"グルメテロリスト" 黒舘ハルナ   作:有馬Hidden

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ルールは破るが、約束は守る!
次は4月とか言ってたのにギリギリですいません
GW中に完結させるので許して

サニーの口調、分からん


Menu9

 気を失っていたハルナはおいしそうな香りで目を覚ます。

 大怪我で気を失っていても濃縮された食材の圧倒的な情報量で飛び起きるほどの香り。寝起きの纏まらない思考でも一瞬でその正体に辿り着いた。

 

「センチュリースープですねっ!!」

「おい、急に動くな傷が開くぞ」

 

 飛び起きたハルナ。それを制止した人物には見覚えがあった。

 

「あなたは…確か再生屋の…」

「鉄平だ」

 

 「再生屋」

 ハルナやトリコ達美食屋とは違い希少な食材の保護、再生などを生業とする者たちのことである。

 再生屋は食材の乱獲や密猟、違法な食取引を行う者を独断で検挙できる権限を持っており、悪質な美食家からは恐れられているのだ。

 ハルナが彼の師匠に何度かお世話になっており、その関係で鉄平のことを知っていたのだ。

 ずっとアイスヘルにいて死に設定になりつつある"グルメテロリスト"だから追いかけられてるとかではない。

 

――

 

 ハルナは鉄平とマッチから気を失っている間に起こったことを聞かされた。

 

 トリコがトミーロッドを倒した後、マッチ達は神秘を使い果たしたハルナ、戦いで倒れたトリコと滝丸を休ませようとしていた。

 しかし、それも束の間地下深くに沈んだトミーロッドは最後の切り札「パラサイトエンペラー」を解き放ったのだ。唯一まともに動けるマッチが立ち向かおうとするも、パラサイトエンペラーはそれを無視してハルナに襲いかかる。無視された上に部下を切り裂かれハルナが食べられそうになったマッチは怒りを爆発させて鋏を斬り落として救ったのだ。

 

「なるほど、私が倒れてる間にそんなことが……」

「その虫はオレの方で何とかしたが美食會の連中の行方は分からねぇ。探しに行ってもいいが怪我人が多すぎたからな」

 

 ハルナは氷山が時々揺れているのを感じていた。おそらくそのパラサイトエンペラーと"何か"が戦っている。"再生屋"の鉄平が何とかしたと言っているのだから凶暴な猛獣でも再生させたのだろう。

 

「ありがとうございますマッチさん、鉄平さん」

「気にすんな、休んどけ」

 

 

 

「さて、一応聞いておくがスープ飲むか?このスープに辿り着けたのはハルナのおかげでもあるからな、飲む権利は当然ある」

 

 マッチが指さされてハルナは小松の手の中にあるスープに目を向ける。スープからはオーロラが昇っており体が動くなら今すぐにも飛びつきたいくらいには唆られた。しかし、ハルナはそれをグッと堪えて視線を動かしここまで付き添った同志である美食屋たちを見る。

 

「皆さんは……」

「ボクは飲みませんよ。ここに来たのはスープが目的ではありませんし、そもそもグルメ教の教えに反していますから」

「オレは持ち帰るためだし、かといってこんな量を持ち帰ったところで分けられねぇからな。それに…ボロボロの子供の横で一人だけおいしい思いをするのはオレの信条に反する」

「オレたちも副組長と同じ意見です。飲むならハルナちゃんに譲りますよ」

 

 滝丸、マッチとその部下たちはハルナの問いかけをやんわりと断る。ここまで一緒に戦ってくれていた仲間を差し置いて自分だけスープを飲むのは気が引けるのだろう。トリコの方を見ても首を横に振られる。

 ハルナは再び小松の手の中のスープを見た。飲めるものなら飲みたい。最後の一滴だと言うならばそれはなおさらだ。

 

「正直に申し上げるなら飲みたいですが……譲りますわ。取りに来たのはフウカさんに届けるためですし……それに」

 

 そう言ってハルナはボロボロの服を捲り上げる。

 

