D.C.4 〜ダ・カーポ4〜 先視の魔法使い   作:トウリ

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PROLOGUE 11

 

 

「___さて、他の皆は何処だろうなー」

 

「ふむ、とりあえずCOMUで到着のメッセージでも入れておこうか」

 

「賛成。到着したって連絡すれば向こうも分かりやすいんじゃないかな」

 

「あ、ちょっと待って、あそこにいるかも。やっほー!」

 

 

 

 

12/24 月曜日 振替休日は至高の休み。天気は快晴。

 

 

 

 

寮暮らしのおれ、叶方、杉並、そして白河の4人は、とりあえずワンダーランドの入口まで来ていた。

 

他のメンバーが何処にいるのか判らない為、杉並がCOMUに書き込みを入れようとした所、叶方が他のメンバーを発見したようだ。

 

見ればいつもの常坂一家+αがそこにいた、一登が杉並と同じようにTABを取り出してる為、向こうも丁度連絡を入れようとしてたのかも知れない。

 

 

「あっ! お兄ちゃーん!」

 

 

その中の一人。+α要員である妹分&駄後輩な海央が、おれを見つけた瞬間に走り寄って来た。

 

……ただし、とてつもない勢いで。具体的には風が発生するレベルで。

 

間違いなく身体強化を使ってやがる。

 

おのれな、そんな勢いで飛び込んで来たら___

 

 

「ごはぁ!?」

 

 

___こうなるだろうがよ。

 

その勢いのまま突撃して来た海央は、そのまま抱きついてホールドして、おれの胸元辺りに頭をグリグリとさせてくる。いつもの海央の甘え方である。

 

なお、突撃の勢いでおれは吐血した。いくら鍛えていても限度はあるので当たり前の結果だろう。

 

うむ、解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-PROLOGUE 11-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「芳乃ーーーー!?」

 

「いやいや、え、早っ!?」

 

「まるで飼い主を見つけたワンコのような勢いだったな。勢いよく振られる尻尾を幻視してしまったぞ」

 

「いや、限度があるだろ」

 

「というか、灯火さんが女の子の突撃に負けた!?」

 

「あらあら、元気だねー♪」

 

 

各人それぞれが海央の突撃に感想を述べる。おのれな、もうちょい手加減をしろよ手加減を……!

 

そんな死に体のおれを思う存分ぐりぐりとした後、満足した海央は離れてから「むふー!」と満足した表情を浮かべている。

 

 

「はい!充電完了! 海央、いつでも暴れられます!」

 

「暴れんな、荒ぶんな、大人しく遊んどけこの駄後輩」

 

 

報復代わりにデコピン一発。「あうっ」とおでこを抑える妹分。

 

どうやら怪我も完治したようで、お気に入りとやらの犬耳パーカーも修繕されている。

 

多分、逢見先輩がやったのだろう。

 

修繕部位が目立たない様に刺繍などで巧妙に隠されている。傍目には服のアクセントにしか見えないので素直に感心した。

 

と、忘れない内に逢見先輩へと向き合う。

 

この駄後輩の面倒を見てもらった礼を、改めて言っとかないとな。

 

 

「このじゃじゃ馬ワンコロ娘の面倒を見ていただいてありがとうございました逢見先輩」

 

「ふふ♪ わたしとしては新しい妹が出来たみたいで楽しかったよー?」

 

「まぁ、あんまり世話になり過ぎると、今度は二乃の妹キャラが薄まりかねないので」

 

「なんの心配をしてるんですか灯火さんは!?」

 

 

ばっか二乃おのれ、キャラ被りは深刻な問題だぞ?

