夏の終わりの綺想曲(カプリチオ)~メモリーズー夏ー   作:飛鳥 螢

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見守り隊と朋也(2)

 二人が去って暫くした頃。

 突如ガサリと藪が大きく左右に分かれ、中からぬっと杏が姿を現した。

 それに続き、椋とことみも姿を現す。

「あーっもうっ、なんであそこで止めんのよっ。あんの根性無しっ!」

「でもお姉ちゃん。岡崎くんなんだか気付いてたみたいだったよ。私達の事」

 カメラを手に地団太踏んで悔しがる姉に椋が宥める様に言ったが、杏は気を落ち着けるどころか、憤然と捲くし立てる。

「なに言ってんのよ。気付いていたら何時までもあんな所でくつろいでないで、さっさと弁当食べてとんずらするわよ。あいつなら」

 朋也の性格を熟知している杏は、ぐっと拳を握り締めた。

「ったく、こんなおいしいシチュエーション、あたしなら最低でも五回は渚の唇奪ってるわよ。それなのに全く手ぇ出さないなんて、何処まで根性無しなのよっ、あの馬鹿っ!

 ——ホントに股の下に付くもん付いてんでしょうね、あいつ。今度また同じ事やったら、ズボンひん剥いて確かめてやるわよ」

「お、お姉ちゃん……」

 姉の過激な発言に、椋は真っ赤になって(うつむ)いた。

 そこへ、今まで黙って姉妹の会話を聞いていたことみが、ぽつりと呟くように言う。

「杏ちゃん。わたしここと、こことここ、とっても(かゆ)いの」

 見ると、ことみの色白の手足のあちこちが赤く腫れ上がっている。

 やぶ蚊にでも刺されたのだろう。それも無理ない。朋也達があの木の下に来る前から、ずっとあんな藪の中でじっとしていたのだから。

「あーはいはい。これでも塗ってなさい、ことみ」

 虫よけスプレーで全身をガードしていた杏は、ことみにかゆみ止めを放ると、腰に手を当てて二人に言い聞かせる。

「いい、あたしはバイクで近道して二人の先回りするから、あんた達も自転車ですぐ来るのよ」

 ——そうよ、まだチャンスはあるんだから。待ってなさい、朋也っ!

 一体何のチャンスがあるというのか。まるで智代へのリベンジに燃える春原が乗り移ったかのように、杏は全身にメラメラと炎を燃え上がらせ、その姿に思わず引き気味になる妹とことみを置いて、猛然と隠しておいた愛車(バイク)の許へダッシュした。

 

 

「うっ……」

 ぞくぞくっと悪寒が全身を駆け抜け、俺は思わず自転車のブレーキを掛けた。

「どうしたんですか? 朋也くん」

 急に自転車が止まり、渚は怪訝そうに俺を見る。

「あ、いや。今急に悪寒がして……」

 と言うか、なんか身の危険みたいのを感じた。特に下半身に。

「風邪ですか? さっきもくしゃみとかしてましたし」

 心配そうに渚は俺の顔を窺って言った。

「具合が悪いようでしたら、このまま家に帰りますか?」

「大丈夫だよ。別に熱はないし、今日は一日目一杯遊ぶって約束しただろ」

「でも……」

「いいんだよ。俺がそうしたいんだから」

 そう言って、俺はペダルに足を掛けた。

「しっかり掴まってろよ、渚」

「あ、はい」

 ぎゅっと渚が俺の腰に回した手に力を込める。

 それを感じながら俺は勢いよくペダルを踏み込み、目的地目指して自転車を走らせた。

 

 

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