D.C.4 〜ダ・カーポ4〜 先視の魔法使い   作:トウリ

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EPISODE 6

 

 

 

 

 

 

___学生寮、早朝、自室にて。

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 

どよ〜ん、という効果音すら付きそうな惨状。

 

あれから寮に帰って頭を悩ませたものの、いい案なんて思い浮かばず、一緒に頭を悩ませた妹分共々、力尽きている様だった。

 

なお、海央はおれのベッドで、おれは床で。

 

……ここ、おれの部屋だよね?

 

なんで我が物顔でベッド占領してんだよ駄妹。

 

いや別にいいんだけど今更だし。

 

 

「流石に、一晩でいい案が出る訳が無かったか……」

 

「というか、あたし達が考えると、どうしても脳筋的になっちゃうのはなんでぇ……なんでぇ……?」

 

「完っ璧に育ちが出てるよな。おれら戦闘民族だったか……?」

 

「あたし、金髪碧眼にならないもん……大猿にもならないもん……」

 

「おれだってならねぇよ……」

 

 

もはや脳死での会話だった。

 

基本的には戦闘特化の魔法使いであるおれ達には、対象を危機から守る手段なら割と色々と思い付く。

 

黒服よろしくおれらで有里栖の側を警護するとか、あからさまな奴を遠ざけるみたいな。もっと吹っ飛んだ案だと輩を狙撃とか(それは即座に却下された)。

 

しかし、それらはあくまで問題を遠ざけてるに過ぎない。解決策となると、アッチ方面に染まったおれらの脳みそじゃ一日じゃ浮かばない。

 

今ある情報で推論を立てるのは得意だが、新しく考える……杉並風に言えばゼロからエンタメを生み出す様な経験が著しく少ないせいで、どれだけ案を出しても、いわゆる脳筋染みたモノになってしまう。

 

魔法? 最初から選択肢にすら無い。どう説明しろと言うんだよ。確かに人払いの魔法ならとも思うが説明出来んだろ。

 

 

「大正解。予想通り、ここに海央ちゃんいましたね」

 

 

と、おれと海央しかいないはずの部屋に第三者の……っていうか聞き覚えのある声が聞こえる。

 

目を向ければ、そこには制服姿の白河。

 

 

「あれ、白河? ……いやまて、ここ、おれの部屋……だよな?」

 

「なんでそこで疑問形になっちゃうんですかね」

 

「や、この部屋、いい加減プライバシーとかねぇし。叶方とか杉並とか、海央やおのれとかも最近来るし」

 

「……もう少し、部屋の防犯意識高めません? なんかちょっと心配になってきたんですけど。今だって鍵空いてましたし、この部屋」

 

 

安心しろ、人に出せないもの……主に化け物リボルバーとか弾薬とかもっと安全な所に隠してあるし。……そういう問題じゃねぇか。いかん、頭が回ってない気がする。

 

 

「というか、おのれは何故ここにいるんだよ? しかもえらい早くに」

 

「未羽から海央ちゃんが部屋に戻ってきてないーって連絡が来てね。大方、昨日の件で芳乃と考えごとしてる内に寝ちゃったんじゃないかと」

 

「一次一句間違いなく大正解だよ」

 

 

気がつけばベッドを占領されていたので、おれは床で寝るしか無かった訳だが。

 

海央に至っては我が物顔でベッドの上で脚をプラプラさせている。部屋着なので割と防御力は低く太ももまで出した素足だ。無防備極まりなくて思わずため息が出る。

 

あまりに無防備だからか、そんなおれ達を呆れて見る白河。

 

 

「……兄妹として再会したのはつい二ヶ月前って言うのに、なんだか長年一緒にいた感が滲み出てますよね、お二人って」

 

「中身対して変わってねぇしなぁ……そりゃ確かにコイツ、見た目は成長してるけども___」

 

「お兄ちゃんも最後に会った時と比べると大きくなってたけど___」

 