 

……と思ったが、同じ妹キャラでも海央と二乃ではベクトルが違うから大丈夫か。かたや生真面目委員長気質。かたやお気楽極楽とんぼ。ねこといぬ。持つものと持たざるもの……いや、これは止めておこう。流石に海央が不憫だ。

 

思考は途中で止めたのに、海央がなんか、じっとジト目で見つめていた。

 

 

「今なんか変なこと考えなかった……?」

 

「いや別に」

 

 

ほんとかなあ?と訝しむ駄妹の頭を誤魔化すように撫でると「にへー♪」と気の抜けた声が聞こえた。気を抜き過ぎだ貴様。

 

兎にも角にも仕切り直すことを促すとしよう。

 

 

「とりあえず気を取り直して、おはよみんな」

 

「おう。ちょうど今COMUでもう着いてるって書こうとしたところだったんだよ」

 

「我々も正にそうしようとしたところでな、叶方が同志達を発見した」

 

「で、駄後輩が突撃と」

 

 

隣りにいる駄後輩の頭を犬耳パーカーごとポンポンと叩く。

 

「むふー!」と何故か腰に手を当てて誇らしげに無い胸を張る駄後輩。

 

誇らしい要素は何一つとしてねぇよアホ。おのれはマジで反省しろアホ。

 

 

「以心伝心、同じようなことを考えてたんだね、ふふ」

 

「杉並と以心伝心とか勘弁してくれ」

 

「くく、照れおってからに」

 

 

いや、杉並の思考をトレースしたら多分、人としてなにか終わりそうだ。

 

 

「で、とうの鷺澤がまだだったんだね。てっきりそっちに合流してるのかと」

「指定の時刻にはまだ達しておらんな。が、もうすぐでもある」

 

「この混雑だからねー。遅れても仕方ないよ」

 

「まぁ、そのうち来んだろ。のんびり待てばいいさ」

 

 

先週開業したばかりとは言え、並んでる人もかなりいるし、中から相当な数の人の気配を感じる。

 

クリスマスイヴ効果、という奴だろうか。

 

これでもまだ正式な開業ではないので驚きだ。

 

正式オープン時には、この仮オープン時に露呈した問題を直した上でやるらしいし、想像がつかんな

 

 

「ごめんなさーい!」

 

 

と、噂をすればなんとやらか。

 

 

「言ってる間に来たな」

 

「あたしも気配を感じたよ! 有里栖せんぱーい、こっちこっちー!」

 

 

ぴょんぴょんと跳ねて海央が人混みに声を出す。間もなく、人混みを掻き分けて有里栖が出て来た所を海央が突撃して確保する。

 

 

「確保ー!!」

 

「わぁ!? 」

 

「なにやっとんじゃ駄後輩」

 

 

どうやら走って来たらしい有里栖。

 

確保して抱き着いた海央が息を切らした有里栖に気づいて抱き着いたまま背中をさする。

 

 

「はぁ、はぁ、ありがとう海央ちゃん。あと、遅れちゃってごめんなさい……」

 

「俺たちも、ちょうど今合流したところだよ」

 

「うむ、指定時刻には間に合っている。まずは息を整えるのがよかろう」

 

「正解。そんなに慌てることないから落ち着いて」

 

 

と、白河も追加で有里栖の背中をさする。そんなに慌てんでも良いだろうに。

 

 

「ふぅ……ひよりん、ありがとう。海央ちゃんも改めてありがとうね」

 

 

しばらくしてから有里栖も落ち着いたようで、海央も抱き着き状態を解除する。

 

とりあえず、これで全員揃ったか。有里栖もそれを確認してから改めて口を開く。

 

 

「みんな、突然の話でごめんなさい。本当はもっと早くに連絡出来ればよかったんだけど、ちゃんとしたチケットを確保するのに時間がかかっちゃって」

 

「むしろ、ちゃんとしたチケットに驚いた。無理矢理の横入りかと思ったが」

 

 

バカ、杉並、言い方もうちょいなんとかしやがれ。

 

いや、確かにそれは一瞬思ったが、有里栖に限ってはそんなことはしないだろう。

 

 

「杉並、言い方が悪いって」

 

「何を言う。もちろん心からの賛辞だ」

 

「それが賛辞になるのはお前だけだって……」

 

 

一登のツッコミに一同頷く。

 

やはりコイツはどこかズレてやがる。

 

