どうも真祖(型月)です   作:全智一皆

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序章「運命/邂逅」

 

 

 

■  ■

 それは―――まるで、星空の様だった。

 風に靡く黒い髪と外套。黒い筈のそれが、明るく見えた。

 星に照らされる暗い空の様に。

 

「なんだなんだ、これは驚きだ」

 

 黒が動いた。

 澄み渡る空を思わせる眼が、へたり込む少女を捉える。

 びくり、と少女の肩が震えた。

 

「人間なのに、随分と派手な力を持ってるじゃないか。()()感じ魔術師という訳でもなさそうだし、魔力というよりは霊力か? まぁ、どっちにしたって殆ど同じか。いや、まだこっちの方が良いな」

 

 眺め、覗き、笑う。

 空が笑う。月光が影を照らす。

 瞳が照る。その『色』を直視する。

 浅い呼吸が停止する。息が肺を詰まらせる。 

 

 取り込まれてしまいそうだ。/この体が。

 溶け込まれてしまいそうだ。/この心が。

 呑み込まれてしまいそうだ。/この魂が。

 その眼に。その黒に。その影に。

 身も心も、それら全てを食べられてしまいそうになっていた。

 

「おっと、失敬、失敬。この〝眼〟は、人間には毒だったな。こんな幼い子供に曝け出すモノじゃないか」

 

 空が曇っていく。雲が空を隠していく。

 明るい眼は徐々に光を失い、ハイライトを消し去った。

 同時に、身に纏っていた気迫が霧散する。

 ひゅ、と。止まっていた呼吸が動き出し、再開する。

 

「はっ、はっ、は……!!!」

「すまないね。何分、外に出るのは久々だったもので。それに、抑えるとハイライトが無くなるんだよ。これだと気味悪いし」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!!!」

「って、言ってる場合じゃないかな。ほら、大丈夫、だいじょーぶ。ゆっくり呼吸するんだ、ひっひっふー。ひっひっふー」

「それっ、は、子供、産むっ、ときのっ…!」

「あれ、そうだっけ? じゃ深呼吸だ。すー、はー。すー、はー。どうだい、落ち着いた?」

「…なんとか」

「なら良かった。子供ながら、出来て偉いじゃないか」

 

 穏やかに、影は笑う。

 雲が晴れる。月光が影を強く照らし、その全貌を晒す。

 

「―――かみさま」

「神様か。まぁ、呼ばれて悪い気はしないが…生憎、神様なんて大層なものではないよ。どちらかと言えば、その真逆……そう、悪いやつだ。鬼さんだよ」

「鬼…」

「そう、鬼。人を食べちゃう、わるーい鬼さんだ。良い子は鬼から逃げるもの、だから君も逃げると良い。大丈夫、追いかけはしないよ。鬼さんはお腹一杯だからね」

「で、でも」

 

 目をやるのは、近くのモノ(死体)

 かつて、自分の親だったもの。

 かつて、自分の父だったもの。

 今や、物言わぬ死体。ただ血を溢し続けるだけの肉塊。

 影はそれを隠す様に座り込み、少女の頭に手を置いて語る。

 

「いいから。走って逃げなさい。悲しい子供は悪い鬼(ちちおや)から逃げて、誰かに助けられるものだ」

 

 この時。この深夜こそ。

 煌坂紗矢華という少女が―――初めて、真祖という存在と邂逅した瞬間である。

 




煌坂紗矢華(幼女)
まだ幼かった頃の煌坂。父親に暴力を振るわれていたところを助けられ、言われるがままに逃げていたが警察に保護され、そのまま獅子王機関に引き取られた。
忘れもしない、あの夜を。

真祖(型月)
型月世界の剪定事象からストブラ世界にやってきた放浪者。只者ではない真祖。■■の■■の■■■■。
真祖には珍しい人間好き。
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