呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

37 / 54

都合により長めになったかも
ちょっと日付で混乱したけど…丸く…収まっ……たか……?



嵐の後

 

 

「あ、あんたたち!やっと栄誉騎士の凱旋だね!」

「おう!コイツと一緒に、トワリンとじゃれ合ってきたぜ!」

 トワリンの件が片付いたあと。トワリンと別れてモンド城に向かったら、橋の手前で久しぶりのアンバーと出会った。…けれど…

 

「アンバー、久しぶり…けど、取り込み中だった?」

「まあ、そんな感じかな。今は後片付けをしてるんだ」

「後片付け?」

 …モンド城に続く橋の手前には、たくさんのバリケード――ヒルチャールの巣でよく見たような――が並んでいた。

 アンバーによると……なんでもジンさんが不在の間に、魔物たちが総攻撃を仕掛けてきたらしい。以前から魔物たちの動向を探っていたこともあって、橋の手前で食い止めることができたけれど……本来魔物たちにそこまでの指揮能力はないはずだから、アビス教団が裏で糸を引いてたんじゃないか、とのこと。

 

「今後は偵察騎士として、アビス教団にも注意しなくちゃ!…あ、ごめんね?せっかく帰ってきたのに、またこんな話しちゃって」

「ううん、全然。むしろ教えてくれてありがとう」

「どういたしまして!…ところで蛍、その、日依は?大丈夫?」

 アンバーが、心配そうに私の後ろを見る。ぐっすり眠ってる日依は、とりあえず私が背負うことにした。…思ってたより軽くて、私もちょっと心配になる。

 

「あぁ…大丈夫。疲れて寝ちゃってるだけだよ。いちおうこのあと西風(セピュロス)教会まで行くつもりだけど」

「ひょっとして、またご飯抜いたりしたの?」

「してたかもな…オイラたちも、ずっと見張ってるわけにはいかないし」

「あはは…あ、そうだ!『ニンジンとお肉のハニーソテー』をご馳走する約束してたよね!今まで龍災のせいで行けてなかったし、今回の勝利をお祝いして、あたしが奢ってあげる!」

「やったあ!アンバーは忘れてても、オイラは忘れてなかったけどな!」

 …そういえば、確かにそんな話してたかも。アンバーはご飯で思い出したらしい。食い意地パイモンは飛び上がって喜んでる…ご飯のことになるとちゃっかりしてるよね…。

 

「えへへ♪︎私も、『ニンジンとお肉のハニーソテー』はしばらく食べてないからさ!…でも、日依はどうしよう?」

「こんなだし怒ったりしないと思うけど…ひとつ持ち帰りにしとく?」

「OK!『鹿狩り』で待ってて!ここの片付けが終わったらすぐ行くから!」

「私も手伝うよ、日依を預けたら戻ってくるね!」

 

 

 

 

 

 まだまだ忙しそうなアンバーに見送られてモンド城に戻って、『鹿狩り』に向かう道すがら……何人かの人と話した。龍災は終結し、モンドは安息を取り戻した。中には出遅れたことを悔やむ人*1がいたり、交易ルートの回復を喜ぶ人*2がいたり。…教会のシスターは、風魔龍が東風の龍・トワリンだったことに少なからずショックを受けているようだった。それでも、これからを見据える瞳は希望に満ちていたけれど。

 そうしてたどり着いた、こっちもなんだかんだ久々の『鹿狩り』で――

 

「つれないな。『親友』の俺を無視する気か?」

「うおっ!?」

「…久しぶりだね、『親友』のガイア」

「ほう?俺の熱い気持ちに応えてくれるとは。どうやら、俺の誠実さが伝わったようだ」

 …カウンターで隣り合わせたのはガイアだった。相変わらず、何を考えてるかよくわからない笑顔で……だいぶいろいろとツッコミを入れたくなるけど、無意味そうなのでやめておく。

 

