雑にTS転生した俺氏、最推しの中ボスキャラになぜか迫られています   作:pantra

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その節はムスコが大変お世話になりました

 

 エルドレッド・サーガの中ボスにして最推しキャラであるモーリス・グラッドストンに出逢った日、パーティーが終わって寮の自室へ戻った俺は熱を出して寝込んだ。

 看病してくれたリネットには随分心配をかけてしまったが、まさか憧れの存在に実際に出逢えて興奮しすぎたせいなんて説明できるわけがない。

 

 翌朝、すっかり熱が下がった俺は徹夜をして眠たそうなリネットを部屋に残して、初めての講義を受けるために寮を出た。

 途中で合流したソフィーは昨夜の俺の醜態について何か聞きたそうにしていたが、ここでも適当に誤魔化しておいた。

 それにしても、今後はモーリスと同じ講義を受ける機会も多いだろうから、そのたびに挙動不審にならないよう気を付けねば。

 

 で、だ。

 ちょっとばかり予定が狂ってしまったが、状況を整理してみよう。

 

 まず俺の目標は死の運命にあるモーリス・グラッドストンを救うこと。

 これは不変だ。

 理由? 推しを救けるのに理由がいるかい?

 

 そもそもモーリスはなぜ死ぬことになるのか。

 彼が命を落とすことになるカドガン砦の戦いは、ロズラム王国とコリガン王国との戦争の中で起こった戦いの一つである。

 ロズラム王国は俺たちが暮らしているこの国。

 そしてコリガン王国はロズラムの隣国で、10年先の未来でモーリスが騎士団長を務めることになる国の名だ。

 そう、モーリスは結局この国で認められることも、そしてこの国を許すこともなかったのだ。ゲーム本編のシナリオでは。

 

 表向きこの戦争は資源争奪に端を発して起こる。

 だが裏にはラスボスの息が掛かった人物がいたり、宗教的な対立があったり復讐だったり、色々な要素が絡み合っている。

 モーリスはそうした状況に巻き込まれ、なかば利用されつつ、なかば自らの意思で破滅への道を進むことになるのだ。

 

 モーリスの死を回避するにはどうすればいいか。

 一番簡単なのは彼をコリガン王国の騎士団長にしないこと。もっと言うとコリガン王国に行かせないこと。

 そのためには、モーリスをコリガンに誘ったとされる彼の親友にしてラスボスの手先であるランドルフとの接触を未然に防ぐことが必要だ。それが無理なら次善の策としてコリガン行きを思い留まるようモーリスを説得するか、ランドルフの正体を暴いてブチ転がす。

 

 ラスボスの手先を無関係な俺がシナリオ外で排除したらまずい気もするが、ランドルフがいなくてもどうせ戦争は起こるだろうし、主人公たちも活躍できるだろう。

 何ならモーリスも主人公パーティーと一緒にロズラム王国勢として活躍できるかも……、いやそれは無理か。実家のグラッドストン家がマジクソだから。

 

 グラッドストン侯爵家との和解ルートは考えてない。

 そもそもグラッドストン侯爵家がモーリスを養子にしたのも、彼の才能を知って使い勝手のいい手駒にしようとしたため。侯爵家がモーリスを道具としか思っていないのは、彼がまぎれもなく侯爵の実子であるにもかかわらず、養子縁組という形が取られたことからも分かる。ようするにモーリスを息子だとはこれっぽっちも認めてはいないのだ。

 そんな胸糞悪いグラッドストン侯爵家だが、実は本編シナリオの中で数々の悪事を暴かれて処断される運命にある。ざまぁ。

 シナリオの順番的にはモーリスが死亡してから侯爵家処断なので、グラッドストン侯爵家関連のイベント後に主人公たちの『辿る道が少しでも違えばモーリスとも分かり合えたかも……』みたいな物悲しいモノローグが入るのだが、気付くのが遅いんだよお馬鹿ーっ!

