D.C.4 〜ダ・カーポ4〜 先視の魔法使い   作:トウリ

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EPISODE 7

 

 

 

 

 

___いつも訓練で使う森の中。

 

 

「…………」

 

 

いつもの魔法の修練を行ってから、地面に腰を落とし瞑想を行い、精神を一定の状態で保ち続ける。

 

魔法使いは己の感情がそのまま魔法になりうる。感情をコントロールする為にも瞑想は有効な修行だ。

 

おれの場合は更に、正確な射撃を行うためにも常に冷静でいることは必要不可欠だからな。

 

瞬時に照準を合わせ引き金を引き、狙った所に確実に弾丸を当てるためにも、こういう精神修行はやはり欠かせない。

 

 

「……ふッ! せいッ! てやぁ!」

 

 

ブォンッ!!と顔に風が当たる。

 

吹き付ける、ではなく当たる。

 

もし目を開けたら、そこには妹分が拳や蹴りをおれの顔面に寸止めする姿が見えるだろう。

 

何が起きても瞑想状態を保つ為にやってもらっている。マトモに当たればミンチ確定だが、恐怖心への折り合いを付けるためだ。

 

痛いのは嫌だ。死ぬのは怖い。……そんな感情を抱くのは、生きてる人間なら当たり前なのである。

 

けれど、いざ死を間際にした時、逃げることは許されない。

 

___逃げれば、そこに待っているのはあのクソッタレな未来だけなのだから。

 

 

「____ッ!」

 

 

眼の前にいるだろう海央の気配が変わる。

 

本気の打ち込み。

 

 

___大牙拳砲。咲三式の体術の大技。

 

 

どうやら力を込めすぎたらしい。

 

極めると人より大きな岩すら砕くその技は、流石に本当に当たるのはマズイので、瞑想を解除して首を横に逸らすと、顔のあった位置に凄まじいまでの風圧がかかる。

 

 

「あ、やりすぎた……」

 

「殺す気かアホ」

 

 

バツの悪い表情をしてる駄後輩の頭に軽くチョップを落とす。

 

「あいたっ」と涙目で頭を抑える駄後輩。

 

流石に今のはおのれが悪い。

 

 

「相変わらず力の調整がまだまだ雑だな」

 

「うぅ、反論できないぃ……というか、よく避けられたね今の。未来でも視えた?」

 

「視てたらどのみち確実に当たって御陀仏じゃろがい。反射的に避けたんだよ。野生の勘ってやつ」

 

「ゴリラの勘?」

 

「誰がゴリラじゃ誰が。宿敵のワニをふっ飛ばした右ストレートお見舞いしてやろうかコラ」

 

「そういうところがゴリラなんですよゴリラー!」

 

 

最近白河に影響されてきたのか、よくゴリラ扱いしてくる様になったなコイツも……。

 

おのれ白河め。そろそろゴリラネタも切れかけなんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-EPISODE 7-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2/8 金曜日 晴れ晴れ愉快だそうだ、なんだそれ?

 

 

 

恋パまであと一週間を切っている。

 

授業をこなして昼休みに入った瞬間、SSRのメンバーは屋上へ向かっていた。

 

事前にレジェパの役割分担をする為に一登から集合連絡が掛かっていたからだ。

 

クリスマスのとき以上の規模になるので、作業量も膨大だろう。それに先に請け負った恋愛相談もある。

 

効率良く作業を行うためにも、役割分担は必須だろう。

 

 

「さて、全員揃ったな」

 

「集まった理由なんてもう皆分かってるだろうし、パパっと割り振りを進めていこうぜ」

 

「だな。という訳でまずやるべきことは___」

 

「まずはレジェパ開催の告知だね。許可は取ってあるから、もう始めちゃっていいと思う」

 

「となると、やっぱりチラシの作製になるな」

 

「正解。掲示板は早いもの勝ちなんで、ある意味最優先でいいいと思います」

 

 

なにせSSR以外にも催し物はあるのだ。

 