「しかしモンドの新たな英雄が目の前にいると思うと、騎士として心が震え立つもんがあるなぁ」

「ガイア…また適当に褒めてるよな…?」

「はは。俺が言ったことは本心だぜ?」

「ガイアは、ここで何してるの?」

「少々頭の中を整理したくてな。静かな場所を探してたんだ」

「他の騎士は後片付けしてるっていうのに…?」

「考えるっていうのも大変な仕事だ。むしろ戦場の片付けのほうが楽だと思うぜ?」

「その考え事って?」

「そうだな、ちょっと移動しようか……アビス教団のことだ」

 カウンター前から横にはけて歩き出したガイア…その口から出たのは、さっきアンバーからも聞いた名前。…どうやら、ジト目で聞いている場合じゃないらしい。

 

「龍災でジンがモンドにいなかった間…アビス教団にとっては絶好のチャンスだった。もしお前がアビス教団の者だったら、こんな好機にヒルチャールだけ送り込むか?」

「確かに…そう考えると、ヒルチャールだけなのはおかしい…」

「だろう?だから真相を見極めるため、俺は待つことにしたんだ…奴らの次の行動をな。そうして、お前たちが風龍廃墟で激しい戦いを繰り広げている間、モンドの城門でヒルチャールの叫び声を聞いた。…()()に不審者がいたんだよ」

「えっ!?」

「モンドの城内にか!?」

「ああ。他の騎士が外で戦っていれば、城内の守りは手薄になるだろ?だから城内に残った俺は、アビスの侵入者と…ちょっとばかしやり合ってな。あの手この手で情報を聞かせてもらった」

「情報…」

 まさか、私たちが出払ってる間にそんなことが起きてたなんて……()()()()()()って何だろうな……でもちょっと言い(よど)んだのが引っ掛かるし、聞かないでおこう…。

 それよりも、重要なのは()()のほう。ガイアは…特にもったいぶったりすることもなく、口を開いた。

 

「なんでも…アビス教団を、裏で統治する者がいるそうだ」

「アビス教団を…統治?」

「ああ。トワリンを戦いのための道具とさせたのもそいつの仕業だ。アビスの魔物たちには『王子様』と呼ばれているらしい」

「『王子』…」

 

 

「ま、情報共有はここまでにしておこう。アンバーがこっちに向かってきてる」

「え?あ、ほんとだ」

 ガイアの視線が私たちの後ろに向いていて。振り返れば、こっちに全速力で走ってくる影…あ、アンバー速っ!?

「一緒に戦わなかったことを怒ってるんだろうなぁ。じゃ、お先に失礼するぜ。連れの黒いほうにもよろしく言っておいてくれよ」

 ガイアはそれだけ言い残すと、颯爽とどこかへ走っていって――少ししてアンバーが私たちの横を駆け抜けていったけど、曲がり角で見失ったらしい。頬を膨らませて戻ってきた。

 

「もう!逃げられた!やっぱり後ろめたいんだ!」

「あはは…ガイアも色々と頑張ってたみたいだけど?」

「そうなの?…あの話術に騙されたんじゃない?」

 …さっき私がガイアに向けてたようなジト目を、今度は私が向けられてる。…ガイアには悪いけど、信用なさすぎて笑っちゃうな…。

「まああの人のことは置いといて!もうくたくた、お腹もぺっこぺこだよ。先に注文させてもらうね!…サラさーん!『ニンジンとお肉のハニーソテー』ちょうだーい!」

 

 

 

「龍災は落ち着いたけど、あんたたちはこれからどうするの?」

 ひとつ持ち帰りで包んでもらったのを仕舞ったあと、テーブルについたところで、アンバーからそんな質問。私はパイモンと顔を見合わせた。

 …これから、か。とりあえず決まっていて、パイモンとも共有してることはひとつある。

 

「たぶんモンドを離れて、七国を旅しながら、蛍の家族の手がかりを探すかな!」

「私とパイモンは、ずっとそうやって旅してきたからね」

「そっかぁ…じゃあ、しばらく会えなくなるんだね」

「うん…私も、騎士団のみんなと離れると思うと寂しくなるよ」

「大丈夫!どこだろうと風が届く場所なら、あんたは西風騎士団の戦友で、栄誉騎士だから!」

「ん…風の導くままに、だね」

「うん!モンドはいつでも歓迎するよ!…じゃ、冷めちゃう前に食べよっか!」

 …湿っぽくなるのはよくない。旅は出会いと別れの連続だけど、会いに行こうと思えば割といつでも行けるもの。それよりも今は、目の前で湯気をたてるつややかなハニーソテーにナイフを入れることから始めよう。

