甚爾inデスゲーム   作:そにああお

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甚爾さんにこういうのをやらせたかったのです もうフィジカルギフテッドがロマンありすぎるのと本人の性格もクールなのにヒモと冷静かつ割と社交的な面もあるので⋯



片道切符

「ひっっ⋯⋯!!い⋯命だけ」

 

怯えた声も聞こえないようなそぶりで男は無言で標的の脳天を撃ち抜く。ばたりと崩れ落ちた遺体を誰にも気づかれることなく回収し車の荷台に乗せ蓋を閉めると自分自身は助手席へとつく。 

 

男───もとい禪院甚爾は疲れたとでも言いたげに手をぶらぶらさせながらため息混じりにつぶやいた。

 

「これで1000万かよ⋯もう一声どうにかならねえか?人間一人殺すにも結構労力がいるんだよ」

 

「つってもお前が何か特別なことをやったわけでもなくただ殺しただけだからな。安いのは致し方ない。余程金が欲しかったら闘技場かどっかで副業でもやったらどうだ」

 

運転席でたばこをふかしながら生返事をするのは甚爾に仕事を斡旋するブローカー、孔時雨だ。

 

「こんな端金じゃ一発逆転が狙えねーんだよチクショウ、あそこで2号が勝っていればな、どうしてゴール前で抜かされんだよ」

 

甚爾は車内に無造作に置いてあったスポーツ新聞を開きながらぼやく。どうやら先日の競艇の賭けに大負けしたらしい。

 

金が欲しい金が欲しいと言っているが甚爾はせっかく得た大金をギャンブルで全て溶かしてしまうのだ。こんなわがままな男に毎度毎度いい儲け話を持ってきてやるこっちの苦労も考えて欲しい。まあこちらとしても禪院甚爾と親交のあるブローカーというネームバリューを利用した仲介手数料目当てだが。何かいい話はなかったかパソコンを見返しているといい依頼が来ていたことに気づく。

 

「禪院、一発逆転したいんだろ?そういう話がなくはないがどうする?」

 

「まあどうせろくでもない話だろうけど聞くだけならタダだしな なんだ」

 

「報酬10億の依頼だ。法外な値段だろ?だが気になる点としては⋯

依頼者:匿名 依頼内容:99人のターゲットを死なせること 注意事項:長期の依頼になる予定 集合は1週間後で集合場所はここ」

 

時雨はパソコンに記載された地図を甚爾に見せる。

 

「まあこのサイト利用している時点でサクラってことはねぇと思うがどうする?」

 

そんなもの、やるに決まっている。

 

 

 

 

 

「応募用紙⋯なんだ?オーディションでもやるつもりか?」

 

呪術界の暗殺においてはまず依頼者と会い手数料や報酬、ターゲットの術式について簡単な説明などの情報の打ち合わせをして殺しに向かう、というのがスタンダードなのだが今回は勝手が違うようだ。謎の仕様に甚爾は頭を抱える。

なんでいちいちこんな面倒なことすんだよ⋯

 

「てか名前と住所と生年月日書けってこれ本当に大丈夫なのかよ」

 

用紙には

 

カナ( ) カナ( )

名字( ) 名前( )

西暦  年   月    日

住所

と個人情報記入欄があった。自分のような住所不定はどのように書けばいいのか。とりあえず名前から書き始めようとわざと出鱈目な名字と名前を書いた。

甚爾は依頼をこなす上でなるべく禪院家の出身というのがバレないように行なってきた。呪術関係者ならば禪院という名前を聞くだけで何かしらの反応をするくらいの御三家である。そんな御三家出身の人間が暗殺で術師を狩っているなどと広まってしまったらせっかくの透明人間も活かせなくなってしまう。

暗殺ははるか昔、それこそ禪院家が生まれた頃から隠密が鉄則なのである。

だからこそわざわざヤニカス(時雨)に仲介手数料を払ってでも自分から大胆な行動をすることはせず来た依頼を淡々とこなしている。下手に動いて家に嗅ぎ回られるのも面倒だし。もとい「甚爾」という名前も滅多に聞かない名前であるためここに記入するのは避けたい。どこから情報が漏れるかわからないしましてこんな闇サイトで募集していた依頼における信用なんてもってのほかである。

 

男の名前だと俺も忘れちまうしな どうするか

男でも女でも通用する名前⋯

ちょうどテレビから「たくみ」という名前が聞こえてきた。今人気のイケメンタレントらしい。そういえば今居候している女の名前も「たくみ」だ。

 

