呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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書きためを溜めに溜めたいタイプ過ぎて更新を忘れそうになる



訪仙 - 肆 -

 

「色々とまさかだったな…」

「わかる…」

「オイラひさびさにヒヤッとしたぞ…本当に、琥珀から出られなくなっちまうかと…」

 山の上のワープポイントをめざとく見つけた蛍の寄り道は、まあ省略するとして……あの空中足場の七天神像にワープする形で琥牢山をあとにした私たちは、神像のお膝元で一息ついていた。

 気づけばすっかり夜だな……昂奮状態にあるのかまったく眠くないし、なんだか思ってる以上に夜目が利くようになってるみたいで、まったく気にはならなかったけど。

 

「でも…堅牢な仕組みだったはずだよね?すばしっこい猪まで捕らえてたんだし。私たちが何事もなく来られたのって…」

「…この札のおかげ、なのかなぁ」

 蛍が(例のごとくどこからともなく)取り出した『禁忌滅却の札』。私たちに危害を加えないもの、とかなんとか言ってたけど…あれは三眼五剣仙人*1が、という話だったと思う。ついでみたいな効果があったんだろうか……謎だな。まあ考えても仕方ないか。ありがたいとは思っておこう。

「あとはもう一人…留雲借風真君、だったかな」

「そうだね。雲と風…蛍の地図で見れるかな」

 気を取り直して、仙人行脚再開としよう。…蛍の地図のほうが広い時間も、そろそろ終わりだと嬉しい。

 

 

 

 

 

「…さて。また山登りか」

 はい、というわけで…七天神像から(推定)北に向かってやって参りました、こちらは奥蔵山(おくぞうさん)というそうです。琥牢山よろしく垂直に(そび)え立っているけれど、あの琥珀みたいな目立つものは見当たらない…ごく普通の峻険な山。峻険な山がごく普通か否かはさておき。

 なお、隣の蛍は「新しいワープポイントが上にあるっぽい?」とか言って、垂直の壁を登る気満々です。元気が有り余ってていいね。

「まあ…あまり目ぽしいものはここじゃ見当たらないし、一度登ってみるのもありか」

「下りるときは頼れる風の翼があるからね!モンド様々だよほんと」

 …ここでただ漫然と絶壁を見上げていても仕方がない。何かがあるのを期待して、私たちは岩壁に手を掛けた。

 

 

 

 ……そして。果たして、何かはあった。

「こんな感じになってたんだ、奥蔵山…」

「…あぁいや、そっか。さっきの琥牢山も名前の通りだったな…」

「名前?どういうことだ?」

()()()()()()のが琥牢山でしょ?こっちもそうだよ…見かけよりも()()、全部()()()()()んだ」

 岩壁の頂上まで登りつめた私たちを待ち受けていたのは、最初の峰でも見かけた鶴の像と…奥蔵山の真実だった。

 …こんな高所に、こんな大きな池があるのか。それを中心にした…きちんと設計された庭園みたいだ。壁になるものが少ないあたり、たぶん借景とかも計算してる感じのやつだ。

 

「…とりあえず、下りてみよっか」

「賛成。たぶん、何かあるならあっちだと思うし」

 ひとまず、庭園のような場所へ下り立ってみることにする。…この鶴の像は、何か関係あるのかな……ないといいな。向こうまで戻るの面倒だしな…。

 

 

 

 降り立ってみれば…暗いからいまいちだけど、たぶんかなり澄んだ池のよう。魚とかの気配はあんまりないけれど、高所だから仕方ない気もする。

「…ん?あそこに何かあるぞ?」

 パイモンがそう言って指差したのは、池の中ほどにある島。円い飛び石で渡れるようになっているらしいそこに、石のテーブルと椅子が据えられている。公園にある四阿のよう…だけれど、最初の山*2で見たそれとは仕様が違うし、あるべき屋根もない。…第一、この立地が公園のそれじゃない、っていうのもある。

 