 

「あはは……、もちろん家のルートを使っちゃってるけど、その分誰かが入れなくなってるってことじゃないから、安心して楽しんでね」

 

「色々と気遣ってくれてありがとうね。鷺澤さんも一緒に頑張った仲間なんだから、今日はあまりホスト役になろうとか意識しないでね?」

 

 

ここでフォローを入れるは最年長のソラさんこと逢見先輩。うん、流石の気遣いである。

 

 

「そう言ってもらえると嬉しいです。私も仮開業してから入るのは始めてだから、すごく楽しみなんです!」

 

 

その気遣いに、有里栖も笑みを浮かべながら感謝の意を伝える。

 

 

「あたし、遊園地なんて始めてだから、お話を聞いたとき凄く嬉しかったし楽しみにしてたんですよー!」

 

「ああ、やっぱおのれもか。おれも遊園地は始めてなんだよなぁ」

 

「え、そうなのか?」

 

 

おれと海央の会話に反応した一登が意外そうな顔をする。てか、全員こっちに視線を向けていた。

 

 

「さき___家業の関係で行く暇がなかったと言うか、遊びに行くって発想がなかったというか、えへへ」

 

「同じくだな。芳乃の家に来てからも、やらなきゃならない事が多くてそんなん行く暇なかったし」

 

 

咲三の家を追い出される前も、【防人】になるための魔法使いの訓練、肉体の鍛錬を物心つく頃からしてたからなぁ。

 

芳乃の家に来てからは、最後に視た先視のせいで、それに備えなきゃって考えが強かったし。

 

まぁ、だから今回の有里栖の申し出はありがたかったりする。体験したことのないものを体験できるのは、やはり楽しい事だからな。

 

 

「そっか……それならうんと楽しまないとね! それじゃあ行きましょう!」

 

 

『おー!』と皆、有里栖について入り口へと向かう。

 

ふと、二乃が足を止めてることに気がついたが、同じく気づいた一登が様子を見に行く。幾つかやり取りをした後、百面相を披露する二乃だったが、走ってこっちにやって来る。

 

二乃のどこか嬉しそうな顔と、一登のやれやれとした顔が、印象的だった。

 

その後、出入り口が混雑してるので入園には時間がかかると思っていたが、有里栖の先導のもと少し離れた所のゲートを通過して入園する。

 

関係者用の通路らしい。

 

 

「特別感。うーん、流石鷺澤がいると便利」

 

 

白河の感想に乾いた笑いを見せる有里栖。その際、すれ違ったスタッフさん達が有里栖の事を「お嬢様」と呼び、挨拶したりするのを見てると、本当にお嬢様なんだなって感じる。

 

さきほど二乃も言ってたが、普段クラスメイトなだけあって意識することはあまりないが。本人も言ってるが、“この”有里栖もどこか庶民的だし。

 

 

「一家に一台鷺澤だね」

 

「だからといってアイテム扱いは流石にアレ過ぎるだろう」

 

「あはは……。ひよりんだって、実家に帰れば「お帰りなさいませ、お嬢様」って言われるでしょ?」

 

「ま、言われるけどね」

 

「そんなのメイド喫茶でしか聞いたことないセリフだよ」

 

「なんだ叶方、メイド喫茶へいったことあるのか!? 島にはもちろん県内にも無いよな……?!」

 

「兄さん食いつきすぎです……」

 

 

一登、おのれ、そんなメイド好きだったっけか……?

