呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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うっかり更新忘れるとこでした
そしてしれっと数字(通し番号)に戻りました 字数で調整したらこうなったんだ…もう50話まで来てるのに話の分け方が下手ァ



訪仙 - 捌 -

 

「お化けだからって怖がらせるのはよくないぞ!ちゃんとわかってるのか!?」

 …動かなくなった遺跡守衛から抜け出してきたらしい真っ白な少女は、今度は逃げなかった。…こうして近くで見ると、真っ白で半透明なこと以外は生きてる人間そのものだな。私としてはファンタジー感が大きい。不本意ながら人外を見慣れているもので…。

 ともかく、ひとまず捕まえることには成功、なのだけれど……かなりマイペースな子のようで、楽しげに何やら歌っている……

 

「も~~~!話を聞けって!!」

『…分かった。冥ちゃん、もうお客さんたちをからかったりしないよ

 と思いきや、急に落ち着いて――うわぁ!急に落ち着くな!って感じ。言わなかったけど。パイモンも目を丸くして唖然としてた。驚かし方をよくわかってるなこの子…。

 

今度は、お姉さんたちが冥ちゃんと遊んでね?もし来てくれなかったら、冥ちゃんが探しにいくから!

 そんな感じで虚を突かれた私たちに、メイちゃんと名乗った少女霊は屈託のない笑顔でそう告げてきた。そして、あまりに一方的な宣言に驚いた私たちが何か言う前に――あっという間に、またどこかへ走り去っていってしまった。

 

「あっ…行っちゃった」

「自由な子だな……むしろ放縦のほうか…」

「ハッ…!お、オイラたちもしかして、またアイツに会うことになるのか…!?」

「縁ができちゃったね……まあとりあえず、目的は果たせたかな」

「そうだった!オイラたちの杏仁豆腐!」

「"護法夜叉"の、ね」

 …私たち、いつも一緒にいるわけでもないんだけど、その辺はわかってくれてるだろうか。そんなことが気になったりしたけれど蛇足。

 それよりも、当面の目的――『望舒旅館』の幽霊騒ぎの収束はこれで果たせたのだ。言笑さんも、これで気兼ねなく厨房に戻れるだろう……青い顔で震え上がっていたパイモンは、それに気づいたら一気に調子づいた。現金そうで何よりだよ…。

 

 

 

「…もう(たた)ったりしないと、お化けと約束した…!?」

「おう、そうだぞ!」

「なんとかなりましたよ」

「す…すごいじゃないか!この言笑、感服したぞ!」

 ことの顛末、それによって厨房のお化けはもう出ないこと。手短に伝えれば、言笑さんの顔色が明るくなった。ひとまずの任務完了、というわけで…ここまで晴れやかな任務完了、滅多に無かったからなんか新鮮かも。

 

「よし…少し時間をくれ。最高の杏仁豆腐を作ってやる!」

「やったぁ~!」

 ともあれ、あんなに小さく見えた言笑さんはもういない。意気揚々と厨房へ向かう背中を見送った。…パイモン、他人にお出しするものだからね。

「そうだ、私たち、他にも料理を用意しようって話だったよね?」

「そうだね!よし、気合い入れていこう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 …もろもろの準備を終えて戻ってきたテラスには、すでに"護法夜叉"…"魈様"とも呼ばれていたその姿があった。欄干の向こうを見つめていたけれど、すぐ私たちに気づいたよう。

 

「…またお前たちか」

「ま、待ってくれ!これを!」

「…これは」

「大好物って聞いた杏仁豆腐に、旅人の得意料理!異国情緒あふれるサラダだぞ!」

 蛍の手に現れた*1料理を、パイモンが流暢にご紹介。…こんなので本当にいけるんですかね、と不信感がぬぐえない私だったけど……魈様は意外にも素直に受けとると、無言のまま食べ始めた。ま、マジか…ほんとに有効なんだ、これ……うん。下手なことは言わないでおこう…。

 

「…ほら蛍、早く!食べるのに夢中になってるうちに、これまでのこと話しちまおう!」

 パイモンは蛍にそんなことを(ささや)いていた。なるほど、とりあえず鰾膠(にべ)もなく去られてしまうのを阻止して、話を聞いてもらうってわけか………

 ………いや、…本当に何なんだろう、この状況。さすがに力業すぎないか…?

