~月の都~
ここは月の裏側に存在する都。
ここでは生命現象における生と死によるものを月の民は〖穢れ〗と呼び、〖生命エネルギー〗の象徴である地上の妖精なども忌み嫌っている。
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ…!!
?「はっ…はっ…はっ…はっ…!」
地上で霊夢に保護されていたあの兎は、どうやら月の兎だったようだ。息を切らしながらどこかへ全速力で向かっているようだが…?
~ある者の屋敷~
ズザザッ…
?「…っ」
どうやら兎の目的地は、この屋敷のようだったが…どうやら屋敷の門前に配置されている門番に少したじろいでいるようだ。
『…』ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
~ある者の部屋~
?「桃李 物言わざれども 下自ら
彼女の名前は
月の都の防衛と地上の監視などを請け負う〖月の使者〗と呼ばれるリーダーの1人。
豊「桃や李は美味な実を身に付けるので、何も言わなくても人は集まる!」
…ジー
彼女の視線の先には
桃<ヤホー!コンニチワ!!
美味しそうに熟した桃が成っていた。
豊「(プルプル…)手を伸ばしただけでは届きそうも無いわね…ドウシマショ…」
あともう少しで桃に手が届きそうで届かない、そんな葛藤に悩まされているようだ。
豊「う~ん…(ピコーンッ!)…そうだ!私の扇子を2本使えば届くかしら?」 スッ
まるで名案が思い付いたかのように扇子を2本取り出し、再度桃を取ろうとチャレンジ!
グイ~…
豊「(プルプル…)あ、あと少しで美味しい桃が採れるわぁ…!」
ガシ…!
ついに豊姫は、欲していた桃を掴んだ。
豊「やった…!あとは落とさないようにゆっくり採れば…」
…ブチッ!
豊「…あ」
桃<グッバイ!!
ヒュゥゥゥゥン…
豊「あぁぁぁぁっ!?私の桃ちゃんがぁぁぁぁっ!!」
桃ちゃんはその自重で下へと逃走した。
豊「はぁ…桃ですら私に運動しろと言うのね?」 ピョンッ
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…
豊姫は桃の後を追うように、窓から飛び降りた。
…食い意地を張りすぎじゃないかな?
~屋敷門前~
『…だーかーらー!兎風情が綿月様に何用だって聞いているんだ!』
屋敷の門前では、兎が門番に止められていた。兎程度の存在が、綿月という高貴な者に何の用があるのか?という理由で尋問されかけようとしていたのだ。
?「き、急用なのです!あるお方からの命令で…!」
『それはさっきも聞いた!その急用とやらが何なのかと聞いているのに、どうしてお前は答えないんだ!』
?「そ、それは…」
(あのお方が来てくれればこんな事にはならなかったのに…!)
月の兎は、先日の事で頭を抱えていた。
~先日~
永「…貴女がなんと言おうと、私は月に戻る気はありません」
?「ど、どうしてですか…!?貴女様が月に戻ってさえいただければ、全て丸く収まってくれるのですよ!?」
それはつい先日の事。永遠亭を訪れていた月の兎は、どうやら永琳に用があって地上に降りて来ていたようだった。…しかし、永琳は兎の『ある混乱を解決する為に月に戻ってきて欲しい』という懇願を拒否してしまったのだ。
ついでに、『月の仕事が嫌で地上に逃げて来たので匿って♪』という懇願も拒絶していた。流石に自分勝手過ぎではないか?この兎。
永「貴女…月に未練があるのでしょう?」
?「…!ど、どうしてそれを…!?」
永「貴女は月の羽衣で地上まで降りて来た…その羽衣は月と地上を往来出来る道具です。それは何故か?また月に戻る事も視野に入れていたから…違いますか?」
?「っ…賢者様には何もかもお見通しってわけですね…。正直…心の中で、月に戻れないかなと考えている自分も居ます…」
永「はぁ…(ゴソゴソ スッ…)これを」
永琳は、とある封書を取り出した。
?「これは…?」
永「そこに書いてある人物に、この封書を届けなさい」
?「えっと…?綿月へ…か。…ん!?綿月へ!?わ、私みたいなただの兎が、綿月様にこれを渡せと!?」
永「ええ」
?「無理無理無理無理!無理ですよそんな事!!」
永「…あの子達も随分と偉くなったのね。(ボソッ)大丈夫よ、その封書をあの子に堂々と渡せば月の都は安泰でしょう。任せましたよ?」
?「は、はい…」
(私なんかに出来るのかなあ…?)