まあこんなもんかな

 

カナ( フシグロ ) カナ( タクミ )

名字( 伏黒 ) 名前( 拓実 )

西暦 1977年   11月  20日

住所 東京都 〇〇区 1-2-3

住所はとりあえず今いる女のアパートのものを書いておいた。最近の俺に対する当たりの悪さから見るにどうせすぐにここを出ていくことになるだろ。俺がいなくなった後の女のことなんて知らねぇ。誕生日も嘘。俺の本当の誕生日12月31日だし。たまに気前のいい女が祝ってくれる日程度にしか認知していないけどな。生年だけは年齢制限とか面倒だから正直に書いておいた。

 

記入が終わり郵便で出したら次に取り掛かったのは荷造り。飲みもんと飯と着替えと⋯あと女がくれた小遣い。ひーふーみーと数えても枚数は変わらない。

 

「シケてんなぁ もうちょっとくれたっていいじゃねぇか」

 

甚爾はそうぼやくが現状は何も変わらない。そして戦闘において最も大切な呪具を揃えた。

 

 

 

1週間後。

 

出て行って!という女の怒号とともに甚爾は家の外に出される。

同時にガチャン!と鍵が閉められた。

 

やはり住所を書いたのがよくなかったらしく女のアパートの周りにはいかにも怪しそうなセールスがたくさん来ている。それに加え甚爾が勝手に金を使うなど関係が冷え気味だったのもあってついに追い出された。

 

「チッ まあいいや 俺今日から出張だしな」

 

大きめのリュックを背負い目的地へと歩き出した。公共交通機関より圧倒的に自身の足のほうが速いのである。

 

 

 

まだつかねぇのか?これ以上行ったらもう森の中だぞ

 

ここでもフィジカルギフテッドによるステルス機能を活かしなるべく人通りの少ない道を通りながら目的地へと向かう。地図に示された場所は一応都内ではあるのだがさっきからどんどん辺鄙な地へと向かっているのだ。

 

市街地の路地裏をすり抜けるように進んでいくと一箇所だけ不自然に開けて森へと続いている道があった。

 

まあ十中八九ここだろうな

 

甚爾は五感をもとに森の中を進んで行った。こんな森林内でも僅かに人の匂いがするのである。集合場所に既にいる依頼者のものだろう。よく見ると足跡のようなものもあるし間違いない。木の枝を蹴り木から木へと飛び移りながら移動していく。

 

五感を頼りに進んでいるとついに数百メートル先にボロボロの服を着た男や筋骨隆々の男など「同業者」と依頼者側であろうスーツの男のいる場所が見えてきた。

 

ここからは歩いていくか。俺の能力がバレたら面倒だしな。

甚爾は木から降り普通に森林内を歩き始めた。

 

 

 

ついにお互いの顔が確認できるほどの距離になった。甚爾の存在に気づいたスーツの男が恭しく声をかける。

 

「お待ちしておりましたあなたは12番です。100人揃うまでもうしばしお待ちください」

 

甚爾は12という数字が書かれたワッペンを渡される。どうしていいかわからなかったが辺りを見回すとみな腕につけていることが分かりその通りにする。

 

俺で12番でまだあと88人も来んのかよ⋯待つのは嫌いなんだよ そういえば今何時だ?

甚爾が森林の中から差し込む太陽を確認する。現在はちょうど午前10時頃だろう。

気になってはいたんだよな なんで要項に集合時間が書いてなかったんだ?書いてたら全員時間ぴったりか遅れたとしても10分後くらいには着くだろ

今の所合理的な理由が見つからないとなると時間を教えなかった理由はこれからの任務で明らかになるんだろうな

 

それまで時間を潰さねぇとな⋯

とりあえず周囲の人間を観察し始める。1番の野郎は背丈もガタイも俺よりを少し劣化させた感じだがだが間違いなくここにいる中じゃかなりの強者だろう。

2番野郎はひょろっとしていて力もなさそうだが目つきがいかにも狡猾な男って感じだな。1番野郎に色々話しかけているし頭脳でうまく立ち回る派と言ったところか。5番の若造もあれは強い。

こん中で一番雑魚そうなのは8番と11番。あれはダメだ。俺の目ならわかる。体格はパンピーが見ても弱いというほどナヨナヨしてるしこれといって力も感じられない。なんでこんなに早く来たんだ?不安で眠れなかったのか?