「__文字通り胃に穴が開いている状態で飲んでもスープを楽しめませんもの」

「助かったってのにこんなことを言うのは何だが、お前よくそれで生きてるな……」

「ゲヘナって凄いんですね……」

 

 冗談っぽく笑って言ったが傷の深さ的に笑える状況ではないため全員微妙な顔をする。

 

「ま、飲むって言ってたらオレは止めたがな。センチュリースープは確実にお前の体のグルメ細胞を活性化させる。神秘も体力も使い果たしたボロボロな体じゃあ耐えられなさそうだからな」

 

 鉄平の処置があるとはいえハルナは意識を取り戻しただけであり動くことも難しい。嗅いだだけで飛び起きてしまうのだ、飲んでもそのおいしさに今のハルナの体は耐えられない。

 

 最終的にスープは小松が飲むこととなった。スープの最後の一滴は小松を最後の客として選び、舞い降りたのだ。ならば誰も文句はない。それに……

 

「ボクで終わりには…絶対しません!!」

「絶対に作ってみせます!!」

 

 小松のその言葉と決意はハルナをいや、その場にいた全員を信じさせるのに十分だった。

 既にハルナの中では小松がスープを作り上げるイメージが湧いており、スープを飲めなかった後悔など一切なく新たなスープの誕生の予感に心を躍らせていた。

 

――

 

 小松がスープを飲み干してすぐ、激しい揺れが一行を襲う。

 

「な……何だ…この気配は…」

 

 鉄平が感じ取ったのはトミーロッドの切り札(パラサイトエンペラー)再生させた猛獣(ヘルボロス)でもない、それらよりももっと強力な別の存在の2つの気配だった。

 

「みんな!!すぐに氷山(ここ)を出よう!!」

「鉄平!!」

 

 異変を感じ取った一同はすぐさま出発のために動き出す。2つの気配はほとんど真上にあり、そのまま直接登って脱出することは避けなければならない。鉄平は別な出口を探して駆け回っていた。

 

「おい!いい加減ノッキング解きやがれー!!いい帰り道教えてやるぞーっ」

「!!」

 

――

 

「生きてたんですねあなたたち……えーと名前は何でしたっけ」

「死霊のはらわたじゃなかったか?」

「ちげーよ!!ゾンゲだよゾンゲ!!」

 

 動けないハルナはマッチに背負われながら”運よく”生き延びていた美食屋ゾンゲの発見した出口を目指していた。同様に走れない滝丸はトリコ、バリーガモンとの戦いで足が折れているラムとシンは鉄平とルイが支えながら走る。

 

(これも美食屋としての才能でしょうか……)

 

 食運、グルメラックとも呼ばれる食の才能。それが十分に備わっているのであろうゾンゲをハルナは1人の美食屋として認めていた。それはそれとして名前はすぐ忘れてしまっていたが……

 

 

 

「でっ……出れたぁあーっ!!!」

「どうだ!本当だっただろ!!」

「でかしたぞゴットゾンビーっ!!」

「ゾンゲと呼べー!!」

 

 一同は何とか出口にたどり着き、全員で無事に脱出することに成功した。しかし、喜ぶことができたのも束の間、すぐにその足を止めてしまった。

 

「おいおい、船がねぇじゃねーか……」

「あら、本当ですね」

「はぁ!?なんでオレらを置いて帰っちまったんだよ!!」

 

 騒ぎ立てるゾンゲ達、騒いでもどうにもならないのが現実である。

 

「み…みんな…実は…」

 

 事情を知っていた鉄平は申し訳なさそうに真実を話し始めた。

 

 

「船帰っちゃったんですか~~!?!?」

「……スープがないと分かったら即退散とは、とんだ腰抜けさんですね」

「あんのジジィ~~」

 

 ハルナたちをこのアイスヘルへ送り出したカーネルは美食屋たちに渡したスーツに盗聴器を仕掛け、盗聴器の情報からスープが無いと知ると全員を置き去りにして帰還してしまったのだという。

