アンノウンアーカイブ   作:ジト民逆脚屋

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ミリしらブルーアーカイブ!
時系列はエデン条約のちょっと前、先生に穴が空く前!



けケ気の毛の日

「はい、という訳で私達はミレニアムに来てまーす」

「誰に言うがな、おんしは」

 

近未来的な街並み、先生がこの土地。キヴォトスに来る前に夢見た都市そのままとは言わないまでも、SF作品で垣間見た光景に近い都市。

それがこのミレニアムサイエンススクール。

先生はこのミレニアムに、ある依頼を受けて赴いている。

 

「しかし、人間というのは放っとくと好奇心で突き進みよるな」

「言うても空飛ぶ車もデロリアンも無いし、キャンプに行ってもテトラに会える訳じゃない。だけど、私はミレニアムに来るとウキウキするよね」

「ふむ、まあとりにてぃよりはマシじゃの。あっこは好かん」

「あー、あんたと相性悪そうだしねー」

 

誰も居ない助手席に向かい話し掛け、先生はアクセルを緩めブレーキを踏んだ。

 

「とーちゃーく。さーて、この超敏腕凄腕美少女先生が解決しちゃうぞ」

「あの小煩い娘の様な口を聞くのう」

「ヒマリのあれは真似したくなるの」

「左様か」

 

誰も居ない筈なのに、誰かに話し掛ける姿は奇異に見えるが、それが先生だと判ると皆は納得した様に手を振ったり、挨拶をしたりしてくる。

それら全てに返事を返し、先生は若干急ぎ足でミレニアムサイエンススクールの上階、とある部屋へと向かう。

 

「さて、此度はどういった話じゃ?」

「えっと、機械の暴走かな? それも壊れて動く筈の無い」

「ほう? 忘れ去るは人の業とは言うが、哀れなもんじゃの」

「それってどういう意味よ?」

「見れば判るわい。まっこと哀れで愉快なもんじゃ」

 

風も無いのに街路樹が揺れた。そのざわめきはまるで人ならぬ者の笑い声の様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら、まあまあ。この草木すらざわめかし超常すら戦く超天才美少女ハッカーに何か御用ですか」

 

鈴を転がす様な声、ともすれば消えてしまう様な儚く可憐で全体的に白い容姿。

だが、口を開けば自画自賛の言葉が止めどなく溢れる車椅子の少女。

明星ヒマリが特異現象捜査部の部室で先生を出迎えた。

 

「超天才美少女ハッカーの手助けに、超敏腕凄腕美少女先生が来たよ」

「まあまあまあ! よもやこの超天才唯一無二美少女ハッカーに手助けを!」

「おおの……、ほんまに喧しい小娘ちや」

「はいはい。それじゃ、用件だけど壊れて動かない筈の機械の暴走で間違いないかな?」

「ええ。動力も何も無く、動作のしようの無い機械が何故か動いていまして、しかも誰も見ていない夜間に」

「時間はどうせ夜半、丑三つ時の手前じゃろ」

「時間は丑三つ時……。えっと、午前2時から2時半辺りかな?」

「まあ! この少ない情報でそこまでお分かりですの!」

「うわー、すっごい棒読み。わざとらしいー」

 

先生がおどけた様子で言えば、ヒマリは当然と薄い胸を張る。

そして、目を細めると誰も居ない筈の先生の背後へと視線を向けた。

 

「しかし先生、それは先生だけの知恵ではないでしょう?」

「んー、何の事かな?」

 

惚ける先生だが、ヒマリの目はしっかりとこちらの背後へと向いている。

ここまではっきりと見られたのは、ホシノとヒナ。そしてツルギとネル、他数人くらいだ。

 

「〝アドバイザー〟、私達が密かにそう呼ぶ存在が先生を護っている。そう結論つけています」

「うわー、バレた。ネルかな?」

「そうですね。彼女から得体の知れない奴が居たと聞き及んでいまして、ゲヘナにも協力を仰ぎ、先日確信を得ました」

「ゲヘナ? あっ、この前の相談ってそういう事かー。聞いてくれたら答えたのに、ヒナったらお茶目さんなんだからー」

「あとは、アビドスの小鳥遊ホシノさんにも証言を頂きまして」

「あらー、ホシノも? 今度会ったらほっぺもちもちの刑に処さないと」

「それで先生、彼? 彼女? 〝アドバイザー〟についてですが……」

「大丈夫大丈夫、悪い存在じゃないから」

 

先生は事も無げに言うと、こっそり持ち込んでいた紙袋から菓子を取り出しヒマリの口に突っ込む。

 

「もごっ」

「こいつは私の家に憑いてた所謂守り神。まあ、私の家は色々あって無くなったから、私に憑いてる感じかな」

「もご……ぷはっ、守り神ですか? それでその……」

「んー、今は助言は終わったばりにプカプカ浮かびながら寝てる。ちょっと起きなって」

「……なんじゃ、小煩い。助言ならしたろうが」

「じゃなくて、ヒマリが話があるってさ」

「ワシは無い。というより、早よう供養の準備をせんか」

「供養?」

 

菓子を食いながら先生がヒマリと首を傾げると、本当に愚かな者を見る様に眇で二人を睨んだ。

 

「器物百年経てば魂を得る。百に足らぬ九十九と言えど、されど憑喪。安く見れば災禍をもたらす」

「簡単に!」

「使い古した道具を粗末に扱わば祟られる。その年月に依らずの」

「はい、その動き出した機械とかを供養し弔えと申しております」

「供養ですか……?」

 

ヒマリは頭を悩ませた。

ミレニアムで道具を弔う風習は薄れて久しい。

弔えと言われても、そういった施設はヒマリの記憶の中ではもう形骸化してしまっている。

 

「忘れ去るは人の業。足元を見ぬからそうなる」

「はいはい、説教はいいからどう弔えばいいの?」

「手っ取り早いのはお焚き上げじゃ。きちんと手入れしてやり、感謝の意を籠めてからの」

「ちゃんと綺麗にして、今まで有り難うって感謝してお焚き上げしたら大丈夫だってさ」

「そういった施設でなくとも大丈夫なのですか?」

「神社仏閣が無いがやったら、場を整えたらえい。ちょうどように、こいたが居るきなんとかなるろ」

「おい、ちょっと待て。私が弔うのか?」

「おんし以外におるかや」

「あの、先生? 本当に大丈夫なのですか?」

「あー……、うん。仕方ないか。しかし、まさかキヴォトスに来て祝詞をあげる事になるとはね」

「観念し。おんしの血じゃ。まあ、ワシも手ばあは貸いちゃるき」

 

溜め息を吐き、先生は饅頭を齧る。

もう潰えて離れた身とばかり思っていたが、血というのは中々に離れないものの様だった。

 

「まあ、見た所期限は一週間。それ以上は祟るじゃろうな」

「一週間以内、それ以上だと安全は保証出来ないから、早くしろってさ」

「一週間……、時間がありませんね」

「今の今まで放り出して蔑ろしていた罰じゃ。この機会に、そことそことあっこの機械も供養しちゃり。そろそろ化けて歩き出すわな」

「え?」

「あの先生? なにか……」

「ヒマリ、その辺の機械とかパソコンも早くしないと、化けてパレードしだすって」

「エ、エイミ?! エイミー……?!」

 

先生の若干引いた言葉に、ミレニアムが誇る天才の鳴き声が響いた。

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