というのも、騎士団総長イシドロが直々に訪れ、ルシアンをしばらく借りたいとのことだった。

 断る理由もないし、ルシアンは騎士団所属なのだから、呼び出されれば従うしかない。

 というわけで、今日は自由行動!

 

 もちろん、せっかく外出許可が出たのだから引きこもってなどいられない。

 快晴の空の下、街は秋の陽気に包まれて活気にあふれていた。

 過ごしやすい気温のなか、外出にはもってこいの一日──だったのだが。

 

「……あの、マデリーン。もう少し離れて歩きませんか?」

「駄目です。アルジェ様は過去に拉致された前例があります」

 

 俺のすぐ隣、同じ歩幅で歩くのはシスター・マデリーン。

 今日は完全なお忍び……とはいかなかった。彼女が付き添いを申し出てきたのだ。

 

「だから、ちゃんと変装もしてるんですってば!」

 

 できるだけ地味な服装にし、髪はポニーテール。

 そして前世でもつけたことのないような瓶底メガネ。

 ここまでやれば、誰も俺が“聖女アルジェ”だとは気づかないだろう。

 すれ違う人々が見向きもしないのが、ちょっとした達成感だった。

 姿勢も意識的に崩しているから、なにより楽。

 普段の聖女ロールプレイ、実はかなり疲れるんだよね。

 

「それでも、可能性はゼロではありません」

 

 マデリーンは昔から厳格なシスターだった。

 俺が教会に所属してからも、礼儀作法や学問などあらゆる分野を厳しく教え込まれた記憶がある。

 だが、それは子どもの頃の話。

 今では立派に聖女として役割を果たしているのだから、少しくらい自由でもいいはずだ。

 

「付き添いはいいんですけど、せっかく変装までしてるのに……マデリーンが隣にいたら正体バレバレじゃないですか?」

「ご安心を。──事情を知らぬ一般の者なら、親子だと思われるでしょう」

「それって……私が子供っぽいってことですか!? もう20代後半の、れっきとした()人《・》なんですけど!」

「では、アルジェ様の倍以上の人生を歩んでいる私は、()っ《・》と《・》()人《・》ということになりますね」

 

 からかうように、ふっと笑みを浮かべる。

 普段の表情とは違い、どこか柔らかくて穏やか。

 高身長美女のマデリーンは、俺の小柄な背丈では見上げることしかできず、逆に撫でられてしまう始末だ。

 TS娘として“美少女”であることに喜びは感じているものの、こうして年長者にいじられるのはちょっと複雑……。

 

「やっぱり聖女様だー!」

「えっ……シスター・マデリーン……!?」

 

 遠くから聞き覚えのある二人の声が飛んできた。

 メーシュとリラン。リランは人混みの中で元気よく手を振っている。

 ちょ、やっぱりバレてるー!?

 

 こんな場所で「聖女」などと大声で叫ばれたら注目の的だ。

 俺は急いで二人の元へ向かい、人目の少ない路地裏へと腕を引いて連れていく。

 

 ──そういえば。

 いくら俺が変装していても、マデリーンが普段通りの格好をしていては意味がないということに、ようやく気づいた。

 

「ここなら……とりあえず安心、です!」

 

 ようやく静かな路地へ辿り着き、二人を解放する。

 

「いつもと違う聖女さまも素敵です!」

「リラン、違う……! 聖女様は変装してお忍び中なんだよ……!」

 

 察しのいいメーシュが、俺の意図を汲んで説明してくれる。

 ありがたい……が、変装が見破られたのは少々ショックだった。

 

「シスター・マデリーンも……」

「……私はアルジェ様の護衛兼付き添いです」

「え……でもさっき頭撫でて──ひぃっ!?」

 

 マデリーンの鋭い眼差しに、メーシュが小さく悲鳴を上げる。

 先ほどまでの穏やかさが消え、教会での厳しい姿へと即座に切り替わっていた。

 その豹変ぶりに俺も思わず息を呑んだほどだ。

 

 ともあれ、大事には至らなかった。

 まさかこんなところでメーシュとリランに会うとは思っていなかったが、姉妹である彼女たちが一緒に行動しているのは当然といえば当然だ。

 

「ふたりとも、今日は何か用事だったんですか? 急に引っ張っちゃってごめんね」

「あ、平気です! もう用事は済ませたので!」

「帰る前に、何か食べて帰ろうかーって話してたんですよぉ」

 

 時刻は昼過ぎ。俺も今日は朝食しか摂っていない。

 ルシアンと違い、今日は“貢ぎ物”を受け取っていないのだから、ここは素直にお腹を満たしたい。

 

「そういえば私たちもお昼まだでしたね、マデリーン?」

「……そうですね。大人しく屋敷に戻れば、メイドたちが用意してくれるでしょうけれど」

 

 え? もう帰るの? やだやだ!

 せっかくだし、みんなで街で食べようよ!

 

「マデリーンもお腹空いてるんでしょう? よろしければ一緒にどうですか?」

「え? いいんですか……?」

 

 チラチラとマデリーンの顔を伺うメーシュ。

 こちらは街をぶらついていただけだし、特に予定もない。

 

「……はぁ。アルジェ様が問題ないのでしたら、構いません」

「じゃあ一緒に行きたい!」

 

 元気よく手を挙げるリラン。

 

「えっと、お二人の邪魔でなければ……」

「私とマデリーンは特に用事もないですし」

 

 こうして、今日は女子だけのお茶会に。

 ──俺にはちょっとした“事情”があるけど、こうして自然に女子に混ざれるのも、TS娘としての特権かもね。

 




評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます!

曇らせの程度って

  • ほんのりカジュアル
  • 聖女が盛大に曇るやつ
  • 周囲だけ曇っていくやつ
  • もう全方位曇らせで
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