 

そこで顔を見合わせて頷いてから白河に向き直る。

 

 

「成長しても海央は海央のままだったしなぁ……」

 

「お兄ちゃんはどこまでもお兄ちゃんだったなぁ」

 

「中身まで似たもの兄妹ですねホント!?」

 

 

血縁あって大体同じ環境で幼少期過ごせば感覚なんて似るもんだろ。多分。

 

だからまぁ、約10年ぶりに再開しても距離感も変わらん訳である。

 

 

「いや、仲良しなのはいいんですけどね。……それで、頭を悩ませていた結果は出ました?」

 

「ない知恵振り絞って見たけど、感性同じなせいで似たような脳筋案しか浮かばなくてだな、手詰まってるわ」

 

 

そこで白河はおれにのみ可哀想なものを見る目を向けたあと、真剣な様子で海央の肩に手を置き、語り始めた。

 

「……海央ちゃん、芳乃は手遅れだとしてもキミまでゴリラになることないんだよ? 大丈夫、まだキミは人だから」

 

「真正面からケンカ売りに来やがったなコノヤロウ」

 

「あたしゴリラじゃないもん。ゴリラはお兄ちゃんだもん。あと、お父さんは間違いなくキングコング」

 

「なんでおじさんに飛び火したし。殺されるぞおのれ……!? つか、誰がゴリラだ誰が。掴んで上に投げて空中コンボバースト決めるぞコラ」

 

「「だから、そういうところがゴリラなんですよゴリラー!!」」

 

 

早朝からぎゃーぎゃー騒ぐアホ三人。

 

話の中身までアホ丸出しである。

 

なお、おじさんがキングコングなのは全面的に同意である。

 

……以上、頭が回らない時の会話はひたすらぐだぐだになるという非合理的な一例であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-EPISODE 6-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2/7 木曜日 昼寝日よりだが昼寝する暇など無かった。

 

 

 

あのあと、白河により強制退去させられた海央を見送ってからいつもの日課を一人でこなし、学園に登校。

 

せめて放課後になるまで脳筋案以外も考えなければならないと思うも、どうにもパーツが足りない感じがする。

 

悶々としたまま朝昼の授業をこなして夕方。いつものSSRの溜まり場にて、各々がアイデアを出し合っていた。

 

 

「___むう、やはりおれと海央で黒服よろしく身辺警護でもするか……?」

 

「あ、私も似たような案考えてました。鷺澤さんの周りに常に誰かいるようにして、告白とかデートのお誘いとかで近づいてくる人が来たら、その場でノーと言ってあげれば……」

 

「いや流石に難しいかも……。男子のお誘いは放課後が狙い目だけど、登下校まで一緒ってのは無理があるし。家だってバラバラだし、そこまで出来たとしても今度はこっちの動きを読まれそうだし」

 

「あー、うー…………やっぱり駄目ですか?」

 

「アイデアとしてはいいと思うな。やっぱり他の誰かが傍にいたりすると、デートのお誘いとかってしにくいはずだもんね」

 

「うん、方向性としてはバッチリ」

 

「…………ただ、それだとあくまで問題を遠ざけてるだけであって、根本的な解決策にはならないんだよな」

 

「……そうですね。思ってた以上に難しい問題ですね」

 

 

みんなも色々と考えていたのか、話し合いが始まって30分経つが既に色々とアイデアが出されている。

 

ただ、決定打になるようなものは未だでてないのが実情でもある。

 

なお、初手で取りあえず出した案は「怪しい奴は狙撃」であり、杉並からは高評価を得たものの周りにより一斉に却下された。至極、当たり前である。

 

一方、相談者当人である有里栖は……やっぱり迷惑かな? って表情してんな。んなこと無いってのに、ったく。

 

……まぁ、有里栖の方は一登が対応し始めたし、そっちは放っておいてもいいか。

 