先に抑えた方が宣伝率も高くなる。

 

 

「あ、それじゃあチラシはわたしの方でやろうかな。バレンタインのレシピもあるし」

 

「そうなると、私もそっちということになりますね」

 

 

まずはチラシ班決定。情報整理の為に昨日使ったホワイトボードをまた引っ張り出して記入しようとすると「むふー!」と既にペンを持った海央がスタンバイしていた。

 

やる気出てるなぁ、と思いつつ書記の役割を任せると、『チラシ制作班∶諳子ししょー にのにゃん先輩』とデフォルメされた二人のイラストまで書いた。

 

その絵に「あ、かわいい」と女性陣が反応する。以外な特技だった。というかホントに上手い。

 

 

「あと、すぐに片付けなきゃいけないのが、講堂の使用許可だよね?」

 

「それと予算申請だな。作業としてはかなり事務的なんだけど……」

 

「書類作成がメインになるな。しっかりやらないといけないところだぜ」

 

「なら私がやるよ。書類仕事はこれでも得意なのです♪」

 

 

有里栖が腰に手を当ててぱちこーん☆とウィンクする。

 

一登がそれを直で食らってよろめいているが、こやつ、やはり一登に対してはガードが薄い。他の男子にはやらんだろ今の。

 

で、話を戻すとこの学園、許可とか予算とかは正直に言えばかなり緩かったりするも、その分書類作成はきっちり見てくるので当然手は抜けない。

 

なのでテントの中に入れていた白紙の書類を有里栖に渡す。根が真面目な有里栖なら任せられるだろう。

 

『書類作成班:ありす先輩』とさっきウィンクした有里栖をモチーフにしたデフォルメキャラが海央により描かれる。いやほんと上手いなオイ。

 

 

「あ……あの〜…………常坂兄、ちょっといいかな……? 非常に畏れ多く、恐縮で、申し訳なく、悲しい事実があるのですが……」

 

「ど、どうした、そんな畏まって……」

 

「……あー…………察したわ。というか、こっちもこっちでデスマーチだったな」

 

「大正解……! 恋愛相談の件数が目下絶賛急上昇中でして……そのうえでイベントの作業となると、それはもうC級サメ映画並のクオリティでしか動けません……!」

 

 

最近はサメが出てればなんでもありな風潮が出てるよな、あの手の映画。

 

サメとはなんぞや?と杉並と哲学ばりに悩んだ記憶もある。いや、それはどうでも良くてだな。

 

 

「うわぁ……そうだった。そっちもあったか」

 

「なので、昨日言った通り、芳乃は借りっぱなしになります」

 

「おっけー、分かった。一度SSRで請け負った依頼だからな、いい加減には出来ない。白河と灯火は一段落するまではそっち優先で動いてくれ」

 

「あいよ」

 

「あいあいさ、了解です」

 

 

海央が更にホワイトボードに追記を始める。

 

『恋愛相談:ひよりん先輩 お兄ちゃん(ゴリラ)』と、デフォルメされた白河と、絵柄まで変えて厳ついゴリラ(顔がリアルなおれ)が描かれて、それを不意打ち気味に見たSSRメンバーが杉並も含めて思いっきり吹き出す。

 

全員OUT! って、なに書いとんじゃおのれぇ!!

 

 

「フンッ!」

 

「ぎゃわぁあああああ!? 背骨がー!背骨がーぁ!?」

 

 

無言のまま最高速でそれを書いた海央の背後に回ってバックブリーカーを決めて地面に沈めておく。

 

 

「流れるようにボケとツッコミが行われたね……」

 

「咲三嬢の画力にも驚いたが、一瞬でバックブリーカーに持っていた芳乃も見事だな」

 

「どうしよう、今度芳乃のことゴリラって言ったら絶対にこのイラスト思い出しますよ……!」

 

「芳乃くんっ、女の子には優しくしないとメッ!だよ? 海央ちゃんもイタズラはほどほどにね?ね?」

 

「「ふぁい……」」

 

 