 ゾンゲがノッキングされていたのはこのことを事前に知っていた鉄平が情報がカーネルの手に渡ることを防ぐためだったのだ。……その後自分で喋ってしまったので無駄になったようだが。

 

「え…ってことはオレら……帰れねーってことか!?」

「泳いで帰るしかないな……」

「いえ、その必要はなさそうですね」

 

 帰る手段を失った一行が絶望しかけるがハルナは冷静にそれを否定した。

 ハルナの視線の先には巨大な空に浮かぶクラゲ、そしてそれに乗っている人物の姿があった。

 

「リ・・・”リムジンクラゲ”!!! まさか…!!」

「おおーい、迎えに来たぞーい!」

「せ…っ セツ婆ぁあ!!」

 

――

 

 迎えに来たセツ婆の連れてきたリムジンクラゲに乗り込みハルナたちはアイスヘルに別れを告げた。リムジンクラゲの中は快適すぎて爆睡している者(ゾンゲ)もいる。しかし、誰もそれを咎めることはない。アイスヘルでの激闘は心身共に疲れ果てるものだったのだから……

 

というわけでもなく

 

「うんめぇ~~!!」

「さすがは人間国宝…」

「あれもこれも…全部高級食材ですよトリコさん!」

 

 アイスヘルでの死闘など無かったかのように、彼らはセツ婆が用意した料理に舌鼓を打っていた。料理を囲み、和気あいあいとした雰囲気で話す。

 ハルナもいつの間にか回復しており、セツ婆の作った桃イモのタルトを味わっていた。

 

「桃イモ……私が普段食べているのはグルメ界で進化したものですので、厳しめに評価するつもりでしたが……さすがは節乃さん」

「へぇ、そっちにも桃イモがあるのか。グルメ界で進化した桃イモ!さぞかし美味いんだろうなぁ~!!食ってみてぇ~!!!」

「……自己防衛のために葉を鋭利なナイフのように進化させて振り回していますから、こちらの基準で見積もっても捕獲レベル3桁はありますよ?」

「捕獲レベル3桁の桃イモだと!?」

「その辺の猛獣では近寄ることすらできない死の桃イモ、通称”デス桃イモ”と呼ばれていて……」

 

 トリコと楽しそうに会話と食事を楽しむハルナの姿を見てマッチは一安心していた。

 先ほどまで満足に動けないほどにボロボロだったハルナがもうここまで回復していることにゲヘナ、いやグルメ界の凄さの片鱗を感じていた。

 それでもハルナの体の大きな傷は一向に治る気配がない、やはり神秘も体力も使い果たしてしまったことが原因なのだろう。

 それに部下たちも命に別状はないものの片目を失っていたり、ちぎれかけている腕、折れた脚、などなど酷い怪我を負っている。

 

(オレはまだまだだ……部下も、子供も、全員守れるぐらいには強くならねえとな……。それができなきゃ副組長は務まらねぇ…!!)

 

――

 

 一行を乗せたリムジンクラゲは癒しの国(ライフ)へとたどり着いた。

 

 ”ライフ” 

 天然の自然物で治療を提供している国。最先端の医療ではないが自然の癒しを求めて世界中から怪我人や病人が集まってくる自然豊かな医療大国だ。

 

 その目的はもちろん重症のマッチの部下3人や滝丸、()()()()()()が食いちぎられてしまったトリコたちの傷を治すためであり、鉄平の師匠”与作”を訪ねることに決まったのだ。

 

「まさかこんなところでお前に会うとはなサニー!どっか怪我でもしたのか?」

「バーカ、んなワケねーし」

 

 そこで偶然にもトリコと同じく美食四天王の一人「サニー」と出会っていた。サニーも与作から”ある食材”の情報を得るためにライフへ訪れたのだ。

 

「ライフには美容(びよ)()食材がいっぱあるからな… れだけでも来る価値は十分(じゅぶ)じゃね?」

 

 __美容目的でもあるようだが

 

「んで…お()は誰よ?めちゃケガしてる()には元気じゃね?」

「初めましてサニーさん、ゲヘナから来た美食屋の黒舘ハルナと申します。お見苦しい姿で申し訳ありませんがご挨拶を」

 

