映「まったく…貴方は死んだ身だというのに、何故こんな事を…」
爺『すみませんねぇ閻魔様…現世に戻ってきた今、どうしてもやりたいことがあったもので…』
小町「いやいや…その気持ちはよく分かるけど、おじいさんが売ってくれたかき氷で皆に悪影響が出たら、おじいさんは博麗の巫女に退治されちゃうんだよ?」
爺『本当に迷惑をかけました…』
映「そもそも…貴方は何故かき氷をまた人里で販売しようと思ったのですか…?」
『ワシは…自分が作ったかき氷を皆が食べて、それで皆が美味しい美味しいと言って笑顔を見せてくれるのがどうしても忘れられなかったんです…。現世に戻ってきた今、もう一度だけかき氷を作って皆の笑顔が見たかったんです…』
おじいさんの霊は切実な思いを映姫に語り、かき氷をまた人里で売り出した理由を話した。
映「…お気持ちは分かります。ですが…貴方のその身勝手な行動で人里の皆さんに被害がもし出てしまったら、誰がその責任を取るのですか?」
爺『それは…』
映「口うるさく言わせてもらいますが、貴方はもう死んだ身なのですよ?霊となってしまった貴方が作ったかき氷で、人里の皆さんに何かしらの被害が出たら取り返しがつかないのですよ」
爺『そ、そうですね…』
霊は映姫に正論で叱られ、返す言葉を失った。
麟「なぁ映姫さん、少しいいか?」
映「なんでしょうか?」
麟「その爺さんの処遇はどうするつもりだ?」
映「どうするつもりだ…ですか、別にこの方は生きている時に悪事を働いていたわけではないのでそのまま白玉楼まで送ろうと思っています」
華「そもそも論ですが、本来冥界へ行くはずの善良な霊が地底という地獄に送られたのかが疑問なのですが…」
小町「言われてみればそうだねぇ…?(ピコンッ!)映姫様、どうやらこちらも色々と調べなくちゃならない事がありそうですよ」
映「はぁ…全ては我々の落ち度ですね。本当に申し訳ありません…」
どうやら今回の件は閻魔側にかなりの落ち度があるようだ。如何に魂達をずさんな管理をしていたかがよく分かる。
麟「魂を冥界か地獄へ運ぶ任務に就いている奴が、面倒だからと適当に仕事をやっていた可能性があるな…」
映「その件は私達が詳しく調べます。今はこの霊を送り返すのが先決です」
映姫は急いで霊を本来滞在するはずの冥界へ送ろうとしたが
麟「あー、ちょっと待ってくれ!まだ冥界に送らないで欲しいんだ」
映・小町「「…え?」」
麟がそれを阻止した。
麟「いやぁ、俺のわがままなんだが…最後に爺さんの願いを叶えてから冥界に送っちゃダメなのか?」
映「…ダメとは言いませんけど」
麟「やったぜ!おい爺さん、あんたは冥界に行くまで多少の猶予が出来た!あんたの願いはなんだい?」
爺『ワシの願い…そんなもの1つしかありませんよ』
霊は、最後の願いを麟と映姫に伝えた。
『ワシの作ったかき氷を食べて、笑顔になる皆を見たいのです』
麟「ふっ…その願い、閻魔様は聞き入れてくれるか?」
映「まぁ…人里の人達になんの被害も影響も無いので、その願いを聞き入れるしかありませんね。ここでその願いを聞き入れないのは鬼畜の所業です」
爺『で、では…!?』
映「昼過ぎまでです。昼過ぎまで貴方の最後のかき氷を皆に味わってもらいなさい」
映姫は、おじいさんの最後の願いを聞き入れた。
爺『で、では早速作っていこうじゃないか!』
麟「にししっ♪これで暑い夏を越せるぞ!」
あ・針「「やったーっ!!!」」
霊「まぁ、これもありね♪」
華「…まぁ、そうですね♪」
ガリガリガリガリ!!!