 

 

 

それからも待ちぼうけ食わされまくりついに正午になった。さっきからブロロ⋯という大型の車のエンジン音が近づいてくるのが聞こえてくるのはフィジカルギフテッドによる聴覚なら耳鳴りというわけではないだろう。

バスか何かが来るな。物資支給かはたまた俺たちの移動用か。

現在来ているのは50人程度。あと半分。

 

「なかなか来ませんね⋯一回ご飯食べましょうか」

 

スーツの男が参加者たちに声をかける。ちょうど同じタイミングで甚爾の予想通りバスが2台到着した。

 

「では1番の方からバスにお乗りして自分の番号の席にお座りください。お昼ご飯はそちらでお渡しいたします」

 

バスは大型で50人乗り。車内に入ると座席に番号が振ってあり指示の通りそこに座れと言わんばかりだ。

 

9⋯10⋯11……12番ここか。

 

甚爾はリュックサックを前の座席のフックにかけ足を組む。

なぜかこのバスは車窓が黒い布で覆い隠され見えないようになっていて全体的に薄暗い。俺の視力ならこんな布なんざ目隠しにもならないが⋯集合時間を教えなかったことといい「時間」の感覚を鈍らせることにこだわりでもあるのか? まあ太陽の位置で大体わかるから問題なし

 

通路にゾロゾロと人が流れていき全50人が席についたタイミングでスーツの男が弁当を持って車内に入ってきた。通路を歩きはいどうぞ、はいどうぞ、と言いながら弁当を渡していく。

 

「はいどうぞ」

 

「サンキュー」

 

甚爾もペットボトルのお茶と弁当と箸を受け取り蓋を開けた。

中身は白米にハンバーグとソーセージと野菜とフライドポテトがぎっしり詰められたいたって普通の弁当。

パキッと箸を割りまずはハンバーグに箸を入れる。

 

まあまあだな

 

本当に至って普通のハンバーグ。可もなく不可もなく美味しい。

それをご飯と一緒に食べ次はソーセージ、フライドポテトというふうにどんどん口に運んでいった。

 

「食べながらでいいので聞いてください」

 

スーツの男が拡声器を使って車内の人間に話しかける。

 

「これから会場へと向かいます。ルールブックをお配りするのでよく読んでおいてください」

 

配布されたルールブックという小冊子を捲る。

これから皆さんには99人のターゲットを死なせてもらいます

ゲーム優勝者は賞金10億円を差し上げます

優勝できなくても5位以内の方には100万円差し上げます

私物は車内で回収いたします ゲームが終わり次第返却します

ゲームを行っていない時でもターゲットを殺してもいいですが殺しているところを誰かに写真に取られた回数が3回に達したら脱落です

ただし同一人物に関する密告は1回とみなします

(例えばAがBを殺したという密告をCとDの2人で行ったとしてもBという同一人物に関する密告であるためAの密告された回数は1回となる)

密告は写真を用いて行なってください

協力はOKです

ゲームに参加しないこちらの指示を聞かないなどルール違反も脱落とします

 

 

99人のターゲット…か。

甚爾はスーツの男が言っていたことを思い出す。

『お待ちしておりましたあなたは12番です。100人揃うまでもうしばしお待ちください。』

 

自分以外の参加者全員殺せってこったな

 

「細かいルールはまた現地についてからお伝えいたしますがどのゲームにおいても成り立つ前提としてのルールは記載した通りです それではこれから私物を回収いたします」

 

スーツの男が合図をすると今度は全身タイツに覆面の奴らがバスに入ってきて荷物を奪っていく。

 

「待て!?長期の任務じゃなかったのか!?」

 

1人の男が荷物を守りながら声を上げる。騒ぎを聞いたスーツの男が座席へと向かい笑顔を貼り付けたような顔でにっこりと笑い口を開く。

 

「ご安心を。飲食物などはこちらで提供いたしますしホテルに着けばなんでもありますよ」

 

スーツの男がそう伝えると覆面は荷物を奪って持っていってしまった。

番号順に回収されていきついに甚爾の番。甚爾は無抵抗にフックにかけていたリュックを差し出した。

 

 

それから全員の荷物を回収し終わりまたアナウンスが入る。

 

「みなさんお待たせいたしました。ついに出発です。お手洗いは車体後方にございます。お飲み物足りなくなりましたらお声掛けください

ここから私語はなるべく謹んでいただきますよう、よろしくお願いいたします」

 

