呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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帆翔

 

【悲報】風の翼、モンド城内では免許が必要だった

「そ…そんな話、全然聞いたことない…」

「あちこち飛んでたからみんなの目に留まったみたいだね!」

 いや、みたいだね!ではなく…。飛行免許はちゃんとテストを行なって、合格したら騎士団に発行してもらうものらしい。で、アンバーは今回その試験官として私たちを迎えに来たとか…つまりあれか、私たちは先に車を購入して、公道乗り回して、その足で免許センターに直行する感じになるのか。()()免許なら及第点だな…。

「アンバーが試験官なのか?」

「風の翼を渡したのは私だからね。責任を持たないと…きっと、ジンさんそう言うし!」

「そっかぁ…ねぇアンバー」

「そんな目で見ないで?絶っ対にズルしちゃダーーーメ!だからね!それに、簡単な試験だから安心して!風魔龍を撃退したときの飛行ができたら簡単なはずだよ!」

「蛍……あの暴風の中ためらいなく飛んでたのにズルも何もないでしょ…」

 そんな拗ねることかな…とりあえず、テストを受けるに当たってアンバーから『飛行指南』という本を受け取った。規則は大事だから、覚えなくていいけど理解はしておいて、とのこと。それから風立ちの地という場所が試験会場だから、そこで待ってるね!と言い残して、アンバーは走り去っていった。

「西風騎士団の『飛行指南』…タイトルからして難しそうだ…」

「…とりあえず、読んでみよう」

 

 

「いい話だったな!…けど、西風騎士団の『飛行指南』ってこんな感じなのか…」

 うんうん、いい話……いや待って?私けっこう教科書とか専門書とかそういう文面に向き合う気構えだったんだけど。あれ?今読んだのは完全に物語だった。いわゆる"説話"に分類されるだろうタイプの。

 ま…まあ、読んだからいいってことにするか……いいのかな本当に…。不安になるけど、地図を開いて……モンド城の外にほとんど文字がない。困った。…あれ、でも新しく緑色の点が出てる。

「よし、場所わかった!ワープするよ!」

「あ、うん…」

 

 

 

 向かった先は、断崖絶壁の上。そこで景色を見渡しているアンバーがいた。…やっぱり、増えた緑色の点はアンバーだったか。アンバーは私たちに足音で気づいたみたいで、ふっと振り向くと破顔した。

「あ、来たね!『飛行指南』は読み終わった?規則や制度は理解した?」

「んー…まあ、読んだけど…」

「あはは…その渋々って感じわかるよ。飛行指南はつまんないからね、私もあまり読みたくない…あ、このことはジンさんには内緒ね!」

「そうか?このお話、けっこう面白かったけどな!」

「面白い?あ、もしかして付録の実例集のこと?」

 …ん??あれ、なんか話が噛み合ってない気がする。実例集?風スライム…?何それ知らない……そうそう、パイモンの言う通り、私たちが読んだのは鳥が空を飛ぼうとする話…

 

「…えっ!?ちょ、ちょっと見せて!……あ!?これ、私が小さいころ大好きだった童話だ!

「え!!?」

「ご、ごめん!飛行指南書と同じとこに置いてたから、出るとき間違えて持ってきたんだ!」

 …なんということでしょう。マジで説話だったんか…。可愛らしい間違いで苦笑いするしかないけれど、

「えぇっと…こんな話するのは、恥ずかしいんだけど……私に飛び方を教えてくれたのはこの本だったから……"大事なのは強き風ではなく勇気だ。それが君たちをこの世界で初めて飛ぶ鳥にした"。この言葉が私に飛ぶ勇気をくれたの」

 確かに、その部分があの話の肝だよね…じゃなくて。…場所取りとか時間とかの都合があるのか、テストはこのまま行なうらしい…

「えっホントに?このままやるの?」

「緊張しないで!いつもと同じように飛べばいいから!」

 普段通り…まあ、試験ってそういうものだけど……。

 

 

 

「っ…、っ……!」

 …さて、風域を利用しながら指定のポイント*1を巡る飛行テスト。もう全集中*2で向き合ってたのでひたすら無言だった。もう見当たらないな…と判断できたら地上に降りて、先行していた蛍とアンバーと合流。

「二人とも合格!さすが暴風の中でバランスを取れただけあるね!」

「ほんと?よかった…」

 ビシッと親指をたてられて、胸を撫で下ろした。いやね、風魔龍のときは火事場の馬鹿力とかビギナーズラックとかが働いてたと思うから…あと私としては正直、気を張らなくても飛べるくらいにならなきゃって気持ちもある。まあいいか。パイモン、自分のことみたいに嬉しそうだな…。