こういう時、一登は間違えないしな。

 

 

「ん〜……やっぱり難しいね。AとBをくっつけるのはバリバリ守備範囲なんだけど……AにBその他を近づけさせないようにするってのは、ボクは守備範囲外とさせてもらっているからなぁ……」

 

「むしろやろうと思えば出来ちゃうって言い草がこえーよ」

 

「ふふふ、ボクにかかればね。……ちなみに、常坂兄は何かアイデアがあったりは?」

 

「ですです。さっきから兄さんだけアイデアを出していませんよ?」

 

「この際、何でもいいから出してみようぜ。取っ掛かりが生まれるかもだし」

 

 

そう言うと一登がまた考え出す。

 

ふむ、考えなしではなくて、まだ考えが纏まってない感じか?

 

 

「何かあるのであれば、出し惜しみするのは得策ではないぞ、同士よ」

 

「え? いや、けど……」

 

「同士が無意味な思考に耽って、時間を浪費するような人間ではないことは分かっている。今朝その手に持った風呂敷、大方広げ終えてるのではないか?」

 

「……相変わらず、人の頭の中を推理するのが得意だよな、お前って」

 

 

「フッ、もっと褒めていいぞ」とキメ顔をする杉並。……ふむ、コイツがここまで言うってことは、一登の案なら突破口になり得るってことか。

 

 

「常坂君、何かいい考えがあるなら教えて?」

 

「んー……そうだな。俺は来週の恋パを上手いこと利用すれば、どうにかなりそうな気がするんだよな」

 

「恋パを?」

 

「うん、こういうイベントって生徒全員大好きだし。注目度はかなり高い。その注目度を利用して『有里栖は恋人を作るつもりはありません』と大々的に伝えるんだ。それなら大半の男子は引くはず……って感じなんだけど」

 

 

……なるほど、恋パか。

 

それは盲点……つか、完全に忘れていたな。

 

杉並主催のバカ騒ぎをするって方向でそのまま思考の片隅に置きっぱなしだった。

 

 

「ちなみに一登、大々的に伝えるって言ってるけど、具体的にはどうやってするの?」

 

「まぁ、問題はそこなんだよな。色々考えたんだけど、その点がどうしても出てこないんだ」

 

「だよね……方法を問わず、とにかく宣伝することに集中するなら、可能性は無限大だし」

 

 

とにかく目立てばいい……ただし、悪目立ちは御法度だ。それじゃあ意味がない。

 

それはそれとして有用な情報なのには違いない。

 

取りあえず、テントからホワイトボードを引っ張り出して今の情報を整理するか。

 

問題提起、解決手段、制限事項、と。

 

1.有里栖の悩みの解消。香々見学園の男子相手に「有里栖は誰も付き合う気がない」ことを理解させる。

 

2.その為の手段として恋パを利用。

 

3.ただし悪目立ちするようなものはなし。

 

 

「取りあえず、この条件で考えてみるか。ああ、因みに悪目立ちはダメだから放送室のジャックとかもナシな」

 

「バカな!?」

 

 

そこでオーバーリアクションする杉並……やると思ったよ、おのれなら。早めに釘を刺して正解だった。

 

 

「んー……変に角が立つのもダメだとなると、オレの考えてた「コスプレして『彼氏不要』って書いたビラを配る」もアウトかなぁ」

 

「そ、そういうのはちょっと嫌かな。ホントに変に角が立っちゃいそうだし……」

 

「ってことで却下だな。他には……」

 

「提案。お約束だけど、SSR主催でミスコンを開催するというのはどうかな?」

 

「ミスコンか」

 

「エントリー可能な女子は本校も含めて全員。勿論投票可能な男子も同じく全員。男子ってこの手のイベントは大好きだし、上手く運営すれば注目を浴びれると思います」

 

「それで、わたしたちの誰かが司会者を担当して、エントリーしてくれた女の子にインタビューをして……」

 