場を乱した罪により、アホ兄妹揃って逢見先輩の前で正座して反省である。

 

 

「それで、オレと杉並はどうする?」

 

 

気を取り直して割り振りを再開する。なお、ゴリラの絵はそのままだ。解せぬ。

 

 

「そうだな……とりあえず当日の催しを今の内に考えておいてくれ。クイズだったり台本だったり」

 

「了解。好きにやっちゃっていいんだよね?」

 

「盛り上がるのを頼む」

 

「うむ、極上のエンタメを提供しようではないか」

 

「……叶方、分かってると思うが」

 

「うん、やり過ぎないよう見てるよ」

 

 

脚本とか演出なら杉並の本領発揮だろう。やり過ぎる可能性もあるが、そこは叶方がストッパーになってくれる。

 

ある意味、常識的な範囲での催し物なら鉄板の組み合わせと言えるだろう。

 

『脚本・演出:杉並先輩 叶方先輩』と、デフォルメ化した悪巧みする杉並と、デフォルメ化したせいで見た目完璧に美少女な叶方も書かれる。もはや性別:叶方である。

 

おのれは本当になんなんだ。

 

 

「やるからにはちゃんと盛り上げたいし、商店街のスタンプラリーについても調べないとね」

 

「あ、それならあたしがひとっ走りして調べて来ます!」

 

「海央の足なら調べ物してすぐに帰ってこれるだろ。戻って来たら作業量の多そうな逢見先輩と二乃を手伝ったらどうだ? 絵心あるならちょうどいいだろ」

 

「ですです! 海央ちゃんのイラストなら目を引くこと間違いなしですよ!」

 

「うん!わたしもそう思うな。細かい所は進めておくから、メインのイラストをお願いできる?」

 

「任せてください!」

 

 

頼られて嬉しいらしい海央が無い胸を張る。まさかの特技だったな。『調査班→チラシ制作班∶みおーん』と、犬耳パーカーの海央もホワイトボードに追加される。前から思ってたが、みおーんってなんだみおーんって?鳴き声?

 

 

「あ、でもスタンプラリーってどこを調べればいいのかな?」

 

「スタンプラリーの主催って、商工会だっけ? 直接聞けばいいかな?」

 

「いや、図書館に確か当時のパンフレットとかあるはずだろ。なんなら過去のイベントの記録もありそうだし、参考に出来そうなものは調べれるだけ調べてくれ」

 

「りょーかいー!」

 

「ないならないで、俺独自のゲームプランを用意するだけだ。安心するがいい」

 

「「いや何一つとして安心できねぇよ」」

 

 

思わず一登とシンクロしてツッコんでしまったが、仕方ないだろう。コイツ独自で考えたゲームプランとか何が出てくるか予測できん。

 

海央には是非ともスタンプラリーの情報を集めてほしいものである。

 

 

「で、一登はどうすんの?」

 

「んー……そうだなぁ……バランスを考えつつ人手が欲しい所を随時手伝う遊撃班かな」

 

 

『遊撃班:一登先輩』と、最後に残ったデフォルメ一登が描かれてホワイトボードにSSRメンバーが全員揃う。一人ゴリラだが。ゴリラのままだが。誠に遺憾なのだが。

 

 

「とりま書類関係さっさと終わらせないと話にならんし、有里栖を手伝ったらどうだ?」

 

「あー、確かに。よし、そうするか」

 

「うん、よろしくね常坂君!」

 

 

とりあえずさり気なく誘導しておくと白河からグッジョブのサインが送られて来たのでサムズアップで返しておく。

 

ノリノリだなこの恋愛請負人。

 

兎にも角にも。前回より大規模になるが、海央がSSRに加入してるおかげで人手はなんとかなりそうだ。

 

大変だが、皆の顔にはやはり楽しそうな表情が浮かんでいる。

 

斯くいうおれも、楽しみで仕方ない。

 

まずは白河と一緒に先に請け負った恋愛相談を消化するところから始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____そして放課後。

 

HRが終わると同時に駆け出したツインテールを確認する。

 