 

 

「東京へ夏休みに家族旅行へ行った時にさ、自由行動時間に一人で行ってみたんだよね。やっぱメイドさん、可愛いよねえ。

 

___『お帰りなさいませ、お嬢様』ってまさにそのまんま言われたよ」

 

「東京のメイドさんも、目の前にいるのが本当はお嬢様じゃ無い事には気づけなかったか……」

 

 

逆にコイツは女装解いた姿の方が貴重だしな。つか、見たことねぇ。

 

 

「あたし、最初はすっごい美人のお姉さんだと思ってたから、すっごくびっくりしたなぁ……。でもでも、叶方先輩、いつもとても綺麗だからメイドさん達の気持ちも分かるかも」

 

「あはは、ありがとう海央ちゃん。良かったら海央ちゃんに合いそうな化粧とか紹介しよっか?」

 

「いいんですか!」

 

 

すっかりこの面子にも馴染んでる妹分である。とか言うおのれも咲三の家では『お嬢様』って呼ばれてるはずだが。

 

有里栖と白河は確かにお嬢様って見える部分があるが、海央は今のところ幼い頃のまま成長したイメージしか見えないから、全然そんな風には見えないな。

 

育ちの違いか? 海央は【防人】になるための修行をメインとしてこなしてたはずだから、それはあるかもしれない。

 

 

「それじゃあ、何から楽しむかを考えるためにも、少し園内を巡ってみようかと思うけど、良いかな?」

 

 

と、案を出す有里栖。確かに、何から回るにしても、どんなものがあるかを知っといた方が良いからな。

 

皆も概ね賛成……というか、もうとにかく早く見て回りたくて仕方ない感じだな。ソラさんと海央がめちゃくちゃうずうずしてんだよなぁ……。

 

無論、それはおれも、なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

___と、言うわけで有里栖の案内に従い、園内散策へと出発する。

 

流石オープンしたてとだけあって、仕掛けやエンターテインメントの密度の濃さが半端ない。

 

首都圏の最新のテーマパークにも匹敵するという前評判に違わず、ここを目当てに海外からも客が来るのも納得だ。実際に外人の客も少なからずいたりする。

 

皆、心の底から楽しそうだ。

 

定番のジェットコースターや、フリーフォールなるアトラクション。童話から取られたであろう鑑の迷宮や、モチーフとなった不思議の国のアリスに出て来るハートの女王の城。女性陣にも好評な可愛いグッズを売り出してるショップなど。

 

一通りの施設があり、見所沢山である。ただしその分人も多い。仮オープンでも相当な数の人間が来ている。

 

有里栖曰く、正式オープン後もしばらく落ち着くまでは入場制限が必要になるとの事で、好評で長い事愛されるテーマパークになれば敷地を広げる事も考えてるそうだ。

 

そんな感じで見て回ると、もうお昼となっており、空腹感を感じるようになってきた。

 

 

「お食事なら、いくつかのレストランや軽食のフードコートがあるけれど……」

 

「今日はクリスマスイヴだからな。レストランはどこも満杯だろうし、予約も取られてるだろ。……つか、そもそもお値段が高ぇ……!」

 

 

パッと見てみたが、通常のレストランよりもやはり高い。学生が安易に手を出しては行けない領域だ。

 

 

「正解。学生の身分では重すぎるね……。それに、鷺沢に無理させたくないし」

 

 

と、なるとすぐに用意できるフードコートの軽食物だな。そっちの方でも色々と美味しそうな物があったし。

 

 

「オレ、さっきすごく美味しそうなハンバーガー見たんだよね!」

 

「ほう、だが俺はホットドッグも気になっていてな。

 

___トっロォオリィチーズのぉ!焼っきたてフランスパンを使ったぁ!本場ドイツ仕込みの粗挽きソーセージのぉ! ホットドッグだーぁああ!!!」

 

「うおおおおおお!? 美味そうだぁあああああ!!」

 

「おのれら、どういうテンションなんだよ……? ああ、でもピザも良さそうだな。ワンダーランドの外観再現ピザってめちゃくちゃ気になるじゃねぇか」

 

「うぁあああ……!美味しそうなのが沢山あるうう……!悩みます……悩みまくりますぅううう……!」

 

「くぅ、まだメイン決まってないのに、デザートの方が気になって仕方が無いですぅ……!」

 

 

と、そんな感じでワイワイガヤガヤ騒ぎつつフードコートへ向かう。

 

ワンダーランドにちなんだ様々なメニューが並んでおり、どれを選んでも外れが無さそうなのが余計に悩ますよな……。

 

