ヘ「えっと…どこから話したらいいのかしらね…」
麟「…え、そんなに複雑なんですか?」
ヘ「ま、まぁ…そうね。それじゃあまずは純狐の過去について話しましょうか」
麟「お願いします」
そうしてヘカーティアさんは、俺に純狐さんの過去について話し始めてくれたのだが…これが個人的にはかなり複雑で衝撃的な内容だった。
ヘ「まず…今の純狐は月の民に強い恨みを抱いているけれど、実は彼女も昔は月の民だったのよ」
麟「…は?純狐さんが…元は同じ月人だって!?じゃ、じゃあ、どうして今の純狐さんは月に強烈な恨みを抱いているんですか…?!」
ヘ「純狐はね…実の夫に最愛の息子を殺されたのよ…」
麟「夫に…息子を殺され…た…!?」
へ「ええ…どうして純狐の夫が自分の息子を殺したのかは長年の友人でもある私でも分からないわ…。でも、1つだけ判明した事はあったわ」
麟「そ、それは…?」
ヘ「純狐の夫は、月の女神〖嫦娥〗の夫でもあったのよ」
麟「…はぁ?というか嫦娥って誰ですか…?」
へ「嫦娥は月の兎達の支配者よ」
麟「な、なるほど…。…だから鈴仙に対してもあんなに強い恨みを顕に…」
つまり…純狐さんの夫は二股をしていた的な話か?それで純狐さんに嫉妬を抱いていた嫦娥という奴は夫に息子の抹殺を命令した…とかか?いずれにせよ、俺はとんでもない事に巻き込まれている事実には変わりないな。
へ「その話を聞いて、私も嫦娥に対して深い恨みを抱いたわ。でも、奴は月の都に幽閉されてしまい、奴への復讐は頓挫してしまった…。だから、せめてもの弔いとして夫への復讐は果たしたのよ」
麟「ふーん…で?俺とその話、なんの関係性があるって言うんだ?」
今の話を聞いたところで、俺には一切関係の無い話でしかない事がよく分かった。
へ「ここからが本題よ。夫への復讐は果たしたものの、純狐の心にはポッカリと穴が開いてしまったの…息子を失ってしまったという大きなショックに。でも、そんな心のを塞いでくれる存在が地上に居た…貴方よ」
麟「俺…?どうして俺が彼女の希望みたいな言われ方をされなくちゃならないんだ」
もはや話の方向が俺の理解の範疇を超えるほどになっている事に呆れてしまった俺は、ヘカーティアさんに敬語を使うのをやめてしまうくらいに話の内容が理解出来なかった。…いや、理解したくなかったというのが本音かもしれない。
へ「一時、貴方が開放した力が仙界にまで届き、感知出来た時があったの。その力とオーラを感知した純狐がこう言ったの…『私の息子が穢れた地上で甦った!』と…。そして純狐は貴方を迎えに行く準備を整えて今日、博麗神社まで迎えに行ったという事よ」
麟「…話が全く理解出来ない…どうして俺が純狐さんの息子という流れにまで持っていかれるんだ?」
へ「貴方…神の力を扱えるわね?」
麟「ま、まあ…」
ミラージュ・ワゾーの事か…?
へ「その力が原因なのよ、純狐が貴方を息子と呼ぶのは」
麟「はぁ?」
ミラージュ・ワゾーに難癖でもつけようってか?
へ「純狐曰く『神力を操れるのは巫女や神以外には私の息子ただ1人!』って純狐が聞かなくて…。さすがの私も最初は引き留めたわ?でも、純狐は止まらなかった…私の静止すらを無視したわ…」
麟「はぁ…もうわけが分からないや…。つまり神の力を操れるミラージュ・ワゾーに変身出来るから俺は純狐さんの息子、そう言いたいのか?」
へ「申し訳ないけど…そうとしか言えないわ…」
麟「はぁ…」
困ったものだ…失ったものを取り戻す為に彼女は正気を失っているのかもしれないな…。だからといって正気を取り戻させるために彼女を止めようとしたり説得しようとしても、自身の過去に触れれば怒りの矛先が俺に対して向くのは事実…はてさてどうしたものか…。
ガチャ
純「息子よ、卵雑炊が出来たわよ♪」
麟「あ、どうも…」
ホカホカ…
純狐さんはまだ風邪の治りかけである俺の為に卵雑炊を作ってくれた。良くも悪くも純粋に息子を愛した母親なんだろうな…。
麟「(カチャ パクッモグモグ…)あっち…」
純「ど、どうかしら味は」
麟「(ゴクン)…美味いよ♪」
純「(…パァァァッ!!)そう…!まだお代わりはたくさんあるわ!遠慮なく食べるのよ♪」
ピ「私も食べたいです友人様!」
純「ふふ♪ピースにも持ってきてあげる♪」
ピ「わ~い!」
ヘ「あ、私にも」
純「もちろん♪ヘカーティアの分もあるわ♪」
麟「…」 モグモグ
あんなにも眩しい笑顔を俺達に見せてくれているが、この場に"俺"が居るからこそあの笑顔が出来ているのだろう…。
麟「…厄介だな」