書きためを溜めに溜めたいタイプ過ぎて更新を忘れそうになる
「色々とまさかだったな…」
「わかる…」
「オイラひさびさにヒヤッとしたぞ…本当に、琥珀から出られなくなっちまうかと…」
山の上のワープポイントをめざとく見つけた蛍の寄り道は、まあ省略するとして……あの空中足場の七天神像にワープする形で琥牢山をあとにした私たちは、神像のお膝元で一息ついていた。
気づけばすっかり夜だな……昂奮状態にあるのかまったく眠くないし、なんだか思ってる以上に夜目が利くようになってるみたいで、まったく気にはならなかったけど。
「でも…堅牢な仕組みだったはずだよね?すばしっこい猪まで捕らえてたんだし。私たちが何事もなく来られたのって…」
「…この札のおかげ、なのかなぁ」
蛍が(例のごとくどこからともなく)取り出した『禁忌滅却の札』。私たちに危害を加えないもの、とかなんとか言ってたけど…あれは三眼五剣仙人*1が、という話だったと思う。ついでみたいな効果があったんだろうか……謎だな。まあ考えても仕方ないか。ありがたいとは思っておこう。
「あとはもう一人…留雲借風真君、だったかな」
「そうだね。雲と風…蛍の地図で見れるかな」
気を取り直して、仙人行脚再開としよう。…蛍の地図のほうが広い時間も、そろそろ終わりだと嬉しい。
「…さて。また山登りか」
はい、というわけで…七天神像から(推定)北に向かってやって参りました、こちらは
なお、隣の蛍は「新しいワープポイントが上にあるっぽい?」とか言って、垂直の壁を登る気満々です。元気が有り余ってていいね。
「まあ…あまり目ぽしいものはここじゃ見当たらないし、一度登ってみるのもありか」
「下りるときは頼れる風の翼があるからね!モンド様々だよほんと」
…ここでただ漫然と絶壁を見上げていても仕方がない。何かがあるのを期待して、私たちは岩壁に手を掛けた。
……そして。果たして、何かはあった。
「こんな感じになってたんだ、奥蔵山…」
「…あぁいや、そっか。さっきの琥牢山も名前の通りだったな…」
「名前?どういうことだ?」
「
岩壁の頂上まで登りつめた私たちを待ち受けていたのは、最初の峰でも見かけた鶴の像と…奥蔵山の真実だった。
…こんな高所に、こんな大きな池があるのか。それを中心にした…きちんと設計された庭園みたいだ。壁になるものが少ないあたり、たぶん借景とかも計算してる感じのやつだ。
「…とりあえず、下りてみよっか」
「賛成。たぶん、何かあるならあっちだと思うし」
ひとまず、庭園のような場所へ下り立ってみることにする。…この鶴の像は、何か関係あるのかな……ないといいな。向こうまで戻るの面倒だしな…。
降り立ってみれば…暗いからいまいちだけど、たぶんかなり澄んだ池のよう。魚とかの気配はあんまりないけれど、高所だから仕方ない気もする。
「…ん?あそこに何かあるぞ?」
パイモンがそう言って指差したのは、池の中ほどにある島。円い飛び石で渡れるようになっているらしいそこに、石のテーブルと椅子が据えられている。公園にある四阿のよう…だけれど、最初の山*2で見たそれとは仕様が違うし、あるべき屋根もない。…第一、この立地が公園のそれじゃない、っていうのもある。
「しかも、食器とか壺とか置いてあるぞ…」
「置き去り…って感じでもない。未使用品っぽいね」
「これ…で、何かする必要がある?のかな…」
…仙境真っ只中に、食器が並ぶテーブル。状況だけが呈示されていて謎解きみたいだ。とはいえ…何か、もっと情報がないと……
「お、この椅子に字が刻んであるぞ?…"此処に留雲が居る"」
「りゅううん…借風真君?」
「こっちも書いてある。"此処に…帰終?が座る…?」
「それと…"此処を帝君が借りた"。帝君って、岩王帝君のことか?」
「…座席表、みたいなことかな…
「帰終…オイラも知らない名前だなぁ」
…情報あったわ……なんか、言い伝えを刻んでる碑的なものなのかな?いやでも、ここ奥蔵山に"留雲"がいるというなら、あるいは本物なのか……ここの仙人は、椅子に座れるような姿なのかな。あるいは人の姿に化けられるのか……閑話休題。
「けど、なるほどな!つまりここは、『留雲借風真君』が他の仙人と一緒に食事をする場所なんだ!もしそうなら…仙人の好物を作れば、あの『留雲借風真君』の気を引けるかもしれないぞ!」
「おぉ…なるほど、たしかに…?」
「そういうアプローチがあるのか…パイモンじゃなきゃ出せないやつだな」
「けど…仙人って、どんな料理が好きなんだろうな…?」
…食べ物で釣る、とは。なんともパイモンらしい平和的アプローチ。さすが、とは思ったものの……具体的に何を用意すればいいのかは、当のパイモンも見当がつかないらしい。料理…パッと思い浮かぶのは精進料理だけどここ、だいぶ文化が違いそうだよなぁ。あとは…仙人といえば桃、とか…?