中には上記の定番は勿論、焼きそばやラーメンなんかもあり、世界観に溶け込む様に上手く、そしてオシャレにアレンジされたものもある。

 

料理好きとしては、気になるものばかりだ。同じく料理好きなソラさんも「むむむ」と悩んでいる。

 

 

「……頑張れば、家で再現出来るかなぁ?」

 

「見た目はなんとか行けても味の方は独自の物っぽいっすよ。匂いでもう香辛料の配合とか考えられてるの判るっす。数回食べても味付け理解出来るか判んないっすね」

 

「芳乃くんは鼻が効くよねぇ。わたしは耳の方特化だからなぁ」

 

「あんまり効きすぎるのも不味いっすよ? 舌と嗅覚で齟齬が起きたらバグって味おかしくなるし」

 

「……あの二人だけ、着眼点がなんか別方向になってません?」

 

「二人とも料理好きですから。いったんスイッチ入っちゃうと分析に走っちゃいますからね」

 

 

そんなやり取りをしつつ、それぞれが好きなものを注文して見せ合う。

 

次回来たときにはそっちにしようか?などと、それをまた話のタネにして盛り上がり、おかげで中々に楽しい昼食となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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食事を終えた後、各人それぞれで別行動をしようということになった。

 

なにせこの混雑だ。全員で全てを回る、というのは流石に難しい。

 

各自で興味ある所を今日のところは楽しんで、行けなかった場所は後日の楽しみにするのが現実的との事。

 

他のみんなはそれぞれ行きたい場所が決まっているらしくて、すぐに散開となった。

 

残ってるのは遊園地初心者でどこも気になり迷ってるおれと、同じく迷ってる一登である。

 

 

「……よし、決めた。遊園地に来たからには、やっぱりジェットコースターは外せんだろ」

 

 

遊園地といえば絶叫系。絶叫系と言えば遊園地。などと言う安直な考えだが、どれを選んでも初めての体験なのだ。キツそう奴から選んでみるのも一興だろう。

 

 

「ん、灯火はジェットコースターか」

 

「ああ、一登はどうする? 一緒に行くか?」

 

「いや、俺はあっちのラビットフォールって奴に行くわ。ああいうのは乗ったことなくてな」

 

 

確か、客を乗せた客席が空高くまで上がり、猛スピードで一気に落下するフリーフォールって奴だったな。

 

 

「……屋上からジャンプするのと変わらんのでは?」

 

「いや、それをやって無事に済むのは間違いなくお前だけだよ」

 

 

ジト目の一登がツッコミを入れる。常人視点だとそうなるよなぁ。

 

なお、海央も同じ事が出来る。【防人】の奴らも全員出来る。魔法抜きで。普通の魔法使いと違って、戦うことがメインなせいだな。

 

 

「時間も有限だ、とりあえず行くか。また後でな一登」

 

「おう、何かあったら俺の骨は拾ってくれ」

 

「おい、敗北前提かよ」

 

 

軽口を叩き合ってから親友の無事を祈りつつも、それぞれ行きたいアトラクションへと分かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、芳乃。キミもこっちに来たんだね」

 

 

手持ちの地図に従って目的の場所辿り着くと、そこには白河もいた。

 

 

「なんだ、白河もジェットコースターか」

 

「正解。せっかく楽しむなら、やっぱり王道の乗り物には乗っておかないとと思ってね」

 

「おれも似たような理由だ。初めて来たなら、やっぱこれは外せないって思ってな」

 

「お、初心者にしてはわかってるね。じゃあせっかくたし、一緒に乗るかい?」

 

「ん、頼むよ。勝手がまだ判らなくてな、助かるわ」

 

 

と言うわけで、白河とジェットコースターに乗ることに。

 

肩を並べて列を待つ。そこまで長い列じゃないこともあり、割とすぐに乗れそうだ。

 

待つ時間も、最近行動を共にする白河が一緒なので、いつも通り駄弁ってるだけですぐに順番が来るだろう。

 

