「よっし! んじゃあまずは先にクレイジー・ダイヤモンド出して花京院さんを治すっスよ〜!
小さいイメージっスね……むむむ……」
『ドラァ!』
馴染みのあるピンクと水色のスタンドが現れた。
「できたっ! 小さいスタンドでいるって結構疲れるっスね…相当のスタンドパワーが必要だ…」
「あぁ。小さい状態ならスタンドが出せる。それに伴ってか、能力が弱くなっている。
例えば、僕のエメラルドスプラッシュは破壊エネルギーを複数個飛ばす技だが、今は1個しか飛ばせない。半径20mの結界も20cmしか出せなかった」
「へぇ〜じゃあ承太郎さんなら止められる時間が1秒から0.1秒になっちまう、とかか〜 とにかくお腹失礼しますね」
「あ、あぁ。頼むよ」
花京院はわずかに動揺したが、仗助が花京院の上の布を捲るとすでに小さい穴が貫通しており、仗助はジト目になって腹の穴を凝視していたため、彼の様子に気付かなかった。
「……花京院さん。この穴、いつから開いてたんスか」
「これくらいの痛みなら平気さ」
「そういう問題じゃあないっス!!」
「仗助くん、承太郎をよろしくね」
「? いつもお世話になってますけど… とりあえず完治しないかもだけど失礼しますよ! ドラァ!」
クレイジー・ダイヤモンドが手をかざすと、花京院の腹の穴が塞がった。
「よーし! 塞がったっスね!」
「治してくれてありがとう。優しい能力だね」
「いえいえ! とりあえず治ってよかったっス!! しっかしなんで気付いたんスか?」
「夢のスタンドと戦ったことがあってね。あの時もスタンドが出なかったが、それは夢だったからだ。ここは夢じゃあない。精神が眠っている状態ではなく、起きている時にこの世界、ああ、本の世界に引き込まれた。以前仲間に鏡の中に世界なんてない、と言ったことがあるが、本の中には世界があるらしいね…
そんなわけでここではスタンドは出せるんじゃあないかと考えた。それに、生まれた時から一緒だったから彼が居ないのは寂しくてね。色々試してみたら小さい状態なら出せた、というわけさ」
花京院は微笑むとハイエロファントの頭を撫でた。花京院にとって彼のスタンドはとても大事な存在だと伝わってきた。
「なるほど…じゃあ承太郎さんは!? 全然そんな要素なかったっスけど…どこでそう思ったんスか?」
「黒い大男さ。不審者の」
「承太郎さんといえば真っ白いコート着てるイメージっスけど...それに黒い大男ってだけで承太郎さんに結び付けるのはちょーっち弱いんじゃあないっスか??」
「仗助くんの承太郎のイメージは白い大男なのかい? 黒い大男だけで承太郎だと言っているんじゃあないさ。根拠は4つあるが......
そうだな。どうして白じゃあなかったのか、これについては僕の推測だが、ここが学校だから。本の舞台が学校。その舞台に合った格好になる。承太郎の学ランは真っ黒だ。
例えば…
仗助くん、君は学校帰りの路地裏で本を見つけたと言っていたよね? 靴は? この上履きではなかっただろう? 君の学校の上履きと同じもの? 鞄はどこへ行ったんだい?
僕は持っていたナイフが無くなっている。靴も違う。もっとボロボロのローファーを履いていたのに、今はどこかの学校の上履きを履いている。
だから承太郎が白いコートを着ていたとしても、この世界に来た場合、本の登場人物として、彼も制服を着た高校生の姿になっている可能性が高い」
「なるほど…!!」
「納得してくれたかい? じゃあ承太郎が学ランを着ていると仮定して、承太郎がここに来ていると言った4つの根拠に戻ろう。
①黒い大男
②塀の凹み
③新聞部部長の証言
④僕たちの状況
この4つだ。
①だが、これはさっき仗助くんが言った通り、根拠としては弱い。僕もあくまできっかけに過ぎなかった。
②の正体は、僕はスタープラチナの拳だと考えている。
穴の中にさらに小さな穴が開いているように見えるが、おそらくスタープラチナのグローブだと思うんだ。
小さい状態ならスタンドが使えるということに承太郎も気付いたんだろう。彼は僕が以前小さくしたハイエロファントでジョースターさんの脳に入ったことを知っている。スタンドのことに気づく可能性は仗助くんより高い。
スタープラチナかどうかはともかく、この歪な凹みが、拳で何度か殴ったように見えないかい? ここの部分が1番拳の形が残っていて分かりやすいだろう。さっき見つけたこの虫眼鏡で見ると分かるかもしれない」
そう言って花京院は仗助に虫眼鏡を渡し、写真のある1点を指差した。
「言われてみると確かに…ちっさい拳に見えるっスね…」
「①②の時点では、まだ承太郎でありスタープラチナというには少し弱い。スタープラチナのグローブをつけた拳に見える、だしね。
君のクレイジー・ダイヤモンドの拳にだって見えないこともないし…
しかし③のことを考えるとかなり候補者が絞れる。
ここで着目すべき彼女の証言は、部室を飛び出した時だ」
仗助は友野のメモを遡る。
「えーっと…『あれが噂の不審者か! 黒い大男! 事件に関わりがあるのかもしれない!! 伝言よろしく!』ってやつっスね…」
「ああ。彼女は部室にいる時点で相手が黒い大男であると断言している」
「それが何かあるんスか? 」
「おかしいと思わないかい? なぜ3階から見ているのに、
3階から地上を見て相手の顔が見えないとはどういう状況なのか考えた時、思いつくのは相手が日傘か帽子をしている場合だ。
しかし彼女は相手が男であると言った。日傘を差している場合、3階からじゃあ顔は見えないどころか性別も判断できない。ましてや相手は塀の外にいたんだ、分かる情報は日傘の不審者ぐらいだろう。
この事から、黒い大男は帽子を被っていることが分かる。
今わかっている確実な情報は、帽子を被った黒い大男が塀の外にいた、ということだ。また、黒い大男がいた場所にスタープラチナの拳のような跡があった。
ここまで考えて、④の僕たちの状況を考えた時、僕は「黒い大男 = 承太郎」しか考えられない。
まずは、僕の状況。
僕は仲間の元へ向かっている途中で本に吸い込まれた。途中まではイギーと共にいたんだ。賢い犬だから、僕が急に消えたことにイギーは気付くだろう。イギーが連れて行きたい場所とはきっとDIOの館だ。これから敵の本拠地へ向かう時に突然仲間が1人消えた。当然スタンド攻撃と考え仲間が探してくれるだろう。彼らは僕を探してこの本に出会う可能性が高い。その仲間の中でさっき述べた特徴に当てはまる人物は空条承太郎しかいない。
敵の場合も考えたが、この本の本体なら、さっさと僕たちを殺すはずだ。この本に来て僕は意識のない時間の方が長い。そのことを考えると本体は直接手を出せないようだ。
仗助くんはどうだろう?
君の学校帰りの道を承太郎が通ったり、君が承太郎と会う約束をしていたりは? 近くに承太郎がいる可能性はないかい?
もちろん本と現実では流れる時間が異なる可能性もあるが...
だが僕らのように近付いて誰かが引き込まれた可能性はある」
全て言い終えた安楽椅子探偵はまっすぐ目を合わせる。
「仗助くん、君の意見を聞こう」