「有里栖先輩の番の時に、『今は恋人を作るつもりはありません』って言えば…………! いけますよこれ!」

 

「道筋は見えてきたな……」

 

 

白河の出した案をみんなで補填していき、おれもその方向で思考を回そうとしたが、その前にある問題が浮上して首を横に振るう。

 

 

「いい案だが時間が足りねぇ。恋パは来週で、確か申請期限は今日までだ」

 

「「「「あ」」」」

 

「ですです!機材の準備やエントリーしてくれる候補者を募ったり、当日のスケジュールを決めたり、あと校庭か体育館を使いますよね? これって申請が必要なんじゃ……」

 

 

全員がこの手の事情に詳しいだろう杉並の方へ向く。

 

杉並は一考してからおれと同じ様に首を横に振った。

 

 

「申請先の中央委員会こと生徒会も多忙ゆえ、帰宅するのはかなり遅くなりそうだが、ミスコンレベルの草案をまとめる時間はないな。現実味はかなり薄いと言っていいだろう」

 

 

と言うことである。

 

なのでホワイトボードに「4.期限は今日まで!」を追加する。

 

 

「今からじゃ間に合わないね……」

 

「うーん、残念ですね……。思いついた瞬間は名案だと思ったんだけどなぁ」

 

「でも方向性としてはかなりいいと思うんです。ちょっと準備に時間が掛かるというだけで」

 

「だよな、アイデアとしてはかなりいい」

 

「そうなると、ミスコン以下の規模での催し物をすれば良いって訳だ」

 

 

方向性は大分絞られて来たな。

 

あと一手。

 

その一手があれば、恐らく軌道に乗ることが出来るはず。

 

 

「……告白する権利を与えるっていうのはどうだ?」

 

 

その最後の一手を出したのは、やはりというか親友だった。

 

 

「えっ!?」

 

「ちょ……ちょっと兄さん、それってどういうことですか? 告白をどうにかしなくちゃいけないのに、それをする権利をあげるって……」

 

「や、ただの思いつきなんだけどさ。告白権利みたいなものをプレゼントとして用意するんだよ。その権利を巡って、謎解きレースとか開催して、まずは参加者を募る。

 

___で、フィナーレでその権利をプレゼントして、その優勝者を思いっきり振るわけだ。他の参加者も集まってる前で、『今は恋愛に興味ありません、お友達からで』ってな感じで」

 

「で、でもそれって……振られた人があんまりじゃないかな? せっかく頑張って優勝したのに、私のアピールに付き合わされるだけで終わるなんて……」

 

 

確かに。一登の案をそのまま受け取るなら、優勝者はとんだピエロになってしまうだろう。

 

しかし、このお人好しの親友がそれだけで終わる様なことを考えるわけがない。

 

ようやく回りだした頭が、その答えを導き出す。

 

 

「___八百長、いや出来レースにするって訳か」

 

「そう。優勝者をこっちで決めておけば問題ないだろ?」

 

 

なるほど、これなら全ての条件を満たした上で、身内以外に被害を出さずに目標を達成出来る。

 

やるな一登。素直に感心したぜ。

 

 

「なるほど、こんな裏技をよく思いついたね、一登。面白そうじゃん!」

 

「ま、問題はどうやって協力者を作るかってところだけどな……」

 

「ん? そこは別に悩まなくていいだろ?」

 

「だよねー」

 

 

叶方と頷きあうと一登がクエスチョンマークを頭から出す。

 

おのれ、よもや分かってないのか?

 

 

「え、まさかアテがあるのか? あっさり引き受けてくれる友人とか」

 

「いや、そうじゃなくてさ。なんていうか、所謂…………言い出しっぺの法則?」

 

「は?___お、俺がやれってことか!?」

 

「え、ええええっ!?」

 

 

一登と、あとなんでか有里栖が驚愕の声をあげる。

 

……あれ、これよくよく考えてみると、もっと面白くなりそうじゃね?

