美術準備室を出た仗助は、まず先程の少年が降りていった階段へ向かった。
お、ここは4階だったか。
降りた先の踊り場に、「 3 | 4 」と表示があり、彼らの拠点が4階ということが判明した。
とにかくさっき会ったやつに詳しい話を聞かねぇとなァ...先生に呼ばれてるってたな...職員室か?ってことは1階??
すると、階段を登ってくる音がした。
「あ! て、 転校生くん! お待たせしました! もうひとりの転校生さんはどうしたんです?」
敵かと思い身構えた仗助だったが、先程の少年と分かると肩の力を抜いた。どうやら自分たちは転校生らしい。転校生”くん”と転校生”さん”で呼び方が違うのは年の差だろうか。お得意のよく回る口でひとまず少年に話を合わせることにした。
「体が弱いみてぇで今は休んでるよ。転校したばっかでまだ名前が覚えられてねぇからよ、わりーけど名前教えてくんねーか?」
「はは、転校してすぐじゃあ覚えられませんよね。ボクは君と同じ1-4の友野です。先輩は体が弱いんですね...無理言っちゃって申し訳ないな...」
「タメなら敬語使わなくていいぜ。俺は東方仗助。よろしくな。」
「ごめん、初対面だと緊張しちゃって...東方くん、よろしくね」
今の会話で少年の名前と自分たちの立場が分かった。
俺ァやっぱりマヌケなキャラじゃあなかったぜ〜〜ッと内心ガッツポーズを決めて仗助は話を続ける。
「とりあえず俺たちだけで先に情報を集めようぜ。その...自殺のことなんだが...」
「そうですね...じゃあなくて、そ、そうだね...」
「無理して敬語外さなくてもいいぜ」
「ごめん、つい癖で......慣れるまではちょっと敬語が出ちゃうかも。東方くんは自殺の件について詳しく聞きたいんだね?
あ、あと、先輩のためにも記録は取っておいた方がいいですよね。ボク、メモとっておきますね」
「あぁ。気が重くなること聞いちまって悪ぃ..メモありがとうな....」
「ううん。気を遣ってくれてありがとう。捜査のためには必要ですもんね」
仗助は友野に対してなんとなく最初の頃の康一に似てんなァという感覚があった。友野は康一ほどではないが同じ歳の男子に比べて身長が小さいからだろうか。
「申し訳ないけどボクも詳しくは知らないんです...
1-2の梔子 遺くんが、この夏休みに屋上から飛び降り自殺したとされてます...
そんなわけないと思って先生に食い付いたら、警察は現場が荒らされた形跡がないことから、事件性はない、自殺であると判断したそうです。
屋上の扉は鍵がかかってるから行けないって反論したんですけど、事件の前日にはすでに扉の鍵が壊されてて誰でも出入り出来る状態だったらしいです。
はぁ...子どもが首を突っ込むなってさっき先生に釘を刺されてしまいました...」
「おぉ...すげー調べてんな......なんで自殺じゃあないって思うんだ?」
「ボク、その日の夕方に梔子くんとゲームをする予定があったんです。自殺する人がその後の予定なんて組まないでしょう? それに梔子くん、5階で野暮用があるからそいつを済ませたら会おうぜって言ってたんだ。だから屋上には行ってないんじゃあないかな? それなら屋上から痕跡が何も見つからなくて当然です。でもこの事を伝えても証拠がないだろうって先生は取り合ってくれなくって.....”事件のせいで、警察やらマスコミやら不審者やらの対応でただでさえ忙しいのに面倒事はもう御免だ”ってさ...」
「自殺するやつがその後の予定を組む......確かにそいつぁ妙だな......
前日にはもう屋上の鍵が壊れてたって話だけどォ...誰がいつ壊したんだ?」
母の朋子が教師をしている仗助からすると、生徒の主張を面倒事と切り捨てる野郎の根性を叩き直してやりたくなると同時に、直感でそいつもしかして何かやましい事でもあるんじゃあねーのォ?と感じた。
「夏休みが始まってすぐに不良の子が壊したと言ってました。つまり事件の2週間前には壊れていたことになりますね」
「その話をしたのはセンセーだけか?」
「はい。そうですけど...先生を疑ってるの? 彼は生徒指導の担当で不良のサボり場に目を光らせてるから、その事を知ってても不思議じゃあないと思いますよ?」
「いや、なんつーか...」
ごにょごにょと下手に誤魔化す仗助は思う。
そのセンセーが嘘をついてる可能性もあるってことだぜ...
仗助くんのキュートな鼻が言っている! そいつ怪しいニオイがプンプンするぜぇー...!なんだったか、刑事ドラマで言うとこの、裏を取る?をした方がいいみてーだな...
「うっし、今の情報で考えてもしょうがねぇ! 現場に行ってみようぜ。まずは屋上へ案内してくんねーか?」