呪雷跋渉記   作:諸喰梟夜

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分かりやすく前回の続きから



故墟巡行

 

 神殿内部は…危惧したほど入り組んではいなかった。一つ一つの空間はけっこう広くて、操作盤で開く扉があったり*1もした。蔦みたいなもので塞がってるところをアンバーの火矢で燃やして開通させつつ、ふと開けたところに出ると…ヒルチャールが一体。

「私が出るね!」

「待っ、蛍!」

 あぁ…引き留めようとしたけど速い。やる気に満ち(あふ)れてるじゃん。たぶんアンバーが撃ち抜いたほうがよかったんじゃ、待ってなんで前線に飛び出していくのかなアンバー=サン!?…盾を構えて防御もてきるらしいヒルチャールは、二人の実力者を前に敢えなく退治されたけど。

「っ!?これは…」

「まずい、角笛の音!さっきの戦闘で気づかれたんだ!」

 突如として響き渡った低い音…ヒルチャールにとっての敵襲の合図か。やっぱそれなりに頭が回るらしい。

 

「アンバー!増援来たよ!」

「大丈夫、こういうときのために秘密兵器を用意してきたの!その名も"爆弾人形・ウサギ伯爵"!」

 ぱんぱかぱーん!って感じのテンションで出してきたのは…なんというか、ウサギの着ぐるみを着たアンバーをデフォルメしたようなぬいぐるみだった。いま蛍の口から「かわいい…」が出ましたね。確かに可愛いのは可愛いと思う。

 ただ秘密()()と言うからにはしっかり兵器であるようで、見ててね~?えいっ!と投げられたぬいぐるみは、着地すると同時に踊り出して………ヒルチャールにボコられてる。これあれか、(デコイ)作戦か。なまじ可愛いから痛々しいけど…

guaa!?

 ボンッ!とぬいぐるみが爆発して、ヒルチャールが吹っ飛んだ。…爆弾人形、想像したよりも高威力。なるほど、引き付けて爆発するのは…強いな。

 けど、その威力でも一発では倒れてくれないらしい。吹っ飛ばされたヒルチャールは、すぐさま起き上がって

せやっ!!

 …るところ目掛けて槍()を叩き込む。もう一体は蛍に任せるとして……あぁ、やっぱ素手よりこっちの方がいいな。リーチが伸びるぶん早く叩ける。術式を回せば、槍()の表面に紫電が走って――

gyaa!!

 ――またしても、爆炎に葬られるヒルチャールを見送ることになった。

「ふぅ…強烈だな過負荷反応」

「そうだね…この調子でどんどん進んでこう!」

 

 

 さて。もろもろ探索しつつ*2踏み込んだ次の部屋にもヒルチャールがぞろぞろと出てきたけど、剣筋が冴え渡る蛍、ウサギ伯爵のストックが豊富なアンバー、そして取り回しのいい武器を手に入れて絶好調な私を止めるには至らず。

 ただの廃墟の一室と化した部屋をぐるっと見渡し、さて次の部屋へ…と進んだところで私たちの足が止まった。

「うわ…」

 …そこは、あまりにも大きく開けた空間……え?これ屋内だよね?………屋内だな。声が響くし、遥か上の天井の隙間から外光が漏れてる。で目の前に立派な建物……つまりこの遺跡、入れ子構造か……おいおい、想像を絶してくるぞファンタジー世界。

「高いね……上に何かあるみたい」

「でも…どうやって行く?」

 向こうの建物を下から上がっていくのか…?と思って見下ろせば、底が見えなくて愕然とした。なんだこの濃霧…

 

「これ、炎元素の石碑だ!強い炎元素で攻撃したら起動させられるかもな…」

「ほんと?わかった、ちょっと下がっててね?」

 …愕然としてるうちに見てないほうで話が進んでて、振り返ると石碑に火がつくところだった。その途端…

「うわっ…!」

「これ…上昇気流?」

「っ、そうだ!風の翼!」

 ピンと来たらしいアンバーが、背負った風の翼を展開して…あっという間に向こうの建物目指して上昇していく。そうか…君まだ出番来るのか…。

 

 

