呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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大変お待たせ縞々 5月末に端末新調したんですがいきなりオーディオ方面で問題が起きてゴタゴタしてました なお未解決のままです セリフ3分の2聞き取れたらいい方な感じだけど頑張る()



鈴と壺

 

「「あ」」

 ばったり。冒険者協会への報告を済ませて階段を降りたら、すぐ近くの店から見慣れた姿が出てくるのが見えて…向こうもこっちを見て、目が合って、声も合った。その背後で一拍遅れてこっちを見たパイモンが、ぱあっと笑顔を咲かせるのが見えた。

 

「お?日依!今帰ってきたんだな!」

「うん、ただいま。ヒルチャールと、あと緊急受命の遺跡守衛もぶっ倒してきた。そっちは?」

「ばっちり!3つとも香膏にできたよ。おかえり日依」

「詳しい人が見つかって安心したな…」

 厳密に言えば、出くわした魔物や宝盗団を蹴散らしたり、ワープできる場所を増やしたりもしていたけれどまあ蛇足。(ふところ)はだいぶ温まったから良し。…まあ、それはそれとして『公子』に資金貰いに行くやつは必須だろうけど。そんな露骨に嫌そうな顔するんじゃないよ。気持ちはわかるけどさ。

 そんな蛍のほうも目的を達成できたよう…パイモンの複雑そうな顔が多少気にはなったけど、まあそんなわけなので。

 

「それじゃあ合流もできたし、早く七天神像に行こう!鍾離が待ってるぞ!」

「そうだね。七天神像…は、璃月港に下りてくる前のあそこでいいのかな?」

「まあ…ここから最寄りなのはあそこだろうし、難しいこと考えなきゃそうなんじゃない?ひとまず、行ってみてから考えよう」

 

 

 

 

 

「…あいつ、神像に向かってボーッとしてるな…ちょっと待たせすぎたか…?」

 さて。果たして鍾離さんの姿は、璃月港最寄りの七天神像の前にあった。ただ…神像と向かい合わせで棒立ちになっていて、遠目には見事に静止画。通りかかった一般の方がちらちら気にしていたけれど、当人は無反応……大丈夫?まばたきとか息とかしてる??

 

「鍾離さん!すみません、お待たせしてしまったようで」

「ん…ああ、来たか。気にするな、そんなには待っていない。神像に刻まれた岩王帝君の守衛に比べれば、ほんの一瞬だ」

「はは…鍾離、人と彫像を比べちゃダメだろ?」

「それもそうか」

 …話しかけたら大丈夫そうだった。ただ後ろに続いた言葉は…やっぱりお待たせしすぎましたかね……。

 いやはやなんて岩の国らしい、()()()()()表現だろう…ド天然で返すパイモンはさすがというか。閑話休題。

 

「それで、香膏はできたか?」

「できたよ、この通り3つとも。この中からどれかひとつを、だったよね?」

「ああ、ご苦労だった。では、順番に捧げてみよう」

 蛍が取り出してみせた香膏…缶のような容器は向こうで用意してもらったようで、黒・青・緑の3つ。蓋を開けてみれば、白っぽい半固形のもの…これが香膏か。いわゆる練り香水ってやつなのかな?年の頃16の女子にしては疎くて申し訳ない。

 

「これが確か、"甘くて夢にあふれた感じ、若い女の子が好きな香り"だって鶯が言ってたな。2つ目は"高貴なイメージ、お金持ちのお嬢様に人気"で…3つ目は"優しい香りで長持ち、ほんのり"…なんだっけ?とりあえず、大人のお姉さんにウケがいいって…んお?」

 そんな3種類の香膏を、パイモンがつらつら説明しながら七天神像の前へ並べていく。…なんかそういうのあるんだな…思ってた以上に詳しい人のお世話になってたんだな…とか思いながら眺めていたら―――七天神像が、ぼうっと発光したように見えた。

 

「今のって…」

「…選ばれたのは3つ目でした、かな?」

「あれって大人のお姉さんにウケがいいやつだったよな?もしかして…岩王帝君って、お姉さんなのか?」

「ハハッ、そうかもしれないな」

「そんな安直な…?」

「伝説に名を残す岩王帝君の化身は数多い。その中のひとつと考えることはできる」

「そうなのか!オイラたち、巨大な龍の姿しか見たことないからなぁ。なんだか残念だ…」

 化身…まあ、そうか。そういえば『解翠行』の石商は、言い伝えの中で"匙で料理を召し上がった"って言ってたな。まさか龍の姿のままなわけはあるまい。

 (すい)(じゃく)する…というか、民に混じって、民と同じ視座に降り立つことが多くあったんだろう。岩王帝君としてしっかり認識されてるから、お忍びってわけではなかったようだけど。

