Q:オープンワールドの物語も実況動画準拠で進めようとすると何が起きますか?
A:寄り道が増えます。
「うわ…」
板張りの廊下。横を向けば、極端に机の少ない教室。反対側の窓からはグラウンドが見下ろせ、その向こうに繁る木々の合間に瓦葺きの屋根が見えている。
「…夢か。夢だなどう考えても…」
…間違いない、どう見ても見慣れた東京都立呪術高専。しかしあの場所から帰ってこられることなどあり得ないから、必然的に夢だろう。こういう明晰夢を見ることは時々あったし。
「はぁ…切り替えていかなきゃとか言いながら未練たらたらだな…」
ため息をひとつついて…何気なく、無人の教室に目をやる。教卓に向かい合うように並んだ机は五つ。…あの、一番窓側の席。
「…こんなとこ突っ立ってても仕方ないか」
よくわからない気分を振り切るように、私は夢の中の廊下を走り出した。
ぱちり、と目を覚ませば、見慣れない幾何学模様の天井。背中には柔らかな布地の感触……保健室、模様替えしたのかな……なんて思ってしまう自分がまだいた。
あのあとリサさんとモンド城まで戻った私たちは、報告は私が済ませておくわ、というリサさんのお言葉に甘えてひとまず宿泊地を探すことにしたのだけれど……道端で尋ねた人曰く、騎士団本部の隣に建ってるゲーテホテルがモンドではいっとう大きくて有名だけど、今は貸し切り状態であるらしい。それで、ゲストルームを空けて民宿みたいなことをしてるところを紹介されて、行ってみたら空いていて快く歓迎されて……今に至る。
身を起こせばまだ早朝のようで、白いカーテンをはじめ、部屋の中はまだ太陽の昇っていない空の
…どこか哀愁が漂うように思われるのは、私の気分の問題だろう。なにしろ、先程まで無人の高専を歩き回る夢を見ていたから。我ながらあまりにも未練たらたらで呆れてしまう。だったらせめて懐かしい顔も見たかったように思うけれど、誰にも会えなかったのは……まだみんな生きているからだろうか。
それにしても、高専の寮では床に布団を直で敷いていたから、ベッドなんて本当にいつぶり…そこでハッとして横を見れば、金髪の美少女と白い妖精…蛍とパイモンが同じ布団に収まっていた。
…結局、私はこの二人と行動を共にすることにした。押しの強い二人に、テイワット*1初心者同士支え合っていこう!と押し切られる形で。昨晩寝るときにも私は床でいいって伝えたんだけど、家主さんにも悪いからと押し切られてこの形。私がテイワットの空気にまだ馴染めてないのも
「…なんか、ちょっと申し訳ないかな…まあ、ありがたいけど」
なにせ正論だし、今の私じゃ支えてもらわなきゃ路頭に迷うことは間違いないからな…。蛍の、片手剣を振り回して俊敏に戦える強さなんて感じさせないあどけない寝顔に、覚えず笑みがこぼれた。
その後二度寝を決めた私は無事パイモンに起こされ*2、振る舞われた朝食をありがたくご
龍災が去った街には、来たときにはなかった活気があふれていた。人々が行き交い、店が高らかに客を呼ぶ。これが普段のモンドなのだろう。きっとアンバーも本当はこの風景を見てほしかったに違いない…
「何だ?あそこのお姉さんが手を振ってるぞ?」
…なんて考えていたところで、パイモンの言葉に振り向いてみると…何かの窓口みたいなカウンターの中から、こちらに手を振っている黒髪の女性がいた。
「冒険者協会へようこそ、あなた方のことは
…で、行ってみたら背筋が冷えるようなことを言われた件。
「
「いえいえ。優秀な冒険者を見つけることも、私の仕事ですから」
キャサリンさんというらしい彼女はハキハキと語る…要するにスカウトってことか。いや、スカウトって歩き回るんじゃ…まあいいや。
それはともかく、冒険者協会とはなんだろう?こんな往来に窓口を構えるということは、たぶんこの世界では常識となっている存在のはず。動揺を仕舞って聞く姿勢になったら、
「ではさっそく、新しく入ってきた冒険者に紹介しますね!」
「待って!オイラたち、もう正式な冒険者になったのか!?」
…流れるように入会することになっていた。一応、冒険者協会には会費もなければ強制的な義務もないらしい。メリットしかありません!って断言されるとそれはそれで不安なんだけど……蛍がノリノリなのは何?慣れてるの?前科先例があるの?
