<昼・1階>
玄関で新聞部員たちと別れた後、掲示板に画鋲で紙を留めていた生徒と目が合った。
「やぁ。君は新しく来た転校生だね。これでも一応生徒会長なんだ。何か困ったことがあれば気兼ねなく言ってほしいな。この時期は暑いから熱中症に気をつけてね」
「友野くん、いたいた。ちょっといいかな?」
塀に開いた穴は学校側からすれば困ったことになるだろう。そのことを告げようとすると後ろから友野を呼ぶ声がした。振り向くと白衣の男性教師が困った顔で立っていた。
「分かりました。東方くん、この後先輩のところへ行くよね? これを渡してほしいんだ」
「お、書いてくれてたメモだな。分かった。ありがとよ」
ちょっと困った顔の友野から仗助はメモを受け取った。友野は何か言いたそうだったが、踵を返し教師の後ろについていった。
「大丈夫? 困っていない?」
この生徒会長は随分と世話焼きらしい。これから5階の印刷室で現像をするので、印刷室の場所や印刷のやり方などを尋ねると彼は仗助についてこようとしたが、現在仕事中の彼をひっぱてくるわけにはいかない。気持ちだけ受け取って仗助は生徒会長と別れた。
* * * * * *
<昼・2階>
先ほどと違う階段で2階に上がると目の前に食堂が広がっていた。今は夏休みで営業していないようだが、営業日は学生で溢れかえるのだろう。
食堂の中に目を向けると、自販機を見つけた。仗助はポケットに手を突っ込むと、財布を見つけた。
「ラッキーだったぜ〜」
本に吸い込まれる前に持っていた鞄はここにはないが、ポケットに入っていた財布は一緒にこの世界に来れたらしい。
花京院のためにスポーツドリンクを購入して仗助は食堂を後にした。
* * * * * *
<昼・5階印刷室>
5階の印刷室でデジカメとプリンターをコードでつなぐと紙に写真の内容が印刷されていった。吐き出される紙をぼーっと眺めていると印刷が終わり、近くの机にすべて並べてみる。少々画質は荒いがそこまで問題はない。
「やぁ。生徒会室が近いから様子を見に来たんだ。大丈夫?」
「教えてもらえたおかげでばっちりっスよ! ありがとうございます!」
「会長! 資料室に行くって言ったのになんで印刷室にいるんですか… 会議に遅れますよ!」
「あぁ。すまない。…それじゃあ、僕はこれで」
生徒会長は机に並べられた写真に目を向け、無事に印刷が完了したことを確認すると印刷室を後にした。
* * * * * *
<昼・4階美術準備室>
仗助が窓に目隠しをしたため中の様子が全く分からない美術準備室を開けると、花京院はソファの上で起き上がっていた。
「花京院さん! 体調は大丈夫っスか?」
「今は平気さ。心配してくれてありがとう。仗助くん、僕がまたいつ意識を飛ばすか分からないから、何があったか教えてくれないかい?」
「うっす!」
仗助は花京院に友野のメモと印刷した写真、そして先程購入した冷えたスポーツドリンクを渡すと、今まであったことを全て話した。
「仗助くん、結論から言わせていただこう。おそらくだが、」
花京院は仗助と目を合わせる。
彼の菫色が静かに光った。
「ここに承太郎が来ている」