 

 

 

「ともかく、香膏についてはこれでおしまいってことだよね。次は?」

「そうだな…『洗塵(せんじん)の鈴』というものを借りてきてほしい。俺の代わりに」

「『洗塵の鈴』…?」

「代わりに…って、鍾離さんの?」

 それでは次の用事を済ませよう、という流れになったけど……提示された内容はちょっと意外だった。この専門家先生の代わりに?いやまあ、特定のアイテムっぽいから、鑑定は必要ないんだろうけど……なんか鍾離さん、視線が合わないな。

 

「ああ。『洗塵の鈴』は、ピンばあやという人が保管している。玉京台のあたりにいるだろう。誰かに聞けばわかるはずだ」

「おう…でも、鍾離は一緒に行かないのか?」

「あぁ、ちょっと事情があってな…代わりに頼む。俺はまた別の用を済ませておくから、また玉京台の広場で落ち合おう」

 …結局視線が合わないまま、とりあえず伝えることだけ伝えておくような感じで、鍾離さんはそそくさと立ち去っていった。…若干厄ネタの気配。考えすぎか?

 少なくとも、鍾離さんにとって馬が合わない相手がいる、とでもいうような。あるいは、敷居が高いのほうか……申し訳ないけどあの世間離れ感だと、何かしらの粗相はしてても不思議ではないしな…。

 

「…鍾離のやつ、なんか変な感じだったな…?」

「他にもまだ色々準備があるんだろうけど…それを口実にして避けてるみたいな感じだったね…」

 …まあ、追及しなきゃいけないわけでもないし、別にいいか。強いて言えば、ちゃんと財布を持ってきてくれたら何も言うことはない、ってことで。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おや。若者や、花見でもしに来たのかい?残念じゃが、この琉璃百合(るりゆり)はもう散ってしまったよ」

 はてさて、蜻蛉(とんぼ)返りしてきた玉京台…ここは最寄りのワープポイントが下にしかない*1ので、毎回長い石段を登っていかないといけないのがちょっと憂鬱だったりする。まあ、琥牢山その他に比べれば全然だろうけど。

 それはさておき……玉京台に立ち入ってすぐ、門番のように(たたず)む千岩軍兵士に訊いてみた*2ところ、尋ね人…"ピンばあや"はそのすぐ近くで、花壇を見つめていたその人だった。穏やかで品の良さそうなおばあちゃん。…鍾離さんの口から"ピンばあや"と出たときは目が点になったけど、なるほど親しみのこもった呼ばれ方にも頷ける。

 

「琉璃百合?」

「ばあやが若い頃、この花は人の感情がわかると言われておった。笑い声や歌声、そういった楽しそうな声を聞くと、花も喜んで綺麗に咲く。じゃが、逆によくないこと…たとえば心ない流言なんぞを聞くと、すぐに枯れてしまう」

「じゃあ…この花たちは今、璃月の現状を反映してるんだな…」

「そういうことじゃ。"岩王帝君が身(まか)った"だなんて只事じゃない。いろんな噂が流れておるよ。やれファデュイの陰謀だの、"海にいるあれ"が暴れただの…実はすべてが七星の自作自演なのだ、と言う者もおる」

 そんなピンばあやは物憂げな顔で、花びらの散らばる花壇を見つめていらした。感情がわかる…というか、雰囲気の影響を受ける花か………不可思議で神秘的なものが人々の身近にあるこの感じ、異世界だなぁって思う。…いや、前は邪悪に触れすぎてたから麻痺してるだけなのかも。

 それはそれとして、あの事件にまつわる噂か…ほうぼうの店主も口にしていたけど、鍾離さんがマジで気にしないので、改めて向き合うのは久々なように思えてくる。…自作自演ってのはなぁ…説としては鮮烈だけど、それはどう転んでも璃月七星の自滅になるだけじゃなかろうか。海に何かがいるとかいうのは初耳なので、あとで確認しといたほうがいいかもしれない。

 

「今の璃月港は、まるで燐寸(マッチ)の山のようじゃ。小さな火が着いただけで、それが一気呵成に燃え広がっておる……はあ。この話はここまでにしよう。年寄りじゃから、小言を言うのが癖でな。…して若者、何か用かい?」