流石ほぼ毎日風紀委員と鬼ごっこを繰り広げてるだけはあり、ツインテールこと白河の動きは洗練されていた。

 

 

「そんじゃ、おれも行くわ。皆もそれぞれ頑張ってな」

 

「ああ、そっちは任せたぞー!」

 

「ひよりんをよろしくねー!」

 

 

一登と有里栖に見送られながら一足遅れて駆け出す。ただ、白河の気配は掴んでるので問題はない。

 

階段を登るのではなく、その壁を蹴りながら最短距離で駆け上がると、すぐに白河を補足した。

 

 

「驚愕っ、もう追いついたんですか?」

 

「まぁ、何気に鍛えてるからな」

 

「あ、いつぞや庇ってもらった時と同じセリフですね。やはりゴリラの身体能力は凄まじいです」

 

「誰がゴリラじゃ、SFと侍を融合したギャグ漫画でも書くぞコラ」

 

「ゴリラはゴリラでもそれ漫画家の方ですよー!?」

 

 

と走りながらいつものやり取りをする。因みにおれに絵心はない。

 

まぁ、それはともかくとして、おれを振り切るなら最低限海央クラスの脚力は必要なので、白河に追い付くくらいならなんてことはない。

 

そのまま白河を追っていき、辿り着いたのはいつものSSRの溜まり場。

 

 

「走る必要性は果たしてあったのか……」

 

「ウォーミングアップみたいなものですよ。それより、早速始めましょうか」

 

「了解だ。で、まずはどうすんだよ?」

 

「んーそうですね。今日のところは、えー……ど・れ・に・し・よ・う・か・な……」

 

「まさかのランダムかよ!?」

 

「閃きとはそれすなわち運命に他ならず!」

 

 

よく分からん格言を言いながら、白河はTABを操作して「よし、キミに決めた!」と某人気アニメの名台詞を言い放ち、最初のターゲットを決める。

 

 

「今日はまず、とある下級生の恋心を結んであげようかと思います。付いてきてくれますか? 付いてきてくれますね、ヨシ行きますよ!」

 

「断る理由もなかったけど、ほぼ強制連行だこれ」

 

「勿論、芳乃にもバッチリ働いてもらうから、気合入れてくださいね?」

 

「了解」

 

 

なんだかんだ白河を手伝う事も多いが、脱出経路の確保だったり依頼整理の手伝いだったりがほとんどだったので、直接付いていくのは……クリスマス前日の空手部の部長殿の告白を見守った件以来だな。

 

それでふと、あの時の白河の笑顔を思い出してしまった。

 

……いやまて、二ヶ月前なのに、なんで鮮明に思い出せるんだよ。

 

何か方向性がおかしくなりかけたので首を振ってリセットする。

 

今は、目の前の依頼に集中する時だ。

 

白河の足取りは早く、どうやら既に対象の素性は調査済みらしい。

 

辿り着いたのは文化系の部活棟。

 

運動部に属さない天文部や料理部なんかの部活はここに拠点を置いている。改めて思うが屋上を陣取ってるSSRはやはり少し特殊なのだろう。

 

 

「対象は文化系か」

 

「正解。例の生徒マンガ件に所属しているので、今頃必死にペンを動かしている頃かと」

 

 

なるほど。動き回ってる訳じゃないから比較的楽に探せそうだな。

 

 

「それでどうする? マンガ研に乗り込んで何時もの儀式(セレモニー)とやらをやるのか?」

 

「んー……ボクひとりだったらそれでもいいんだけど、今日からは芳乃がいるので早速働いて貰いましょうか」

 

「ん、了解。つってもなにすればいいんだよ」

 

「まずはこの生徒がいるかどうか確認してくれます? 何らかの事情で帰宅しているならそっちにも行かないとダメですし。とりあえずこっそりと部室を覗いて貰えるかな?」

 

「了解っと、そうだ、ソイツの顔立ちとか特徴を教えてくれ」

 

 

それが分からなかったら探す以前の問題だからな。

 

