呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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故墟巡行 - 参 -

 

 ガイアさんと別れて、再び歩き出す私たち…もうだいぶ暗くなってきたな。ちょっと急いだ方がいいかも……と内心焦りが生まれたものの。

「なぁ、一回ゆっくり休もうぜ?オイラもうお腹ペコペコだ…」

 パイモンのそんな発言をきっかけに、ひとまず休息を挟むことにした。…なにせその言葉で、空腹を思い出した私の体もきゅるると音を立てたから。

 

 

 …ホントどこに物を仕舞ってるんだろうこの子は。空中に出てくるようにしか見えない…まあ簡単に串焼きを(こしら)えて腹に納めることにした。危ない危ない…空腹を自覚せずに倒れる事案はこれまでにも何度かあったんだ。蛍はやけに元気が有り余ってるし、こればっかりはパイモンがいてくれて助かった。

「そういえば日依、なんでさっきは雷元素をセーブしてたんだ?」

 そのパイモン*1がふと質問を投げ掛けてきたので、口の中のものを急いで(えん)()した。

「ん…分かりやすいとこでは、水がいっぱいあったからだね。うっかり巻き込んで感電させちゃ悪いと思って」

「なるほど、感電反応だな!」

「あ、やっぱりなんかあるんだ」

「たしか、割と長い時間続く反応だったんだ。日依の元素力はけっこう強いし、避けて正解だったかもしれないな」

「そう?そっか…」

 …その、私の元素力の強さは、たぶん呪力消費に比例すると思うけどね。やっぱり水の中を電気が走るんだろうか。あとで確認しておきたいな…。

 

 

 

 さて、気を取り直して再出発。道中やっぱり湧いてくるヒルチャールやスライムを蹴散らしつつ…

「あら、かわい子ちゃん♪︎」

 …やっぱりというかなんというか、この流れはそうじゃないかと思ってたけど。たどり着いた3つ目の神殿にはリサさんが訪れていた。

「危ないのに二人して手伝ってくれるなんて感激だわ~!何かわからないことがあったら、お姉さんに聞いてちょうだい?」

「はい、よろしくお願いします」

 特に雑談等もなく、さっさと神殿に向かう。いいな、このおっとりしてるようで仕事にひたむきな感じ…私の周りにはあまりいなかったタイプだけど、割と好感が持てる。

 

 

 …うん。これ流行ってるな入れ子神殿…

 3つ目の神殿に踏み込んですぐそう思っ…いや、というよりは…異空間にワープ、といった方が適切なのか。ふと振り返れば入り口がなかった…今さら気づくなんて私も未熟。少なくとも、考え方としては生得領域の()()でいいのかもしれない。

「やっぱり…この神殿の奥から、強い元素反応を感じるわ」

 リサさんの手元には、武器ではなく一冊の分厚い本が現れる。そういえば魔法使いを自称していたか。武器を振り回す*2タイプじゃないらしい。…あと、男子の目には毒なその胸元にある紫の宝玉は、もしや…。

 

 例のごとく風域でモンドの標準装備・風の翼を使って、途中の廊下をうろついていた炎スライムは、

「お姉さんに任せて。――痺れなさい!」

 リサさんの魔法…やはり雷元素だったそれに取り囲まれて弾け飛んだ。うわすご…

日依と同じ元素だな

うん…私はおとなしくしとこうかな

 パイモンは不思議そうな顔をするけど…理由は、少なくとも呪術師側としては単純だ。私の保有呪力はもともと多い方だけど、ここまでの慣れない冒険でそろそろ要相談ってくらいの残量になってきた。ヒルチャール相手に『迅雷』を使いすぎたな…さすがに野宿になるかもしれないけど、ここからモンド城まで戻るとすれば呪力はセーブしておきたい。リサさん強いし、同じ元素での波状攻撃が必要にならない限りは任せておこうかと。

 

 次の広間では、真ん中に鎮座する"雷元素の石碑"を起動させる*3と炎スライムの群れが現れ、殲滅したところで扉が開いた。なんか前二つに比べて試練感が強いな…と思うけど、よくあることなのか気にすることもなく先へ進んでいく。廊下を渡った先は…

「「「ya!!」」」

 …ヒルチャールですね。まあそれはよくて、水浸しだ。ここもか…廃墟では往々にしてあることだけど。

「ふふ、いいわね…水に濡れた敵に対して、お姉さんはスゴいのよ?」

 対するリサさんは私たちを片手で制して、躊躇なく紫電を走らせる…とたんに紫電は水面を走り、戦闘態勢だったヒルチャールが(ひる)んだ。…すごい、水面に残り続けてる。これが感電反応か…さらに数回魔法を使えば、あっけなく4体のヒルチャールは消滅してしまった。

「ふぅ…風域があるわね。まだ上があるみたい」

 開いた扉の向こうに道はなく、しかし上へ吹き荒れる強い風。当初思ってた以上に出番が尽きないな…。

 