 

 まあいい。

 辿るべき新たな道は俺が作る。モブキャラである俺がな。

 

 その実現に必要なのは、力だ。

 俺個人の力。加えて俺の目的に沿って動いてくれる人脈、組織の力。

 パワー。

 

 貴族階級にあるといっても所詮は子爵家の小娘に過ぎず、俺には何の権力もない。できるのは精々親父の権力や財力を笠に着て我が儘を言うくらいだ。

 

 RPGキャラとしての戦闘性能にも特別なものはない。まあモブキャラなので。

 

 この辺りで俺のスペックについて明かしておこう。

 シェリンガム子爵家の長女として生まれ、今年で15歳になった。モーリスと同い年だ。

 

 髪の色は薄めの金髪。いわゆるプラチナブロンドという奴だ。

 長さは背中の半ばまであり、大抵は緩い三つ編みかシニヨンにしているが、その内バッサリ切ってやるつもりだ。元男として言わせてもらうと、手入れが死ぬほど面倒なんだよ。ほぼほぼメイドがやってくれるけど。あと単純に長いと鬱陶しいし、飯を食う時に結んでないと口に入る。

 ちなみに体毛は薄いタイプだ。部位は好きに想像しろ。

 

 身長は150cm~155cm程度。

 悔しいことにここ1年ほどほとんど伸びておらず、どうも成長が止まりつつあるようだ。

 率直に言ってチビである。前世では180cm越えだったんだが。

 

 体重は小石2つ分ほど。

 というのは冗談だが、たぶん50㎏台後半くらいか?

 そこそこ筋肉があるので身長の割には結構重い。

 親父や兄貴は羽毛のように軽いとか言うが、あいつら腕の太さが俺の胴周りくらいあるから何の参考にもならん。

 まあ、騎乗位する時には気を付けようと思っている。する機会があるかどうかは知らんが。

 

 顔は……まあ可もなく不可もなく。モブ顔だ。

 親父は俺のことを真顔で天使とか呼ぶが、例によって参考にはならん。

 おふくろは誰もが認める美人だが、娘の俺は何というか、小動物系?

 全体的に造作がちんまりしていてどことなくげっ歯類を思わせる。

 俺としてはもう少しシャープな、いわゆるおっぱいのついたイケメンが理想なのだが。

 以前その志を語ったところ、メイドのリネットに心底から『アホかこの子』という目で見られた。

 

 この世界はゲームであるエルドレッド・サーガの世界であると語ったが、まったく同じかというとそうではない。

 モブキャラの存在とかそういう話ではなく、システムの問題だ。

 

 つまり、俺の生きるこの世界はエルドレッド・サーガにおいて採用されていたようなゲーム的なシステムの多くが、そのまま教条的に作用するわけではないということだ。

 

 例えばこの世界で人物の数値化されたステータスを見る方法はない。

 レベルという概念もない。

 魔法などの習得はレベルアップによるものではなく、主に学習と修練によるものだ。

 

 しかし、だからといってレベルやステータスというシステムがこの世界にまったく作用していないのかというと、どうもそういうわけではない。

 明らかに常人の域を超えた戦闘能力を持つ存在を実際に知っているからだ。

 

 例えば俺の親父や兄貴がそうだ。シェリンガム領の魔物狩りに同行した際、ロックタートルという魔物を二人が苦もなく粉砕するのを目撃したのだが、ゲームにおけるロックタートルという敵を相手にする上での適正なパーティーの平均レベルは50。あれを単騎で苦もなく鎧袖一触にしたところを見ると、親父たちのレベルは80は越えているだろう。

 

 エルドレッド・サーガの最終的な上限レベルが300であることを考えるとそこまで高くないように思えるかもしれないが、そもそも300というのはエンドコンテンツを乗り越え神をも滅ぼせるような力を手にした主人公たちだけが到達する高みである。

 

 それを踏まえると常人にとっては親父たちも充分化け物だが、この力は決して生まれついてのものではない。

 特に兄貴は子どもの頃を直接知っているから断言できるが、身体能力的には本当に普通の子どもであった。それが魔物狩りや訓練によって、まさにレベルという名の階梯を昇るかのように成長したのだ。

 となると、親父たちと同じモブキャラである俺も同様の成長は理論上可能と考えられる。

 

 実際、シェリンガム領で魔物狩りや匪賊討伐に参加させてもらっていた恩恵で今の俺は前世の常識的な人間の身体能力を大幅に超える力を身に着けている。

 推定だがレベルでいうと20くらいかな。

 ステータス的にはどちらかというと物理寄り。

 垂直飛びなら最高記録は4mだ。ちなみに兄貴は俺の3倍くらい高く跳べる。想像がつくかもしれないが高レベルユニットが参加している攻城戦とか阿鼻叫喚だよ。

 

 ちなみに魔物狩り等に参加するにあたって、愛しい天使に危険なことをさせたくないと渋る親父(シェリンガム史上最高評価の領主)を説得するには骨が折れたが、最終奥義『おひざに乗っておねだり』を発動させたら一発だったぜ。

 

 男としてのプライド? んなもんチンコと一緒に前世に置いて来たわ。

 

