呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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騎士団

 

「なるほど…モンドへようこそ。しかしこんな最悪なタイミングで来るとは、ツイてないな」

 "囁きの森"のあたりで蛍と出会って、モンドへ行こうとしているとのことで案内するため行動を共にしていたところ、道に迷ったあげくに崖から落ちた私を助けた…アンバーの身振り手振り多め*1な説明のおかげで、ガイアさんからの不審の目は幾分か落ち着いた。

 違う世界云々を伏せていたのは混乱を避けるためだろうけど…私に関して「故郷をなくしたらしい」って話したときのあの視線は何だろうか。この人もワケアリか。避けたいフラグの気配だ……是非とも私より蛍を優先してほしい。なんかさっきホントに異常な適応力を発揮してたので。

 

「それから、どうして風神を探してるかは知らないが…誰にでも言いたくない秘密はある。お前たちもそのクチだろう?はは、だから聞かないでおいてやるぜ」

 ただこの…なんだろうこの妙な胡散臭さ。害意がないのはわかるんだけどな…なんか騎士団を代表して礼を言われた気がするけど、あまり耳に入ってこなかった。

「礼だなんてそんな。私は、災いを放っておけなかったから」

「そうか…さっきの風魔龍との戦い、守られた市民たちは全員お前たちの活躍を目撃していたぞ?代理団長もお前たちに興味があるみたいでな。騎士団本部まで、どうか来てくれないか?」

 

 

 

 来てくれないかも何も案内してくれれば、と思ったけれど、騎士団の二人は何か連絡を受けたようで忙しそうに立ち去っていった。さてどうしたものか。…というか。

「…こっちだね。日依、行こう!」

「え…私も?」

 …これ私も行く必要あるのかな…と思ったところで、なんか地図持ってたっぽい蛍に声をかけられて。反射的に直球で質問したらキョトンとされた。

「もちろん日依もだよ?」

「たしかに風魔龍を追い払ったのは蛍だけどよ、日依も一緒に来てただろ?」

「ぅ…う~んまあ、そうか…」

 そうか…さっきのガイアさんの言葉、私も含めて「お前たち」なのか。居合わせただけなんだけどな…ちょっと厄介なことになってきたかもしれない。

 

「よし、そうと決まれば騎士団本部はこっちだよ!」

「よしって…ちょ、待ってって!」

 どうやら騎士団本部はこの位置からも見える一段か二段下の大きな建物らしかった。…風の翼で降下すればすぐとはいえ、飛び降りることに躊躇無さすぎないか蛍さんや。しかもこのそこそこ強風吹き荒れてる中で!マジでどうなってんだこの子は。

 …まあ、わざわざ"風の翼"と言うからには風があるほうが使いやすいっぽいけど…限度があるのでは?と思わずにはいられなかった。ええいままよと飛び降りた割には穏やかに降り立った石畳にため息をひとつこぼしていたら、蛍は騎士団本部目指してずんずん進んでいく。ちょっともう…!

「あ、アンバー!ガイアもいるぞ!」

「結局合流するんだ??」

 やっぱ案内してくれればよかったのでは??

 

 

 

 

 

「ここだ。…代理団長様、連れてきたぞ」

 アンバーとガイアさんに案内されるまま、見慣れてない洋風建築である騎士団本部内を歩いて…着いたのは「団長執務室」。足を踏み入れると…存外に広々とした空間があった。

 えっ広…天井が高いのもあるけど、それを差し引いても部屋の名前からは予想できない…まあそれは置いといて。壁をほとんど書棚に占められた空間では、2人の女性が私たちを待っていた。

 

「モンドへようこそ、風と共に訪れし旅人よ。私は代理団長のジン。こちらはリサ、騎士団の図書館司書だ」

 一方は、金髪を後ろでまとめた凛々しい人。アンバーが言っていた代理団長のジンさん…女の人だったのか…。

 いや、うん。他意はないというか……今まで女性の扱いが粗雑なのが当たり前の界隈にいたから。だからといって今真希のことを考えても……どうなんだろう、今あの子は……

「あら、人手不足を手伝いに来た良い子ちゃんかしら?可愛いわね♪︎」

 …じゃなくて。もう一人…リサさんは大きな紫の帽子が目立つお姉さん。蛍と私を見ておっとりとした笑みを浮かべ…たけど、すぐに顔は曇ってしまった。

 

