呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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破槍

 

 さて。多忙な騎士団はまた一度解散という形になって*1、騎士団本部をあとにした私たち。…とりあえずパイモンの提案で鍛冶屋に寄ってみたけど、今はあまり満足な収穫はなかった。ワーグナーという店主(いわ)くオーダーメイド対応をしてくれるらしく、鉱石を見つけて持ってくれば武器の錬成をやってくれるとのこと。

 

「…これ持ち去っちゃって大丈夫なやつ…?」

「特に問題ないみたいだぞ?」

 …で、ちょっと路地を入り込んだところに如何(いか)にもな宝箱があるのを見つけた蛍が躊躇なく物色してるのが今。喫緊の問題がある状況なのもあってイケナイこと*2をしてる感が半端じゃないんだけど、パイモンいわく大丈夫らしい。ファンタジー世界め…。

「きちんとしまっておこう…あ、そうだ日依!」

 宝箱からくすn…獲得した物品を仕舞い込んだ*3蛍がこっちを振り向いた。大丈夫らしいとはいえあまりその状態で、大声で名前を呼ばないでほしい…と内心ゲンナリしつつ歩み寄れば、蛍は「はいこれ!」と何か両手で差し出してくる…これは、

「…槍だね。私に?」

「日依もいちおう何か持っておいたほうがいいんじゃないかと思ったから。たぶん、剣より槍のほうが得意なんじゃない?」

「…さすが、あそこまで強いと見抜けるんだね」

 

 うーん…経験を積んだ強者は見る目が鍛えられる、というのはよくある話で、まあ考えてみれば至極当然の話でもある。兄とともに数多の世界を旅してきたらしい蛍としての直感がものを言ったんだろうな。…いや待てよそうか、あの驚異の適応力も数多の世界を渡った結果なのか*4…。まあそれはいいとして。

 渡された槍を手に取る。金属製で…うん、重すぎず、それでいてかなり頑丈そうだ。これといって文句はない。あと気になるところと言えば………私は穂先近くを持って、反対側を蛍に差し出した。

「ありがとう…けどごめん、ちょっとそっち持ってて」

「え…どうして?」

折るから

なんで!?

 

 

 

 

 

「私、けっこう持ち替えながら振り回す戦法とるからさ、刃も何もないただの頑丈な棒のほうがいいんだよね」

「そうなんだ…そっか、刃の部分があったら怪我しちゃうもんね」

「うん、というか一回ほんとにやったからね…手のひらにざくって」

「うわぁ…」

 前略、武器を手に入れました。代わりに蛍とパイモンにはドン引きされてしまったけど、事情を説明したら納得はしてくれました。話がわかる旅人と妖精でよかった。

 この槍は…というか槍なら大体そうかもしれないけど、刃の部分はトランプのダイヤのようなひし形をしている。つまり柄と接する部分がくびれているので、そこへ脚に呪力をこめてエイヤッ!(バキッ)という感じで処理させていただいた*5。ちょっと短くなったけどまあこんなの誤差誤差。

 そんなことより、蛍についてまた衝撃の事実を知ることになったんだけど…この子ワープできるのね?急に手を握られたかと思ったら一気にモンド城を遥か彼方に臨む場所まで飛び出していた。この場所…いまはヒルチャール集落跡になってるあそこの手前くらいじゃないか?いつの間に…?

「よっし、方角としてはあっち…みたいだけど……」

「何あれ…あれが、この暴風の源ってこと?」

 

 …少し遠くに見える石組みの遺跡から、まっすぐ空へ立ち上る青い光……どう見ても何かが起きてるというか、力残ってんじゃんというか。

 もはや恒例となった風の翼による降下*6を敢行すれば、ちょうど下…石組の遺跡の正面にアンバーが来ているのが見えた。

 

 

 

「ここが放棄された『四風守護』の神殿のひとつだよ。ここが放棄されたのは何年も前でね…モンドの人でも滅多にここには来ないの。だから、中は獣やヒルチャールの巣窟になってるかも…」

「あぁ…ありがちだよね、そういうの」

 …建物の"風雨を凌ぐ"という側面は、利用する人間がいなくなってもしばらくは発揮され続ける。だから少しでも知恵のある獣が新たな棲み処とする事例はありがちだ。

 ()く言う私も、山中の廃墟で呪霊よりも先に猪に襲われた経験があるけど…やはり経験者同士というわけか、アンバーは浮かない顔をしてる。

 

「はぁ…風魔龍でさえ、自分の神殿を捨てたほどだし…」

「え、風魔龍が?」

「あ…えっと、実はね?私もショックなんだけど…風魔龍はかつて、『四風守護』のひとつに数えられていたの」

「やっぱり…?」

「え!?日依は知ってたのか!?」

「いや知ってはないけど…3つしか行かない時点で、そういうことなのかな?とは」

 まあ正確には「4」と「守護」から、天の四方を司る"四神"を連想したんだけど。北は(げん)()、南は()(ざく)、西は(びゃっ)()、そして東は(せい)(りょう)。ここに()がいるから。…ただこちらの『四風守護』とどれほど似通っているかはわからないし、何も言わないでおいた。

 まあこの話はさておいて、と話を引き戻したアンバー曰く、この辺りの風が変質しているらしい。地元民の感覚だろうから私にはわからないけど、龍の力が影響を及ぼしているとか。気を引き締めていかないとね…

 

「ところで、日依が持ってるそれって…」

「宝箱から出てきたのを拝借してる」

「うん、いやあの…折れてない?」

「コイツが自分で折ったんだぞ!」

「折ったの!?」

「ねえ今蒸し返す??…戦闘スタイルの加減でちょっとね。正直そのへんの街灯へし折って振り回してもいいかなと思ってたんだけど

「全然よくねーだろ…」

「問題しかないよ…」

「さすがに西風騎士団として見逃せないかな~…」

「だから武器が手に入って助かったんだって…はいはいもうこの話おしまい!」

 やれやれ…強制終了したとはいえ、このやり取り今後もありそうだな。やっぱ正規オーダーメイドで長杖を作ってもらうのが手っ取り早いかな……やるとすれば、早めにしたほうがいいけど。

 そんなことを考えつつ、蛍が神殿の重厚な扉を押し開くのを見守った。

 

 

*1
ジンさんは本部に待機するよう(主にリサさんから)説得されていた

*2
全年齢だが不健全

*3
何処に???

*4
やっと気づいた

*5
蛍とパイモンはこの流れるような武器破壊に対してもドン引きしている

*6
先に下を見るから怖くなるのはわかるけど、また踏み外すのは嫌なんだよな…複雑…





サブタイは意味深でもなんでもない文字通りの意味でした()
・日依
宝箱システムに馴染みがなく罪悪感が拭えない。くすねるって言うな
長柄武器(物理)を手に入れた!槍破壊は脚に呪力込めていきました。※いくら括れて細くなっている部分があるとはいえ、並みの人間にエイヤッ!(バキッ)は不可能です。なお武器を変えるなら早めにしないといけないらしい
手のひらにざくっの一件は敵前じゃなくて特訓中だったのと、指が落ちる向きじゃなかったのが不幸中の幸い

・蛍
宝箱の扱いに慣れてる旅人
日依が長柄武器使いであることは見抜いたが、ストレート武器破壊にはここ(テイワット)に来て初のドン引き

・パイモン
案内役もストレート武器破壊にはドン引き

・アンバー
@西風の鷹の神殿
どう見ても破損してる長柄武器に困惑を隠せない


(…青い光、もしかしてメインストーリー進行上の案内っぽい?)


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