 

「ああそうですね、うっかりしてました。えーっと、この子の見た目は……………………鼻があります」

 

「とりあえずクリ○ンではないな。いや待て違う、もっと別の特徴を頼む」

 

「あ、呼吸もしてるので口もあります。全集中の呼吸はしてないみたいですが」

 

「鬼○の刃の世界に戻ってくれ、この世界に鬼はいらねぇ。……いやだからそうじゃなくて、特徴な特徴。見た目の特徴」

 

「特徴ですか、そうですね。プロフィールによるとこの子は……私服はカジュアル系です」

 

「私服着てねぇだろ今は! ここは学校で皆等しく制服だ!」

 

「あ、好きなものは漫画だそうです、意外ですね」

 

「マンガ研にいてマンガ嫌いだったら逆になんなんだって話になるわ! じゃなくて!髪とか目とか人相の特徴だっての!?」

 

「嫌いなものは、黒板とか鏡を引っ掻いた時に出る、あのキェーって音だそうです」

 

「人相だっつってんのになんで違う情報が出てくる!? 好き嫌いは聞いてねぇ! 顔が分かるようなヒントだ!」

 

「ですから、キェーって音が嫌いっぽい顔の人がそうですよ」

 

「どんな顔だ!? それホントにどんな顔なんだ!? それで容姿が分かるのは杉並くらいだ!!」

 

「……寧ろ杉並は分かるって断言出来るのが嫌ですね」

 

 

アイツは別ルートで情報持ってくるからな……じゃなくて!

 

呼吸を整えてから溜息を吐く。

 

今朝の訓練を思い出せ。

 

こう言う時こそ冷静になるべきだ。

 

 

「……よし、もう良いだろ。好きなだけボケて満足したな?」

 

「あ、やっぱり分かります?」

 

「あれでわざとじゃなかったら、おれは今すぐおのれを病院に叩き込むぞ、全く」

 

「とか言って、芳乃だってノリノリでツッコミ入れてたじゃないですか♪」

 

 

確かに途中からはほぼノリでツッコミ入れてたわ。つーか、ツッコミは一登の役割だろうが。

 

 

「いやー、恋愛請負を芳乃と一緒にするんだなーって思うと、ちょっとテンション上がっちゃって」

 

「上がったって、おのれな……」

 

「芳乃も上がりません? 一緒に恋愛請負をするってことになって、ドキドキとかワクワクとかしません?」

 

「……楽しみにしてるいるのは確かだが」

 

「やっぱり? ふふ、だよね。と言うかアレだけノリよくツッコミ入れててワクワクしてないはないですよね?」

 

「まぁな」

 

 

言われてみるとそのとおりだ。

 

なんだかんだ、白河と行動を共にして___魔法使いみたいな白河の活動を間近で見れるのは、少しどころか大分楽しい。

 

知らず知らず、テンションも上がってたみたいだ。まだまだ修行が足りないな。いや、年相応なんだろうか。

 

……なら、今はこのまま突き進むか。いつぞや白河も言ってたじゃねぇか。楽しきことは良きこと、ってな。

 

それはそれとして。

 

 

「まぁ、楽しいのはともかく他にも依頼あるし、目の前の依頼はきっちりやろうぜ」

 

「それもそうですね、了解です。特徴は髪の毛は茶髪、長さは短めで、少しツンツンしてます」

 

「おっけー」

 

 

特徴が分かれば探すのも容易い。少し開いてるマンガ研部室の扉から覗いてみれば、件の下級生はすぐに見つかった。

 

 

「左側、二番目の席にいる奴だな」

 

「了解。それじゃあ早速……」

 

 

いつの間にか手に持っていた例の2丁拳銃を構え、

 

 

「___恋愛、執行させて頂きますか!」

 

 

そこからの動きはまた早い。部室に乗り込むと同時にターゲットへの素早いエイム。そして迷わず引き金を引き虹色の光がターゲットに命中する。

 

銃使いであるおれから見ても感心するエイム速度だった。

 