「ただ、タイミングがあまりよくないわ。風魔龍が目覚めてからずっと、このモンド周辺をうろついてるの。ここ一体に大きな混乱をもたらしているわ……おまけに今のモンドは元素の流れと地脈の循環が、子猫ちゃんが遊んだあとの毛糸玉みたいになっていてね…魔法使いにとっては最悪な状況よ?肌も気分も調子悪いわ…」

 はぁ~あ、と深めのため息をひとつ…凄いかなり独特だけど、ぐちゃぐちゃなのがよく伝わる表現だな…貴女のお肌の具合は知らないけど……。

 あとこの人、私たち(日本人)が一般にするであろう"魔女"のイメージに近い格好をしてると思ったけど、本当に魔法使いであるらしい。気になるけどファンタジーだからきっと深く考えちゃいけない。

「それがなければ、尋ね人の貼り紙を出すよりももっと効率のいい方法で君たちを助けられるのだが…。もう暫く、モンドに留まっていてくれ。西風騎士団が、問題を解決してみせるから」

 ちなみに、今度はガイアさんがジンさんに経緯の説明を済ませていた。(たらい)回しというか、伝言ゲームというか…内容がちょっと変わっていくのはありがちなやつで、私は蛍と同じように旅人とされていた。蛍の尋ね人と私は関係ないんだけどな…勘違いされてそうだ。

 それで、ジンさんは真っ直ぐな瞳で私たちに任せろと言い切ったけれど…それに対して、蛍はあまりいい顔をしなかった。

「そう言ってくれるのはありがたいけど…私としては、やっぱり全部任せっきりにはしたくない。困ってるんだったら、手伝わせてほしい」

「オイラも手伝うぞ!」

「…私も、手伝えることがあれば」

 …パイモンに期待の眼差しを向けられたのもある。けどこれからの立ち位置や在り方に悩んでいる今、一度思いきって行動に出てみるべきだと思って、ここは協力を申し出ることにした。…()()()()、なんて向こうで慣れ親しんだ言葉に親近感を覚えたのもある。

 

 そうと決まれば、というガイアさんの提案を機に、作戦会議が始まった。…んだけど。

「風魔龍がモンドに攻めてきたことで、逆に災いを終結させる切っ掛けを与えてくれた。それと、リサの魔法で探査したところ、モンドを覆う暴風の源がわかったんだ」

「ほう?どこなんだ?」

「放棄された『四風守護』の神殿よ。風魔龍があの暴風を起こせたのは、そこに残った力のせいなの」

 リサさんの探査といい、暴風の源になる神殿に残った力といい…なんだかふわっとしてて、あぁファンタジーなんだなと思う。それを言えば呪力だってふわっとしてるけど…いやそうか、だいたいその認識でいい…のだろうか。

 ともかく、これから放棄された4つの神殿…のうち3つを巡って、その"残った力"をどうにかするらしい。具体的に何をどうするつもりかはいまいちわからないけど……これはまあ余所者である私が今わからなくても問題ないか

 蛍とパイモンは首を傾げてるけど、「4」で「守護」と言われれば、私としては思い浮かぶものがある。…仮にその考え方でいいなら、3つしか行かないのは……まあ、そういうことなんだろうな

「西風騎士団の皆、時間は限られている。暴風が猛威を振るっている今、守るだけでは意味がない。この災害が更なる拡大をする前に、神殿の遺跡へと向かおう!」

 

 

 

 

 

*1
必要?





某先生みたいなその場にいるのかいないのかわからない現象が多発
・日依
成り行きで巻き込まれる形の主人公
心残りが駄々漏れ

・蛍
呑み込みが早い旅人
淡白な選択肢を発言に仕立て直すのが結構大変

・パイモン
案内役。今回は影薄め

・アンバー
偵察騎士
混乱を避けるため一部の情報を伏せた

・ガイア
ワケありな騎兵隊長
日依からは軽ーく警戒されてる状態

・ジン
新登場・騎士団長代理
凛々しく真っ直ぐな人

・リサ
新登場・図書館司書
魔法使いのお姉さん


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