…何分経った?考えてみれば、携帯の時計って圏外でも反映されるはずなんだけど、数字が動いてないことに遅れて気がついた。そもそもこれどう見ても23時の明るさじゃないし…つまり、これは私の死亡時刻で止まってるんだろう。なんて覚えておきたくない数字だ…。
あと…この世界、どうもずいぶんファンタジーな気がしてきた。さっきプルプル揺れる赤い塊*1がぴょんぴょんと飛びはねて移動するのを見たもので。…あれが
肉体疲労とは別に積み重なっていく心労に、思わずため息をついた――その瞬間。
――グオオォォ!!!
「っ!?う…っ!!」
遠くから響き渡る巨獣の咆哮。呼応するように吹きすさぶ風に、立っていられず膝をついた。
バサリ、バサリと羽ばたく音が聞こえる。そちらに目を向ければ、深い緑の中から青い…なんだあれ……!?何か、大きな青い…鳥?いや、脚が多い?……何か、大きなものが飛び去っていくのが見えた。
「……ファンタジーじゃん…」
…うん、ひょっとするとそうじゃないかとは思ってた。ゲームみたいなファンタジー世界じゃないかと。
思ってたけど……参ったなぁ…そういうのには詳しくない。詳しくないけど…モンスターをハントする的なやつだとすると、野宿延長の気配。
「さすがにずっとこれはきつい…せめて文明に触れたい………あ」
ぶつくさぼやきながら歩みを進めていたら、急に開けた景色に足が止まった。…遠くに町並みが見える。風車が立ち並ぶ、結構大きそうな…城塞都市って言うのかな、ああいうのは。
まだ早いのは承知の上だけど、ほっと安堵の息が漏れた。…あそこまで行けたら、少なくともこの遭難状態は解消されるし、ここがどんな世界なのかも人の口から教えてもらえるだろう。
行くあてが決まった。これで、先の見えない暗闇みたいな状況からはおさらばだ。逸る心をなだめつつ、高い草を踏み分けて進む足が―――ふと、空を切った。
「あっ、あ!?」
つんのめった視界には、はるか下の地面…こ、こんなところに崖!?しかも木より高い、まずい…!と伸ばした腕がつかんだ草は、あっさりとちぎれてしまって。
「ぅわああぁぁぁっ!!?」
…痛い…全身が痛い……くそ…呪力強化が間に合ったとはいえ、痛いものはちゃんと痛い…。大丈夫か私…どこか大きな骨折とか、してなきゃいいんだけど…
「ぅ…」
「あ、気がついたみたいだ!」
「!?」
…なんて、痛みのあまり漏れたうめき声に返事がきて、一気に意識が覚醒した。がばりと起き上が…ろうとして、左腕に鈍痛。
「ぅぐ…っ」
「あ、あまり動かない方が…!」
声をかけてきたのは…金髪の少女。白いドレスを身にまとって、なんだかお姫様然とした
「っ!?」
「うおっ!?」
「えっ早っ!?」
…あまりのことに、つい飛び退いて身構えてしまった。けど、呪力は感じられない…警戒はされてるけど、害意は感じない…
「い゛っ…!」
…そう冷静さを取り戻せば、全身の痛みがまた押し寄せてきて、地面に崩れ落ちてしまった。
✫ ✫ ✫
「ぅわああぁぁぁっ!!?」
「な、何!?」
「向こうで人が落ちたぞ!?」
アンバーの案内でモンド城へ向かうかたわら、彼女が与えられた任務について話し合いながら歩いていたら…いきなり甲高い悲鳴が聞こえてきて、振り向けば崖の上から真っ黒な人影が落っこちていくところだった。姿はすぐに木々に
「私見てくる!偵察騎士として、確認してこなくちゃ!」
「じゃあ、私も一緒に行く。"怪しい者を放っておくわけにはいかない"、でしょ?」
「結構容赦ないね…?」
そうして二人、いや三人して
全身傷だらけで血が出てるところもあったけど、不思議と大怪我はしてなくて、気を失ってるだけみたいだった。話を聞かなきゃいけないから、とひとまず移動させた(崖の下は足場が悪かったから)ところで、女の子は目を覚ましたんだけど…
「い゛っ……!やば、痛い…」
「だから言ったじゃねーか、動かない方がいいって!」
びっくりするくらい素早く飛び
「起きたら森、って…」
「本当にそうとしか言えないんだよ…起きたら森」
頭から爪先まで真っ黒な装いの中で、ランプの灯火みたいなオレンジの瞳が目立つ。
「あれ、私のカバン…」
「これか?木の枝に引っ掛かってたぞ!」
「あ、それだ。ありがとう…えっと…」
真っ黒な日依の装いは、はパイモンが差し出したカバンも真っ黒だった。…さっき崖から落ちたばかりの日依は自力で動けないらしくて、今はアンバーに助け起こされて木に背中を預けてる。カバンを開けて…中から包帯を取り出すと、左の袖をめくった。
「う…この感じ、枝か岩で切ったかな………あの、じろじろ見られてるとやりづらいんだけど」
「あ、ごめん。…けっこう慣れてるの?」
「まあ、こういう怪我なら…」
器用に包帯を巻いてる日依…見てて気づいたけど、体中やけに傷だらけだ。さっき崖から落ちたのとは別のもあるみたいだけど…上でヒルチャールに襲われたりしたのかな…。
「うーん…任務の途中だけど、動けない子がいるんじゃ…一旦切り上げて、モンド城に戻ったほうがいいかも…」
「…じゃあこれでよし、と」
「えっ?」
アンバーは腕組みして悩んでるみたいだったけど、その目の前でよいしょ、と日依が立ち上がった。…えっ?さっきまで、あんなに辛そうだったのに…?
「あれ?あ、あなた動けないんじゃ!?」
「もう大丈夫。調子が戻ってきたから…この程度の怪我、今まで何回もあったし」
「あ…あんまり何回もあっちゃダメだと思うな~…」
「ほんとに動けるのか…?」
「問題ないよ。全然動ける。そっちの子は任務があるんでしょ?」
「私はアンバーだよ。
「騎士団…?まあいいか、大丈夫。足手まといにならないようには気を付ける。そっちとしても、
「………聞いてた?」
「何が?…別に、私ならそうするかなってだけだよ」
…そんなこんなで、なんだか積極的な日依が仲間に加わることになったんだ。
・日依
東京産の世界規模迷子
外見設定出ました。黒髪にオレンジの目。某某ノ消防隊のキャラを思い浮かべていただくのが簡便と思われる。見た目だけは炎使いってそれさんざん言われてきたから…
何気に彼女にとって重要なキーワードが2話にわたって登場
・蛍
異邦の旅人
発言の容赦のNASA、積極的に出していきたいが過ぎるな…
・パイモン
溺れているところを蛍に助けられ、案内役を務めている非常食
現状一番喋らせやすいかも
・アンバー
モンドの地元民にして西風騎士団の一員
数分と経たず2人目の異邦人に遭遇した偵察騎士
(4/14)かなり深刻なミスを見つけたので修正しました 今更~