爺『さあさあ!ワシ特製のかき氷だよ!今日限定で食べれるよ!』
霊は喜々としてかき氷をどんどん作り始めた。
『(パクッ)美味しい〜!』
『(キーンッ!!)いったぁっ…!♪』
霊「(シャクシャク)う〜ん…!最っ高!!」
華「(シャクシャク)氷がふんわりしていて…舌の上でサッと消えていくのがたまらないわ…♪」
針「(シャクシャク キーンッ!!)あんぎゃっ!!」
あ「(キーンッ!!)アウンッ!!」
麟「針妙丸お嬢様、貴女様のわがままは叶いましたか?」
針「苦しゅうない!!♪」
麟「それは何より♪」
<キャッキャッ♪
爺(あぁ…ワシはこの為に毎年この時期はかき氷を作っていたんだ…)
霊は自身が今まで何の為にかき氷を作り続けてきたのかを改めて再確認し、そして確信した。
自分はこの為に今までを生きてきたのだ、と。
~約束の時間~
爺『ふぅ…もう氷は全部無くなった!今まで皆ありがとうのぉ!』
『『『ごちそうさまでした!!』』』
霊が用意していた大量の氷は、約束の時間には全て完売してしまった。如何に霊が作るかき氷が人気であったのかを教えてくれている。
華「しかし…これで、二度とこの美味なかき氷は食べれないのですね」
霊「おじいさんは冥界に帰ってしまうから…そうなるわね」
霊夢と華扇は、この最高に美味なかき氷が食べる事が出来ないという事に名残惜しさを感じていた。
爺『いや、そんなことはありませんよお二人共に』
霊・華「「え…?」」
霊は2人に優しく話しかけた。
爺『(スッ…)ここにワシのかき氷のレシピがあります。これをどこかの甘味処に伝授させれば、いつでもこのかき氷が食べれますよ』
霊「じゃ、じゃあ…!?」
爺『ふふふ、ワシがいなくなってもこの味は受け継がれるでしょう』
華「やったぁっ!」
爺『麟さん、このレシピをどこかの甘味処に渡してください』
麟「え、俺がそんな重責を!?」
爺『貴方なら大丈夫だと信じていますので』
麟「ま、参ったなぁ…」 スッ…
そう言うと、麟は秘伝のかき氷レシピを受け取った。
映「では…行きましょうか」
爺『はい。(チラッ)麟さん、ありがとうございました』 ニコッ
麟「あっちでゆっくり身体を休めてくれ」
爺「ははっ、そうさせてもらいますよ♪」
ザッザッ…
小町「麟、世話になったね。この礼はいつか映姫様とさせてもらうよ♪」
麟「別に気にすんな」
小町「謙虚だねぇ…?じゃっ♪」
ザッザッザッ…
映姫と小町は、霊を連れていくべき場所へと共に人里を去っていった…。
霊はずっとこの人里で生きてきた喜びを、皆が笑顔でかき氷を食べてくれた喜びを心にしまいこみ…冥界へ。
華「しかし、不思議ですね」
麟「何が?」
華「霊が作った物を食すと黄泉竈食になるはずでは…?なのに人里の皆さんは全く黄泉竈食の効果がなかった…どういうことでしょうか」
麟「そんなもん簡単だろ」
華「…?」
麟「あの爺さんは、常に誰かの笑顔を見たいがためにかき氷を作り続けていた。善良な霊が作る食べ物は、黄泉竈食の効果を持たなかった…ってとこなんじゃないのか?」
華「…日頃の善行が、黄泉竈食の効果をかき消したと?」
麟「俺が勝手にそう思ってるだけだがな」
たとえどんな理由で黄泉竈食が発動しなかったとしても、あの爺さんは皆の為に、皆の笑顔を見たいが為にかき氷を作り続けた…それは事実だ。
それだけ分かっていれば十分だ。
行く当てを見つけた小さな魂
安らかな笑み
生きた喜びを胸にしまい込み
次へ旅立つ…