時折、頭上のレールからコースターに乗った観客達の悲鳴だが歓声やらが聞こえてくる。やはり、怖い人には怖いのだろうか。

 

 

「芳乃も海央ちゃんも遊園地は初めてみたいたけど、こういうのは……まぁ芳乃は大丈夫ですね、ゴリラだし」

 

「誰がゴリラじゃ誰が。掴んで画面外まで運んで投げ飛ばしたろか」

 

「やっぱりス○ブラのゴリラじゃないですかー!ネクタイ付けてる方の!」

 

「流石にそろそろネタに困ってきたなオイ。……まぁおれも海央も鍛えてる部類だから問題ないと思う。そういう白河は得意なのか?」

 

 

因みに、海央はなんかソラさんと行動を共にしてるらしい。なにか駄後輩をソラさんに任せっぱなしが申し訳ない気もするが、本人達は楽しそうにしてたのでいいか。

 

 

「自慢じゃないけど、この手のは大得意。般若心経を唱えながらでも乗れるってものさ」

 

「般若心経を唱えながら乗る必要性は全く無いと思うが」

 

 

かの三蔵法師がインドから持ち帰った経典、般若波羅蜜多経をサンスクリット語から漢語に訳した600巻の中から、わずか300字ほどに纏めたのが般若心経。

 

ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー。で有名だったりするアレだ。要約すれば観音菩薩が涅槃へ至るための教えらしい。

 

概要を思い出したが余計にジェットコースターに乗りながら唱えるものではないという結論が出る。

 

 

「それくらい得意って意味さ。と言うわけで、一つ勝負でもどうだい?」

 

「勝負?」

 

「そ。ジェットコースターに繰り返し乗って、どちらが先に根を上げるか……って、ルールでどうだい?」

 

「つか、なんでまたそんな耐久勝負を。一応ジェットコースター以外のも見て回るつもりだったが」

 

「いやぁ、普通の体力勝負じゃ芳乃には勝てそうにないんで変化球をば」

 

 

あー、確かにな。自分で言うのもアレだが、学校でやるような体育だと体力とパワーでゴリ押し出来るから勝負にならんもんな。

 

とは言え、わざわざこんなところで勝負なんてせんでもいいだろうとは思う。

 

そんなこっちの考えを読んだのか、白河の瞳が悪戯っぽく光った。

 

 

「ではこうしよう。勝負に勝った方が、負けた方になんでも1つだけ命令してもいい、と。どうかな?」

 

「なんでもって、おいおい」

 

「そう、なんでもです。例えばキミの文房具をボクのニーハイに挟んでおいてくれ、なんて命令も甘んじて聞こうじゃないか」

 

「なんでそんなニッチな要求をおれがすると思った?! おい、おのれの中でおれはゴリラ以外でどんなキャラをしてるんだ!?」

 

 

流石にそんなスケベ全開なキャラはやったことがないんだが!?

 

 

「ニーハイはダメ? 脚じゃないタイプです? じゃあ、胸に挟むとか!」

 

「頼むから文房具をなにかに挟むと言う発想から離れろ。あと他にも人がいるから抑えてくれ……!」

 

 

思わず痛くなった頭を抱えそうになる。

 

カラカラ笑ってる白河を見る限り、わざとコチラをからかってるのだろうが。生粋の悪戯っ子かコイツは。

 

それはそれとして、日頃から体力オバケだのフィジカルがイカれてるだの言われてるおれに、わざわざ勝負を挑むくらいだ。白河にはよほど自信があるのだろう。

 

……面白い。命令権云々はともかく、勝負を挑まれたなら応えるのが筋ってものだ。

 

首に手を当ててポキポキと鳴らしながら、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「おーけー。乗ったぜ、その勝負」

 

「ふふ、それでこそ芳乃です。面白きことをわかってるね!」

 

 

白河も楽しそうな笑みを浮かべる。

 

せっかくだ。こういう所でしか出来ない勝負をやるのも一興だろう。

 

 