「しかも、食器とか壺とか置いてあるぞ…」

「置き去り…って感じでもない。未使用品っぽいね」

「これ…で、何かする必要がある?のかな…」

 …仙境真っ只中に、食器が並ぶテーブル。状況だけが呈示されていて謎解きみたいだ。とはいえ…何か、もっと情報がないと……

 

「お、この椅子に字が刻んであるぞ?…"此処に留雲が居る"」

「りゅううん…借風真君?」

「こっちも書いてある。"此処に…帰終?が座る…?」

「それと…"此処を帝君が借りた"。帝君って、岩王帝君のことか?」

「…座席表、みたいなことかな…(かつ)てあった何かの。知らないお方がいらっしゃるけど」

「帰終…オイラも知らない名前だなぁ」

 …情報あったわ……なんか、言い伝えを刻んでる碑的なものなのかな?いやでも、ここ奥蔵山に"留雲"がいるというなら、あるいは本物なのか……ここの仙人は、椅子に座れるような姿なのかな。あるいは人の姿に化けられるのか……閑話休題

 

「けど、なるほどな!つまりここは、『留雲借風真君』が他の仙人と一緒に食事をする場所なんだ!もしそうなら…仙人の好物を作れば、あの『留雲借風真君』の気を引けるかもしれないぞ!」

「おぉ…なるほど、たしかに…?」

「そういうアプローチがあるのか…パイモンじゃなきゃ出せないやつだな」

「けど…仙人って、どんな料理が好きなんだろうな…?」

 …食べ物で釣る、とは。なんともパイモンらしい平和的アプローチ。さすが、とは思ったものの……具体的に何を用意すればいいのかは、当のパイモンも見当がつかないらしい。料理…パッと思い浮かぶのは精進料理だけどここ、だいぶ文化が違いそうだよなぁ。あとは…仙人といえば桃、とか…?

 

「うーん…とりあえず、周りを見てみようよ。もしかしたら前に来た人が、何か残してるかも」

「そうだな!そうしよう!」

 ひとまず、そういうことになった。探り探りやっていくしかないとはいえ、さすがに行き当たりばったりすぎて不安になってきた。…とりあえず、探し物ならもっと明るいうちにしたいな、と思わずにはいられない。言わないけど。

 

 

 

 

 

「…これで、集まった…ってことかな?」

「案外なんとかなるもんだね…さすがファンタジー、ってとこか…

「?」

「なんでもない。それで、」

 …結論、なんとかなった。というか、なんともわかりやすい痕跡の数々があった――焚き火の跡と、置き去りの食材、そしてレシピのメモ。

 "松茸の肉巻き"*3、"真珠翡翠白玉湯*4"…1ヶ所はレシピの扱いが雑で読み取れなかったけど、食材からしておそらく"モラミート*5"……やっぱり精進とか関係なかったか。まあでもそうだよな、お供え物される側だしな…。

 あくまで今この場で得られるヒントだけで揃えた情報だから、確実かはわからない…本当に行き当たりばったりもいいところだな、と思うけれど、とにかく。「わかったし食材も揃ったなら、あとは作るだけだね!」というわけで、料理の時間が始まった。

 …そういえば、夕食時…は、ちょっと過ぎてるかも。そう思ったらお腹がきゅるる、と鳴った。都合いいな私の体……倒れなくて済んだからよしとしておこう。今回は珍しくパイモンも夢中だったし。

 

 (おき)()が残っていたところをありがたく借りて*6、一旦仕舞っていた食材を取り出していく。ついでに自分達の分として串焼きを用意するのは私の役目になった。だからちょっと待っててねパイモン。

 で、お供え物になる3品はやる気満々の蛍が担当なんだけど……蛍は本当に料理の手際がいい。ほとんど一瞬と言っていいほど鮮やかな手際……料理ってここまであっという間にできるっけ。いや…深く考えたら負けか…。

 

