呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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お待たせしました魔神任務(本編)です



深紅の結晶

 

「…ん?あれ、ジン団長だよな?誰かと話してるみたいだ…」

 魔物の討伐に出掛けたり、非行免許()の更新()に行ったり、ノエルという鎧を(まと)ったメイド(!?)と知り合ったり…。まあそんな感じで色々と寄り道があったけど、そろそろ顔くらいは出しておこうか、と西風騎士団本部に向かう道中で、ふと足が止まった。ジン団長と、もう一人…黒ずくめで仮面をつけた…なんか胡散臭いな…。

 …まあ、君子危うきに近寄らずとは云うし。向こうの話が終わったら挨拶しに行くか、と話し合っていたけれど…

 

「直ちに()()()()()()()ことができないのなら、モンドの防衛を『ファデュイ』に渡した方がよいかと」

 …ふと、風に乗って会話の内容が耳に飛び込んできた。"風魔龍を滅ぼす"?『ファデュイ』?眉を顰めた私たちをよそに、あちらの…殺伐とした会話は流れていく。

「モンドの龍災はなんとかなる。我々があのケダモノを」

()()()()?」

「おや?騎士団長殿は違うとでも?」

「はぁ……貴国の外交官には、もう少しまともな態度を示していただきたい。モンドの『四風守護』、その一つを処理したいだと?…西風騎士の前で、そのような戯れ言はやめていただきたい」

「フフッ…戯れ言など滅相もない。よかろう、今日の協議はここまでだ。今回の成果は"双方が誠実に建設的な意見を交わした"、それでいいかな?」

 不遜な態度を隠しもしないまま、仮面に黒衣の人物はカツカツとヒールを鳴らして立ち去っていった。…いま外交官って言ったか?渉外に向いている人には思えなかったけど…。

 

「ジンさん!」

「ん?あぁ…蛍に、()(より)か。協力ありがとう。お陰でモンド周辺の元素循環はようやく落ち着いた」

 待ってましたと言わんばかりに駆け寄っていく蛍を追えば、ジンさんからはまっすぐに礼を言われた。ぅ…やっぱりこう直接的に向けられると、なんだかむず痒い…。

 風魔龍によって(もたら)された被害についても一段落ついたとのこと。人手不足だと言っていたし、普段はすぐに手が回らなかったんだろう。…しかし、ジンさんの顔は曇ったまま。

「しかし、使節団側の圧力は、もう無視できないほど大きくなっていてな…」

「使節団?…って、さっき立ち去っていった人?」

「外交の使節団か…璃月(リィユエ)港からか?それとも稲妻城?」

「スネージナヤ。七神のうち氷神を祀る国家からだ」

 スネ…うーん…。そうか、ここにも外の国はあるのか。とりあえず今いる場所含めて4つはあることがわかったけど…スネージア*1という国の外交官は『ファデュイ』と呼ばれ、パイモン曰く「あまり良いイメージはない」らしい。

 …まあ、さっきの不遜な奴を見た私としては「そりゃそうだ」としか思えない。これが一部が悪目立ちしてるだけならまだいいんだけどな…。

「風魔龍を殺すことが正しいと私は思わない。それに、氷神が率いる『ファデュイ』は風神、()いてはその眷属の力を欲している…それが見え見えなんだ」

 ジンさんは眉根を寄せて、ふぅ…とため息をつく。…なるほど、これが()()()()というやつか。今までずっと内憂99%の組織にいたからよくわからない概念だったけれど……西風騎士団が、こちらが思う以上に大変な状況であることはわかった。

 

「…パイモン、"七神を祀る国"のこと聞きたいけど今いい?」

 わかったんだけど…今はわからないことが多すぎて頭がパンクしそう。眼前の騎士団長にぶつけるのは気が引けて、パイモンにこっそり声をかけることにした。

「あぁ、日依には話してなかったな…七神は七つの元素それぞれに」

「ごめん日依、ちょっといい?」

 それでこういうとき頼りになるパイモンは、声量を揃えて教えてくれ…そうだったんだけど、真剣な顔をした蛍に割って入られてしまった。あれ蛍には話してたんじゃ?と思ったけど、違うっぽい。

「どうかしたか?」

「ちょっと思い出したものがあって…騎士団の人たちにも見せたほうがいいと思うから」

「中に入ろう。こんなところで大事な話はするべきでないからな」

 

 

 騎士団本部へ向かう道中で、この世界の国についての話を聞くことができた。モンドは独立した城でどの国にも属さないらしく*2、一方のスなんとか*3は「冬の国」とも呼ばれ、今もっとも外交面で勢いがある大国らしい。…勢いづいた結果があの態度か。こう言っちゃうと悪いけど小物だな…。

 まあそんな小物はさておき…蛍が思い出した、"騎士団の人たちにも見せたほうがいい"ものというのが…

 

「っ…!?」

 囁きの森で、風魔龍が飛び去ったあとに残されているのを見つけて、パイモンが保管していたらしい…雫型で、禍々しく光る暗赤色の結晶。…感じられるこれは……()()?いや、少し違う?………違う気がする。少なくとも、似て非なるもの…?