 1メートルあたり数十万円で取引されているドクターアロエの包帯でぐるぐる巻きの状態のハルナはサニーに軽く頭を下げた。サニーは興味深そうにハルナの体を注意深く観察し確かめた後、口を開いた。

 

「あぁ……ゲヘナってーと確かグルメ界の……」

 

 サニーは少しの間考え込み、何かを思いついたように口角を上げた。

 

「なんで人間界(こっち)来たワケ?グルメ界(むこう)の方が旨い食材わんさかあンじゃね?」

「ふふふ……決まっていますわ!」

 

 その問いはハルナにとって愚問に等しかった。

 

「”美食”の追求!これ以外ありません!」

「グルメ界の食材は確かに人間界の食材より何倍も美味しいそれは紛れもない事実です。ですが!」

 

 彼女は両手を空に掲げ太陽を背にする。そして、最高に幸福そうな顔で宣言した。

 

「料理は違います!食材の捕獲レベルが低かろうが高かろうが食材の可能性(ポテンシャル)を引き出すのはいつだって料理人…… そう、料理人が居ればどこの食材であろうと高級食材に等しいのです!」

「それにあのセンチュリースープのようにグルメ界の食材に引けを取らない食材はたくさんあるに違いありません!!」

「すべてはこれから!もっと美味しい食材の発掘のため、私は美食を追求し続けます!」

 

 彼女の言い放ったその言葉には一点の曇りも無く、ただただ純粋な”美食”への情熱が込められていた。サニーはその姿に少し驚いたような顔を見せたが、すぐにその表情は微笑みへと変わった。

 

「へぇ……美しいこと言うじゃん……」

 

 ハルナの”美しさ”はサニーを認めさせるのに十分だった。

 

――

 

「んで……ゲヘナにはどーやっていくのが正解なワケ?」

「陸から行くなら命の滝壺からが一番近いですね。そこから……」

 

 

 現在トリコ達は鉄平の師匠、与作を発見し事情を話して治療のためライフのシンボル”マザー・ウッド”へ案内されていた。その道中、すっかりハルナと意気投合したサニーはグルメ界の情報収集をしている。近いうちにグルメ界へ赴き自身のフルコースに加える食材を探すためであった。

 

「ところで、ハルナがそこまでボロボロになるってことは美食會の副料理長ってのは相当強かったらしいな。そこまでレベルが上がってるとなるとやはり狙いは……」

「あー……」

 

 なぜか気まずそうな顔をしているハルナ。当然である、ハルナが戦ったのは支部長のバリーガモンであり副料理長のトミーロッドと戦ったのはトリコだ。

 

「いや、トミーロッドと戦ったのはオレだ。この左手を食いちぎったのもそいつだな」

「ハルナはオレたちと支部長のバリーガモンと戦ったな。だが相当強かったぜ、オレの部下とハルナがなんとか時間を稼いでくれたから勝てたようなものだ」

 

 トリコとマッチの訂正に与作は驚いたような表情を浮かべ、すぐに振り返ってハルナの方を見た。ハルナは申し訳なさそうに視線を逸らしている。

 

「おい、()()()()()()のはいつだ?」

「あっ、いえ、その……」

 

 サニーが支えているハルナに近寄って問い詰める与作、その気迫に押されてハルナは言葉を詰まらせる。

 

「いつだ?」

「……半年前、です」

 

__その場の空気が凍った。瞬間、マッチの脳はまるでアイスヘルに戻ったかのような錯覚を味わう。

 

(これがグルメ界でも活動する再生屋の気迫……!!)