 まさか風の翼を屋内で使う機会が来るなんて、誰が想像できるんだろう…。まあ置いといて。

 向こうに見えていた建物のバルコニーに降り立った私たち。建物の中に踏み込めば、目の前に現れたのは、

「…祠?」

 私の感覚としてはそういうもの。腰ほどの高さのごつごつした岩が、淡い緑色の光に包まれていて……室内には、それを中心に風が吹き荒れていた。

「龍の気配がする…あれが、力の集まるポイントかな?よし、壊しちゃおう!」

「あ、壊すんだ?」

 どうにかって具体的にどうするんだと思ってたけど、躊躇ないな……まあ、そう思ってしまうのは私がこれを祠として受け取ってるからか。確かに参拝したところでお願い聞いてくれそうな雰囲気じゃないし、ぶっ壊すのが手っ取り早いだろうな。

 

「…アンバー、せっかく壊すんだったら確実にやっとこう」

 ちょっと待ってね、とアンバーと剣を構える蛍を制して*3、拾った瓦礫の欠片に呪力を込める。アンバーはなかなか冴えてるとこあるし、ざっくり何をするのかは伝わっただろう。

「いいけど…それで何するの?」

「下準備。目印があるほうが正確にやれるから…じゃあいくよ」

 アンバーがつがえた矢に赤い火が宿る。それを視界の端に収めつつ…右手に持っていた瓦礫の欠片を、風が渦巻く岩に投げつけた。傍目に見ればただの投石、だけど――

「――『迅雷』っ!」

 すぐさま振り上げた右手から放たれる雷。今はやはり紫色のそれが、アンバーの放った矢に追い付いて―――炸裂した。

 …まあ、結果は言うまでもないだろう。祠のような岩が粉砕されたあとの部屋は、渦巻く風もなくなって、ただ深閑とした空気に包まれていた。

 

 

 

「ふぅ…疲れたぁ。けど、これでジンさんの役に立てたと思う!」

 神殿を出ると、あんなに荒れ気味だった風はすっかり落ち着いていた。出るのに少々手間取ったとはいえ驚異の速効性だ…。

 アンバーは…言うほど疲れてるふうじゃない。蛍も同じく。元気なことはいいことだよ…。そう言ってみれば、普段忙しそうにしてるジンさんの支えになれることがとても嬉しいんだと語ってくれた。…ますますジンさんが過労な気がする。微妙に親近感が増してきたな…

 そうは言っても、まだ手放しで喜べる状況ではないのは確か。向かうべき神殿はまだ二つあるし、アンバーが不安視する通り風魔龍がモンド城を直接襲うようなことがあれば、ということもある。

 

「…風向きが変わったのなら、策も考えるべきよ」

「お、いい言葉だね」

「これはリサさんの口癖だよ。…そうだ!前に話した『四風守護』の話だけと、過去の歴史に興味があったらリサさんに聞いてみるといいよ!」

「わかった、そうさせてもらうね」

 確かに、相手は「()()()()『四風守護』のひとつに数えられていた」とか過去の話が出てくるような存在だし、歴史を当たってみるのはいい手かもしれない…うちの任務でいうなら補助監督の領分だから、あまり得意ではないけど。

「あ、先に言っとくけど、私が歴史苦手とかそういうんじゃないからね?図書館司書の知識が、偵察騎士を上回ってるのは当たり前のことでしょ?」

「ウン、ソウダネ」

 …大丈夫だよアンバー、そんなことまでは考えてなかったからね?

 

 

 

 

 

*1
電子機器か?と思ったけど違うっぽい。わからん…

*2
どうしてこんな場所の樽の中からも野菜が出てくるんですかね…ヒルチャールが貯めてるのか?

*3
さすがにちょっと無謀じゃないかと思った。剣がかわいそう





※動向は必ずしも参考動画の通りではないため、ダメージ計算が狂っていることがあるかと思われます。ご了承ください
・日依
過負荷反応で吹っ飛ばない体幹がある系主人公
遠距離攻撃『迅雷』は、マーキングしておいた呪力めがけて雷を飛ばす技。当初は『繊域』より先に出すつもりだったんだ…
矢にマーキングしてもよかったけど、うっかりその場で過負荷反応を起こすリスクを避けた安全策

・蛍
剣筋が冴え渡る旅人
やる気に満ち溢れておられる

・パイモン
案内役。今回は影薄め。イルヨー

・アンバー
西風騎士団より偵察騎士
やる気と元気に満ち溢れておられる。伯爵、接近されたときの対処法だと思うんだが
今某別ゲームの二次も扱ってるから「攻撃力も高いペ□ロ様だ…」って思っちゃう

容赦なく過負荷反応を起こしていくアット(圧倒)ホーム()なパーティです


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