呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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陰雨潸潸

 

 "囁きの森"なる地名は、そういえばアンバーがガイアさんに説明していたときに出ていたけれど、あの風魔龍が咆哮と共に出てきた森がそうだったらしい。現状囁き要素がゼロ…まあ、それはいいか。

はぁぁぁあっ!

gyaa!!

 サなんとかいう人*1から受け取った今回の任務は、最近増えてきて簡易的な集落をあちこちに作成しているヒルチャールの駆除。相手こそ違えど日常だったから、戦闘にはすっかり慣れたもの。ただ爆弾投げてくる奴は鬱陶しいから優先的に片付けていきましょうね~!

 

 ちなみに途中で雨が降ってきたことにより、駆除任務は私の独擅場の様相を呈してきた。そうか、雨に濡れてる状態も水元素付着なのか…。

「すげぇな、感電が連鎖してバッタバタ倒れてくぞ…」

「『迅雷』を最低限セーブしたまんまどこまでいけるかちょっと心配だったけど、天が味方に付いてくれたのはありがたいね…」

「これでおしまい!っと。あとは…あっちにあるみたい。この調子でどんどん進めてこう!」

 

 

 

「む?あの篝火、なんだか違和感がするぞ?雨で消えちまってるけど…あいつら何する気だ…?」

 パイモンが眉を(ひそ)めて言う…けど、そもそもテイワットの篝火をあまり知らないので私にはなんとも言えない…気が束ねて置かれてるあれがそうらしいけど。ひとまず見えているヒルチャールは3体。元素視覚*2を通して見た蛍いわく、やっぱり湿潤状態(水元素付着)とのこと。

「それじゃ、電光石火で済ませますか!」

 先に私が飛び込んで、雷元素を(まと)わせた長柄で叩く。お~連鎖する連鎖する。そして、その怯んでるところを蛍が叩き斬る。もちろん蛍が感電しないように気を付ける必要はあるけど、概ねこの方式で問題ない。ほら、3体程度ならあっという間に片付い…

 

「…っ!!」

 気配。害意。鋭いそれに振り向けば、どこから現れたのか追加のヒルチャール*3と…初めて見る、赤い魔物。

「げえっ!?増えた!?」

「ちょ、待っ、何これ!?」

 赤い魔物は何か遠距離攻撃を飛ばしてくるし、風元素使いの竜巻と風域は前にも見たからいいとして、初見のもう一体が…トゲだらけのしがらみを出してくるし、何かの(つぼみ)みたいな物体も生成してくるし!…しんしんと降る雨音だけになったはずの草原は、一瞬で乱戦の場に変貌した。

「日依、どうする?」

「…とりあえず面倒な風のやつ任せて」

 …元素使いが2体はここに来て初だし、あの赤い魔物も元素力を使う上におそらくヒルチャールより強い。…でも、だから何だ?蛍は闘志に満ちてるし、私だって今までどれほど格上の呪霊に挑んでは、傷だらけになりつつも倒してきたことか。

 それに…私たちを包む雨音。ざあざあと響いてこの後しばらく耳に残りそうなこれで、しばらく使う機会がなかった技に思い至った。『迅雷』より呪力消費は大きいけど、ここまで最低限セーブしてきた。なんら問題ない。

 動きを見極めて…竜巻、ってことはあっちが風か。ワープしてきた赤い魔物を蹴飛ばしていなし――標的へ、自身の呪力を投射するイメージ!

「――『災輝』っ!!」

 ふわり、と風が吹く。大気が標的のヒルチャールから逃げるように。そうして次の瞬間、

――ズドオォォォン!!