永「あと、私がどうして月に戻らないかの理由をもう一つ付け加えてあの子達に伝えてもらえますか?」
?「もう一つの理由…?」
永「私は、地上のとある"青年"をひどく気に入ってしまったの。その子から私は離れたくないから月には戻りません♪って」
?「は、はあ…」
…といった経緯があり、今に至る。
『お前が急用の要件でここに来たという証拠を出せ!』
?「っ…」
(これを見せてしまえば、私が月から脱走した事がバレてしまう…!でも見せないと私の立場も危うい…どうしよう!?)
そう悩んでいた、その時だった
ヒュゥゥゥゥン…ベチャッ!!
『ん?』
?「へ?これは…桃?」
親方!空から桃が!?
?「…えっと?」 チラッ…
・上を向く
兎が上を向いたその時だった
ブアッ…!
豊「豊作♪豊作♪」 ヒュゥゥゥゥン…
親方!今度は空から女の子が!?
?「あわわわわわっ!?」 アタフタ
豊(ドスンッ!!!)
?「ぐっふぅっ…!!?」
豊姫は、兎の背中に見事着地。
『と、豊姫様!?』
豊「桃を収穫していたら何やら門前が騒がしいじゃない?だから様子を見に来たのよ、ついでにね」
『は、はぁ…どうもすみません…』
豊「で、何をそんなに揉めていたのかしら?」
『…豊姫様の足元で伸びている兎が、どうしても綿月姉妹様に会いたいと聞かなくて』
豊「足元の兎?(チラッ)…あ」
?「キュウ…」
兎は完全に気絶してしまった。
スタスタ
豊「いやぁ…さっきは申し訳なかったわ?」
?「い、いえ!私が避けられなかっただけなので…!」
豊姫の手助けもあってか、兎は無事に屋敷の中へ。
スタスタ
?「お姉様…まーた新しいペットを捕まえたんですか?」
豊「あら依姫♪」
依「まったく…」
彼女の名前は、
豊姫と同じ月の都の防衛と地上の監視などを請け負う〖月の使者〗のリーダーの1人である。
?「私はペットではありませんよ♪」
豊「そう!残念ながらペットではございません!」
依「は、はあ…(ジー)それに庭に成ってた桃をまた…。もうちょっと熟れたら全部収獲して宴会を開こうと思っていたのに…。はぁ…」
豊「まあまあ、これでも見て元気出しなさいよ」 スッ
依「…これは?(ジッ…)…!」 パァッ…!!
豊姫から手渡された封書を見て、依姫の顔は明るくなった。
依「…そう、地上のとある青年に興味が止まらないから、月には帰らないと」
?「は、はい…」
豊「アハハ…」
依姫は、永琳が何故月に戻らないのかという理由があまりにもくだらな過ぎて呆れていた。そして豊姫は失笑していた。
依「…まぁ、元気にやってるならそれでいいですよ」
?「では、地上に逃亡した八意様を許すので?」
豊「あのお方は私達の恩師です。間違った事をするような方ではないと分かっていますからね」
?「へぇ~…」
依「ですが、貴女は地上に逃げた罰を与えなければなりません」
?「え!?ど、どうしてですか!」
依「(ギロリ)お前には課せられていた仕事があったはず…。それが嫌だから逃げた、でも許してください、そんな甘い話があると思って?」
?「うっ…それは…」
依「だから罰を与えるのです」
?「は、はいっ…!」 ビクビク…
依・豊
「「私達とこの屋敷に住みながら、共にこの都を護るという罰を」
?「は、はい…。…はい?」
依「貴女はもう、餅搗きの現場には戻れないでしょうからね」
豊「晴れて私達のペットになるという事ね♪」
?「は、はい…!」
依「良い返事ですね」
豊「これからお前を"レイセン"と呼びましょう♪これは地上に逃げてしまった前のペットの名前です♪」
レイ「レイセン…ありがとうございます!」
こうして無事に永琳からの封書を渡す事に成功した"レイセン"は、晴れて綿月姉妹のペットとなれたのである。
一方、永琳からの封書を貰った綿月姉妹達は
依「お、お姉様…この内容は…」
豊「ええ…かなりの厄介事が起き始めているらしいわね…」
永琳から送られてきた封書の内容に驚愕していた…。