"グルメテロリスト" 黒舘ハルナ   作:有馬Hidden

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公式4コマでワカモが食圧の使い手と判明したので続きます。
ちなみに手元にあるのが漫画なので漫画版準拠です。プラゴミは出てきません


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「見えたぞ!!あれが…氷の大陸 アイスヘル!!

「なんて大きな…」

 

ハルナたちを乗せた船は乗組員を減らしながらついに「センチュリースープ」が眠るアイスヘルに到着した。

砕氷船の目の前に広がる一面の氷世界、その奥深くにそれは眠っている。

 

「これがアイスヘル!!」

「なんて荘厳……。」

「こ、ここを…、登っていくのか……!?」

 

「ふふふ…この奥地にスープが……!」

 

天を摩する氷の大陸の迫力に圧倒される美食屋たち。そして、羽と尻尾をパタパタさせて興奮を隠しきれないハルナ。

だが、アイスヘルの試練はすでに始まっていた。

 

「む、みんな上を見ろ!!」

 

何かを感じ取った滝丸が注意を促す。その声に反応した美食屋たちが上を見上げると……!!

 

「うわぁああ!棚氷が崩れて落ちてきたぞーっ!!」

 

アイスヘルの断崖絶壁の一部が崩れ落ち、船の半分ほどの大きさの巨大な氷の塊が降ってきた。直撃すればひとたまりもないだろう。

氷の大陸アイスヘル、そこは厳しい自然環境から一般の立ち入りが禁止されている大陸。一瞬たりとも気を抜くことができない自然の要塞なのだ。

アイスヘルに足を踏み入れた美食屋たちは、その厳し過ぎる洗礼に驚いていた。

 

「撃てェ!!」

 

氷塊を砕くために砕氷船から大砲を打ち込む。

しかし、アイスヘルの強靭な氷はその程度ではびくともせず、多少削れた程度でしかない。

 

「ダメだビクともしねぇーっ!!」

「逃げろーっ!!」

 

直撃すればたとえ屈強な美食屋だろうと命が危ない。いや、それどころか船は沈没してしまうだろう。

 

「副組長ーっ!」

「……。」

 

マッチは落ちてくる氷塊を見ながら腰の刀に手をかける。

が、

 

「……無理だな。デカすぎる。」

 

グルメヤクザの副組長を務めるマッチの実力なら()()()()()()()()を真っ二つにすることなど容易であった。しかし、今回の相手は落下してくる氷塊。

マッチの居合術には溜めの時間が必要であり、それによって生まれる振れ幅を利用して技の威力を上げるものだ。つまり時間が足りない。

 

「ハ、ハルナさん!何してるんですか!?死んじゃいますよ!!」

「あの氷塊が船に当たったらひっくり返って危ないではありませんか?だからこうして海に飛び込んで避難を…」

「アイスヘルの海だって危険ですよ!!…って結構強い

 

砕氷船がひっくり返ることを危惧して海に飛び込もうとするハルナとそれを止めようとする小松、落下してくる氷塊に対して慌てふためく美食屋たち。

しかし、そんな中でもトリコだけは余裕を見せていた。

 

「ハルナ!小松!逃げる必要はねぇ!全員下がってな!!」

「え!!」

「トリコさん!!」

「何をする気だ…」

 

ちょうど氷塊の落下予測地点の中心部に立つトリコ。

海に飛び込むことを考え始めていたマッチと滝丸も下がって見守る。

 

「フライングナイフ!!!」

 

トリコは右手の手刀で斬撃を飛ばす。

氷塊に一直線の切れ込みが入る。

 

「フライングフォーク!!!」

 

そして続けざまに左手を突き上げて鋭い衝撃波を飛ばす。

先ほどの切れ込みに当たって氷塊全体にヒビが入った。

 

「なんと・・・!!」

 

そんなトリコの技を見てハルナは興奮で羽と尻尾をパタパタさせている。

トリコの技はまるで本物のナイフとフォークがハルナにも見えてしまうほどに凄まじいものだった。

 

「……もう一押しか。」

 

しかし、氷塊はまだ砕けてはいない。

 

「「うわぁああぁぁああああぁ!!!」」

 