 魔法やスキルだが、先に述べた通りこれも基本的には学習や修練での習得なのだが、一部例外がある。

 エルドレッド・サーガのゲームにおいては魔法という大分類の中に治癒魔法とか攻撃魔法といった中分類、さらには各属性別の小分類という風に階層があるのだが、それとは別に固有魔法という特殊分類が存在する。

 

 これは文字通り各キャラクター固有の魔法だ。

 ゲーム本編のキャラでいうと、パーティー全体に高倍率の持続回復を付与する『翡翠の聖女エイリーン』の『精霊の祈り』とか、敵全体に極大ダメージと火傷によるスリップダメージを与えた上に確率で即死させる『炎獄公女ミロスラーヴァ』の『炎舞葬送』とか、敵に聖魔どちらかの属性を強制付与して自らはその反対属性を帯びる『血塗られた聖騎士ディディエ』の『聖魔流転』とか。この辺りは性能が優秀でよく使っていた。

 

 彼らは汎用魔法、つまり普通の炎魔法とか補助魔法といった複数キャラが共通して使える魔法ももちろん覚える。

 ただし固有魔法の多くは性能面で汎用魔法に勝っているので、やはり戦術の軸に据えられることが多い。

 とは言うものの性能がピーキーで使いどころが限られることも多いので、固有魔法ゴリ押しというのはあまりできないのだが。

 もちろんどのキャラの能力も運用次第で刺さるところには刺さるので、状況に応じたパーティー構成を考えるのもエルドレッド・サーガの面白さの一つであった。

 

 そういったゲーム的な面白さはさておき、前世でゲームをプレイしていた頃は単純に各キャラが習得する固有能力という認識だった。

 しかしこの世界に転生して知ったのは、これらの固有魔法は各個人の魔法能力と紐づけされていて、魔法の制御法を学ぶうちに自らの内側から自然と生えてくるものだということだ。

 理論を学んだり試行錯誤を繰り返したりという過程を経ることなく、ある瞬間ふとそれが自分の中にあることに気付くのだ。

 使い方も誰に教わらずとも自然と分かる。言わずもがな使いこなすには練習が必要となってくるが、いわゆる治癒魔法だとか炎魔法だとかそういった汎用魔法とは根本的に性質が異なるわけだ。

 

 さて、ここで俺のスペックに話を戻そう。

 曲がりなりにも魔法能力がある俺も固有魔法を所持しているのだが、ここがモブキャラの悲しさというところか、正直ショボい。

 俺の固有魔法の効果は対象を増幅させるというものだ。ゲームでは各キャラの固有魔法に格好いいネーミングがなされていたが、この世界では名前も一緒に自分の中に生えてくるわけではないので便宜上『増幅魔法』と呼んでいる。

 

 増幅できる対象で今のところ分かっているのは魔法によって発現した現象。炎魔法を大きくするとかな。ただし何でもかんでも魔法の効果を増幅するわけではなく、例えば治癒魔法については俺の増幅はまったく効果がなかった。

 魔法以外では喋っている声なんかも増幅しようと思えばできる。俺の感覚的には声という空気の振動を増幅しているらしい。

 

 ここまで聞くと非常に使い勝手が良くて強力な固有魔法のように思えるかもしれないが、全然そんなことはない。

 まず効果倍率が低すぎる。現状だと大体1.1倍~ものすごく頑張っても1.2倍くらい。

 発動の効果時間も一瞬だし、その分増幅をかけるタイミングもシビアだ。

 例えばファイアボールの魔法だと対象に命中する瞬間に増幅をかけないと意味がないわけだ。

 静かな部屋で座って1人集中できるならともかく、戦闘中にこれをやれというのはなかなかに

厳しいものがある。しかも得られる効果は『気持ち威力上がったかも?』という程度だ。

 

 ということで俺の固有魔法は効果が低い上に使い勝手が悪いのだ。

 まあ、ゲームでもキャラクターが覚える固有魔法は一つではなかったので、俺もその内『増幅魔法』以外に何か有用な魔法を覚えられたり、『増幅魔法』が成長発展するかもしれないが。

 現実的に考えると、その可能性に望みをかけるよりしっかりと汎用魔法を身に着けた方がはるかにいい。

 

 ちなみに俺は数年前から毎晩寝る前に自分のおっぱいに増幅魔法をかけ続けているが、いまだ効果は表れていない。解せぬ。

 気持ち乳首が敏感になったような気もするが、リネットには『そういう年頃だからです』と一刀両断されてしまった。そして柔らかい素材でできた下着を用意してくれるようになった。ありがとう、メイド一同とおふくろ……。