「もしくは命令権でボクに恥ずかしいことを命令するつもりですかね? ……ふふ、一体ボクにどんな命令をするつもりです? あんなことや。それともこんなこと。あられもない姿にされちゃうのかな?」

 

「だからおのれの中でおれはどんな変態なんだよ!?」

 

「聞きたいです?」

 

「…………いや、いい。聞いたら聞いたで絶対にネタにする気だし」

 

「正解。まぁ、それは置いといて、今は勝負を楽しむことにしましょうか。楽しきことは良きことだよ」

 

「それは確かにな」

 

 

楽しめるときはしっかり楽しむ。これは師匠からもじいちゃんばあちゃんからも言われてる事だ。

 

いくらこの先、とんでもない困難があると言っても、それを理由に今を生きること、楽しむことを止めちゃならないと。

 

そうやって積み重ねた時間はおれにとって大切なものになると同時に、困難に打ち勝つ為の原動力になるから、と。

 

だからおれは学生生活も、友だちとの時間も楽しむ事をやめない。欲張りに生きる。そもそも、あんなクソヤロウのせいで卑屈に生きたくなんてない。

 

そういう訳なので、今はこの白河との勝負を楽しむことにしよう。

 

お互いに不敵な笑みを浮かべながら、順番を待つ。

 

さあ、勝負と行こうか___

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「___参り、ましたぁ……!」

 

「大・勝・利 ! !」

 

 

都合、7回に及ぶジェットコースターの搭乗を終え、出口付近で崩れ落ちながら、おれは白河へ敗北を認めた。

 

あまりにも呆気なかった。

 

というのも、実を言うと最初の1回目の時点でもうダメだった。それを無理矢理耐えて7回も挑んだが、結果として三半規管が根を上げてしまったのである。

 

よもや、よもや、自分自身がこんなにも乗り物に弱いとは思わなかった……?!

 

 

「体を固定した状態での、上下左右への揺さぶりが、こんなにも苦痛だとは……!」

 

「まさかの弱点発覚でしたね。というより、最初の段階でそれが判ったのに、意地と根性で7回も乗るとは思わなかったですよ」

 

「例え負けだと分かってても、勝負からは、逃げない退かない……! あと、乗ってる内に克服しないかなって……!」

 

「結果、限界まで乗ったと、最後まで悲鳴も上げずに。……負けず嫌いですねキミも。というか、こんな弱った芳乃見るの、ボク初めてですよ」

 

 

寧ろなんでおのれ平気なの?めちゃくちゃピンピンしてる白河を見て疑問が浮かんだ。

 

なんならマジで般若心経唱えててギョっとしたわ。周囲で同乗してた他の客もとんでもないものを見たって目をしてたし。

 

 

「ボクは慣れてますからね。それともボクが「きゃー!」って悲鳴を上げるとでも思います? だとしたら甘いと言わざるを得ない。そういう女子っぽいのは未羽にでも期待するんだね」

 

 

……なんて捻くれた事を言ってるが、白河も充分に女の子だと思うんだがな。黙ってれば人形みたいに整ってるが、こんな風に余裕で話してる姿も、所々で女子らしい所作がある。

 

話してると何より楽しいしな。前にも言ったが、白河はかわいい女の子ではあると思うんだが。

 

それを口に出すと前の焼き回しになるからな。今は抑えておこう。

 

 

「最初から勝てそうになかったな、こりゃ」

 

「ふふふ、心残りがあるとすれば歌詞を間違えたことくらいかな?」

 

「お経を歌詞と言うな歌詞と」

 

 

一応、ありがたいお経なんだぞ般若心経。

 

 

「それにしても、遊園地初心者にはまだ荷が重かったか……! シートの固定さえなければ、まだ舞えたんだが」

 

「一応言っとくと、シートなしでジェットコースター乗りこなしたら人外の所業だからね?」

 

 

敗因、コチラの圧倒的な経験不足。なお、魔法での強化はバレないとしても明確なズルなので当然封印していた。

 