「えっと、『洗塵の鈴』を借りに来たの。頼まれて、あなたが持ってるからって」

「ああ、あれか…確かに持っとるよ。あれは若い頃、友達が譲ってくれたものなんじゃが…彼は『今後誰かがこの鈴を借りに来たら、必ず渡してほしい』と言っておった」

「誰かが借りに来られる前提、ってこと…?」

「とても綺麗で立派な品だからね。実際、あの鈴が借りられることは何度もあったんじゃが…いつ頃からか、すっかりなくなっておったなぁ。ただ、探すのにはちと時間がかかりそうじゃ…少し待っててくれるかね」

「私たちも手伝うよ!」

「そうだよおばあちゃん!家まで送るから、探すのはオイラたちに任せてくれよな!」

 …考え事はあとにして、用事を済ませるのが先。『センジンの鈴』はやはりこの人が持っているらしい。借りられる前提…ということは、今回みたいに送仙儀式があるたびに出番があった感じか。私見つけても触らないほうがいいんだろうな……。

 それにしても、この二人の行動力が高い。まあ手伝うのには賛成。私にも敬老の精神はあるからね、上層部の置き物ども以外になら。そう思ったんだけど…ピンばあやは柔和な笑顔で、手を振ってみせる。

 

「子供たちや、心配は無用じゃよ。鈴ならすぐ近くに保管してあるからね」

「すぐ近く…?おばあちゃんの家って、もしかして玉京台にあるのか!?ず、ずいぶんお金持ちなんだな…」

「ほぉっほぉっ、ばあやじゃ城内に屋敷なぞ買えんよ…この壺じゃ。ばあやの荷物は、全部ここに入っておる」

「全部…その中に?」

 ここ、とピンばあやが指し示したのは、すぐそばの机の上に置かれていた…両手で軽く持ち上げられそうな大きさの、白磁の壺。荷物は全部その中って…よほど物持ちが少ない人なんだろうか。

 

「…パイモンぐらいならすっぽり入れちゃうんじゃない?」

「入るか!どう見ても入り口が狭いだろ!?」

「別に入る必要もないでしょ、探すだけなんだし」

「ほぉっほぉっ…とにかく、お目当ての鈴もその中にあるよ。中を覗いてみるとよい」

 …自分で開けて取り出しはしないんだな、と思いつつ。言われた通りに壺の蓋を開けて、中を―――

 

 

 

 

 

「…は?」

「うぇっ…こ、ここは…?いったいどうなってんだ!?」

 …壺の中を覗き込んだはずが、気がつけば知らない場所……呪力は、ない。雰囲気としては、留雲借風真君がいた場所に近い。素っ頓狂な声がしたほうを見れば、パイモンと蛍の姿もあった。けど、ピンばあやの姿はどこにもない………?

 

「ここって…秘境?でも、どうして急に…」

子供たちや、そこはばあやが荷物を入れておる壺じゃよ。鈴は探しにお行き

「うわぁっ!?お、おばあちゃんの声だ…ここってまさか、あの壺の中!?」

「嘘でしょ!?」

「こ…こんなことって…」

 そう、秘境。蛍がいう通りのそれだと思ったけれど…天から降ってきた声は、まぎれもなくさっき顔を合わせていたピンばあやの声だった。…もう多少のことでは驚かないと思ってけど、まさかこんな壺の中にまで秘境があるなんて…。

 

「と、とにかく鈴はここにあるんだよな?じゃあさっそく探しに…ぎえっ!?で、でっかいクモだ!!」

うーん…掃除しないとクモの巣だらけでいかんの…。子供たちや、ばあやの代わりに掃除してくれんか?

「わかった!日依、パパッとやっちゃおっか!」

「そう、だね…任せて。()()なら得意だから」

 急展開すぎて混乱していた頭が、怪物*3の姿を見て落ち着いた。やっぱりどうしようもなく戦闘職なんだな私…そう、私の得意なことだ。傍点が必要な()()なら。

 

 

 

 

 

*1
もしかしたら背後の岩山にあるかもだけど、今のところそんな苦行の予定はない

*2
パイモンには「オマエすげーな…」と言われた。いやまあ、手っ取り早くて確実だと思ったから…

*3
相対的に大きく見える蜘蛛(クモ)





・日依
どうしようもなく戦闘職な呪術師
旅人コンビに比べて礼儀正しさが垣間見える

・蛍
ちょっと影薄め ゴメンネ

・パイモン
複雑そうな顔をしてたのは前話

・鍾離
あれ奥ゆかしい言い回しだなぁと思ったけどどうなんだろうな…
今までになかった()()()()って感じで去っていった


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