帝国の忌み子   作:獄華

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帝国か我が子か

 

 その日の夜の内に宮殿の一室で高官を集めた秘密の集会が行われた。

 

 「これはミハイル。国防省の最高長官まで呼ばれるとは」

 

 

 「久しいな。ヘルマン。帝国安全保障省の君も呼ばれたか」

 

 

 ミハイル・ターカーとヘルマン・トローネは久々の再開を祝し握手し合った。

 二人は管轄は違えど言えど帝国の軍事・防衛に携わる仕事をしている。

 

 「我々は何故呼ばれたのかな?」

 

 

 「分からぬ。陛下から直々にお話しがあるのは確かだが……」

 

 

 部屋の前まで行くとスーツを来た近衛兵が「お待ちしておりました」とドアを開け二人を招き入れた。

 座っているのは、皇帝、女王、恐れ知らずの魔女一族のヴァネッサ、と各省の最高長官の計十名が座っていた。

 

 「殿下。ポーカーでもやるような雰囲気では無さそうですな」

 

 

 膝まずきながらミハイルはゴッドハルトに冗談混じりに言うとヴァネッサがクククッと不気味に笑い出した。

 

 

 「ミハイル。今から始めるのはポーカーではないババ抜きじゃ。帝国のガンとなりうるババを抜くのじゃよ。ケケケ!」

 

 

 「ババ抜き……ですと」

 

 

 首をかしげるヘルマンに「御二方共お座りになられて」とアーデルトラウトは促す。

 

 「ワシはそのババを早く除去したいのに当の皇帝と女王が認めてくれなんだ」

 

 恐れ知らずの魔女の物言いにゴッドハルトとアーデルトラウトは表情を硬化させた。

 一体何があったのか?。

 気になるヘルマンは切り出す。

 

 「恐れながら皇帝陛下。ヴァネッサ様と陰険な雰囲気とお見受けしましたが……何があったので?」

 

 

 「ヘルマン君は魔術を信じるか?」

 

 

 「いいえ。私はオカルトの類は信じませぬ」

 

 

 「うむ。我もこの科学が発達した21世紀にオカルト等到底信じられぬ事なのだが、ヴァネッサは魔術を信じ何と俺とアディの子であるマックスを殺すか他国へ放てと言ってきおった!」

 

 

 「カカカカッ!ワシは事実を言うたまでよ!」

 

 

 徐々にヘルマンとミハイルにも話が見えてきた。

 

 「つまり……ヴァネッサ様はマックス皇子がババだと仰られる?」

 

 

 「そうじゃ。あの幼子は帝国を崩壊させる」

 

 

 「馬鹿な事を!ヴァネッサ様!マックス皇子は帝国の新たな息吹!それをババに喩える等気は確かですかな!?」

 

 

 ミハイルは激昂していた。

 国防省最高長官の彼は帝国への忠誠が高いのは勿論、ゴッドハルトとは幼馴染みで個人的な付き合いもある。

 その友人であり皇帝の子を馬鹿にされて彼が怒らないわけがない。

 だがそれでヴァネッサが気を変えるわけもなかった。

 

 「全くどいつもこいつも帝国の存続よりも個人的な友情を取るか……。現実主義者がおらぬ国は滅びると言うがこの帝国もそうなるやもな」

 

 

 「いい加減に……!」

 

 

 「お待ちになられて」

 

 

 ヴァネッサを殴らんばかりの勢いで席を立ったミハイルを止めたのはアーデルトラウトである。

 

 

 「ヴァネッサ。もう一度聞きます。本当にマックスは……この帝国を破滅に導くのですか?」

 

 

 「あぁ。前も言ったがあの子の魔力は強すぎる。いずれは核兵器等足元にも及ばぬ生ける兵器となるじゃろう」

 

 

 「そんなバカな!」、「言い掛かりも甚だしい」とヴァネッサに対し批判の声が上がる。

 アーデルトラウトは考え込むように唇に指を当て、暫しの沈黙の内に口を開いた。

 

 

 「ゴッドハルト。ヴァネッサの言う通りにしましょう」

 

 

 「正気か……アディ?」

 

 

 アーデルトラウトの顔を見ると彼女は涙を流していた。

 そんな中、彼女は母親としてヴァネッサの進言を聞こうとしているのだ……。

 大臣達もこれ以上は何も言えなかった。

 

 

 「非常に残念ですがあの子が帝国の驚異となるなら。この帝国から離さなくてはなりません……母親としてこんな選択しか取れない自分に今私は言葉に現せない無力さを抱いております………ごめんなさいゴッドハルト」

 

 

 深々と頭を下げるアーデルトラウトをゴッドハルトは優しく抱きしめた。

 

 

 「無力なのは俺も同じだアディ。確かに今の我らにはあの子をどうする事も出来ない。怖かっただろうにマックスに対して罪悪感も抱いたろうに良くぞ言ってくれたなアディ。俺はいい妻を持った……感謝する」

 

 

 「ありがとう……貴方」

 

 

 「うむ……。決まったようじゃな。しかし安心せい二人共。お主等がマックスの死を望んでないのは伝わった。マックスは我らヴィプカ一族発祥の地へと送ろう。そこでマックスは学ぶのじゃ皇族ではなくマックス・バルツァーとしての一人の人間としての生き方をな……」

 

 

 「また私達があの子を目にする事が出来ますか……?」

 

 

 「マックスが己の力に飲み込まれなければ可能じゃ」

 

 

 「あいつは俺とアディの子だ。弱いわけがない」

 

 

 「だといいんじゃがな……。数日以内にマックスを見送る準備をしろ。マックスにはヨーロッパのヘントレーラに行ってもらう」

 

 

 ヘントレーラはヨーロッパに位置する島国でヴィプカ家の発祥の地だ。

 まだ5歳のマックスが異国へと行ってしまう事実は両親の胸を締め付けた。

 

 

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