 

恋人を作るつもりはないと明言してるものの、一登に関してのみガードの甘い有里栖に、その一登が芝居とは言え告白するって流れ。

 

ふと、この手の話題に敏感な恋愛請負人の方を見ると、一目で分かるくらいにワクワクしてるじゃありませんか。

 

ホントに目敏いなコイツ。

 

 

「うん、だってそれが一番手っ取り早いんじゃない? 事情は全部知ってるし、問題ないでしょ」

 

「身内だから情報漏洩やその他のデメリットもねぇしな。寧ろやらない理由がないだろ?」

 

「くっ……!」

 

 

お、一登の奴、焦ってんなー。

 

下手すると大勢の生徒に醜態を晒して翌日には伝説に残りそうな所業だし、そりゃ躊躇するか?

 

だが、言い出しっぺの法則は絶対である。

 

……というか、こんな面白そうなこと、逃す訳ねぇよな?

 

 

「いやでも、誰がやっても同じだろ。それなら叶方や杉並でも構わないんじゃないか……?」

 

「一登、それ本気で言ってる?」

 

「…………」

 

 

叶方はキャラが立ち過ぎて肝心の有里栖の存在感が薄れてしまう。

 

杉並はもはやいるだけで陰謀しか感じられないのでアウト。出来レースがバレてはいけないからな、まずこの二人は駄目だ。

 

 

「なら、灯火は? 身体能力もいいし、問題ないだろ?」

 

「あ、ごめん常坂兄、芳乃はこっち手伝ってもらうつもりなんです」

 

 

もはや藁にもすがる勢いの一登がおれの名前を出すも、白河がそれを制する。

 

 

「恋愛相談もまだありますからね、芳乃ならボクのサポート十分に出来ますし。……それと、少し考えがあるので、ちょっと芳乃は借りていきますね。いいですよね芳乃も?」

 

「ああ。それに、その手のイベントだと荒々しい奴らも来そうだしな。おれや海央みたいな荒事要員は参加せずに待機したほうがいいだろ」

 

 

そう言うと一登が崩れ落ちた。詰んだらしい。

 

諦めろ、再度同じことを述べるが言い出しっぺの法則は絶対なのだ。

 

ふと、白河を見ると小さくウインクして来た。やはりアイツはよく分かってる。

 

まぁ、実際問題、恋愛相談もあるから人手がいるのは間違いじゃないんだろうが。

 

 

「あの、灯火さんは分かりますけど、海央ちゃんも荒事要員なんです?」

 

 

それはそれとして、二乃が海央まで荒事要員なことに疑問を覚えたみたいだ。他の面子……【防人】で戦闘特化の魔法使いであることを知ってるソラさん以外も同様だった。

 

 

「素の身体能力と一撃の重さなら、実は海央の方が上だぜ?」

 

 

おれがそう言うと、全員が冷や汗をかいて海央を見る。

 

海央は一瞬、慌てるもののすぐに気を取り直して二・三歩下がると、おれよりも鋭くキレのある連続後ろ回し蹴りを披露する。

 

咲三式の体術___狼襲脚・壱式 三連。

 

魔力放出はなしだが、それでも空気を抉るような音を3回響かせて、いつもの人懐っこい笑顔で海央はドヤ顔を見せた。

 

 

「どやぁ」

 

 

なんなら口でどやぁって言っていた。

 

 

「……わ、私とあんまり変わらない小柄な身体で、あそこまでキレのいい技が出せるの?」

 

「というかスカート捲れてますから! 捲れてますから! 兄さんは見ちゃダメです!」

 

「? スパッツ履いてるからだいじょうぶだよ? ほら」

 

「わー!わざわざ見せなくていいから!?」

 

「海央ちゃんメッ!だよ?慎みは持とうね? ね?」

 

 