「うーん…とりあえず、周りを見てみようよ。もしかしたら前に来た人が、何か残してるかも」
「そうだな!そうしよう!」
ひとまず、そういうことになった。探り探りやっていくしかないとはいえ、さすがに行き当たりばったりすぎて不安になってきた。…とりあえず、探し物ならもっと明るいうちにしたいな、と思わずにはいられない。言わないけど。
「…これで、集まった…ってことかな?」
「案外なんとかなるもんだね…さすがファンタジー、ってとこか…」
「?」
「なんでもない。それで、」
…結論、なんとかなった。というか、なんともわかりやすい痕跡の数々があった――焚き火の跡と、置き去りの食材、そしてレシピのメモ。
"松茸の肉巻き"*3、"真珠翡翠白玉湯*4"…1ヶ所はレシピの扱いが雑で読み取れなかったけど、食材からしておそらく"モラミート*5"……やっぱり精進とか関係なかったか。まあでもそうだよな、お供え物される側だしな…。
あくまで今この場で得られるヒントだけで揃えた情報だから、確実かはわからない…本当に行き当たりばったりもいいところだな、と思うけれど、とにかく。「わかったし食材も揃ったなら、あとは作るだけだね!」というわけで、料理の時間が始まった。
…そういえば、夕食時…は、ちょっと過ぎてるかも。そう思ったらお腹がきゅるる、と鳴った。都合いいな私の体……倒れなくて済んだからよしとしておこう。今回は珍しくパイモンも夢中だったし。
で、お供え物になる3品はやる気満々の蛍が担当なんだけど……蛍は本当に料理の手際がいい。ほとんど一瞬と言っていいほど鮮やかな手際……料理ってここまであっという間にできるっけ。いや…深く考えたら負けか…。
「…よし!これで完成!」
「おぉ~!すげぇ、めちゃくちゃウマそうだ~!」
ともあれ、レシピ通りの3品が出揃った。彩り豊かなお吸い物に、肉汁が溢れ出る焼き餅と…松茸の肉巻きは、ほんとに名前の通りでしかない。心なしか輝いているようにも見える*7……私も、主に匂いでやられそうだ。ただでさえ絶食状態だったし。
「はいはい、私たちはこっちね」
「お、おう!もちろんわかってるぞ!…ってこれ、松茸も刺さってないか!?」
「ちょっと採りすぎちゃった感じあるし、いいかなって思ってね。日依に渡したんだ」
まあ、あっちの3品はあくまで供え物。私たちは別…なわけだけど、蛍の提案で串焼きはアレンジレシピになった。私たちも精をつけておこうという意味も込めて。いい食材を焦がしてしまいたくないのでかなり気を
腹
「…真ん中に寄せとくのが無難…かな。椅子の並びとは互い違いにして」
「あぁ…まあ、確かに?そうしとこうか…――っ、」
…もしかしたら反対側になってしまうかもしれないけど、確率としては……どう計算するんだっけ。いいや、そんな話してる場合じゃなくなったし。
ふと――空気が変わるのを感じた。敵意とかそういうんじゃない。純粋に、空気が切り替わる…否。何かさっきまでと違う空気がどこからか、
「…あっちか…?」
「あそこ…ねえパイモン、たしかあそこって閉ざされてたよね?」
「そう、だったな…開いたのか?」
私にはわからなかったけど、蛍とパイモンには景色の違いがわかっていた。レシピ集めで一度別行動になったとき、通りすがりに少し気にしていたらしい。
ともあれ、供え物をしたら道が開けた、というわけで。行ってみると…石段の先は深い切通しのようになっていて、その先には……これまで何度か見覚えのある、三つ菱紋様の扉。
「これは…秘境の入り口、か…」
「さっきまでは仙人のほうから出てきたけど、ここの仙人は…」
「…待ってる、のかな。この向こうで」
…確かにパイモンの言う通り、ここまでは仙人のほうから出てきていた。それが今回は、いまだ姿も声もわからない……これまでとは流れがまったく違う。気を引き締めて行かないと…。
「ふぅ…よし。それじゃ、入ってみよう」
「うん!」
そうして私たちは――微かに光り輝く扉を、慎重に押し開いた。
・日依
体内時計が狂うのには慣れてる呪術師
あんまり凝った品は作れない程度の腕前
・蛍
戦闘以外でも本領発揮する旅人 完璧調理が上手い方が後ろに…いやなんでもない
・パイモン
リアクション&食い意地担当みたいな感じに いや食い意地もリアクションか…
完全な余談: