呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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近頃停滞気味でお待たせしております
なんかまた長くなってしまった気がする 文字数の加減が下手
時系列が若干ややこしくなってるのでご注意



宝と涙 - 弐 -

 

「…ぁ」

 走っていくお兄ちゃんに伸ばした手が、すんでのところで届かなかった…と思えば、私はベッドの上に横たわっていた。まだ薄暗い、西風騎士団隊舎の一室………夢、だったんだ。なんだ…。

 寝起きの視界には、夢の中と同じようにまっすぐ伸ばされた自分の腕。ベッドの上からはみ出ることはなく、もうひとり寝られそうな空間の上に……あれ。

「…ひより…?」

 そうだ…昨日、床で寝ようとしてたのを引き留めて隣に入れたんだ。部屋を見回したら…パイモンが浮いたまま寝てるのは置いといて………いた。ベッドの足元側に腰かけてる。黒ずくめで分かんなかった……何してるんだろう?私と同じように、腕を伸ばして…

「…あ」

 …その手の中に、音もなく現れる武器。(きっさき)を失った槍…どう見ても、日依が普段使いしてるもの。思わず声が出て、日依が振り向くのが見えた。

 

「あ…おはよう蛍。ごめん、起こしちゃった?」

「ううん。今起きたところ。それって…」

「ストレージ、だっけ…なんか、急に使えるようになっててさ……すごいねこれ。ほんとに何が入ってるかなんとなくわかるし、メインの武器だけ別のところにあるっていうのも感覚的にわかるの…」

 日依は苦笑いしながら、感覚を確かめるみたいに槍を出し入れして…早すぎて点滅してるみたいになってるよ…。

 そういえば枕元に置いてた日依のカバンもなくなってて、もしかしてと思って尋ねたら「ああこれね」と取り出してみせた。

「あんまりいきなりだったから、正直まだ混乱してるけど…まあ、全部蛍とかパイモンに預けるのちょっと申し訳なかったし、けっこう気は楽になったかな」

「んぅ…呼んだかぁ…?」

「あ、パイモンおはよう」

 

 頭上からの声に顔を上げれば、パイモンがくしくしと寝ぼけ眼をこすっていた。ぱちぱちとまばたきをしても、なかなか目の焦点が合わない様子…まあ、まだ早朝だからね。ねぼすけパイモンには苦しいものがあると思う。

「うぅ…オマエら早起きだなぁ…まだ全然明るくなってねーぞ…」

「今日はたまたまだよ…二度寝する気分じゃないけど」

「私はもう体に染み付いちゃってるからね…。ちょっと外で体動かしてくるよ、新しいミッションも出たことだし。1時間くらいで戻るね」

「うん、わかった」

 どこかすっきりしたような顔でいそいそと出ていく日依と、元気だなぁ…としみじみ言いながら夢の世界に戻っていったパイモンを見送れば、残されたのは私と、静かな早朝の部屋。…さっきの夢のせいってわけじゃないけど、やっぱり二度寝する気にはならない。やっぱりパイモン持って私も行こうかな…。

「…()()()()()()()()()()()、かぁ…」

 ベッドから降りて簡単に支度をしながらふと、さっきの日依の言葉と…昨日の晩の話を思い出した。

 

 

『『化け物退治?』』

『簡単に言うならね』

『それって、ヒルチャールみたいなやつか?』

『いや、ああいうのとは違う。どう説明しよう…この世界にはいないみたいだし、ホントはこうやって伏せる必要もないかもだけど……』

 うぅん…と時々つっかえながら話してくれた、前の世界の話。…日依が戦っていた化け物は、戦うどころか見ることすらできない人が多いという。それは生まれつき決まるもので、けれど化け物はお構いなしに誰でも襲うのだとか…。

『そっか…だから日依の結界は、()()()()()()()()なんだね』

『うん。公にはしないほうが、色々面倒がないからね』

『なるほど~ってそうじゃねえ!見えない化け物とかやばすぎじゃねーか!?』

『まあ、基本危ないところに近づかなければいいだけだから…だいたいは場所に縛られてるし、それに出現の法則もわかってるから、見えるだけの人で監視網を敷いたりはしてたよ』

