結果から言うと、屋上の鍵は壊されていた。
「ふむ...壊されてんのは嘘じゃあねーみたいだな。いっちょ行ってみっか」
「え!? 東方くん、屋上は立ち入り禁止ですよ?」
屋上前の踊り場に友野の驚いた声がよく響いた。
「バレない程度にちこーっとだけだよ。無理そうなら俺だけでも行ってみるよ」
「......ううん。ボクも行きます。......うん、行くよ。ちゃんと捜査、する...捜査したいから...」
屋上への重たい扉を開けると、真上から夏の太陽が彼らを迎えた。日差しがジリジリと肌を焼き、汗が吹き出した。あまりの暑さに顔を顰めた瞬間、扉の開閉音で振り向いた先客と目が合った。
「............」
「.........?」
生徒指導のセンセーが言っていた不良とは彼のことだろうかと仗助は内心首を傾げた。
ほっそりした外見からはとても喧嘩をしているように見えず、片方の長い前髪は少年の目を覆い隠してしまうほど長かった。白い肌には汗ひとつかいておらず、給水塔の日陰からじっと仗助たちを観察する瞳は警戒で静かに気が立っている猫のようであった。
「............」
「え...っとォ〜...休んでるとこすんませんが、聞きたい話がありまして...」
「.........敬語じゃあなくていい。同じ1年」
一応話をしてくれる気はあるらしい。それなら早いと早速本題を切り出した。
「おお、ありがとよ。単刀直入に聞くとよォ、ここの屋上の鍵っていつ誰が壊したか知ってっか?」
「2週間前」
そう言って目の前の少年は自分を指差した。どうやら先生の証言は正しかったらしい。しかしなんのためにどうやって壊したのだろうか。新たな疑問が浮かんだが、顔に出ていたのか少年が答えを言う方が早かった。
「道具を使えば誰だって出来る。理由は言わない。言う必要性もない。用はもう済んだだろう。早く戻ってくれ」
「あ、あぁ。邪魔して悪かったな。行こうぜ友野」
「は、はい」
少年は淡々と言葉を紡ぎ、はっきりと拒絶の意を示していた。
長居できる雰囲気ではなく、聞きたいことは聞けたということで仗助たちは屋上を後にした。
屋上の主は1歩も動かず扉が閉まりきる最後まで、じっとこちらを見つめていた。
* * * * * *
屋上の扉を閉めてすぐ、仗助は唸り声をあげた。
「鍵は本当に2週間前から壊れてたんだな...うぅーん...」
「東方くん、ボクは屋上より梔子くんが言ってた5階が怪しいと思うんです。行ってみませんか?」
「おぉ! そうだな、5階に野暮用があったんだよな。調べてみようぜ」
次の捜査場所を定めた彼らは音がよく響く階段を降りて5階に向かった。物陰から誰かが盗み聞きするのも気付かずに。