 そうして、3人(2人と1匹?)でのランチタイムは、あっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

 

「美味しかった~!甘くてジューシーで…さすがアンバーがオススメするだけあって、期待通りだったな!」

「でしょ~?料理の腕にはあまり自信ないけど、舌には自信あるからね!」

「ありがと、アンバー。忘れられない思い出が増えたよ」

「どういたしまして!日依の感想も聞きたいけど、これはまた今度かな」

「今は大聖堂で寝てるだろうし…そろそろ起きてるかもだけど」

「あ、そうだ!伝え忘れちゃうとこだった!蛍、ジンさんが大聖堂に来てほしいって!『天空のライアー』のことみたい。そろそろ行ったほうがいいかも…」

「そう?わかった。じゃあね、アンバー!」

「うん!また!」

 

 

 


 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁ!!『天空のライアー』がぁぁぁ!!?バ、バルバトス様、このバーバラが一生かけて素材を……しても足りないわよぉ!!」

 …ええと…順を追って説明。西風大聖堂に着いたらジンさんとウェンティと、西風教会の祈祷牧師バーバラ*3が待っていて、『天空のライアー』を返還することになったんだけど…

 …アビスの魔術師の攻撃で、『天空のライアー』は5分の1くらいが欠けてしまっていて…こういうパーツってなんて言うんだろう。とりあえず、弦も2本くらい切れてしまっているような状態で。…バーバラは私たちの前で、ショックのあまり膝をついてしまった。

 

「…いいや。蛍、ボクに貸して?」

 座り込んだままさめざめと泣くバーバラをよそに、私はウェンティにライアーを手渡す。…実はここにいるんだよね、そのバルバトス様…。

 ウェンティは受け取った手元に、ライアーを浮かばせて――

 

 

「わ…」

「…お、おぉ~!」

 風元素の奔流が、ライアーを包み込んだ――かと思うと、ふたたび現れた天空のライアーは、すっかり元通り。パイモンの声で顔を上げたバーバラが、勢いよく立ち上がった。

 

「ふぇ?どうして…『天空のライアー』が!?」

「お、オイラにも見せてくれ「だめだめ!どう直したか知らないけど、『天空のライアー』はもう貸せないわ!」

 …バーバラはライアーをぎゅっと抱きしめて、奥に引っ込んでいった。貸し出し出禁かぁ……まあ、今回みたいに私たちが持ち出して弾かなきゃいけない機会はたぶんないだろうけど…。

 

「凄いな、ウェンティ殿…」

「…よし。じゃ、逃げよっか!」

「え、逃げ…ウェンティ?それってどういう…」

「ボクが『天空のライアー』を修復する幻じゅt…いや魔法は、100%完全無欠じゃないからね☆」

「え゛」

「ぎ…吟遊野郎~~~!!」

 絶叫したパイモンと一緒に…ほんっっとにこの人は!なんて私もあきれながら、脱兎のごとく駆け出していくウェンティさんを追いかけて――

 

 

 

「…っっ!?」

 ――閉じていく扉を押し開いたら、そこには………走っていこうとするウェンティさんに、背後から飛びかかる何者かの姿があった。

 

 

 

 

 

*1
サイリュス

*2
ニムロド。輸入されるお酒の心配をしていた

*3
大聖堂に来たとき何度か見たことがあるし、日依を預けたときも対応してくれてた子。同性の私から見てもかわいい





・蛍
序章エピローグな原作主人公
追加された日依搬送任務もしっかりこなした

・日依
今回はおやすみ(物理)

・アンバー
フッ軽偵察騎士。さすがの子兎座

・ガイア
結局この人が一番難しい けど何やらクラブのスートの副寮長が脳裏をよぎるな…

・ウェンティ
自由の国の自由な吟遊野郎 風元素はカンスト

・ジン
冗長になったかと思って端折ったらほぼ空気になってしまった すまない…

・バーバラ
初登場なモンドのアイドル
なんだけど冗長になったかと思って端折ったらこうなった かわいそう


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。