華月麟の幻想記   作:華月麟

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パイロットの過去

パチパチ

・焚火の炭が鳴く

 

 

壮吉(ガツガツムシャムシャ!!!)

 

麟「おいおい、そんなに慌てて食わなくても銀シャリは逃げないからゆっくり食えよ」

 

壮吉『ムグッ!?ゴホッゴホッ!!』 ドンドンッ!!

 

いつぶりの食事なのだろうか…?二等兵曹は今まで食事を取っていなかったような食べっぷりで、白米をかっ込んでいた。

 

あまりにも慌てて食べるので、喉に詰まらせてしまうくらいには。

 

麟「ほれ(チャプンッ)水だ飲め」

 

壮吉『(ガッ!! ゴクゴク…)けはっ…!あ、ありがとうございます大尉…』

 

麟「その感じだと…いつぶりの飯だ?」

 

壮吉『…さぁ?私も正直、まともに食事を取ったのがいつなのか忘れてしまいましたね…』

 

麟「なるほどな…」

 

どうやら二等兵曹は日本が敗戦に傾き、まともな食事すら取れなくなり始めていた時代辺りの兵士だったのだろう…。

 

壮吉『あ、あの、大尉…』

 

麟「うん?どうした二等兵曹」

 

壮吉『食事に夢中で聞きそびれていたのですが…ここは一体どこなのでしょうか…?日本の風景には似ているのですが…それにしてはどうも見慣れない建物等が建っているので…』

 

麟「ああ、説明していなかったな。ここは〖幻想郷〗、分かりやすく言うなら死んだ奴や色んな神様、妖怪とかが住んでいる異世界だな」

 

壮吉『い、異世界!?』

 

麟「まあ、それを裏付ける証拠としては…俺がお前の戦闘機の上で仁王立ちしていたのが良い例だろ?」

 

壮吉『た、確かに言われてみれば…』

 

二等兵曹はようやく状況が飲み込めてきた様子だ。

 

壮吉『つ、つまり私は…死んでこの異世界にやって来たという事なのでしょうか…?』

 

麟「うーむ…そうとは言い切れないかもだな。元々、魂としてこの幻想郷に居た可能性も捨てきれないからな」

 

壮吉『し、しかし、こうして零に乗って私はこの世界を飛び続けていたのですよ…!?』

 

麟「あのなぁ…今はもう1940年代はとっくに終わって、2000年代に突入しているんだぞ?」

 

壮吉『えっ…!?そうなのですか!?』

 

麟「今の日本は昔とは比べ物にならないくらいに発展している。少なからずお前の記憶の日本は存在しない、存在するとしたらこの幻想郷のみだろうな」

 

壮吉『で、では戦争はどうなったのですか…!?』

 

麟「日本は負けた、酷い被害を負ってな…」

 

壮吉『そんな…!?では…我々は何の為に戦ってきたというのですか!?』

 

そう悲観的になるのも無理はない、昔の兵士達は最後まで日本は負けないと信じ込ませられて戦い続けたのだから…。

 

麟「そう悲観的になるな、お前達の戦いは無意味だったわけではない。お前達のおかげで独立を果たしたアジア国の数は計り知れない。全部が全部無駄だったわけではないよ」

 

壮吉『そ、そうなのですか…。すみません大尉、いきなり取り乱してしまって…』

 

麟「いや、取り乱してしまうのは当たり前の事だろう。お前達は最後まで負けないと信じ込まされて戦い続けて来たのだからな」

 

壮吉『は、はい…』

 

麟「それで…お前はどうやって戦死したか覚えているか?もちろん答えたくなければ答えなくてもいいからな」

 

壮吉『わ、私は菊水作戦という沖縄諸島周辺での特攻作戦に参加しました…覚えているのはそれだけです…』

 

麟「なんで戦闘機にまで乗らされて体当たり攻撃なんてしなきゃいけなかったんだろうな、お前らは…」

 

壮吉『それが上の命令でした。上官の命令は絶対なので』

 

麟「特攻作戦が敗戦を早めると分かっていてもか?」

 

壮吉『…私のような二等兵には選択の余地なんてこれっぽっちも無いですから…』

 

麟「それもそうか…。まあいいじゃないか、お前はこうして自由を手にしているんだからな」

 

壮吉『そうでしょうか…?』

 

麟「ああ、俺はそう思うね。もう一つ質問するが、家族は居たか?」

 

壮吉『は、はい!妻が1人おりました!』

 

麟「今でも会いたいか?」

 

壮吉『ははっ…会いたくても、これほどの月日が経ってしまっては会えませんよ…』

 

麟「そうか…。…さあ、明日は早い!さっさと寝よう!」

 

壮吉『え…?明日は何かご予定が?』

 

麟「まあな♪お前にも関係する事だからさっさと寝ろ」

 

壮吉『了解しました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争によって家族と離れ離れ…

 

壮吉の妻は、壮吉の帰りをどれだけ待ち続けてたんだ…?

 

麟「(グググ…)可能性はまだある…。この傷心しきった兵士を助けるには…これしかない…!」

 

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