「…よし!これで完成!」

「おぉ~!すげぇ、めちゃくちゃウマそうだ~!」

 ともあれ、レシピ通りの3品が出揃った。彩り豊かなお吸い物に、肉汁が溢れ出る焼き餅と…松茸の肉巻きは、ほんとに名前の通りでしかない。心なしか輝いているようにも見える*7……私も、主に匂いでやられそうだ。ただでさえ絶食状態だったし。

「はいはい、私たちはこっちね」

「お、おう!もちろんわかってるぞ!…ってこれ、松茸も刺さってないか!?」

「ちょっと採りすぎちゃった感じあるし、いいかなって思ってね。日依に渡したんだ」

 

 まあ、あっちの3品はあくまで供え物。私たちは別…なわけだけど、蛍の提案で串焼きはアレンジレシピになった。私たちも精をつけておこうという意味も込めて。いい食材を焦がしてしまいたくないのでかなり気を(つか)った……"松茸採りすぎちゃった"ってなぁ。向こうだったらそれなりに大問題だと思うんだよな、それ…。

 

 

 

 

 

 腹(ごしら)えは手早く済ませて、池の中の島へ戻る。収納しておいた3品を取り出して……ここに来て、これどの席にどれを置くんだ?という疑問が湧いてきたけれど、こればっかりはわからない。どこにも書いてないし…古文書とか見たら書いてあったりするんだろうか……私たちにはわかりようもない。願わくばご自分達で何とかしていただきたい…。

「…真ん中に寄せとくのが無難…かな。椅子の並びとは互い違いにして」

「あぁ…まあ、確かに?そうしとこうか…――っ、」

 …もしかしたら反対側になってしまうかもしれないけど、確率としては……どう計算するんだっけ。いいや、そんな話してる場合じゃなくなったし。

 ふと――空気が変わるのを感じた。敵意とかそういうんじゃない。純粋に、空気が切り替わる…否。何かさっきまでと違う空気がどこからか、(あふ)れ出してきた……?

 

「…あっちか…?」

「あそこ…ねえパイモン、たしかあそこって閉ざされてたよね?」

「そう、だったな…開いたのか?」

 私にはわからなかったけど、蛍とパイモンには景色の違いがわかっていた。レシピ集めで一度別行動になったとき、通りすがりに少し気にしていたらしい。

 ともあれ、供え物をしたら道が開けた、というわけで。行ってみると…石段の先は深い切通しのようになっていて、その先には……これまで何度か見覚えのある、三つ菱紋様の扉。

 

「これは…秘境の入り口、か…」

「さっきまでは仙人のほうから出てきたけど、ここの仙人は…」

「…待ってる、のかな。この向こうで」

 …確かにパイモンの言う通り、ここまでは仙人のほうから出てきていた。それが今回は、いまだ姿も声もわからない……これまでとは流れがまったく違う。気を引き締めて行かないと…。

 

「ふぅ…よし。それじゃ、入ってみよう」

「うん!」

 そうして私たちは――微かに光り輝く扉を、慎重に押し開いた。

 

 

 

 

 

 

*1
惜しい

*2
慶雲頂

*3
名前のまま。松茸がけっこう普通にある璃月って…

*4
翡翠は蓮の実、白玉は豆腐。置き去りの豆腐とかさすがに怖すぎるけど…見た目も匂いも大丈夫そうだし、ありがたくいただいておく。大丈夫なうちに使いきってやれ

*5
こんな名前だけど、れっきとした璃月料理らしい

*6
山火事になってなくて何よりです。あと、電気で火が起こせないの正直けっこう辛いな…

*7
完璧調理





・日依
体内時計が狂うのには慣れてる呪術師
あんまり凝った品は作れない程度の腕前

・蛍
戦闘以外でも本領発揮する旅人 完璧調理が上手い方が後ろに…いやなんでもない
こういう(プレイヤーキャラの)主人公、逆に何ならできないの?になりがち

・パイモン
リアクション&食い意地担当みたいな感じに いや食い意地もリアクションか…


完全な余談:(オク)って訓読みじゃないんですか 慣用読みですか そうてすか


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