呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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忘れる前に動かしときますね…



訪仙

 

 …日の暮れゆく璃月港の街を脱け出して*1、っていうかワープ使った方がいいのでは…?ってことに遅れて気づいて*2、今。

 璃月港に向かう途中に立ち寄った七天神像から、通ってきた道を横切る形で西に向かって…道中で宝盗団や以前迂回したモンスター*3と戦闘になったりしつつ、"漉華の池"という水場を渡渉した辺りで、遠目に見えてきた。

 

「…"石林"って、聞き慣れない言葉だったけど…これは確かに"石の林"だわ…」

 そこは、ごつごつした灰色の石柱が立ち並ぶ独特な風景。どうやらこの辺りが今回の目的地、『絶雲の間』であるらしい。

 

 

 

 窮地を救ってもらったファデュイの執行官『公子』いわく、"璃月を治める『七星』たちは、今回の岩神の死に関して何かを隠そうとしているようだ"とのことで……悲しいかな容疑者として追われることになった私たちにとっての最善は、この仙境に住まう仙人たちに七星の使者よりも早く接触し、事情を話して味方についてもらうことだという。

 いろいろと気になることはある*4けど、"七星の使者よりも早く"ということで、『公子』との会話を切り上げてすぐ行動に出たわけだ。夜も愈々(いよいよ)迫る頃だけれど空は晴れ渡っていて、空気も澄んでるから星も明るいと思う*5

 

「…とはいってもさ、もうちょっと正規ルートとかあったんじゃないの…?」

「あったと思うよ?思うけどさ、()()見つけちゃったら行きたいじゃん!」

 風の翼を駆って、いよいよ石林へと踏み込んだ私たちは―――現在、その岩肌を()じ登っている。窪みに手を掛け、足を掛け………考えてみればいつの間にか、この動作も驚くほど自然にできるようになっていた。運動神経に自信があるとはいえ、こんなにスムーズに垂直の壁を登っていけるほどではなかったと思う。それもこんな夜に、湿った岩肌をだ…まさか、こんなところにも死線を*6越えた影響が…?

 ためしに振り向いてみれば、常人ならば気が遠くなってしまいそうな高度……なんだけど、『絶雲の間』は山間部特有の霧が深い地域であるらしく、ここからは雲のように見えるそれらで地上はもう見えなかった。まあどのみち、私たちはもはや常人とは言えないので…。

 それはさておき。蛍の言う"アレ"というのは、遠目に見えた七天神像のこと。蛍の持ってる地図はどういうわけか、七天神像に触れるたびに見られる範囲が広がっていくそうで、"漉華の池"あたりからしばらく未踏の地を開拓してる気分だったんだとか。それにしては方角に迷う素振りもなかったけど、そうだったのか……私はなんか見れてることは言わないでおこう。私のは半径数百メートル圏内が勝手に開いていってる感じがある。鳥瞰図なもので、高低差とかはいまいち分かりにくいけど。

 

「うおお…絶景だなぁ…」

「本物の雲海とか、見るのいつぶりだろうな…」

 そうして、頂上まで上り詰めたら―――そこには、おおよそ見たことのない絶景が広がっていた。…生育限界、っていうんだっけ?それを超えているのか、頂上には視界を遮るものは何もなく、全方位を見渡せる。

 視程を悪くしていた霧は雲海になって、石林の根元を覆い尽くしている。西日が目に刺さって顔を背けたら、東からはもう星空が拡がり始めているのがわかって――ほぅ、と嘆息が漏れた。圧倒的すぎて言葉が出ない。飛んでるのにヘトヘトそうだったパイモンにツッコミを入れる気も失せた*7

 

「この距離と高さなら行けるね…ぃよっし!」

「うえっ、もう行くのか!?」

「ほんと元気だよね蛍って!…あっちは木が繁ってるんだ」

 そして、そんな頂上にぽつねんと立っていた翼を広げた鶴の像…を観察してたら、蛍がさっさと風の翼を広げて行ってしまった。さすがのスタミナ青天井……思い返せば私、蛍がバテてヘトヘトなところはまだ見たことない気がするな…。

 いやまあそれはいいや、急いで追いかけよう。お目当ての七天神像は、ここからちょっと下に位置する浮き島(物理)の上にある。(物理)…本当に、島が中空に浮かんでいる。……でも、この程度じゃあんまり驚かなくなってきたな……それこそ、空から落ちてきた黒っぽい龍の亡骸とかに比べたらな………

 

「おぉ…すごいなぁ……」

 さっそく地図を広げて見てる蛍をよそに、ぐるりと見渡してみる。さっきよりは低い場所とはいえ、空中の足場だからか解放感が増してる気がする。その割には、ぐらつきとか浮遊感とかもなくて安定してるけど。ここの草木は植えてあるのか、はたまた胞子が届いたのか…まいっか。

 …なんの気なしに見上げたら、なんかもっとずっと上のほうにも浮き島(物理)があるらしい。嘘でしょ………

 