 そもそもあいつらが出る場所は、だいたいは本能的に"近づきたくない"って思う場所だからね!って……あんまり笑顔で言うことじゃない気がするんだけど、まあ言わないでおこう。自覚ないみたいだし…すぐにしんみりした表情に変わっちゃったし。

『ただまあ、やっぱり戦える人は一握りだから…それも、みんながいつも退治に成功するわけじゃなかった。命からがら帰ってこられれば御の字。そういう環境だったんだよ』

『そっか…そうだよね』

『だから私は、みんなを守れるように強くなるしかなかったの。…ま、もう戻れそうにはないんだけどね』

 

 

 

 なんでもないことみたいに言いながら、伏し目がちに寂しそうな顔をしてたっけ。確かに聞いた感じ、心残りはあって当然だろうし…そういえば、「終わりかけの世界から閉め出された」って言ってたけど、どういうことなんだろう?日依、その辺はかたくなに話そうとしないけど…

「…あとにしよう。もうすぐ目的地だし」

「どうかしたか?」

「ううん、ちょっと考え事」

 ジンさんの問いかけにかぶりを振って、歩みを進めていれば景色が開けてきた。…この辺りは"ダダウパの谷"と呼ばれる地域で、多くのヒルチャールに占領されているために普段は誰も立ち入らない場所なのだとか。

「それって、トワリンも近寄らないんじゃねーか…?」

「ああ…だがあの穢れの力が、(かえ)って魔物たちを惹き付けることも考えられる、とリサが話していたからな」

「なるほど…っ!」

 飛んできた一本の矢を躱したところで、私たちとヒルチャールとの戦端が開かれた。

 

 

 ✫ ✫ ✫

 

 

 トワリンの涙の結晶があるかも、と当たりをつけてやって来たここは『千風の神殿』。モンド城を出て橋を渡って、そのまま東を目指してしばらく進んだところ。辺りにひと気を感じない…向こうのテレビでたまに見た、ギリシャの神殿の遺跡みたいな感じの場所。…なんだけど。

「なんかデカイのいるんですけど~…?」

 …なんか岩の塊が歩いてるよ…。角張っているけども人の形をしたデカブツが、器用に腕を振って二足歩行してる……腕落ちないのかなあれ。深く考えたら負けか…。

「遺跡守衛だな…どうやらクエストがあるらしい」

「ひょっとしてあれ、頭の光ってるところが弱点だったりします?」

「ああ、まさしくその通りだ。コアを破壊すれば動きを止められる」

「なんてわかりやすいんだ…」

 

 あ、隣にいるのはディルックさんです。蛍とは別行動することにしたけど、まだ勝手がわかってないとこあるんで誰かに同行することにして今に至る、というわけで。…この人お忙しい身の上なのでは…?と思うんだけど、まあ確固たる信念に基づいて動いてるんだろう……"モンドを愛する者として"とか、そういう感じの。

 今朝の時点で、左腕はようやっと包帯を巻かなくてもいい感じになった。ここから本格的に感覚を取り戻していきたいところだけど…意を決して近寄れば、見上げるほどの大きさ…こうして近くで見ると、ますますジ○リの映画にいそうだな…。

 向こうにロックオンされたのがわかったので、雑念はいったん仕舞っておいて。

 

「――せぇいっ!!」

 こちらを踏みつけようと右足を振り上げるのが見えたので、支えの左脚を思いっきり叩いた。…のだけど。

「か、硬…っ!うわ!?」

 …軸足を崩して転ばそう、という目論見は外れた。嘘でしょびくともしないじゃん呪力乗っけたのに!?右足が振り下ろされ、瓦礫が飛び散る足許から距離をとって。

 後退したことでディルックさんが背中を斬りつけているのが見えけど、遺跡守衛に勢いよく振り向かれて飛び退いていた。方向転換がスムーズだな…ディルックさんと入れ替わるように一気に距離を詰める!…けれど、コアを狙った上段は腕に防がれて――