 

 閑話休題。

 結論から言うと、モブキャラである俺は主人公パーティーやモーリス達主要キャラのような特別な力は持ち合わせていないが、努力と経験の蓄積によって相応に強くなることは可能なのだ。

 そもそも同じレベル帯だとモブキャラより主要キャラの方が総合ステータスが優れているという問題もあるが、レベル50の主要キャラをレベル100のモブキャラがボコすことはできる。

 ゲーム本編における中ボスとしてのモーリスを倒す適正レベルは平均レベル60。55だと厳しく、70あればヌルゲーと言っていい。

 

 モーリスの死を回避するためにラスボスの手先ランドルフやグラッドストン侯爵以外にどんな障害があるかまだ不明だが、俺個人の武力という意味ではとりあえずレベル100相当の実力を手に入れるということでいいだろう。

 レベルやステータスはマスキングされているが、幸い各プレイアブルキャラクターがレベル100でどの程度のことができるかは把握している。それを参照すれば問題あるまい。

 

 すべきことは多い。

 魔法を学び、レベルを上げる。

 優れた装備や素材も必要だ。だが、それはあくまでもモブキャラでも通常の手段で手に入れられるものでなければならない。

 エルドレッド・サーガを隅から隅までしゃぶり尽くしてきた俺ならどのダンジョンのどの場所でどんな優秀な武器防具が手に入るか、といった情報は把握しているのだが、これらは言うまでもなく主人公パーティーのものである。

 俺が横から掻っ攫って彼らの冒険を邪魔してしまうことは断じて許されない。

 エルドレッド・サーガという奇跡のようなゲームを心底愛するいちファンとして絶対に守りたい一線だ。

 ……まあ、モーリスは救うけど。

 

 色々考えている内に講堂へ到着した。

 今日は初日ということで、今後の講義カリキュラムの説明と簡単なレクリエーションと聞いている。

 50人ほど収容できそうな講堂にはまだあまり生徒たちは集まっていなかった。

 少し早く来過ぎてしまったようだが、ソフィーと適当に話していれば時間つぶしにはなるだろう。

 積極的にお友達を作る気はないとはいえ、人脈や仲間が必要なのもまた事実。

 その点、ソフィーとは誼を通じておいて損はなさそうだ。

 向こうはそんな打算で近づいてきているわけではないだろうから申し訳ない気もするが……、いやしかし腐っても伯爵令嬢、少しの打算もないなどということはあり得ないか。

 可愛い顔をして貴族っていうのは本当に恐ろしい。

 

 そんなことを考えながら隣に座って楽しそうに俺に話しかけるソフィーの顔を眺める。

 すると、彼女はにこにこ笑いながらも不思議そうに首をこてんと傾げてみせた。

 

 いや、本当に可愛いな。

 ゲーム本編にも設定資料集にも影も形もない以上、ソフィーもゲーム的にはモブキャラに違いないが、正直メインヒロインと張り合うくらいの美少女だ。

 

 一方で溢れ出るげっ歯類みを隠し切れない俺氏。

 ……あれ、これって俺が引き立て役になるパターン?

 

 いやいや、それはまずいんでは。

 お花畑で優雅に戯れる美少女の周りをちょろちょろ駆け回るげっ歯類を想像し、俺は頭を抱えた。

 大丈夫だ。王統派の伯爵令嬢と仲良くするのは間違いじゃない。計画を信じろアデライン。『あなたみたいなハム公はソフィー様にふさわしくないのよっ!』とか難癖付けてくる奴はぶん殴ってやればいいんだ。いや、駄目か。

 

「ねえ、どうしたのアディー。……あら?」

 

 俯いてぶつぶつと言い出した俺を見て心配そうにしていたソフィーだったが、すぐに別のものへ気を取られたようだった。

 彼女は俺の肩に手を置くと、耳元に口を近づけてきて囁きかけてきた。

 

「ね、アディー。あれ見て」

 

 ソフィーとしてはわざとではなかったのだろうが、吐きかけられた息がくすぐったかったのと微妙に彼女のくちびるが俺の耳朶に触れていたことも相まって、俺は変な声を出した。

 

「んひゃぁ」

 

「やだ。くすぐったかったの、アディー?」

 

 身を捩ってから耳をごしごし擦る俺の姿を見て、ソフィーがくすくす笑った。

 くそぅ、可愛い。

 

「ね、それよりもあれを見て」

 

 まだむずむずする耳を擦りながら、俺はアディーの指し示す方向へ視線を向けた。

 そこにはちょうど扉を開けて講堂に入ってきたモーリスの姿が。

 

 ……っはぁぁぁ~、今日も俺の最推しが格好いいわ。

 あ、寝ぐせ発見。え、ヤバくない? モーリスあざと過ぎん?