素でスカートの中を見せようとする駄後輩に慌てて有里栖と逢見先輩が止める。

 

……なお、男性陣はギリッギリで目を逸していた。

 

一登は二乃により強制的にだが。

 

首がゴキッと行ってた気もするが気にしないことにしよう。

 

 

「……スマン。海央の奴、身内認定してる人間にはとことんガード甘くてな」

 

「身内認定されてることは喜ばしいんだけどね」

 

 

破天荒の代表格でもある白河ですら苦笑するのだ。今この瞬間だけはアイツが天辺だった。

 

閑話休題。

 

取りあえず海央はあとで逢見先輩からお説教を受けさせるとして、兎にも角にも話の大筋は出来たと見ていい。

 

 

「と、とにかく! 後は運営と進行を頑張って、兄さんが最後に恥をかけば大成功ってことですよね!」

 

「最後! 最後の要因にダメージが集約してるから!」

 

「あ、叶方、確かカメラ新しいの買ったって言ってたよな? 親友の勇姿だ、しっかり収めて後の世に伝えるぞ」

 

「しっかりとトドメ刺す気満々だなオイ!?」

 

「オッケー!任しといてよ!最高画質で余さず全て撮っとくからさ!」

 

「やめろ!オーバーキルだから!つか後世に残すな!」

 

「ふむ、同士が奮闘するとなると俺も黙ってはおけないな。内容そのものを面白おかしくしつつ、一週間で集客が可能なイベントを作るとしよう!」

 

「嫌な予感しかしねぇよお前が張り切ると!」

 

 

そんなこんなで、一登の渾身のツッコミを受けつつ、急ピッチで企画を煮詰めていく。

 

なにせ期限は生徒会が帰るまでだ。急がなければならないと分かっていることもあって、皆も皆で張り切っている。

 

ただ、共通してるのは皆揃って楽しそうなんだよな。

 

それは晒し者になることが半ば確定してる一登も、告白を受ける側にいる有里栖も同様で。

 

有里栖の悩みを解消するためなのは変わらないけど、いつの間にか参加する人達も楽しく出来る様に話は進んでいる。

 

それはSSRの本分……誰かを笑顔にすること、そのもの。

 

 

「___さぁ、楽しくなってきたぞ」

 

 

思わずそんな事を呟いたら皆も同意するように笑う。

 

その空気に心地よさを感じながらも、取りあえず企画書を書き上げるとしようか。

 

これで間に合わなかったら目も当てられないしな。

 

 

…………それから、【恋のレジェンドバトルパーティ】と名付けられたこの企画は、無事に生徒会へと受理される。

 

明日からは、クリスマス以来の激動の日々となるだろう。

 

ただ、恐れなんてものはない。作業量の多さによるしんどさもない。

 

笑ってしまうくらいやることが山積みだが、それも含めて楽しむことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼ △ ▼ △ ▼ △

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____夜、自室にて。

 

 

「今日は黄金炒飯!」

 

「やったぁ! お兄ちゃんの作るご飯って全部美味しいけど、炒飯は特別美味しいんだよね!」

 

「あ、分かる分かる。確か商店街の中華料理店でアルバイトしてて、そこで身につけた技も使ってるんだったっけ?」

 

「まぁな。付属に来た時からやってるから、中華料理の経験値だけはめちゃくちゃある。中華鍋も使ってるしな」

 

「驚愕……! ご飯一粒一粒がしっかり卵でコーティングされていてダマもないですし、焼き加減も味付けも絶妙ですよこれ! 今まで芳乃の料理は何回か食べましたが、これ間違いなくトップクラスに美味いしいです!」

 

 

相変わらず溜まり場になってる自室にて、叶方と海央と、海央がまたまた連れてきた白河と一緒に夕飯を取る。

 

メニューは炒飯に溶き卵を入れた中華スープ。

 