私語を慎め⋯ね 今のところわかっている情報でこれに対する合理的な理由は思いつかない。自分以外全員暗殺ターゲット任務(仮説)を実行しやすくするためだろうか。

 

 

 

乗客を静かにさせるためなのかはたまた運営側が見て楽しむためか車内のテレビではAVが流れていた。

 

ハッくだらねぇ。何が素人ものだよ 素人そんな善がらねーよ

 

甚爾は映像を見て内心バカにする。ビデオ以上の経験を今までヒモとして重ねてきたのだ。今更こんなの見ても何の暇つぶしにもならない。

 

あー退屈だな〜 そしてテレビも今やってるニュースなんかは見せずにAV垂れ流しってわけね

現在の時刻と現在走っている場所を知られたくないんだろうな

 

 

 

依然として変わらない車内で時間だけが過ぎていく。AVは全部流し終わったのか今度は10年ほど前に流行った映画を流し始めた。もうとっくに甚爾はこの状況に飽きている。

車窓から透けて見える光見る感じ今は昼の15時ごろだろうな。後部に便所があるらしいから気分転換に見に行ってみるか。

甚爾は持っていたお茶を一気に飲み干しその10分後くらいにトイレに立ち上がった。別に催したわけではない。それにフィジカルギフテッドの力を活用すれば尿意や便意を我慢することなど朝飯前だ。その周辺の筋肉を締め上げればいい話だから。

ただちょっと車内を散策するのに怪しまれない理由が欲しかっただけ。

 

 

座席の人間を見ると眠っている者や映画を見ている者ルールブックを読んで戦慄している者など反応はさまざまだった。車内にこれと言って怪しいものはない。ただ日光が入らず車内の灯りだけだから薄暗いだけ。

ついに手洗いに辿り着きドアを開ける。小便と大便兼用の様式便所が一つ置いてあるだけだった。

便座をあげニッカポッカを少し下げ用を足す。

 

これ今はいいけど朝起きてする時激混みだろ 俺以外の野郎は苦労するな

 

 

手洗いを済ませ座席に戻る。

それを見計らって再びスーツの男が拡声器を持ち始めた。

 

「お食事お配りいたします」

 

メニューは先ほどとあまり変わらない。ハンバーグが唐揚げに変わっただけ。

夕食のつもりなのだろうか。少し物足りなかったがこれも完食した。

 

 

 

そこからまた何も変わらない時間が過ぎていく。甚爾の体内時計だと現在は25時ごろだろう。運転手乗客全員眠るためにバスが止まるかと思ったが相変わらず深夜になってもバスは動き続けている。

ここにいる人間のほとんどは規則正しい生活からはかけ離れた生活を送っているだろうが⋯いいのか居眠り運転で全員お陀仏なんてことねぇよな

依頼者が匿名である以上呪詛師を事故に見せかけて殺すために術師がこの計画をやっているのかもしれねぇしな。俺起きておいた方がいいか?いや明日のゲームとやらが頭使う内容だった場合不利になるなどうする⋯

死にかけるほどのピンチに陥ったことはないがいざとなったら自身の五感が起こしてくれるだろう。甚爾は何よりも憎い自身の体を信頼して眠った。

 

 

 

 

 

 

「起きてくださいみなさん」

 

その声で甚爾もぱちっと目を覚ます。

 

6時くらいか。随分と早く起こすんだな。

 

「お手洗いと身支度終わりましたらバスから降りてください 会場に到着いたしました」

 

甚爾の予想通り手洗い前には長蛇の列ができていた。空いてから行こうかとも思ったが変に目立ちたくないため甚爾もその列に並んだ。

 

 

 

ようやく全員がバスから降りたところでついに参加者100人が揃う。

 

 

「これから一つ目のゲームを始めます。一つ目は『糸』です」

 

糸⋯ね。

甚爾は不敵にもほくそ笑んだ。




初の投稿なので至らない点、致命的なミスをしていた場合申し訳ございません。教えていただけると幸いです。
日付は適当です 12/31に近いものでパッと思いついたものです 大晦日生まれなんですよねおめでとうございます
甚爾さんの名字はメジャーなものにしようかとも悩んだのですがそれだと甚爾さんなのかわからなくなるリスクがあったので伏黒にしました
婿入りして伏黒になりますがデスゲームで使った名字と同じだったのは偶然ということです もしかしたら伏す黒=影なので運命的なものがあったかもしれませんが
2話からゲームスタートです
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