 

「感電した敵の間には連鎖ダメージが発生するわ。摩擦で生じた雷の火花は、落ちるような恋ほどの衝撃ではないけどね?」

 風の翼で昇った先ではヒルチャール&大型スライムがうろついていたけど…まあ感電反応で弱る弱る。怯んで隙だらけなところを剣と長柄でばったばった倒して、なんかちょっとキザなこと言ってるけど放っといて先へ進む。

「そういえば、リサさんが首にかけてるそれって、もしかして…」

「ええ、神の目よ。選ばれた人間が元素の力を引き出すための装置ね。神秘学の視点から言えば、外付けの魔力器官とも言えるかしら」

「神秘学…やっぱりアンバーの言った通りだね。あっちで教わったときとは情報の精度が違う…」

「…()()()()?それまでは知らなかったの?貴方、一体どこから…突然変異で知力の上がったヒルチャールだったりするかしら?」

 …空中に足場が浮かぶ仕掛けを切り抜けていたから、うっかりボロが出た。それでリサさんが不思議そうな声音でそんなこと行ってのけるから危うく落ちそうになった。ありがとうパイモン…

「けれど、そうね…ヒルチャールは吟遊詩人にもなれないほど知能の低い怪物…逆に貴方たちは、魔導師にもなれるほど素質を持った良い子よ」

「そ…ソウデスカ…」

 えと…これは擁護されたというか、なんというか…喜んでいいのだろうか。まあそもそも私は既に呪術師なんだけどさ…

 

 そんな悶着はありつつも、道なき道を風の翼で切り(ひら)くようにして進んだ先、突き当たりになる最奥にたどり着けば…やはり、風が渦巻く祠のような岩。

「…さてと、これを壊せば帰って休めるわよね?休めると思ってきたら、俄然やる気が湧いてきたわ」

 …そんな行動指針でいいのだろうか。まあ人それぞれか…ともかく、ひとつ深呼吸をしたリサさんが右手を掲げると、その先に紫の光が集まって……

「―――穿ちなさい!」

 …放たれた一筋の雷が、岩を粉々に砕き散らした。

 

 

 

「東風の龍・トワリン、南風の獅子・ダンディライオン、北風の狼・ボレアス、西風の鷹・セピュロス。それらはモンドの四方の風の守護者で、風神バルバトスの眷属でもあるわ。"トワリン"…それが風魔龍の名前よ」

 …さて。アンバーから言われていた通り、私たちはリサさんに風魔龍と『四風守護』の詳細を尋ねることにした。…人々に"風魔龍"と呼ばれる前は、『四風守護』の"東風の龍"であった。そして今回、全ての神殿を巡らなくてもよかったのは…トワリンが既に自身の力を燃やし尽くしてしまったからだという。

「燃やし尽くした…いったい何があって?」

「たぶん…憎しみだと思うわ」

「憎しみ…?」

「モンドに対する憎しみ…それを風よりも強い力にし、そして彼は魔龍になった…」

 リサさんはどこか遠い目をして言う…憎しみ。守護者が庇護対象に向ける憎しみか…

「でも、『四風守護』だったのに、なんで?なんで守るべき都市を憎むようになったんだ?」

「…モンドの人間としては、とても言いにくいわね…これを読むといいわ。100年以上前の出来事よ」

 パイモンの矢継ぎ早な質問に、リサさんは肩をすくめて…一冊の本を取り出した。『森の風拾遺集』と読める…()()、ね…やはり押さえるべきは歴史らしい……。

 

「それじゃ、お姉さんは騎士団本部に戻るけれど、あなたたちもそうする?」

「こんな夜になって訪問するのはちょっと申し訳ないかな…とりあえず、モンド城までは戻る?」

「…そうしよっか。もう真っ暗だし」

 そういうわけで、すっかり夜の帳が下りた神殿をあとにした。…リサさんもワープポイント利用できるのか…。

 

 

 

 

 

*1
食い意地が張っていれば食べ終わるのも早いらしい

*2
弓の場合はそもそも振り回すものじゃないが

*3
紫色の三つ巴みたいな模様が浮かび上がった。どうやらこれが雷元素を表す記号らしい





・日依
四次元ポケット(概念)がまだ使えない
一応"そろそろ要相談くらい"なのでピンチではない。けどもお手本を見せてもらう気分でセーブしてた
食事の優先順位が低い。うっかりしてると空腹を自覚せずに倒れるやべーやつ

・蛍
とても元気な旅人
日依は慣れたから言及されてないけど魔物をバッタバッタ倒している

・パイモン
今回は隠れ功労者な案内役

・リサ
@南風の獅子の神殿
初登場の物理アタックがない法器タイプ
日依の武器に関してはスルーしていた模様


この後ですが……参考実況動画の動向に合わせて筆が乗ってしまったため、6話分ほどメインストーリー(魔神任務)から一時離脱します。緑のやつ登場まではしばしお待ちください…


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