呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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話の長さ調整のため、ちょっと半端なとこで切れております



龍災

 

 アンバーの案内でたどり着いたモンド城にて。"風の翼"の初級講習めいたものを終わらせてのんびりしていたところ……ふいに上空で低い唸り声が響き渡ったかと思うと、大きな影が渦を描くように飛びはじめた。

 …あいつだ。森で見た…アンバーちゃんが名前を叫んだけど、風魔龍ってやっぱりあの青いやつだったのか。2対…3対?の翼を大きく()(ばた)かせながら、グオオォォ!と咆哮を響かせながら、モンド城上空を旋回して…

「っえ!?」

「な、何これ…!」

 ひときわ大きな咆哮を轟かせたかと思うと、空にひとつ、ふたつと黒い渦が現れる。そしてそれらはまっすぐ石畳まで、根を下ろすように伸びて……漆黒の竜巻に姿を変えた。

 次々に立ち現れる漆黒の竜巻は、逃げ惑う人々を呑み込まんと暴れ始めて――

 

「やばっ!?あ、あたしたちも逃げよう!」

「うん!」

 慌てて私たちも走り出した……みんな風魔龍の件で頭を悩ませてるんだってアンバーが言ってたけどここまでかよ!ガチの災害じゃんか!!いやそりゃ体長の差で必然的にってとこはあるだろうけど…!

「っ…やっぱい竜巻速…っ!!」

 …まずい、非常にまずい。竜巻がすぐ後ろに…!くっそ足の速さには自信あるのに逃げ切れる気がしない!やば、これ――

「ひゃあっ!?」

「っ―――『繊域(せんいき)』!」

 隣で蛍が悲鳴を上げるのが早いか、暴風に包まれて足が浮いた。とっさに蛍の袖をつかんで、少し先に見える街灯に反対の手を伸ばす。届けえぇぇぇ!―――あ、駄目だ

「「うわあぁぁぁ!?」」

 …私と蛍は、なすすべもなく空へ巻き上げられることとなった。

 

 

 

 

 

 ここはどこだ?…見渡す限りの青と白。吹き荒ぶ風。見下ろせば黒い竜巻に襲われる街――

「ッッ!?!?」

 A:雲の上です。なんということでしょう。…そうだ、私はなんとか地表に残ろうとしたけど駄目だったんだ。拡張術式…『繊域』で形成した磁場も、あの竜巻の前には無力だった。隣を見れば蛍と目が合った。…と思うと蛍が素早く振り向いて、

「くっ…!」

「うっわ!?」

 腕を引かれた、と思えばゴオッ!!と風魔龍の巨体がさっき居た場所を通り過ぎていった。風圧で身体が回る…!これどうやって止めれば、っそうか!

「うぅっ…と、止まった」

 風の翼様々(さまさま)だ。ごめんね気休め程度とか言って、でもこんな爆速で出番来ないでほしいな…それはいいとして。

 大急ぎで平衡感覚を取り戻せば、チリチリと総毛立つ感覚…自らの命が脅かされている感覚。…さっきの突進は食らってたらただじゃ済まなかった。明確な害意がある。けど…どうする?ここは雲よりも上。こんな場所で戦った経験なんてさすがにない。下の雲から逆向きの雷とか…いけるか?でも間違えて蛍に当たったら…

 

「…あれ?風の翼って、こんな長時間滞空できるのか?」

 …必死に頭を回していたけど、パイモン*1の不思議そうな声で我に返った。…あれ?私たち、パイモンと同じように浮かんでる。…浮かんでる!?いや、これ下からうまく風が当たって…

『―落ちないように、ボクが千年の流風に助けてもらったんだ』

 …!?なんか今、突然まったく別の声が聞こえてきた。パイモンでも蛍でもない、虎杖君みたいに蛍の頬に口が出てきたりもしてないし*2…じゃあ、風魔龍?…いや、違う。あんなに荒ぶっててこんな穏やかな声が出せるわけがない。…センネンノリューフーが何かわからないけど、むしろ今から助けてもらわなきゃいけない側だ。

『旅人、想像してみて。この風を集中させるんだ。雲を突き破るようにね』

「だ、誰…!?」

 パイモンと二人して謎の声におろおろする私…に対し、蛍は真剣な顔で、なんか緑色のエネルギーを風魔龍めがけて斉射していた。て…適応力~~!何その魔方陣私のほうにはないけどいやあっても使いこなせる気がしないけど!私あくまでも呪術師だから!

 

 

 

「はぁ…し、死ぬかと思った…」

「だ、大丈夫…?」

「だいじょぶ…ありがとうアンバー、風の翼のおかげだよ…」

 …結局。蛍のあの謎の斉射によって風魔龍は尻尾を巻いて*3逃げていき、私は蛍に先導される形でモンドの石畳の上に帰還した。アンバーが地上から見つけて出迎えてくれる…さすが偵察騎士は目がいいようで。あぁ…適正な酸素濃度の空気おいしい。でも低気圧だなこれ…。

 それにしても、まさか受け取って数分で風の翼の操作に慣れざるを得なくなるとは…。私右も左もわからない世界に放り込まれといて波瀾万丈すぎるだろ。これでまだ半日も経ってないなんて、(にわか)には信じがたい…。

 

「…巨龍と戦えるほどの力を持っているとは。我々の客人となるか、それとも新たな嵐となるか」

 息を整えていたら、ゆったりと拍手しながら歩いてくる誰かの気配。顔を上げると浅黒い肌に青い髪の男性がいた。

値踏みするような目…はそっちの蛍に向けてやってください。この子が異常なので。私はただの呪術師なので*4…。

「っそうだ、街が風魔龍に襲われてるの!ガイア先輩、旅人さんたちも!どうか一緒に」

「待てアンバー?見たことないヤツがいるんだが?」

「あぅ、そうだった…こちらはガイア先輩。私たちの騎兵隊長なの!この人たちは…えっと、遠いところから来た旅人さん!」

「"遠い"ってことしかわからないのか…」

 ガイアさんというらしい男性は不審げな視線をを隠しもしない…不審だよなぁ。それはそう。あまつさえ片方はこんな漆黒の装いだもんな……これはこの世界らしい衣類も入手したほうがいいか。いつ落ち着けるかわからないけど。

 

 

 

 

 

*1
パイモン!?ついてきてたの!?

*2
※とっさの発想が邪悪ですが、呪術師の(サガ)です

*3
比喩

*4
※居ること自体が異常です





・日依
今回はさすがに戸惑うばかり
新技『繊域』が登場しました。しかしなまじシンプルな放電より集中力を要するのでとっさの使用には弱い。やっぱみこっちゃんが異常なんだよ…とは本人談
今更ながら近距離技については口に出さなくても発動できるように鍛えている

・蛍
適応力SS+の旅人。まこら()
さすが数多の世界を渡ってきただけあるとはいえ限度はあると思うんだ(呆れ)
突然のシューティングゲームに戸惑った方はどれほど居られるだろうか…

・パイモン
しれっと空の上までついてきた案内人(人…?)。まあそういうもんということで…

・アンバー
目がいい偵察騎士
案内してた旅人一行(元から一組ではないけど)が吹き飛ばされてしまって心配だったけど、無事帰ってきて安心

・ガイア
新登場の騎兵隊長。騎兵隊ってことは乗馬するのだろうか…あくまで名前だけか……?
もっと渋い声を予想してたのでなんかコナンの劇場版にいそうな声で驚いた
セクシー胸元担当とか言われてて笑う

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