 くそ、スクショできないのがもどかしいぜ。

 

「やっぱりあの方が気になるのね」

 

 またしてもソフィーが耳元でこしょこしょ言ってくるので、身を捩って逃げながら俺は弁解した。

 いや、しようとした。

 

「ソフィー、誤解しているようだけどそれは違ぁあああっ!」

 

 喋っている途中で突如として奇声を上げて立ちあがった俺の姿に、ソフィーもその他の者たちも目を丸くして唖然とした視線を向けてきた。

 

 でも、モーリスの後から続いて講堂へ入ってきた人物の姿を目にした俺は、周囲の反応など気にしている余裕はなかった。

 

 俺よりもまだ小柄だと思われる、栗色の髪の超絶ドチャシコ美少年がそこにいた。

 モーリスと何やら言葉を交わしているこのショタの名を俺は知っている。

 彼の名はランドルフ・スティール。通称ランディ。

 

 ラスボスの手先の1人にしてモーリスの親友であり、彼をコリガン王国へいざなった張本人。

 そして薄い本におけるモーリスのカップリング相手役として堂々ぶっちぎりの1位。

 

 セックス描写が出てくるBL本はさすがにあまり読んでないが、シリアスなブロマンス系のは結構読んでいた。BL系に神作品が意外と多いんだよな。

 あとは女体化ランディが相手の18禁本はぶっちゃけめちゃくちゃ買い漁ってシコりまくっていた。

 

 ちなみにカップリング相手第2位は主人公。でも普通に女性キャラが相手の薄い本もたくさんあったので、凌辱系とか好みに合わないもの以外は大体網羅していた。

 節操がない? そうだよ(迫真)。

 

 ……まだ見ぬモーリスの奥さん、なんかごめん。

 

 まあ前世の俺のシモ事情はどうでもいい。

 モーリスもバチクソに顔面がいいんだがランディはそれとは別方向に美形というか、妖艶という言葉がしっくり来るようなキャラである。ファンの間ではよく性別ランディとか呼ばれていたものだ。

 

 そのランディがモーリスと一緒に目の前にいる。

 

 ええ~、うっそだろお前。

 2人の出会いってこの学院だったのかよ。

 というか2人の出会いを阻止するという俺の計画その1が早くも破綻したんだが。

 

「ア、アディー。どうしたの、大きな声を出して」

 

 ソフィーの呼びかけではっと我に返った俺は、モーリスとランディがものすごく訝しげな眼差しで俺のことを凝視していることに気付いた。

 あっあっあっ、ショタランディがモーリスの服の裾を掴んで……。

 

 ……というか2人のセックス(あくまで二次創作)を舐めるように観ながらシコッてた前世の俺、もしかしなくてもクソ変態野郎なのでは。

 

 今さらながらに顔から火が噴き出るほどの羞恥心を覚えた俺は、一刻も早くこの場から逃げ出そうとしてかたわらのソフィーに告げた。

 

「おr、わたし、お手洗い行ってくるる!」

 

 駆けだそうとして椅子に蹴つまづき、つんのめりながらも講堂から飛び出して行く。

 

「ちょ、ちょっとアディー。待って!」

 

 何だか律儀に追いかけてきてくれるソフィーを引き連れながら、とにかく俺は女性用トイレを目指して全力疾走した。

 

 うごごごごっ!

 前世の爛れた記憶など忘れ去りたいのに、こんな時に限って2人の濡れ場が鮮明に脳裏に!

 ちょっとだけ、ちょっとだけ興奮してきた自分が憎らしいっ!!

 

「アディーッ!」

 

 こうしてソフィーが俺を呼び止めようとする声が朝の学院に響き渡るのであった……。

 

 

 

 

 

 

 





アデラインお嬢様:いつか必ず成長する日を信じて今日も日課の増幅魔法をかけ続ける。夢見るAカップ。

ソフィー:可愛い女の子がとてもとてもとても好き。

モーリス:寮でルームメイトになったランディが男であることにまだ確信がない。母親が高級娼婦なので耳年増。

ランディ:運命は動き出した。ドチャシコ。


このお話はプロットなしのノープランでお送りしているため、先の展開は私も分かりません。設定は都度生やしながら書いていきます。
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