 

――

 

「2、3か月に一回は帰れって約束したよな?」

「帰ってたらスープの船に間に合わなそうで、つい……」

「『つい』じゃねーよまったく……」

 

 叱りながら傷の治療を進める与作、ハルナは反省したのか大人しくしている。先ほど美食を語っていた時とは大違いだ。

 

「しかもカケラも全部使いきっちまうとは…… 鉄平、このヤクザたちの治療が終わったらグルメ界に放り投げてこい」

「えぇー……、まあ今回は約束を守らなかったハルナちゃんが悪いから、ごめんな」

「はい……」

 

 多少は悪いと思っているのか素直に謝るハルナ。その尻尾もシュンとして静かだ。

 

「ミサイルが直撃してもそのまま戦えるほどの頑丈さ、寝て起きればその傷は治ってるとまで言われるゲヘナの子供がここまで弱るってのはよっぽどだからな?」

「はい……」

 

 ドンドン縮こまっていくハルナ、その横では与作による荒っぽくも丁寧な治療が続けられている。その様子を眺めていたサニーはふとした疑問を与作に投げかけた。

 

「ゲヘナってのはそんなスゲーの?」

「ああ、そうだ」

 

 それはトリコやマッチだけでなく滝丸たちも抱いていた疑問だった。全員が気になっている様子を感じ取った与作はゲヘナの解説を始める。

 

「グルメ界で産まれ育って食材を狩り、食べてる奴がヤワなはずねェ。それに……」

 

「ここに来て美食屋なんてことができるのは上澄み中の上澄みだからな」

 

 

 

 水中に住んでいた魚が新たな生息域を求めて陸地に上がっていったように、かつてはトリコやマッチのような普通の人類だったゲヘナの人々は更なる美食を求めてグルメ界の過酷な環境や猛獣に対抗できるよう進化した。

 その過程でグルメ界の大気中に充満している”うまみ”を取り込み、”神秘”へ変化させてその身に纏うようになったのだ。

 身に纏った神秘は頭上の”ヘイロー”として目に見える形で現れ、彼女らの身体能力の向上だけでなくバリーガモンとの戦いで見せたような武器に纏わせ威力を上げる使い方も可能である。

 また、ヘイローはゲヘナにとって”神秘”の強さの象徴であり、その形状が個性的であればあるほどより強い存在である証明になるのだ。

 

 だがしかし、陸地に上がった生物が水中での活動が難しくなってしまったように、ゲヘナにとって”うまみ”の少ない人間界は呼吸のできない水中そのものとなってしまったのだ。

 

「なるほどな、海底の食材を生身で捕ってそのまま海底で調理して食べるみてーなことをしてるってワケか」

「だから定期的に”息継ぎ”に戻れって言ったんだが……」

「すいませんでした」

 

 潜ることすら難しい生物が数多くいる中、()()()()()()()()()()で美食屋活動ができるハルナはまさに上澄み中の上澄みなのだ。

 余談だが、ハルナが勝手に連れてきた一緒に飛び出してきたゲヘナの料理人「愛清フウカ」も月一で戻れば活動可能な上澄み側の存在である。

 

 ついでにここで解説しておくがハルナが使用していた「神名のカケラ」、これは取り込んだ余剰分のうまみが神秘の結晶となって固まったモノだ。

 ゲヘナの人々やトリコのようなグルメ細胞をその身に宿す者が使えばその身体能力を一時的に引き上げる強化アイテムであり、ハルナのような人間界で活動する者にとっては神秘をお手軽に補給できる電池でもある。

 

 

 

「そこの目玉が抉られてるヤクザと左手が無くなったトリコ以外は1週間すれば帰れるようになるはずだ」

 

 与作の手により折れた骨や傷ついた内臓の大まかな治療は終わった。しかし、クワガタに抉られたシンの目玉やトミーロッドに食いちぎられたトリコの左手はそう簡単には治らない。

 

「そうだな……大体半年ってとこか」

 

 世界でもトップクラスの実力の再生屋の与作にかかれば失った腕や眼球の再生は容易である。幸運なことに、失ったのが左手首から先のみで済んでいたため半年もあれば再生は可能であろう。もし、左腕ごと食いちぎられていたら再生には20年ほどかかっていたかもしれない。

 

