呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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帆翔 - 弐 -

 

 モンド城外、石橋と城門を一望できるワープポイントから、石橋の前を通過して…方角としては西へ。道中魔物を適当に蹴散らしつつ、しばらく進むとそこそこの町が見えてきた。この辺りが清泉町という地域らしい。

「じゃあ、『怪鳥』を捕まえるために、まず手がかりを探していこうか!」

 若干行き当たりばったり感が否めないけどアンバーも脳筋ではないようで、ひとまず『怪鳥』の痕跡を探していくことになった。前述の通り、盗まれた文化財には風元素で目印がつけられていたので、元素視覚を便りに探していく形になるとか……

「ねえ、私それまだわかんないんだけど…」

「元素視覚のこと?なんて言うか、こう…ぐっ!ってやったらぶわーっ!ってなるんだよ」

「そっか~(諦め)」

 家入先生みたいこと言うじゃん……まあ、私も呪力の扱い方を聞かれたらこうなるだろうから他人のこと言えないけどさ。仕方がないので元素視覚による探索は任せるとして…

 

 

「おーい、これなんだ?」

「折れた枝っぽいけど…」

「風の翼の骨かもしれないぞ!もしや…」

「んー…元素の痕跡はないみたい。ただの枝だね」

「うぐ…そうかぁ」

 

 

「このボロボロの布きれ、風元素の痕跡がある…模様と編み方からして、風の翼が破けたのかな」

「こんなんで風の翼だってわかるのか?さすが偵察騎士!」

「これが『怪鳥』のものだとしたら、ヤツの風の翼はもう壊れてるみたいだね…」

 

 

「ここ、風元素が濃い…」

 蛍がしゃがみこんだのは、モンド城を臨む湖岸の一点。…相変わらず私には何も見えないけど、風元素特有の翡翠色…それもかなり濃厚な痕跡が残されているらしい。

「『怪鳥』か、風スライムってとこだな…」

「風スライムは飛べるから、踏んで飛ぼうとした人がいない限りは『怪鳥』のだろうね」

「風スライムでそんなことするヤツがいるのか!?」

 風スライム…確かに見たことあるけど、あれはふよふよ飛んでたな。そして魔物だろうと便利アイテム扱いしていくのが知恵というものだ。呪霊を実力差で(しつ)けて使役する人がいたのを思い出すな…。

「とにかく、痕跡がはっきり残ってるから記録しとこう…この元素の痕跡、あっちに続いてるね?」

「『怪鳥』はこの先に逃げたのか?」

「ここで考えてても始まらないし、追ってみよう!」

「待って…何か聞こえる」

 …風に乗って、何か不自然な音が。草木のざわめきに混じって、殴打する音と…この声。

「戦闘が起きてる?まさか『怪鳥』!?早く行こう!」

 

 

 見つけた音源の場所では、ヒルチャール×2に襲われている男性がいて。

「行っくよ~!」

「やぁっ!!」

「風刃!!」

 …はい。2体なんてもはや朝飯前ですね。ファオラというらしい男性にはお礼を言われたけど。あと、騎士団がいてくれたら魔物も迂闊に手を出せないだろうとも。

「でも、ヒルチャールの集落は騎士団がほとんど潰したはずなのに…」

「小さな集落があってね…町からそう遠くないから、俺も普段は避けて通っているんだが…そのヒルチャールの集落に、空から人が降ってきたんだよ」

 …ほう?()()()()()。蛍と顔を見合わせた。これは…たぶん、そういうことだな。アンバーがその人の容姿を詳しく聞いたところ、何かを抱えてふらふら飛んでいたとか…。

「重い荷物…文化財を抱えて逃げた『怪鳥』かもしれない。その人がどっちに逃げたかわかる?」

「俺もヒルチャールから逃げるので精一杯だったからな…あっちの方じゃないかと思うけど…」

「そう、ありがとう!あ、この件は帰ったら騎士団に報告するね!巣も早めに対処するから安心して!…さてと、なんとか手掛かりをつかめたね。さっそく追いかけよう!」

 ファオラさんと別れて、あっちと示されていた方向に向かう。と…

「っ…何?」

 不意に立ち塞がる者が現れた。口許を黒いマスクで隠した5人の男。一人が農具らしきものを持ってる以外は素手に見えるけど…

「宝盗団!」

「ほうとう?…うわっ」

 聞き返そうとしたけど、ストレートな害意とともに何か冷たい攻撃が飛んできたのでやめた。これ、まさか氷元素では…なるほど呪詛師(概念)だな?完全に理解した!

 

 

 

「はぁ…くっそ、逃げられたな…」

「日依!だ、大丈夫!?」

「だいじょーぶ。割と慣れてる」

「な、慣れてるんだ…」

 …さて。テイワットに来てはじめての対人戦は、宝盗団(向こう)の逃亡という結果に終わった。

 ちなみにアンバーから心配されているのは、あちらさんが割と固まって行動してるのを逆手にとって自爆特攻withウサギ伯爵をかましたから。定番じゃない?固まってるところに範囲攻撃。こんなもの(過負荷反応)あったら是非とも向こうでも使いたかったよ。

「ヒルチャール以外にもあんな奴らがいるのか…」

「まあ、どこにでも一定数は出るでしょ。ああいう破落戸(ゴロツキ)は」

「それに…風の翼の作りを見た感じ、『怪鳥』の仲間かも」

「えっホント?」

「さすがアンバーだな…でも、なんであんなところにいたんだ?」

「確かに…あんな下っ端じゃ、私たちを止められないのに…」

 うーん騎士団の誇りを感じるけどさておき。相変わらず私だけ使えない元素視覚を便りに痕跡を追っていくことにして………しばらく進んだ辺りで、先行する三人は足を止めた。

「この先、もう元素の痕跡がない…」

「文化財の目印の元素が尽きたのかも……そっか、元素の痕跡を消せないとわかって、手下に足止めさせたんだ!痕跡が消えるのを待つつもりなんだよ!」

「まんまと逃げ(おお)せるための時間稼ぎか…」

「そうはさせない…急ごう!」

 

 

 

「見つけた…きっとここだよ」

 アンバーが足を止めた場所は、山の岩肌にポツンと開いた洞窟の前だった。

「これが、『怪鳥』のアジトなのか?」

「偵察騎士の勘だけどね!」

「勘かよ!?」

()()()、でしょ?これまでの活動からの」

「あ、そうそれ!宝盗団のアジトはだいたいこういう場所にあるものだよ」

 そうそれって…。アンバー自身はちょっと残念なとこが見え隠れするけど、経験を積んだプロの勘というのは馬鹿にならない。2級でプロを自称するのは烏滸(おこ)がましいが私とて段々どこに呪霊が潜んでいるかの見当がつくようになっていったし。そういうものだ。

「じゃ、行こっか!」

 …気を取り直して、アンバーの先導で洞窟に踏み込んだ。早いとこ『怪鳥』をとっちめに行くとしよう。

 

 

 

 

 





今回は言うほど帆翔してないな

・日依
元素視覚が使えない冒険者(呪術師)
テイワット初の対人戦になった。制服が頑丈なのをいいことにとんでもない無茶をする図
しかし何がとは言わんけどひらがな表記したら山梨の郷土料理なんよ

・蛍
元素視覚が使える旅人
日依と共に技術の継承に難がある感覚派コンビ状態

・パイモン
案内役は一旦休み

・アンバー
使命感で『怪鳥』を追う偵察騎士(飛行のプロ)
ウサギ伯爵のあんな使い方知らないし、正直あんまりやってほしくない…



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