「改めて入会を歓迎します、冒険者の新星!こちらはあなた方の"冒険の証"です」
差し出されたのは、手のひらサイズの小さなノート。冒険者協会に寄せられる依頼や達成報酬といったシステムが記されており、また冒険者協会所属の証明にもなるのできちんと保管していてくださいね、とのこと。
「では、今日はここまでにしましょう。これからどんどん会う機会も増えると思いますから。頑張ってくださいね、冒険者さん。星と深淵を目指せ!」
独特な挨拶で送り出され、再び蛍とともに石畳を歩き出す…なんか、慣れてない私からしては嵐みたいな時間だった。風魔龍は去ったのに。あとで慣れてるっぽい蛍に色々聞かないとな…。
この後はまあとりあえず西風騎士団本部に向かうんだろうな……と思ってたけど、パイモンにゴネ…提案されたので『鹿狩り』という店で漁師トーストという料理*4を買い食いして、さらに蛍はお店を色々見たいということでそうさせておいた。
…気が散りすぎでしょって前にも言った気がするぞ蛍。元気だなぁ…私は朝のテンションが低いほうなので、ショッピングは任せてしまうことにした。漁師トーストも半分パイモンにあげたし。
町の喧騒に身をさらしたまま、独りぽつねんと見上げた先は…この世界で目覚めたときみたいな青い空。あれほど掻き曇っていたのにすっかり落ち着いて、吹きわたる穏やかな風が頬を撫ぜる……やっぱり、呪力は感じられない。あんな龍災があったのに、呪力は私の外にない。もし、そもそもこんなものがなかったら…いや、こっちはこっちで魔物がいるから、結局は変わらないのか…。
つい、取り留めもないことを考えてしまった。視線を戻したら蛍の姿がなくて、慌てて視線を巡らせたら階段を上っていく姿。パイモンがこっちに手を振ってる…やっば、危うく置いていかれるところだった…小走りに後を追って階段を駆け上がると、蛍はなにやら一人の男性と話し込んでいた。邪魔しないようにスピードを緩めつつ、パイモンと合流。
「
「申し訳ない…えっと、今何の話してるかわかる?」
「囁きの森に魔物が湧いてるんだけど、人手が足りてないってよ」
「人手不足はどことも深刻だね…で、行く感じ?」
「行くよ、二人とも!」
「うわぁ!?急に入ってくるなよ蛍!」
…私の肩も跳ねた。会話の流れだけ見たら自然ではあるけどさ……ちなみに危うく置いていかれかけたことを述べたら「ごめん、できそうな料理のこと考えてて…」とのこと。じゃあ…まあ、いいか。
「…で、受けるのね討伐任務」
「うん、報酬も出してくれるらしいからね!」
「さっき色々買い込んでたもんな…」
「あぁ…ごめんね出費が
「大丈夫大丈夫。じゃあ、ワープするよ!」
冒頭の民宿は悩んだ末の独自展開です。ほらゲーム内だと不眠で動けちゃうから…
・日依
肩書きが冒険者になった。よくわからないけどまあなんとかなるかな、くらいの気分でいる。前科って言うな
朝はテンション低い。早朝に任務が入ると不機嫌全開でかなり乱暴に解決していく。相手と補助監督は泣いていい
・蛍
日依相手に押しきった。時々ぶっ飛んだ行動が出るけど強いし頼もしいし、なんだかんだいい子だと思ってる
・パイモン
日依相手に押しきった。ホントに右も左もわからなさそうで心配になるぞ…
・キャサリン
冒険者協会の受付の方。つかみが強烈すぎて草