華月麟の幻想記   作:華月麟

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菫子と生活・3

麟「…これだ」 スッ…

 

菫「これって…あの有名な虐待事件の新聞…?」

 

麟「…そもそもから聞きたいんだが、どうしてお前はこれを切り抜いて保存した…?」

 

菫「え…?じ、実はその虐待されてた子供…十数年経った今でも見つかってないってニュースが流れて、これもオカルトに関係すると思って切り抜いたんだけど…」

 

麟「…そうか、お前はそういうオカルトに興味がある奴だもんな…そうだよな、仕方ないよな…」

 

菫「…?」

 

あんな姿を見せておいて、今更伝えないのもおかしな話だから…覚悟を決めて言おう…。

 

麟「…その行方不明になった子供が」

 

 

 

「俺なんだよ」

 

 

 

菫「えっ…!?い、今なんて…」

 

麟「…その十数年も見つからない行方不明の子供が俺なんだ…」

 

菫「だ、だからずっと見つからなかった…」

 

麟「まさか…こっちに戻って早々にこんな事になるとはな…紫さんや霊夢が警戒していた通りだったな…」

 

菫「まさか霊夢っちや紫さんが麟を外の世界に行かせたくなかった理由って…!?」

 

麟「俺はこの世界に強いトラウマを抱えている、だからだよ」

 

菫「そ、そんな過去を抱えておきながら…どうして私のわがままなんかに…!?」

 

麟「なんでだろうな…?」

 

菫子にそう問われ、ふと俺も理由を考えて見たが…

 

麟「…菫子が困ってそうだったから、これに尽きるんじゃないのかな」

 

菫「べ、別にわざわざ無理してまでこっちに来てくれなくても…!」

 

麟「俺はお節介なタイプなんでね、どうしても助けたかったのさ。それと菫子」

 

菫「な、なに?」

 

 

麟「近くに花屋ってあるか?」

 

 

菫「…花屋?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~全ての始まりへ~

 

 

ザッ…

 

麟「まさか…もう一度ここへ赴く時がくるなんてな…」

 

 

俺は近くの花屋で花束を買い、全ての始まりの地へとやって来た。その建物は、夫婦2人が捕まって以来売地となっているのだが、〖虐待の痕が残っているような家には住みたくもない〗という理由からなのか…未だに買い手は見つかっていないようで、その内お祓いをした後に建て壊しが始まるという話を菫子から聞かされた。

 

 

菫「ど、どうしてわざわざこんな来たくもない場所に…?」

 

麟「まぁ…最後の別れをする為かな」

 

菫「最後の別れ…?誰と…?」

 

麟「この家と過去にだ」

 

パサッ

 

俺は買った花束を門の前に手向けた。

 

麟「…ふぅ」

 

菫「麟…大丈夫?」

 

麟「少し…桜通りに行こうか、夜桜が見たい」

 

菫「そ、そうね…気分転換に行きましょうか…」

 

花束も手向け終えたので、気分転換に近くの桜通りへ移動した。

 

 

 

 

~桜通り~

 

 

麟「(ジーッ…)綺麗だな…」

 

菫「…」

 

桜通りに移動してから、麟は神妙な顔付きで桜を眺めている。

 

麟「なぁ菫子」

 

菫「(ビクッ)な、なに?」

 

麟「俺はな、ふと思った事があるんだ。〖あんな奴らの下に生まれなければ、俺は普通の人間として違った道が歩めたのかな〗って」

 

菫「え…?な、なにを急に言い出して…」

 

麟「この世界では、俺は普通の人間としては生きられない。どうしても幻想郷のような非現実的な世界じゃないと生きていけない存在なんだ。だからこそ思うんだ、まともな人間の下で生まれれば…まともな人間として生きられたのかなって…」

 

菫「もしかして…後悔してるの…?幻想郷で生き続けてきたことを…」

 

麟「…(ニッ)まっさかぁ!むしろ俺は普通じゃなくてよかったって思ってるよ」

 

菫「…へ?」

 

まさかの回答に、菫子は唖然としてしまった。そこは「後悔してる」って言う場面じゃないのか?

 

麟「最初はそう思ってた時期もあるさ?でも、改めて考えると…俺は色んな人達から愛されて今まで生きてこれた…俺の願いでもあった〖人並みの幸せ〗を幻想郷は叶えてくれたんだ。今更後悔なんてないよ」

 

菫「…意外とあっさり割り切ってるのね」

 

麟「今更深く考えたって過去が変わるわけじゃない。だったら今を面白おかしく生きた方が楽しいじゃん?」

 

菫「ま、まあ…麟がそれでいいならいいんじゃない…?」

 

麟「だな!すまんな、こんな事に付き合わせちゃって」

 

菫「わ、私の方こそごめんなさい…!麟の過去にそんな事があるなんて知らずにこっちに連れて来ちゃって…」

 

麟「(フッ…)いいんだよ、いつかは克服しなくちゃいけない事だったからな」

 

菫「でも…[プニ]むぐっ…!?」

 

菫子が喋ろうとした時、麟に唇を指で塞がれてしまった。(唇では塞いでないよ!)

 

麟「俺がいいと言ってるんだ、だからお前は気にするな。いいな?」

 

菫(コクコク…!)

 

麟「よろしい!じゃあ、さっさと帰って晩飯にしよう!宿題は明日やればいいだろ?」

 

菫「う、うん…帰りましょっか」

 

スタスタ

 

麟と菫子は、晩御飯を食べる為に家へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麟「(クルッ)…アリーヴェデルチ」

・さよならだ

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