それからは決め台詞の五・七・五を決めて颯爽と帰還。

 

しかし、あれだな。やってることを客観的に見るとヒットマンかなにかにも見えるな。

 

 

「お疲れさん。……うわー、全員びっくりして放心してんな」

 

「嵐と言うものは油断してる時に襲来するものです。これでまたボクの評判が上がりますね♪」

 

 

こと目立つと言う点では確かに効果的だなオイ。

 

しかし、それはそれで恋パまでに更に依頼数も増えかねない訳だが、まぁ必要経費って事にしとくか。

 

 

「とりあえず一件は完了だな。このまま今日はやれるとこまでやるか?」

 

「うん、出切れば今日はあと5件は消化したいところ。部活で残ってそうな生徒を中心に狙えば____」

 

「____い、いました! みなさんあそこです!」

 

「「え?」」

 

「「「白河ひより! 芳乃灯火! お覚悟!!」」」

 

 

思わず白河と揃って間抜けな声を絞り出す。

 

見れば、美嶋さん率いる風紀委員達が大挙してやって来ていた。しかも背後にもだ。

 

おいおいおいおい。タイミング悪いな!?

 

 

「……なんだっけ、嵐ってのは油断してる時に襲来するもの、だったか?」

 

「まさか身を持って実感するとは思いませんでしたがね……」

 

 

言ってる間に風紀委員達が距離を詰めてくる。

 

うむ、そろそろアクション起こさないと不味いか。

 

 

「タレコミ通りです! 白河ひよりさん! 芳乃灯火先輩! 二人とも、今日こそは捕まえてお説教しますからねー!」

 

「タレコミってことは……やりやがったな、あのヤロウ」

 

「あ、あうう、杉並め〜……!」

 

 

ほぼ間違いなくリークしたのは杉並のヤロウだろう。アイツ今日はメシ抜きだ。

 

つか、なにやってやがる! いや面白がってるだけなんだろうけど、マジでなにやってやがる!

 

思わず舌打ちをする。ここで風紀委員達とやり合ってると時間がいくらあっても足りねぇな。

 

……仕方ない。目立ちたくないが、いっちょやるか。

 

 

「ここは任せとけ」

 

「芳乃?」

 

 

ポケットから取り出したビー玉を、手のひらの中に入れたままで【取替の悪戯(チェンジリング)】を発動。

 

取り替えたのは、この状況の諸悪の根源から譲ってもらった取っておき。

 

 

「とりあえず目ぇ瞑っててくれ!!」

 

「「「「!?!?!!」」」」

 

 

それを床に投げつけると同時に、おびただしいまでの閃光が廊下を包む。

 

 

「ま、眩しい!?」

 

「「「なんですかこれー!?」」」

 

閃光弾(フラッシュグレネード)!?」

 

「杉並印の特別製だぁッ!」

 

 

風紀委員達の動きが止まってる間に白河を担いで、その脇を音もなく走り抜ける。

 

光は一瞬だが、目を眩ませるにはそれで充分だ。風紀委員達の背後を取ってから、そのままその場を離れていく。

 

 

「あんなものまで用意していたとは、びっくりしましたよ……」

 

「前に杉並に飯の代金代わりに渡されてな。ちょうど良かったから使ってみた。想像より効果的だったな」

 

 

でも、これで本格的に風紀委員に目を付けられただろう。

 

それを、考えたら少しやり過ぎたかもしれん。

 

同じ事を思ったのだろうか、両腕で抱えた白河が呆れた表情でジト目を向けてくる。

 

 

「やり過ぎですってば、もう。普通に逃げれば良かったんですよ」

 

「まぁ、そうなんだが。……おれ、思ってたよりはしゃいでたみたいだわ」

 

「ドキドキとかワクワクしてたんです?」

 

「割と、結構、いやかなり」

 

「……ふふっ、それじゃあ仕方ないですねー。あ、そのまま安全運転でお願いします」

 

 

そんな風に柔らかく笑って、白河がそのまま体重を預けてくる。

 