迫りくる巨大な氷塊に死を覚悟する美食屋たち。だがハルナはトリコならやってくれるだろうと確信していた。

 

「5連――釘パンチ!!!!」

 

トリコは落ちてくる巨大な氷の塊にパンチを繰り出す。

パンチを受けた氷塊は砕かれ、巨大な塊が砕氷船に直撃することはなかった。

 

 

釘パンチ

 

それはトリコの基本の技。数回のパンチを同時に何発も打ち、釘を打ち付けるような衝撃を連打の回数分だけ与えるのだ。

 

 

「氷塊が割れた――っ!!」

 

氷塊を粉々に砕くほどの凄まじい衝撃で、船は大きく揺れた。

 

「ス…スゴイ……、さすがトリコさん…!」

「たまげたなあのパワー…」

 

美食四天王トリコの実力を目の前で見せつけられその凄まじさに驚愕する滝丸とマッチ。

 

「あれがトリコか…これから行動を共にすると思うとこれほど頼もしい男は居ない……。」

 

しかし、マッチは内心トリコを警戒していた。

 

(いや・・・…最後はスープの奪い合いになる可能性もある…。戦うことも覚悟しておかなきゃいけねェわけか…)

 

「トリコさん、凄かったです今の!!いったいどうやったんですか!?それに本物のナイフとフォークが…!」

 

羽と尻尾をパタパタさせて興奮が収まらないハルナ。まるでごちそうを目の前に出された子犬のようにトリコに駆け寄る。

 

(………。)

 

そんなハルナを見て何かを考え、マッチは部下のラム、シン、ルイの三人を連れて上陸の準備に向かった。

__________

 

トリコたちは輸送ヘリに乗り込んで棚氷の頂上付近まで移動していた。

アイスヘルは常に猛吹雪が吹き荒れておりヘリや飛行機で直接上陸ができるほど甘い大陸ではない。

 

「ってハルナさん!なんでライタースーツ*1を着てないんですか!?」

「邪魔だったので脱ぎましたわ。」

「マイナス50度ですよ!?凍え死んじゃいますって!!すぐに戻って、いや、誰かが予備を…」

 

輸送ヘリの中でハルナがライタースーツを着ていないことに気が付いて慌てふためく小松。

ハルナとバカ1名を除いて全員が着ているライタースーツ。マイナス50度の世界に普段着で飛び出すなど自殺行為である。

 

「まあまあ落ち着け小松。ハルナのコート、ブリザードベアーの毛皮だろ?なら問題はねぇな。」

「あら、よく分かりましたね、さすがトリコさん。」

「で、でも……。」

「それにハルナじゃあいくら伸縮性のあるスーツでも邪魔になるぞ。」

「あ、そっかぁ…。」

「それに極寒の氷海でもその辺で売ってる水着で海水浴する美食屋がどこかにいるって噂もあるしな!」

 

小松はハルナの羽と尻尾を見て納得した。ライタースーツを着るには邪魔になるに違いない。

それにライタースーツの保温性は永久凍土に生息するブリザードベアーの毛皮に匹敵するほどのものだ。本物のブリザードベアーの毛皮なら寒さはしのげるだろう。

 

しかし、小松の心にはどこか引っかかるものがあった。

 

(本当に……問題ないのかな…?いくら保温性に優れたコートだからといってもライタースーツと違って全身を覆えるわけではないし…)

 

今は他人の心配をしている場合ではない美食屋が多いなか、自分自身のことよりもハルナを気遣う優しさを持つ小松。そんな小松の料理だからこそハルナは気に入ったのだがまだ気が付いていない。

 

小松の心配をよそに輸送ヘリがついにアイスヘルの頂上付近に着陸する。

 

「さ、寒うぅうううううぅぅ!!」

「ゾンゲ様ーっ!!」

「しょうがねえなぁ。ほら、ハルナのために一応持ってきておいた予備のスーツだ。」

 

そして、バカ1名は凍えていた。

 

 

 

「ここからは各自で登ってくれ!!上は強風でヘリでは近づけない!!」

 