「半年か……まぁ、待てない時間じゃねえな」

「そうだな!小松がスープを完成させるのにも時間が必要だから案外丁度いいぐらいかもな!!」

「スープの完成を待っていたら半年なんてあっという間でしょうね」

 

 美食屋たちはそれぞれの反応を見せ、治療の完了を待つ。そして、スープの完成までしばしの別れを告げた。

 しかし、その顔は皆一様に明るい。

 

__近いうちに再会することになる、そんな気がしていたからだ。

 

――

 

-グルメ界・ゲヘナ- 

 

 グルメ界のどこかにある土地、ゲヘナ

 

 グルメ界の荒々しい環境に対して安定した環境の場所ではある。だが、治安はグルメ界の危険度とさほど変わりはない。そこに住まう人々は暇さえあれば暴れているような、まさに自由と混沌を体現している島だ。

 一応、行政機関と風紀を正すための組織は存在しているが事故や事件の発生がやむことはなく、機能しているかと聞かれれば怪しい。

 

「なあアンタ、うまそうなモン持ってるじゃねーか」

「ここを通るにはなァ、通行料が必要なんだよ」

「それを大人しく渡せば通って良いぜ?」

 

 そんな故郷にハルナは与作に言われた通りグルメ界へと放り投げられてしまったので仕方なく帰郷していた。

 足を踏み入れるとすぐ持ってきた”お土産”を奪おうとする不良の集団に絡まれてしまった。

 この光景はゲヘナでは日常茶飯事であり、ハルナはゲヘナに帰ってきたのだと少しばかり懐かしく感じていた。

 

 

 

 

 

 

「……くそっ、こいつバカつえぇ」

「誰だよ外からのこのこ入ってきたから楽に持ち物奪えるだろとか言ったヤツ……」

 

 最も、帰り道の途中ですでに傷がほとんど癒えていたハルナの敵ではない。襲ってきた不良を山積みにして立ち去ろうとしている頃には既にスープのことを考えていた。

 

 

 

「ここを出る前はこんなに襲われることはありませんでしたが……やはり定期的に帰らないと忘れられてしまうんでしょうか?」

 

 目的地まで歩いているだけで何回か襲撃を受けたので全て返り討ちにしながら進む。

 そこまで強くない*1がこうやって何回も来られるとうっとおしくて仕方がない。そんなことを考えながら歩き、ようやく目的地へとたどり着いた。

 

 

「あら、ちょーっとお久しぶりな感じですね」

「……そうですね、欲しい食材を取りに行っていたら少しばかり遅くなりました」

 

 久しぶりにゲヘナに帰ってきたハルナを出迎えたのは、金色の髪にゲヘナの特徴でもある角が生えている少女。

 

「随分と弱々しくなっちゃいましたね?何があったんですか~?」

「その辺はおいおい話しますよ、ちょうどお土産もたくさんありますし」

 

 ハルナは抱えていた荷物を開けてお土産を並べていく。お土産の中にはアイスヘルで狩ったグレイトレッグのフカヒレやライフで手に入れた高級な健康食品なども含まれているので少女も大満足であった。少女はそれら一つ一つをじっくりと見て目を輝かせている。

 そんな彼女の全身からは療養のために帰ってきたハルナとは違い、力強さを感じ取れる。

 

「……それにしてもそちらはだいぶ調子がよさそうですね?」

 

 不良生徒を蹴散らしながら帰ってきたハルナのことを「弱々しい」と言い切れるのはその満ち溢れる生命力故だろう。

 

「アカリさん」

 

 出迎えたのはハルナの親友にして美食を追求する同志、そしてハルナと同じく美食屋の鰐渕アカリだった。

*1
ハルナの主観




>また、ヘイローはゲヘナにとって”神秘”の強さの象徴であり、その形状が個性的であればあるほどより強い存在である証明になるのだ。

適当に考えた設定だけどブルアカ本編でもこれな気がする。モブのヘイローがシンプルなのもこの辺が関係してたりしませんか?

友「カイテンジャー」
我(地球崩壊クラスの反撃を受けたのでダメージノッキングしている)

ゲヘナがありそうな場所は?

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