「ぅあぁっ!?……っ、そ…そういえば、岩の塊だった……そりゃ、硬くて当たり前か……

 くそ…しっかり胴を殴り飛ばされた。なんとか姿勢を整えて着地はできたし、この程度大したダメージじゃないけど……近接戦じゃ()が悪そうだ。なら今使えるのは『迫撃』か、あるいは――

「…っ!?」

「さすがに腕が落ちたりはしないか…」

 バシィッ!と音を立てて紫電が空を駆ける。直撃した遺跡守衛が蹌踉(よろ)けるのが見えた。…『迅雷』の効き目もいまいちな気がするけど、この二本柱でいくしかなさそうだ。長杖を握り直して、『迅雷』の軌跡を辿るように駆け出した。

 ところで、ディルックさんが驚いた様子でこっちを見たけど……あそっか、前の秘境では使わなかったからか。すみません遠距離攻撃できるんです私。言うの忘れてました。

 

 

 

「おぉ…」

 ディルックさんの、大剣に炎を纏わせた大振り。その一撃で、紫色の閃光――過負荷反応を表すそれとともに遺跡守衛が砕け散る。そんな様子に、思わず感嘆の声が漏れた…マジですか。なんか硬度の差とか、そういうの無視できちゃうんだな元素力って…。呪力だって若干そういうとこあるかもだけど。

 あのあと『迅雷』について問われたので、とりあえず"触れてマーキングしたところに撃てる"という特性*1を話したところ、「それは好都合だ」と言われた。なんでも遺跡守衛のコアを破壊するには2回攻撃が必要とのことで……ディルックさんに言われた通り、振り回される腕を()(くぐ)って接近、長杖でコアをぶっ叩き、すぐさま『迅雷』、という流れで遺跡守衛を沈黙させることに成功したわけ。

 さて遺跡守衛が砕けて塵になったあとに、忽然と現れた宝箱。それに手を掛けて開けば、中から赤い光……なぜか当たり前のようにあるテイワットの貨幣*2と、確か蛍も持ってた雑多なアイテムの中に、いまだ禍々しい色を放つ雫型の結晶があった。

 

「あった…こんなところに」

「そうか、それはよかった」

「無駄骨は嫌ですからね…結晶は私が持っておきますけど、ディルックさん何か要りますか?」

「僕はいい。知っているものばかりだからな」

「私はどれがなんなのかですけど…蛍かパイモンに聞けばいいか…」

 十字形の宝石*3とか、取っ手と注ぎ口がついた白い容器*4とか…あと、遺跡守衛が砕け散ったあとに残された「Φ」みたいな形の何か*5とか。使えるようになったばかりのストレージにぽいぽいと放り込んでおく。

 …なんかほんとに変な感じだなぁ。雑多に放り込んでるだけなのに、どこかでちゃんと分類、整頓されて並んでる感じがする………「元素力ってすごい!」ってことにしとこう。関係あるか知らんけど。

「さてと…向こうに合流する前に、ざっと見ておいたほうがいいですかね?念のため」

「ああ、一応見ておこう」

 

 

 

 

 

*1
マーキングは雷元素だと思われてたけど、まあわざわざ訂正する必要もないか…

*2
モラ

*3
原石

*4
医者の薬壺

*5
混沌の装置





・日依
朝起きたらあの謎収納がインストールされてた呪術師。どんどんテイワットに染まっていく
呪いや呪術には触れずに身の上を話した。ただし表情のコントロールは下手。"閉め出された"の意味を話す気はない
穢れの影響は受けない(既述)
聖遺物を"雑多なアイテム"呼ばわり。まあ恩恵を受けてないので…

・蛍
すっかり龍災解決のキーマンとなった旅人
日依とは別行動中@ダダウパの谷

・パイモン
今回は回想(冒頭)でしかセリフがなかった
「空気は一番ふわふわなベッド」とのこと

・ジン
蛍側で行動中@ダダウパの谷

・ディルック
炎元素両手剣の旦那。日依側で行動
セリフ考えるの難しいたぶんガイアよりはマシだけど


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