「これは…ある力が込められた結晶だ。リサ、構造分析を頼めるか?」

「ええ、ちょっと確認するわね。…結晶の中に、穢れた不純物があるわ…でも、これ以上は…」

 私が取り留めもない思考を展開する傍らで、騎士団の面々の間で話が進んでいた。リサさんが結晶を覗き込んで何か…解析をしているようだけど、表情は明るくない。モノがモノだし当然。

「…ごめんなさい、今はまだ結論を出せないわ…少し時間を頂戴。禁書エリアで資料を探してくるから」

「ああ…ではリサ、その研究は任せた」

「ええ、何か進展があったら知らせるわね。…まあ、あまり古代の文献には期待しないで。それに――痛いっ!?」

「「リサ(さん)!?」」

 確かに研究は日々進歩するものだもんな…とか思っていたら、赤い結晶に触れようとしたリサさんがその手を押さえて後ずさった。

 

「…不純物に、触れようとしたら……なるほど、これは『神の目』との相互排除ね」

「相互排除?」

「この穢れの力は、わたくしたちの体内にある元素の力と相殺し合うの…でもおかしいわ?蛍、あなたも元素の力を使いこなせるのに、影響を受けなかったのね?」

 おっとぉ…この展開多いな…ただ、当の蛍はきょとんとしてパイモンと顔を見合わせるばかり。本人もよくわかってないらしい。あまり他人のこと言えないけど。

「…とにかく、この結晶はかわい子ちゃんに持っていてもらおうかしら。わたくしたちが持っていても、痛みが増すだけですもの」

「わかった、そうするね」

 まあ、蛍にとっては特に断る理由もないだろうし。禍々しい結晶は、蛍の手によってどこかに格納されていく。*4

「不思議な現象だ…君自身の特殊性について、何か心当たりは?」

 ジンさんの真っ直ぐな質問にも、蛍は首を横に振った。…まさか違う世界から来たなんてことなかなか言えないし、それが果たして直接の理由になるかもわかんないもんな。

「…そうだろうと思った。では蛍、そして日依も」

「…?私も?」

 …ただ、改まった態度のジンさんに名前を呼ばれた私は…思いもよらないことを告げられることとなった。

 

「ああ。無理な願いではあるが…西風騎士団の『栄誉騎士』の()()と、代理団長の感謝の気持ちを受け取ってくれ」

「…へっ?」

「西風騎士団の、栄誉騎士!?」

「そうだ…それから、この謎の答えを探すのに、もう一度力を貸してほしい。風魔龍の暴走、先程の赤い結晶…それらはきっと、ここモンドの平和と深く関わってくるはずだ」

「もちろん!力ならいくらでも貸すよ!」

「…私も、構いません」

 いやまあ協力は当然させてもらうけれど…()()??我らが日本では遥か昔に失われた概念だ…。

 …うーん。しかしまあ、簡潔に言うなら()()か。なら、おとなしく貰っておいた方がいいんだろうな………ひとまず、一級術師くらいの肩書きのつもりでいることにしよう。私は(つい)ぞ持つことのなかったそれに。

 

 

 

「ありがとう。真実に辿り着けるように、風の加護が君達にあらんことを願っている。何か新しい発見があったら、ここに来てくれ」

「うん、そうする。それじゃあまた!」

 爵位の件も含めて深々と礼をして*5、騎士団本部をあとにする。そのまま騎士団本部からやや離れたところで、蛍、と呼び止めた。色々確認したいことがあったので。

 

「日依、どうしたの?」

「…さっきの結晶、もう一回見せてもらってもいい?」

「それはもちろん、いいよ」

「ありがと…あ待って、今出さないで」

 スッと腕を上げる蛍を慌てて制した。この子ほんと行動は早い…と内心呆れつつ、邪魔にならない隅のほうに移動して…人差し指と中指を立てる。

「『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」

 ――ずるり、と空の一点が(くろ)ずむ。かと思えばそれはみるみるうちに広がって………範囲狭いな。天元様による底上げ無しじゃこうなるか…まあ、今はむしろちょうど良い塩梅だけど。