「じゃあ、これで二人とも免許もらえるのか!?」

「いや、モンド城内で次のテストがあるよ!」

「まだあるんだぁ…」

「パイモンは受けないでしょ…」

 

 

 モンド城内のワープポイント*3から向かったのは、あのコロッセオの中で噴水に囲まれた巨像を見下ろす位置。こんな街中で許可出るんだな…さすが「風はモンドの魂」だけある。

「わわっ、とっと…!」

 で、テストの内容はちょっと変わった。"風域を利用しながら指定のポイントを巡る"自体は同じだけど、垂直の風域で昇り直しながら巨像の周囲をぐるぐる回るルートになった。翼を大きく広げた像にぶつからないかヒヤヒヤしつつ、全部のポイントを通過したら今度は少し下に見える建物*4の屋上へ…や、ややこしいぞこの屋上、構造が…!

「っ…と!」

「おおっと!けっこう高さあったよ?大丈夫?」

「大丈夫…これでいい?」

「うん!二人ともだいぶコツを掴んできたみたいだね!それじゃ、最後のテストを始めよっか!」

 レッツゴー!という意気込み(?)をして、いよいよ最後のテスト。これで合格をもらえたら非行免許(概念)から飛行免許(物理)に変えられるというわけで…まあ、適度に気を引き締めていこう。あまりガチガチになったら力が発揮できなくなるし。

 先行する蛍を見送ったら、15秒くらい待って出発。風車に近寄って、左に迂回して、ゴール地点は……蛍が降りてる。あそこかな?アンバーじゃない誰かと話してるけど……あれ、アンバーが駆け寄ってる。ん?何…下りてきて?

 

 

 降り立って話を聞いたところ、蛍はこの男性…西風騎士団のアートさんに呼び止められ、飛行免許がない件で詰められていたらしい。そこにアンバーがテスト中です!と割り込んだのがさっきの一幕というわけ。

「そうだったのか…しかしこのタイミングでテストとは、間が悪いな…」

「何かあったの?」

「『怪鳥』が風の翼で逃げていったと修道女から通報があってね…それで、君もその仲間かと思ったんだ」

「『怪鳥』?どんなヤツなんだ?」

「モンドの犯罪者だ。いつも風の翼を使って犯行に及ぶから『怪鳥』の名がついた」

 風の翼…概要を聞いてアンバーの眉間に皺が寄った。気持ちはわかる……便利なものがあれば、悪用する輩が現れるのは世の常だ。バイクで引ったくりとか電話で詐欺とか。そして、うちの界隈でいう呪詛師のそれでもある。

 "修道女"ってことは教会があるんだな、とは思ったけど……なんでも『怪鳥』を今度こそお縄にするため騎士団と手を組んだ教会は、文化財の特別公開でおびき寄せ…まんまと逃げられてしまったらしい。文化財本体に風元素で目印をつけていたけど、飛行が早すぎて追い付けないんだとか。なるほど…げに恐ろしきはプロの犯行。『怪鳥』なんて通り名がつくわけだ。

 

「飛行のプロか…なら、このアンバーの出番だね!どこに行ったかわかる?」

 ん??…思わず信じられないという目を向けてしまった気がするけど、向けられたほうはもう眼前の事件に釘付け。またしてもやる気に満ち溢れておられるアンバー=サンの登場…いや、あの。

「最後に目撃されたのは清泉町の辺りだけど、もうだいぶ時間が経ってるからね…」

「安心して!ちょうどこの旅人ご一行もいることだし、『怪鳥』を捕まえてあげる!」

「あの、アンバー?飛行テストは…?」

「そこはまあ、『怪鳥』を捕まえたら直接…コホン、ジンさんには私から説明してあげるから!」

 う、うーん…やっぱりちょっと不安だぞこの子……。

 

 

 

 

 

*1
宙に浮かぶ光輪。原理不明

*2
not血鬼術

*3
こんなところにも!?

*4
あれ、これひょっとして騎士団本部では…?





紫…本人 青…身内 緑…友好 黄…警戒 赤…敵対 非表示…無関心
なお呪マートフォンですが、地図以外のアプデ予定は現状ありません。ご了承ください。

・日依
目指せ非行免許脱却…だけど脱線する模様

・蛍
同じく飛行免許獲得を目指す旅人
城内ワープポイントは屋根の上じゃない方です

・パイモン
ゲーム内だとたびたび蛍(プレイヤー)の反応を代理するので少々ややこしい

・アンバー
飛行のプロにしてやる気に満ち溢れる偵察騎士。この四人組多いね?


何度聞いても脳内で「会長」に誤変換されるの草(真顔)
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