 

 

 

「…岩王帝君に、そんなことがあったとは……我には想像もつかない。どれだけ時代が移り変わろうと、帝君のいない璃月など、想像したこともないからな」

 …話を聞いてなお去る、ということはさすがにできなかったようで、頭の片隅でホッとした。それだけ深刻な事態、という意味でもあるわけだけど……魈様は淡々としているようで、視線の合わない目には動揺が見えた。

 

「…人間界を管理する七星は、この事件の裏でどんな暗躍をしたのか」

「暗躍…」

 …割とここまでの道中で思うのは、人間と仙人との間に横たわる当然の隔たりと、仙人の人間への信用のなさだったりする。いったい何をやらかしまくってるんだ…と思うけど、()()()でも実際やらかしまくってるか…自然側から見れば。そういう話に近いように思える。

 

「…削月、理水、留雲の三人に会ってくる。彼らもそろそろ決断した頃だろう」

「そう…ですか」

「…どう、なるのかな、この先…仙人が、代わりに璃月を統治することになる?」

「仙人は、己に課された責任から逃れはしない。我には…俗世に染まれない事情があるが、責任は責任だ。我らの神は、"契約"の神だからな」

 蛍がだいぶ責めた質問をしたけれど、魈様はため息をひとつ。…この淡々としてて責任感が強い感じ、ディルックさんに近しいものを感じる。色々抱えてるっぽくて、底が知れない感じ。そうして彼はまた、話は終わったとばかりに背を向け――

 

「あっそうだ、待ってくれ!なあ、もうひとつ聞きたかったことがあるんだ!」

「…何だ?」

「この旅館にいた"冥ちゃん"って、何者なのか知らないか?」

「あぁ…妖魔退治の際、稀に悪意は持たないが成仏できない霊に遭遇することがある。彼女はここの『オーナー』と『支配人』に、世話をするよう頼んでおいたんだ」

「そ、そうだったのか…幽霊の面倒まで見るなんて、この旅館のサービス範囲広すぎだろ…!?」

 …不意に呼び止めたパイモンの疑問から、そんなまさかの事実が判明した。この魈様が、人から慕われるのも納得ないい仙人ってことも。…当人は、あっさりと去っていってしまったけれど。

 ともあれ、そんな形で私たちの仙人行脚は幕を下ろしたのだった。…さすがに疲れたな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しだけ仮眠をとって、まだ活気づいていない早朝のうちに璃月港へ戻ってきた。端末を開けば、『緋雲の丘』に黄色い点がひとつ………この色の点に、こういう感じで接触することってなかったんだよな…。まあ、ひとまず報告だけは済ませてしまおう、ってことで。

 

「やあ、おかえり旅人。『絶雲の間』はどうだったかな?」

「この時間から元気なヤツだな…」

「会ってきたよ。事件のことも伝えてきた。七星の使者より先にね」

 地図に従って『北国銀行』の門を叩けば、『公子』はそこにいた。内輪の話だから外で話すことになった(逆な気がする。けどまあ仕方ないか)けど…確かに、この早朝から元気だよな…ちょっと(うらや)ましい気もする。

 

「削月築陽真君、理水畳山真君、留雲借風真君、降魔大聖…ふむ。ファデュイでも把握していない名前がいくつかあったね。いいじゃないか。お礼に、君たちにいい情報を教えてあげよう」

「えっ、何…?」

 まあ、元気なのはいいこととして。私たちの仙人行脚の成果には満足いただけたらしい。人選については、最初に会った削月築陽真君(鹿の仙人)の差配だけれど、まあよかった。

 …ただ、こいつからの"いい情報"にはまだ身構えてしまう。隣の蛍も同様だった。

 

「ははは、そんな顔しなくても。神の死に対する璃月七星の反応が、実に興味深くてね…"真犯人が見つからない限り、『仙祖の亡骸』を目にすることは許さない"と公言したんだ」

「センソノナキガラ…それって、」

「岩神の亡骸は隠された、ってことだ。璃月の通説では岩王帝君も仙人だからね。岩神は契約の神であり、()()()()()()ともされている…そのうえ、七星は情報封鎖も進めているようだ。けどあの現場には多くの人がいたから、たとえ七星でも噂を止めることはできないだろう」