兎にも角にも敗北は敗北である。白河が何を命令するか判らないが、甘んじて受け入れよう。

 

 

「で、何を命令するんだよ」

 

「んー、それなんですけど保留でお願いします」

 

「保留?」

 

「肯定。そ、保留です。芳乃くらい体力に自信のある人をいつでも動かせる権限持ってるのって、なんかお得じゃありません?」

 

 

悪戯顔でそんな事をのたまう白河。なんとまぁよく考えてるなコイツは。

 

 

「命令権に「今日まで」って名言しなかったおれのミスだなこりゃ。まぁそれでいいけど。……つか、ほんといいのかよ? 命令権がなくても、おのれの頼みならよほどの酷い事でもない限り断らないぜ?」

 

 

そんな嫌な命令なんかコイツはしないだろうしな。絶対に。

 

そんなことを考えてると、何故か白河は視線をコチラから逸していた。

 

 

「…………そういうところ、ホントにタラシだと思うんですけど。きっと自覚ないんでしょうね、この男は」

 

「ん?」

 

 

小声のせいで、何を言ってるかよく聞こえなかった。

 

 

「なんでもないですよっと。……そうですね、それなら命令します、なんか奢ってください、具体的にはジュース。御汁粉!」

 

「って、それでいいのか?」

 

「いいですよ。……まぁ、流石に命令権キープはズルい気もしますしね」

 

「んー、そっか。なら御汁粉ちょっと買ってくるわ」

 

 

とりあえず体力も戻ったので、園内の自販機売り場に向かう。確かさっき見かけたとき御汁粉あったから、売り切れてなかったら大丈夫だろう。

 

おれも喉が乾いてたので御汁粉を買うついでに、テキトーな栄養ドリンクでも買っておく。

 

勝負には負けたが、なんだかんだ楽しい時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「で、一登はラビットフォールで思いっきり腰を抜かしたと」

 

「そういう灯火も、ジェットコースターで白河に敗北したと」

 

「…………」

 

「…………」

 

「「はぁ……」」

 

 

二人揃って、己自身の情けなさに思わず溜め息をつく。

 

場所はフードコート。

 

各人、各組が気になる場所を回ってから戻って来て、昼間に食べれなかった別の軽食を摘みながら、それぞれの見たもの、体験したもの、乗ったライドの感想など、情報交換会が繰り広げられていた。

 

ショッピングエリアに行った二乃からの感想で叶方が揺れ動いてたり、その叶方はホラー要素もあるミラーメイズを難なくクリアしていたそうだ。

 

ハートクイーン城を見に行ってた逢見先輩ことソラさんと海央は、城の中で再現されていた女王のディナーに着目していたようだ。

 

海央曰く「めっちゃ高くて美味しそう」の感想通り、そもそも材料が高くて再現が難しい奴らしい。

 

白河もジェットコースターに行く前にハートクイーン城を見に行ってたらしく、甲冑や武具が中々に凝った造りをしていたそうだ。なにそれちょっと気になる。

 

有里栖はどうやら迷子の案内とかしてたらしい。それで一登と一緒にラビットフォールに乗ったとか。一登はこのザマだが、有里栖は相当楽しんでたそうな。……女性陣が、強い。

 

 

「そういえば、そろそろナイトパレードの時間か」

 

 

そんなこんなでワイワイと駄弁ってるとそれなりに時間が経ったらしい。

 

いよいよ、ラストの大盛りあがりと行った所か。

 

そうこう言ってる間にも優雅で、なおかつ壮大なBGMと共にそれはやってきた。

 

仮オープン仕様との事で、正式オープン時のものよりは抑えてるらしいが、何が足りないのか判らないほど、それは素晴らしいパレードだった。

 

遊園地初心者であるおれと海央、他の女性陣に叶方、杉並や一登達ですら見惚れるほどであり、終了時には盛大な拍手を送っていた。

 

こうして、生まれてはじめてとなる遊園地は、一生記憶に残る思い出となったのだった。

 

 

 

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