降り立った瞬間から突き刺すような寒さに襲われるトリコたち美食屋一行。視界は白一色で気温はマイナス50度を超えているだろう。

そんな寒さの中、美食屋たちはアイスヘルの断崖絶壁を自力で登り始めたのだった。

__________

 

「――――ふぅ、やっと着いた…。」

「すごいトリコさん!ボクら一番乗りですよ!!」

 

小松を背負いながら断崖絶壁を登ったトリコは小松というハンデを気にさせない速度で真っ先にアイスヘルの絶壁の頂上に辿り着いた。

目の前には氷壁に覆われた氷の大地が広がっている。

 

「うおぁ寒ぁむ!!」

 

顔を出した途端、遮るものがない猛吹雪がトリコの顔面に吹き付け、一瞬で顔の一部が凍り付く。

やはりいくら一着700万するライタースーツといえど極寒のアイスヘルでは気休め程度にしかならない。

 

「おーい滝丸早くしろー」

「は、はい今行きます」

 

トリコの少し後ろを必死に登る滝丸。

トリコはグルメ騎士のリーダー”愛丸”と知り合いであり、信頼のできるグルメ騎士(ナイト)の新入りである滝丸と今回の旅では協力して進もうと決めていた。

いくら美食四天王のトリコといえどこの極寒のアイスヘルを一人で進もうなんて無茶をするつもりはなかった。

 

「くっ…負けましたわ……。」

 

そしてハルナはその小さな体でひょいひょいと崖を登り切っていた。トリコに続いて2番目である。

 

 

「ま、前見てくださいトリコさぁあ―――ん!!!」

「!!?」

「これは……早速のお出ましですか…!」

 

ハルナが登り切るのとほぼ同時に小松が大声で叫ぶ。

 

「こ…こいつは…!!」

「すべてを凍らせる地獄の番人!!」

 

「ツンドラドラゴン*2ですよ―――っ!!!」

 

氷壁の頂上から見上げるとそこには、雪原のように真っ白な体をした巨大なドラゴンがトリコたちの目の前で圧倒的な存在感を放っていた。

 

__ツンドラドラゴン

 

アイスヘルに生息する巨大なドラゴンであり、その戦闘力はこの厳しい氷の大地でもトップクラス。

放つ息には大量の水分が含まれており、その水分がアイスヘルの冷気で凍り付くことで周囲を一瞬で吹雪に変えてしまう。

どんな防寒具でも防ぐことができず、まさに出会ってしまったら最期。あの世まで誘う地獄の番人である。

 

そんなドラゴンがいきなり現れ、トリコたちは目の前に現れた巨大なドラゴンを前に戦慄する………

 

ことはなかった。

 

「こ…凍ってる…!?」

「―――え!?」

 

「すでに凍って息絶えてるぞ…!!」

「あら、残念。」

 

既にツンドラドラゴンは息絶えており、物言わぬ氷像となっていた。

強力な生物であっても寿命には勝てないのか、はたまた何か別の原因があったのかは不明だが。

 

「ふーむ、ですがせっかくですし少し頂いておきましょうか……。」

 

しかし、ハルナはそんなことなど気にすることなくツンドラドラゴンの肉をどうやって食べようかなどと考えていた。

捕獲レベル50超えの食材はそう簡単に食べられるようなものでないし、何よりも凍っているのなら鮮度も落ちていないだろう。

ツンドラドラゴンの肉を食べる機会などそう訪れることではないため、美食屋としてこれを逃す手はない。

 

だが、ハルナがツンドラドラゴンに近づいた時だった。

 

「な…なんですかこれは…!?」

 

小松が再び叫ぶ。そこにあったのはツンドラドラゴンの氷像だけではなかった。

 

「美食屋だ… 過去に上陸していた美食屋たちが全員凍っている…!!」

「ここはまだ大陸の入り口ですが…極寒地獄”アイスヘル”の異名は伊達ではありませんね…!!」

 

ハルナたちのセンチュリースープへの旅はまだ始まったばかりだ

*1
幾重にも重なった耐寒性の高いゴム状の素材が摺り合って発熱し体を高温に保つことのできるスーツ。全員に支給されたものだが一着約700万円する。

*2
捕獲レベル55




でもゲームでティナはスーツ無しだったんだよな…
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