「とりあえず降りようか…ここにいても何にもならないし」

「うぅん…まあ、確かに。七天神像はあるけど、静かだよね…」

「あくまで神像(これ)のための場所なんじゃない?ここは。仙境とはいえ、さすがにちゃんとした道のほうが会えると思うよ」

 とりあえず七天神像に触れてワープポイントとしての解放は済ませておいて、一旦降りることにする。ここから飛び移れる場所は若干遠くの岩肌しかないし。…浮き島、下がぼんやり緑色に光ってる。なんか特殊な石とかなのかな?ラ○ュタの飛行石みたいな……

 

 

 

『…何者だ?なぜ勝手に『絶雲の間』に入った

 そうして、下に降りたら……背筋が伸びるような、(おごそ)かな声に話しかけられた。

 振り向けば、そこには………鹿?でも、角と耳が明らかに大きいし、角と目が光ってる。蛍が出した、岩元素の塊みたいに……

 

「っ…ひとまず、これを見て!」

『…『禁忌滅却の札』。これは久しぶりに見たな。俗世の人の手にまだ残っておったか…我は三眼五顕仙人、削月築陽真君だ。旅人よ、なぜこの地を訪れた

 …律儀に背筋を伸ばしてしまった傍らで、蛍が『公子』から渡された札を出して見せた。そういえばそんな話だったわ……その札を(あらた)めた鹿*8は、なにごとか懐かしそうにつぶやくと、みずから仙人と名乗った。サクゲツチクヨウ…なんか字面がわかる古文書とかないですか…?

 それにしても、仙人…あの会場で聞いたけど、本当に獣の姿なのか……それって、どちらかと言えば仙獣っていうんじゃないか……なんて。気にはなったけど、でも今はいいや。考えてみればそもそも、名前が横文字なモンドで何の問題もなく会話ができてたところからおかしいわけで……よくわからないけどほんやくコンニャク的なものの、些細な不具合とでも思っておくことにする。苦情を入れるほどでもないくらいの。

 そんなことは今本当にどうでもいい。仙人の厳かな問いかけに対し、少し目配せし合ったあと…パイモンが「実は…」と話し始めたところで――

 

「っ!!」

 ――不意に肌を刺す感覚に、私は振り向いた。視線の先、茂みの向こうに複数の人影。「いたぞ!奴らだ!」という声も聞こえてきた。ここから見えるのは5、6人くらい…でも、たぶん後ろにもっといる。あの伝統衣装を取り入れたような鎧は、玉京台の事件現場でも見た――璃月の治安組織たる『千岩軍』だ。

 遥々(はるばる)こんなところまでもやって来たらしいけど……なにやら、これ以上は立ち入れないとか、仕方ないとかなんとか、ざわざわと話してるのが聞こえる。

 

騒々しい…彼らを送り返せ。だが、殺生をしてはならぬ

「…それなら、任せて。私が行く」

 …この御仁の姿が、あちらには見えているのかいないのか。ともかく、目の前の仙人はご機嫌斜めのようだ。

 それでいて、殺生をするなというなら…私が出るほうがきっといい。モンドでも言ったけど、華々しい表舞台は蛍に任せたいので。純白だし美少女だし。私はその後ろに、背中合わせに立ってるくらいでいい。地味だしもともと日陰者だもの。

 それになんといっても、私の獲物は鋒を失くした*9ただの棒だから。呪詛師相手ならたまにあった、舐めてかかってくれるくらいがちょうどいい…そう、相手は呪詛師。そして生け捕り前提……そんな心持ちで行かせてもらおう。

 

 

 

 

 

*1
風の翼…ごめんよこんなことばっかで…

*2
やっぱり非常事態で冷静じゃなかった

*3
ヴィ…なんだっけ?パイモンがなんとか言ってたけど名前が覚えられない…なんかポ○モンにいそうな見た目の、固くてすばしっこい厄介者だった

*4
例:銀行が治安当局の捜査を遅らせてるって何…?

*5
帝君が落ちてきたあの黒雲はあの場限りのものだったんだろうか…だったんだろうな…

*6
死側に、ついでに世界線も一緒に

*7
言っても今さらか

*8
なんか謎の文章になってしまったけど事実

*9
本人が折ry





うそ…"迎仙"から"驚き"までの距離、遠すぎ…!? 山越えて直行してるつもりが普通に璃沙郊を経由してしまう旅人が多い模様 ガチの仙境は伊達じゃねェ
そして七天神像から飛び降りて真君の前にヒーロー着地決める旅人も……いやでもこれは仕方ないか マップ解放したいもんね仕方ないね もはやそういう動線といっても過言ではない なので作中も同じルートです

・日依
考えごとが多い呪術師 せっかく賑やかな街へやって来たのにまた大自然にとんぼ返りすることになってちょっと残念だったり
お前も顔はいい方だぞ
足痛めてたのはしれっと無言で治している

・蛍
選択肢のままだと不遜すぎたりしてそのへんの調節が大変
元気すぎる なんか出自が特殊っぽいし(ゲーム的なことを抜きにしても)マジで不眠不休で動けるのかもしれん

・パイモン
今回ほぼ空気 ごめん

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