()()()()()()…誰も彼も、璃月のこととなるとすぐ動いたのって…」

「いかにも、そういうことさ。そしてすべての『三眼五顕仙人』は、過去に璃月を守る契約を結んでいるんだ。だから彼らには責任も資格もある――璃月を管理する七星に問題があれば、それを非難する資格がね」

 …ただでさえ仙人たちは人間不信気味だったというのに、璃月七星の怪しい動き。契約のもとに従い忠義を誓っている様子だった神の、その亡骸を隠されるという………なんか、「私たちが七星の使者より先回りしたことで、仙人たちと璃月港との溝が深まるんじゃないか」って不安に思ってたけど、七星のほうもしっかりやらかしてないか…?こんな形で罪悪感が軽くなるの厭だ……

 

「さて…岩神の魂が天に召されたとして、なぜその亡骸を七星は隠そうとする?どう考えても疑わしい」

「仙人たちとの間柄よりも優先すべきことがある…?対外的なイメージとか…でも、情報封鎖にも限界あるよな…」

「何がしたいんだろう……私にとっても、いい迷惑だよ」

「ハッ、そうだよ!オイラたちはあの神に会いに来たんだ!璃月七星が『仙祖の亡骸』を隠して誰も近づけさせないっていうなら、蛍の"七神を訪ねる"って目標が叶わなくなっちまう!」

「ん?"七神を訪ねる"?それはまたどうして?」

「そっちには関係ないよ」

「ふふっ…いい答えだね。いとも簡単にファデュイに騙されるような騎士では、いい騎士とは呼べない。そうだろう?」

 ……なんだこいつ、と声に出そうになったけど言いませんでした。言っても笑って済まされそうな気がするけど、それもなんか…癪なので。たぶんこいつ、他人から冷たくされるのには慣れてるんだろうけど、いよいよ自虐が過ぎる気がしてきたな……なるほど、"過ぎた自虐はかえって気に障る"っていうのは本当だったのか……閑話休題。

 

「でも、今回に限っては君を助けることができるよ」

「えっ、本当か?」

「ああ、けれど少し時間が欲しい…人探しをする時間がね。この行き詰まった状況を打破する人を見つけ出してみせよう。約束するよ」

「そう…ですか」

 …いまいち胡散臭さが抜けないけど、信用するしかないか。"信じてみなけりゃ始まらないし終わりもしない"ってやつだ。ただでさえ驚異的な早さで騒動に巻き込まれたおかげで、私たちは璃月について疎いわけだし…。

 そんな感じで、話は落ち着いたのだけれど……『公子』が妙に楽しそうなのがちょっと気になる。

 

「あぁ…はは、面白い。この布局の段階で平静を保っていられるほど、最終的に訪れる混乱は激しくなる。この目で決壊する暗流を見届けるためにも、俺と再会するまでどうか生きていてくれよ」

「まあ…そうですね。また」

 …()()()()()()、なんて無粋なことをまた聞くことになるとはな。こいつもこいつで、どうも訳アリらしい…。

 細められた目…その青い瞳の奥に宿る光に、なぜだか背筋の冷える思いがした。

 

 

 

 

 

*1
例の収納から出すのが器用





・日依
冷静で呆れ気味な呪術師 餌付けが有効すぎて口がДになるなど
"魈様"呼びはゴレットから感染(うつ)ってる たぶんそのうち蛍が「魈」と呼んだのを二度見する日が来る
ちらほら見え隠れする師匠、早いところちゃんと触れたいと思っていますが…

・蛍
わりと空気になってしまっている ゴメソ

・パイモン
リアクション担当は微笑ましいですね あと食い意地

・冥ちゃん
今後どこかでまた出そう あまりにも「うわぁ!いきなり落ち着くな!」で笑った

・魈
いい奴じゃんのお時間だった
それはそれとしてサラダと杏仁豆腐を立食しながら大事件の顛末を聞く光景がシュールすぎる
ディルックの旦那に近い感じ 脳を焼かれている旅人(プレイヤー)が比較的多い気がするところも含めて

・タルタリヤ
なんだこいつ…(困惑)


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