「日依?なにしてんだ?」

「ぁ…見えてないだろうけど、結界を張ったよ。弱ってはいるけど、人払いとか視線避けにはなってくれるはず」

「人払い?視線避け?」

「はぁ…()()()()()()()()()。きっとこの世界じゃ私たち以上のイレギュラーだよ。さっきは室内だからよかったけど、こんな街中でほいほい出していいものじゃないでしょ」

「あ!そっか、そうだった…」

 

 …そういえば、二人には見えてないか。術式がこの世界に適応しすぎててすっかり忘れてた…やれやれ、と肩をすくめるのはまあ後にしよう。この"(とばり)"がどう弱ってるかはわからないので*6お早めに…蛍がどこからか取り出した結晶は、やはり禍々しい暗赤色……

「…やっぱり、似てる……」

「日依、これが何かわかるのか!?」

「いや。でも…似てるだけで確証はないから、さっきは言わなかったけど……怒りとか、苦しみとか、そういうものが(こも)ってる感じがするんだ」

「それが…ジンさんがいってた、"ある力"?」

「一概には言えないけどね。この世界のことは、この世界の人が詳しいだろうし…とりあえず確認はできたからスッキリしたよ。ありがとう」

 もういいの?と不思議がりながらも結晶をしまい込んだ蛍……呪力がこもったものを呪物といって、これは本来一般人が所持することはいただけないものなのだけれど…蛍に関しては、なんかそういう心配する必要無さそうだなと思ってしまう。影響受けなさそう、どころかそのうち私の呪力も見えるようになりそうだな…。

 …まあ、そもそも呪力()()()()()であって呪力そのものとは違うようだけど。危険な森にも路地裏にも秘境にも漂ってないし、街行く人から漏れ出してるのも見えないし…私の慣れ親しんだ呪力は、やはり私の中にしか生まれないものらしい。

 条件はわからないけど、今のこれはモノに籠った負の感情が呪力みたいなものとして見えているだけ。この世界においても、負の感情がエネルギーになるのかはわからない。…認識されてないなら、エネルギーにはならなそうに思えるな。

 …ひとつ気になることがあるとすれば、さっき騎士団長室で見たときよりも赤い色が薄れていた気がしたけれど……光の加減かな。外だし。

 

 

 

 

 

*1
惜しい

*2
国ってわけでもないのか…?

*3
正:スネージナヤ

*4
…この収納も私としては相変わらず理解不能なんだけど、ジンさんやリサさんの反応を見た感じこの世界(テイワット)じゃ日常茶飯事らしい。考えてみればアンバーの弓矢もどこからともなく出てきてたしな…

*5
洋の作法には疎いんだけど、これでもいいのかな…。

*6
天元様には"不死"の術式があるので、天元様不在の環境は経験がない





なんとなく予約投稿にかなり幅を持たせてた
ちなみに予測変換で幅を利かせてくる「上野目」は宮城県北部に2箇所ある地名だよ(至極どうでもいい情報)

・日依
相互排除の痛みに見舞われない呪術師(呪力が優位のため)。赤い結晶にこもる呪力…のようなエネルギーを感じ取る。深紅(辛苦)の結晶
ちなみに一級にはなれなかったというより本人が昇格を拒否していました。あまり忙しくなって仲間との交流が減るのは嫌
念のため帳を使ってみた。天元不在のノーマル帳が本当にわからない。それでも結界術は得意なほう(センス有)なので安定感はあった。入れて6人程度のサイズだったけど……

・蛍
相互排除の痛みに見舞われない旅人(詳細不明)
突然の詠唱に目をぱちくりさせた。そういえば、日依のことまだ全然知らないや…

・パイモン
しばらく赤い結晶を預かっていた案内役
突然の詠唱に目をぱちくりさせた。日依ってそんな力持ってたのか…?

・ジン
内憂に外患に多忙な騎士団長

・リサ
解析ができる研究職


・ノエル
初心者応援祈願で確定の子。実況主が使いまくってるので出したいけど暫しお預けになりそう…


実際天元様不在の帳ってどうなるんだろうナ…ネットの叡智に訊こうにもグ○ンラガンとか音柱の○随さんとかが食い込んできて……


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