 …御立派な杖を構えたヒルチャールを、一筋の雷が粉砕した。

 

 

 

「はぁーっ…さすがに疲れた…」

 さて…なんとか討伐終わりました。あのあとは、草元素ヒルチャール*4が出す何かの蕾みたいな物体に雷元素を付けたら敵めがけて飛んでいく、なんて驚きの元素反応*5が判明してからは早かった。もうこれが強いのなんの…、そんなこんなで元素反応が入り乱れていた戦場は、再びしんしんと降る雨音だけの草原に戻った。

 

「前に言ってたけど日依、ほんとに雷落とせるんだね…」

「ん…まあこういう悪天候のときじゃなきゃ無理だし、そこそこ疲れるからあんまりやらないんだけどね……それにしても、まさか倒したと思ったら後から湧いてくるなんて…」

「まだこんなに魔物がいるとはな…オイラたちが倒したのはまだほんの一部かもしれないぞ…」

「だね…戻って報告しに行こうか」

 …新しく魔物が湧いてくる気配はなさそうなので、ひとまずモンド城まで帰還することにした。こうも雨曝(あまざら)しだと風邪引くし。あぁ~ワープ便利。あの現場にもあったらな……。

 

 

 

「お疲れ。状況はどうだった?」

 しとしと降る雨は城門手前の石橋辺りで止んで…サイリュスさんという名前だったか。依頼人は承ったときと同じ場所で待ってくれていたが、蛍の報告に眉をひそめた。

「まだ周囲に活動する魔物がいるのか…どうやらあの暴風の影響はまだ消えていないんだな…だったら、まだ冒険者協会の力を見せるチャンスはあるな!」

「…パイモン、あのサイリュスさんって何者なんだろう?」

「確か、冒険者協会モンド支部の部長って言ってたぞ…」

「そうだったんだ…ろくに名前覚えてなくてなんか申し訳ないや」

「日依、"ヒルチャール"も5回くらい言い直してようやく覚えたもんな」

 うぐ…パイモンからジト目をもらうことになるとは…。カタカナ語はあまり得意じゃない。以前いた界隈ではざっと見渡せば呪術師呪詛師呪霊無下限呪術仮想怨霊呪言師天与呪縛傀儡(かいらい)呪術…という感じの漢字祭りだったから。例外がパンダ。

 だからこれまでの生で覚えてる分には問題ないけど、新しく固有名詞を覚えていくのが大変なのだ。正直4音の単語辺りから怪しくなってくる…。

 ここ西洋モチーフっぽいのに先が思いやられるなぁ…と遠い目をしつつ、報酬を受け取ってホクホク顔の蛍を出迎えた。

 

 

 

 

 

*1
正:サイリュス

*2
私は使えない…

*3
(杖持ってる、ってことは元素力使ってくる厄介な奴!)

*4
もしかしてとは思ったけど合ってた

*5
超開花反応は雷元素キャラの攻撃と見なされます。





というわけで、世界任務「機は失するべからず」への盛大な寄り道でした

サブタイに悩んだ末こんなのに落ち着くなど。サンサンっていうと太陽っぽいけどな…
・日依
雨曝しにはすっかり慣れてしまった呪術師
横文字に弱い設定は当初からあったんだけどヒルチャールに関しては完全に失念しておりました(土下座)。先が思いやられる。特にスメール
最大出力(ただし大部分は外部からの誘雷)を叩き出せる『災輝』。実は5話(「龍災」)で言及はしてた。これで今のところ技名あるやつはだいたい出揃ったかな…

・蛍
この短期間で元素反応の知識が増えていって内心わくわく
雷にびっくり。えっ強い、と思ったけどやっぱりそう簡単には使えないんだね…

・パイモン
日依とサシで話すタイミングもある案内役
雷にびっくり

・サイリュス
思ったより地位高い人だったな…(失礼)
日依には名前を覚えられてなかった。まあ面と向かって話してないし仕方ない

・アビスの魔術師
本編初登場。赤いやつ。ただし雨で湿潤状態&草原核でフレンドリーファイアの憂き目に遭って退場と相成った不運な赤いやつ
日依には一度見向きもされずに足蹴にされてたし


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