麟「あ、あんたは!?」
振り向いた先には…
流翠「初めまして、私は流翠という者です」
幽々子という女性の婚約者が居た。
麟「あんたはとっくの昔に死んでいる…。それなのにどうして…?」
1000年以上昔に死んだここに居るということはこの男も亡霊なのか?
などど頭の中で考えていた、その時
流翠「貴方…私の遺言書を持っていますね?」
と言われたので俺は懐から、紅魔館から持ち去った紙を取り出した。
麟「これの事か?」
流翠「そうです。どうやらそれに込められていた私の思いが西行妖に届き、貴方に西行妖の誕生までの歴史を見せたのかもしれません。そして私達をこのような場所でめぐり会わせた。あくまで、憶測の域としか言えませんがね」
もうここまで来ると、幻想郷だからなんでもあり得るとしか言いようのない領域までやってきていた。
麟「もう…なんでもいいですよ…ここ、幻想郷だから」
もう考える事をやめて、そう言う事にしておこうと俺は決めた。
そんな事よりも、婚約者が俺に何の用なのかが重要だ。
麟「それで…俺に何の用なんですか流翠さん」
そう質問すると
流翠「私の元婚約者…西行寺幽々子を止めてほしいのです」
婚約者はそう答えた。
元より俺はそのつもりで冥界に来ていた為、そんなに驚かなかった。
麟「そのつもりで俺は冥界に来たんだ。だからさっさと冥界に帰りたいんだよ」
流翠「それだけが理由ではないんです!」
流翠は、そう強く俺に訴えて来た。
麟「どういう事だ?」
流翠「幽々子の目的は…西行妖の下に眠っている自分を蘇らせる事なんです!」
…ここで衝撃の事実が発覚した。1000年以上前の自分を蘇らせてどうしようというのか。
麟「なんで幽々子はそんな事を…」
流翠「亡霊となって生まれ変わった彼女には、生前の記憶が無いんです。恐らく、彼女がそんな行為に走った理由は興味本位だと思われます…」
麟「興味本位でこんな事を!?」
流翠「彼女の能力は 死に誘う程度の能力 から 死を操る程度の能力 に変化しました。彼女には常に死が付きまとっていた…。だから逆に西行妖を無理やり満開にして自分を蘇らせようとしているのでしょう」
常に死が付きまとっていたからこそ、逆に何かしらでもいいから封印された自分を蘇らせる…つまり【生】に興味を持ったという事か…?
流翠「しかし、問題はそこじゃないんです」
麟「西行妖が生命ある者達の生気を吸い取る事か?」
流翠「それもそうですが…幽々子は自分が西行妖の下で封印されていることを知らないんです。生前の記憶をなくしているので…」
麟「それの何が問題なんだ?」
何か問題がない限りこんなことは言わないはずだ。
流翠「もし彼女が封印を解いたら、1000年以上の時を得て幽々子が蘇りますが、逆を言えば1000年以上も時が経っているので、恐らく身体が持たずに消滅してしまいます」
麟「なるほど…そういうことな「それだけじゃありません!」…まだ何か?」
どんだけ問題があるんだ?
流翠「幽々子は…彼女は八雲紫の友人なんです!!」
な、なんだと…?
麟「今なんて言った…?!幽々子が八雲紫の友人…?!」
これまた、衝撃の事実が発覚した。紫さんと面識があり、友人関係だったとは知らなかった。
流翠「幽々子とは生前の時から友人でした。西行妖は八雲紫のような大妖怪でもどうにか出来るようなものではなかった…。だから、もし西行妖が再び満開になったら、今度こそ八雲紫は幽々子と永遠の別れを告げるんです!」
それなら、尚更こうしてはいられない…。俺には分かる、永遠の別れはとても悲しいことだ。会いたいと思っても、二度と会うことの出来ない虚しさ。そんな思いを命の恩人には味合わせたくない…!
麟「分かった、必ず幽々子は止めてみせる…。そしてこの異変にケリをつけて見せる!」
俺はそう、流翠に誓った。
必ず止めて見せる…!これ以上悲しみを増やさない為に…
流翠「お願いします…。あ、それと貴方に渡したい物があるんです」 ゴソゴソ
麟「まだ何かあるのか!?早くしてくれ!こうしている間にも西行妖は桜を芽吹かし始めているんだ!」
俺は焦りを隠せなかった。こうしている間に西行妖が満開になったらすべてが手遅れになるからだ。
流翠「これを貴方に譲ります」 スッ…
そう言うと流翠は俺に、美しい宝石がはめられた腕輪を手渡してきた。
麟「これは…?」
流翠「我が家系に先祖代々、受け継がれてきた腕輪です。もっとも…私が誰かに受け継がせる前に自害したので、その後は受け継がれていませんが…」
麟「そんな大切な物を俺なんかに手渡していいのか?」
流翠「もちろん…むしろ貴方がいいのです。貴方なら、その腕輪の真価を遺憾なく発揮できると思いますので」
麟「腕輪の真価?」 カチッ
・右手首に腕輪を装着
流翠「その腕輪は装着者の思いを力に変える能力を備えています。どうやら、長い年月をかけて、その腕輪にも何かしらの能力が付与されたんでしょう」
麟「分かった…あんたの幽々子を止めたいという意思は俺が受け継ぐ…!」
流翠「よろしくお願いします…。それと、この異変が終わったら彼女にその遺言書を渡してやってください。きっと生前のころを思い出すはずです」
麟「分かった。必ず渡しておく…」
そして、時間がやって来たのか、流翠の身体が光り始めた。
流翠「そろそろ、サヨナラの時間ですね…」
麟「ああ…。さようなら流翠、もう何も心配しなくていい…ゆっくりと休んでくれ」
流翠「さようなら…」 パァァァァ…
お互いに別れの言葉を交わし、彼は消滅した。
キィィィィィィィィン…
麟(やっとか…長いようで短かったな)
俺も光に包まれ、元の場所へと帰っていった。
~冥界(西行妖の真下)~
麟「はっ!?はぁ…はぁ…ここは…」 キョロキョロ
辺りを見渡すと、さっきまで居た空間とは違い、最初にやって来た西行妖の真下に戻ってきた事が確認出来た。
麟「今まで見て来たのは夢…じゃなさそうだな」
俺の右手首にはちゃんと、譲り受けた腕輪が装着されていた。
麟(任せろ、必ず止めて見せるから心配しないでくれ)
俺は心の中でそう誓った。
ドガァァァァァン‼
俺の後ろで大きな爆発音がした。そうだった…戦いはもう始まっているんだ!
麟「急がないと…!…華月麟、行きます」 ギャウッ‼ ドウッ‼
俺は全速力で戦場へと向かった!
幻想郷だからあり得る事