スープもそうだが、炒飯は作り慣れてるが故に手間もそんなにかからない。なお、杉並はまた任務とやらでいない。作り置きで保存の効くやつでも後で作っておいてやるか。

 

 

「でも、なんだかんだで今日中に企画が纏まって良かったね」

 

「その分、一登がえらい目に合うが、必要な犠牲と思って割り切ろう、南無三」

 

「うん、一登のことは忘れないよ……!」

 

「惜しい人を亡くしましたね……!」

 

「あの、一登先輩、まだ生きてますよ……?」

 

 

ノリでテキトーに喋ってるだけだから気にすんな。いや流石に不謹慎か。本人いたら流石にキレるな。

 

まぁ、その本人もなんだかんだ楽しそうにしてたし、おれ達もおれ達で、精一杯盛り上げねぇとな。

 

 

「で、灯火はしばらく白河の手伝いだね」

 

「ああ、コツは前ので掴んでるからな。前みたいな武道部の変な邪魔は……まぁ入ってもすぐに沈めるから問題ねぇか」

 

 

あれ以来、流石に不意打ちもして来なくなってきたから、大人しくしてくれると助かるが。

 

そんな事を考えていると、白河が思い出したように話を切り出した。

 

 

「そう言えば、海央ちゃんにも恋愛相談が来てるんですよね」

 

「えっ!?」

 

「あー……」

 

「そりゃ来るよね。海央ちゃんも可愛いんだし」

 

 

驚きつつも納得する。

 

この駄妹は有里栖並みに小柄で更にペチャパイだが、基本的には美少女なのだ。

 

健康的かつ見た目には程よく締められてる四肢、大きい瞳には生来の人懐っこさ、いつも着てる犬耳パーカーすらも魅力を引き立てる要素となる。

 

まぁ、兄貴分から見てもコイツはかわいいと思う。

 

口に出したら絶対に「どやぁ」ってするから言わんが。

 

 

「どやぁ」

 

「言わんでもこっち向いてドヤ顔すんな。さり気なく心を読むな。エスパーか、おのれは」

 

「この際だし今のうちに聞いてもいい? 海央ちゃんって今誰かと付き合いたいって気持ちある?」

 

「あ、ないです」

 

 

そして即答だった。いやまぁ、大体理由は分かるが。

 

 

「あたし、まだまだ色々と未熟者ですし、今は色恋沙汰に現を抜かすのもなぁって、それに___」

 

 

海央は一度おれを見てから、もう一度白河へ視線を向ける。

 

 

「___お兄ちゃんより心も体も弱い人は、正直対象外です」

 

「それはまた……ハードルが高いですね……」

 

「灯火もなんだかんだ愛されてるよねぇ」

 

「ほっとけ」

 

 

なんか照れくさくなって、自分の分の炒飯を一気に掻っ込む。

 

あと、そこの二人、生暖かい視線を向けるな。

 

頼むから。

 

 

「なるほど了解ですよ。海央ちゃんの恋愛相談は『芳乃のより弱い人は受け付けません』で通しますか……」

 

「まて、その言い方だと、下手するとおれの方になんか色々と因縁振ってくる奴出てこねぇか?」

 

「灯火なら余裕でしょ、それくらい」

 

「正解。そもそもゴリラに勝てる学生なんてこの世にいませんし」

 

「誰がゴリラじゃ誰が。胡散臭いCVの『私にいい考えがある』とかのたまう司令官みたいに変形するぞコラ」

 

「ゴリラはゴリラですけど、それトランス○ォーマー!?」

 

 

そんないつもの、くだらなくも代えがたい日常のやり取りをしながら、夜は更けていく。

 

明日からはもっと忙しくなると言うのに、だ。

 

ただ、言葉にしなくても、皆楽しみに思っているのは間違いなかった。

 

……でも、頼むからいきなり襲いかかるようなバカだけは出ませんようにと、おれはこっそり心の中で祈るのであった。

 

 

 

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