そこから伝わる確かな熱、鼓動に、思わず心臓が跳ねそうになった。

 

なんとなく今、白河と目を合わせたら負けた気分になりそうなので、暫く無心になって走る。表情を変えずに走るので精一杯だ。

 

ノリに乗ってる時は自重しなくなるから、気を付けなければならないな。

 

そんなことを思いつつ、とりあえず風紀委員達の気配が遠のくまで走り、テキトーな空き教室へと逃げ込んだところ、

 

 

「お」

 

「あれ?」

 

「ん?」

 

「あ、ひよりんに芳乃君……って、どんな状況?」

 

 

そこにいたのは書類作成中の有里栖と一登だった。テキトーに入ったつもりだったが、なんつー偶然か。

 

 

「常坂兄と鷺澤、こんなところで作業してたんですね」

 

「うん、そっちは……みうたんから逃げてるところ?」

 

「そんなところです……っと、あの、芳乃、そろそろ降ろしてくれません? 流石に鷺澤達に見られるのは恥ずかしいんですけど……」

 

「あっ」

 

 

白河の抱え方が、いわゆる“お姫様だっこ”の状態だったことに今更気づいて慌てて下ろす。

 

まぁ、コイツに関しては今更だと思うが。飛び降りからキャッチする時もコレだったし。

 

 

「ふふふ。お二人とも、大変仲がよろしいですなぁ」

 

「な、なんの話かな? ……というかそういう鷺澤だって常坂兄と二人きりってどうなんです?」

 

「べ、別にどうもしないよ? 至って普通に書類作成してるだけだよー?」

 

「ホントですかー? この教室に入ったとき、なんだか普段より楽しげな気もしましたよー?」

 

「そ、そういうひよりんだって、お姫様だっこをやってもらって満更でもないんでしょ?」

 

「そ、そんなことありませんよ? ゴリラタクシーみたいなもんですし、大体あんなの割としょっちゅうやってますし」

 

「しょっちゅう!? お姫様抱っこを!? ……ねぇ、ひよりん、ちょっとその話もっと詳しく!」

 

「あー! あー! 藪蛇突いたねこれはー!?」

 

 

と、何故か大盛りあがりを見せる女性陣の会話について行けず、置いてけぼりになるおれと一登の野郎二人。

 

仕方ない。とりあえずあの二人は放置しよう。なに話してるかまで分かんないが、下手に突くとおれまで巻き込まれる気がする。

 

 

「一登達の方は順調そうだな」

 

「まぁな。そっちはどうだ?」

 

「杉並のヤロウが密告してたみたいで、まだ一人しか終わってねぇ」

 

「なにやってんだ杉並の奴は……」

 

 

流石に一登も呆れてるようだ。やはりアイツは今晩メシ抜きだろう。まあ、多分奴もそれを察して今夜は来ないだろうが。

 

 

「風紀委員も彷徨いてるし、とりあえず今からおれがオトリになるから、その間に白河にパパっと進めるだけ進めてもらうわ」

 

「了解。気をつけてな」

 

「あいよ。……白河ー、おれがオトリになるから、その間にこっそりと恋愛請負をやっといてくれー」

 

「え、は、あ、あいあいさ!?」

 

 

なんか珍しい白河の慌て顔を見れた気がしたが、まぁいいか。

 

とりあえず風紀委員達の前に姿を現して、大立ち回りして注意を引くか。まぁ、逃げられないってことはないだろう。

 

 

 

 

____このあと、おちょくる様に風紀委員達の前に現れては付かず離れずの距離を維持してヘイトを稼ぎ、その間に白河は見事に予定していた分の依頼の消化を終えるのだった。

 

なお、この件により本格的に風紀委員を敵に回したのか、風紀委員名物の三つ子達に執拗に追い掛け回されるようになるのは、余談としておこう。

 

 

 

 

 

 




取り敢えず恋のレジェンドバトルパーティが終わるまではストックあるから、このペースで投稿し続ける所存。
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