皆、この傷を見て驚いていることだろう。なんたって、この背中にある傷は〖ある人達〗を除いて、誰にも見せていないのだから…。
霊「り、麟…何なの…?その惨い傷は…。一緒にお風呂に入っていた時だって、背中にそんな傷なんて見なかったわよ…?」
麟「偽装魔法さ、服を着ていない時は常にその魔法を使って、皆には見せないようにしていたんだよ…」
魔「な、なんで今まで黙ってたんだぜ…!?」
そんなこと…決まっている。
麟「教えたところで…どうにか出来たのか?」
霊「そ、それは…」
魔「少なからず…パチュリーなら治せたかもしれないだろ!?」
麟「分かってないな…俺はある〖恩人〗以外には知られたくなかったんだ。でも…永琳の薬や治療に対する知識を聞いて思ったのさ、もしかしたら治せるんじゃないかって」
永「それで永遠亭に来たのね…?」
麟「どうかな…?この傷は消せるかな?」
永(サワサワ…)
永琳は、背中の傷を触りながら考えていた。
あまり見られたり、触られたくはないが…治してもらうからには我慢しないとな。
永「…痛みはある?」
麟「物理的には無い…ただ精神的には大きな痛みはあるかな。でも…その傷が消えれば、それも無くなるかも」
永「ここまでひどい傷だと…かなり強力な塗り薬が必要になるわね…。しかも、塗って傷が消える度にそれに伴う激痛も走るわ…。それも想像絶する痛みが…」
麟「それじゃあ…無理そうか?」
永「いいえ…恐らくは可能よ。最善は尽くすつもりよ?これでも人里のお医者様なんですから」
永琳からはとても頼もしい返答が帰って来た。
麟「それじゃあ…お願いしてもいいかな…」
永「塗り薬の調合をしてくるわ。それまでここで待っていて。それと…かなりの激痛が走るかもしれないから麻酔を打ちましょう」
麟「いや…麻酔なんていらない」
永「何を言っているの!?」
魔「永琳の話を聞いていたのか!?ひどい激痛が走るんだぜ!?」
麟「いらない…」
霊「なんでそこまで強がるの!?大人しく麻酔をしてもらいなさい!」
麟「忘れない為だ!!」 バンッ!!!
思い切り机を叩いて、声を荒げた。
皆(ビクッ!?)
麟「二度とその痛みを忘れない為にも…麻酔はいらない。その痛みを乗り越えて俺は過去を乗り越える…〖弱かった頃の俺〗を捨てて、俺は強くなるんだ!!」
永「分かったわ…それじゃあ、治療の準備をしてくるわ」 タッタッタッ…
永琳は薬品室へ向かい、俺の為の治療薬を調合しに行った。
霊「…ずっと隠していたの?」
麟「初めて博麗神社に来た時からずっとね。最初は話そうかとも思ったけれど…やめたんだ」
魔「それはどうしてだ?」
麟「そこのメディと同じだよ」
メディ「わ、私と…?」
麟「人間不信…または他人嫌い…ってとこかな?俺を助けてくれた恩人は信用していたけれど、初めましての奴らは全員、警戒していたからな。霊夢もその一人だよ」
霊「…ショックね」
麟「でも…だんだん打ち解けていって今回、この傷を晒そうと思ったわけだよ」
魔「そ、そうか…なんか悪かったな…さっきは笑ったりして」
霊「私も…ごめんなさい…」
麟「仕方のない事だろ?教えていなかったんだし」
メディ「…」
麟「これで俺の『君と同じかそれ以上の痛みを知ってる』って言った意味が分かったか?メディ」
メディ「う、うん…」
ガララッ‼
永「麟、調合が終わったわ。治療室に来て」
麟「はい。…それじゃあ行ってきます」 スタスタスタ…
メディ「負けないでよ…?」
麟「ふふん♪俺は負けるつもりはないよ。戦いにも、これから味わうであろう痛みにもね?」
さあ…過去と決別する時だ…