<昼・3階>
5階の調査が終わったので、3階の新聞部に行くことになった。
階段を降りて3階の廊下をのぞいた時、ちょうど生徒が教室から出てくるところだった。佐香の”3階で補習を受けていた生徒が目撃したらしい”という言葉を思い出した仗助は声をかけてみることにした。
声をかけられた生徒は自殺の話題が上がると顔をしかめた。ちょうど窓を眺めていたら上から落ちてくる人を見たのだという。トラウマなので話したくないと拒絶を示していたが、言葉を交わした結果、得られた証言は、
「手首にそんなの付いてなかったと思う。正確には分かんないけど」
というものだった。落ちる時に梔子の手にはブレスレットはなかった。この証言は落ちる前に何かがあって壊れたということの裏付けになる。だというのに友野の表情は曇っていた。生徒に話しかけた時から少し緊張しているような空気があった。
「東方くん、行きましょう」
生徒に話を聞き終えた後、2人は新聞部の部室に向かった。
* * * * * *
「こんにちは。部長なら、外を見て『あれが噂の不審者か! 黒い大男! 事件に関わりがあるのかもしれない!! 伝言よろしく!』と言って飛び出して行きましたよ」
その伝言相手って貴方たちですよね?と言って少年は上品にティーカップを持ち上げた。それを聞いて2人は半目になった。
「何してんだあの人…」
「あの…副部長は…?」
「もちろん見張っていらしたんですが、新聞の印刷のために外出なされた隙に部長は奇声をあげて飛んでいきました」
「勝手なイメージだけどよォ…新聞部って部室に印刷機とかあるんじゃあないのか?」
「以前はパソコンもプリンターもある図書館で活動していたそうですが、新聞部は出禁になりました」
「なんて?」
「出禁になりました。二度言うのは無駄なので嫌いなんです。それよりもやることがあるのではないですか?先輩」
「っと、そうだった! 伝言ありがとな!」
「はい。あの様子だと部長は学校周辺で不審者を探し回っているのでしょう。お気をつけてください」
新聞部部室の滞在時間は40秒であった。
* * * * * *
<昼・学校周辺>
玄関から外に出ると、運動部が学校周辺の田んぼを走っていた。正午を過ぎても衰えない容赦のない日差しが彼らに降り注いでいた。
「あちい…」
2人は赤いメガネの少女を探した。
校庭で試合をする野球部の軽い打撃音が響き、2人は暑さで溶けそうになった頃、学校の塀を熱心に見つめる少女を見つけた。
「お! 思ってたより早かったな! 遅いじゃあないか! 待ちくたびれたぞ!」
「はぁ〜〜…アンタなぁ…不審者を見つけて外に飛び出したんだよな? 大丈夫だったのかよ…しかもずっとここにいたのか? 熱中症になっちまうじゃあねえかよ〜〜」
「…お、おぉ……心配してくれるとは、君もなかなか優しい不良なんだな。熱中症になるのはしばらくごめんだ。手早く済ませて早く戻ろうか。
新入生くんの伝言を聞いたんだな! その通り! 学校の外の塀! ちょうどここに! さっきまで真っ黒の大男がいたんだ! 顔が見えなかったからこうして塀の外までダッシュしてきたんだが、着いた頃にはもういなかったよ…はぁ…写真撮っておけばよかった…急いで飛び出してしまって忘れてたよ…不覚…
しかーし! 見てくれ! なんかよう分からん穴が現場に残されていた!! 直径1.5cmほどの小ささだがなんだかすごく歪だ! 直前まで不審者がいたことを考えると怪しいし、第一どうやったらこんな穴が開くんだ? それを考えていたら君たちが来たってところだ」
「落ち込んだり元気になったり忙しい先輩だな… 」
彼女が指差す穴を見ると、なるほど確かに歪である。一応円形のようではあるが、穴の中がボコボコ波を打っていった。
「例えば直径1cmのスーパーボールがあったとする。そいつをぐにゃぐにゃにして周りにさらに小さい丸いものを付けて最終的に大体直径1.5cmにして押し付けたみたいな…うまい例えがないんだが…”何で”穴を開けたのかも謎だが、深さも直径1.5cmほどだからな…”どうやって”コンクリートに深さも直径1.5cmも穴を開けたんだ?? 謎すぎる…」
「よく見ても何の穴だか、さっぱり分かんねえ…だがその例えはちょっと分かるぜ…」
「たしかに…なんでしょうね、これ…」
「「「う〜〜ん」」」
仗助は写真を撮り、その後3人は頭を抱えていたが、遠くから副部長の怒号が聞こえた。
「げっ、バレちまったか」
「いいタイミングじゃあねえか。そろそろ戻らねえとまじに熱中症になるぜ…
あっ、そうだ。写真の現像はどこでしたらいいんスか?」
「ああ。今はパソコン室は点検中で使えないし、図書館は司書さんしか使えなくなったから…どこで印刷できるんだ? 分からないな、さっき新聞を刷っていた男なら分かるだろう」
「薫ぃぃ貴様ぁぁぁああーーー!!!」
「ほら、来た来た。なぁ長谷部、新聞はどこで刷ってきたんだ?」
「5階の印刷室だが!? ふざけてんのか貴様、うぐっ?!」
「なるほど、ありがとう。戻ろうか」
こうして彼らは校舎に戻り、少女は再び新聞部部室に引きづられて行った。
「はは! 何度でも蘇るぞ!!」