~翌日~
チュンチュン…
壮吉『おはようございます、大尉!』 ビシッ!!
麟「おはよう二等兵曹」 ビシッ!!
二等兵曹は元軍人だからなのだろうか、早起きの癖は抜けきっていないようだ。
壮吉『それで…大尉は今日、ご予定があるという事ですが…』
麟「ああ、ある所に用があってな?それで「見つけましたよ!!!」…あ?」
壮吉『ん?』
麟が今日したい事を二等兵曹に伝えようとした時、誰かの声に遮られてしまった。
ザッ…!!
華「麟!今すぐその怨霊から離れなさい!」
麟「華扇!?」
霊「麟!私も華扇と同じことを言わせてもらうわ、その怨霊から離れて!」
麟「霊夢!?」
早「麟さん、ご無事で何よりです!」
麟「早苗も!?」
どうやら声の正体は華扇達だったようだ。しかし、霊夢と華扇の顔はどこか険しく…
壮吉『大尉のお知り合いですか?』
麟「ああ、紹介するよ。あの紅白巫女が、この幻想郷の守り神的存在〖博麗霊夢〗だ」
壮吉『そ、そうなのですか!?は、初めまして!私は佐久間壮吉と「挨拶なんていいわ!今ここで退治させてもらう!」…えっ、退治!?』
霊「そうよ!今ここであんたを退治させてもらうわ!」 バッ!!
そう言うと霊夢はお祓い棒と札を取り出して戦闘態勢に入った。
麟「お、おい早苗!?これはどういう事だ!?」
早「遅かったんです!その方は既に怨霊化が始まっています!」
麟「何っ!?」 バッ!!
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!
二等兵曹から危険なオーラが放出され始めていた。
麟「ま、まさか…!?」
壮吉『た、大尉…私は…!?』
麟(お、遅かったのか…!?)
霊「麟、もう一度だけ言うわ…そいつから離れて!」 ジリジリ…
霊夢はゆっくり…ゆっくりと麟達へと近づく。二等兵曹という危険因子を消し去る為に…。
麟「ま、待てよ霊夢!?やっと解決策を見つけたんだ!あともう少しなんだ…!」
華「貴方の言うあともう少しとやらを待っていれば、その霊は危険な怨霊へと変わってしまうわ!ここまでよく頑張ったけれど…もう時間切れよ!」
麟「なっ…!?」
華扇は酷な現実を突きつけて来た。どうやら霊夢が動かなくてはいけないくらいに二等兵曹は怨霊化が進んでしまったようだ。
麟「くそっ…!こんな所で止まっているわけには…『大尉…』あ?!なんだよ二等兵曹!」
壮吉『もう十分です、私はもうここで十分ですよ』
麟「…何?」
壮吉『私がこのまま、この世界に居ては危険なのでしょう?ならば…私は甘んじてその運命を受け入れます』
『上の命令は…絶対ですから…』 ニコ…
二等兵曹はそう言うと、悲しみでゆがんだ作り笑顔を見せた。
麟「…」
壮吉『短い間でしたが、ありがとうございました!』 ビシッ!!
そして覚悟を決めたかのように敬礼。
霊「あら、意外に聞き分けの良い怨霊で助か「貴様ぁっ!!!」へっ!?」
バギィッ…!!!
麟「…っ!!!」
壮吉『がっ…!?』
ドサッ!!
いきなり麟は怒りに身を任せて拳を振るい、二等兵曹を殴り飛ばした。
壮吉『た、大尉…!?』
麟「貴様…立てぇっ!!」 ガシッ!! グイッ!!
壮吉『[グイッ!!]うおぉっ!?』
麟は二等兵曹の胸ぐらを掴むと、無理やり引き寄せながら立たせた。
早「り、麟さん!?」
麟「そうやって貴様は、なんでもかんでも上官命令だからと言って諦めるのか!」
壮吉『し、しかし…!私がこの世界に居ては…「だからどうした!!」っ…!?』
麟「やっとお前は…戦争という呪縛から解放された…!ついにお前は、お前の望みを…わがままを…願いを叶えられるチャンスが今はあるんだ!!それを無下にすると言うのか貴様は!!!」
壮吉『ではどうしろと!?この世界には私が探し求めている者はいない!この世界に私の家族はどこにもいないのですよ!!?』
麟はほんの少しの希望を、二等兵曹は現実を、互いに真反対のものを見ていた。
麟「いいや…まだだ…!まだ可能性はある…!お前の探している家族が見つかる可能性は、まだあるんだ!!」
壮吉『いいえ…そんな可能性はありませんよ…どこにも…!』
麟(ブチッ…!!)
二等兵曹の全てを諦めた一言に、堪忍袋の緒が遂にはち切れた。
麟「「黙れ!!まだ可能性はある!俺があると言ったらあるんだ!!!」」 グワッ!!!
壮吉『[ビリビリ…!!]大尉…』
麟「俺がお前の望みを叶えてみせる!」
壮吉『ほ、本当ですか…?』 ジワ…
麟「絶対に叶えてみせる!」
「「お前の望みはなんだ!佐久間二等兵曹!!!」」
壮吉(自分の望み…それは…)
ポタッ…ポタッ…
壮吉は麟の言葉を聞いて、今までせき止めていた涙が溢れ出していた。
壮吉『恵(めぐむ)…』 ツー…
麟「…なに?」
壮吉『佐久間恵(さくまめぐむ)…私の妻の名前です…!』 ポロ…ポロ…
麟「…お前の望みはなんだ?言ってみろ…!」
壮吉『わ、私は…』
『『妻に…もう一度妻に会いたいです…!!』』
壮吉二等兵曹は、ついに自分の望みを麟に吐露した…最初で最後の望みを。
麟「その望み…聞き入れた…!」