D.C.4 〜ダ・カーポ4〜 先視の魔法使い   作:トウリ

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と言うわけで、大暴れの時間です。


EPISODE 11

 

 

 

「やァァアアアアアアアアアッ!」

 

 

振るわれる拳が蜥蜴の怪物の頭を粉砕し、続けてムチのようにしなる脚が向かって来る蜥蜴を吹き飛ばしていく。

 

両手足に手甲足甲を身に着けた少女は、以前、辛酸を嘗めさせられた相手と同じ魔法生物に、無双という単語を思わせる大立ち回りを見せていた。

 

彼女の兄の手により厄介な耐久力を持つ鱗をほぼ無効化された事、以前と違ってしっかりと武器を使ってる事、なにより彼女自身、2ヶ月前より確かに強くなってる事も合わさって、その進撃は止まらない。

 

【正義の魔法使い】を目指す少女___咲三海央が最も得意とする、無尽蔵の体力から繰り出されていく怒濤の連続攻撃。それを持って無数の蜥蜴達を屠っていく。

 

 

「ッ!? っと!」

 

 

その最中、一体の蜥蜴の化け物に放った拳が、まるでゴムでも殴ったかのように衝撃を吸収される。

 

その感覚を海央は覚えていた。かつて煮え湯を飲まされた時と同じ感覚。どうやら運良く弱体化を免れた個体がいたらしい。

 

しかし、先視の魔法使いは慌てず拳を引いて蜥蜴の攻撃を避けつつ、不敵に笑う。

 

 

「あの時とは違うってこと、証明します!」

 

 

装備してる手甲に自身の魔力を流し込み、再度踏み込んでから強烈な一撃を蜥蜴に食らわせる。

 

拳は変わらずに蜥蜴の鱗に阻まれそうになる、が、

 

 

「衝撃浸透___弾け飛べ!」

 

 

その言葉をトリガーとして、手甲に溜められた魔力により魔具としての側面も持つ手甲の機能が開放される。

 

ブゥン……と言う重苦しい音と共に衝撃を無効化するはずの蜥蜴の鱗を“すり抜けて”蜥蜴の体内に衝撃が伝播して浸透し、そして____

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■ッッッ!?!?』

 

 

 

それを受けた蜥蜴を、内側から破壊する。

 

衝撃浸透……それが海央の武器である手甲の機能だった。

 

防御の高い相手に対する切り札であり、当たれば一撃必殺となり得るものだ。

 

そしてその内部から爆発したかのように肉片を撒き散らす様は、理性のない他の蜥蜴達をしても恐れを抱かせるに十分だった。

 

砂浜に散らばり、塵となってく肉片の上を歩く少女は、凄惨な状況にあっても自らの輝きを損なわず、更に勢いを増して、恐れをなした蜥蜴達に向かって行く。

 

その勢いを殺さぬまま、両の拳を同時に、そして勢い良く、一番近くにいる蜥蜴へと突き出す。

 

繰り出すは自身が最も得意とする大技の一つ。それを手甲に魔力を通しながら放つ。

 

 

「___大牙、拳砲ッ!!!」

 

 

両の拳、そして両の手甲から繰り出される防御不能の衝撃を付与された大技は、間近で受けた蜥蜴だけでなく、空気すらも伝播して衝撃を周囲に浸透させる。

 

足元の砂浜をも抉り、その範囲にいた蜥蜴をもろとも吹き飛ばす一撃必倒の必殺技。

 

この少女が、普段如何にどれだけ膂力を抑えているのかが分かるだろう。

 

 

「……ごめんね」

 

 

自身が屠った命だったものに謝罪しながらも、少女は再び走り出す。

 

罪悪感はある。魔法で創られたとは言え、命あるものを自らの力で奪うと言う罪悪感が。

 

けれど、それは少女が足を止める理由にはならない。

 

この蜥蜴達を放置すればどうなるかなんて、考えるまでもないからだ。

 

ましてやこの島にはもう、少女の大切なものがたくさん出来ていた。それらに仇なす可能性のあるものを放置することは出来ない。

 

魔法によって生まれた生物なら尚更だ。

 

 

【正義の魔法使い】

 

 

魔法の監視者として、その在り方を違えないためにも、危険な魔法生物はここで確実に排除する。

 

日常では決して見せない、魔法使いとしての思考でもって、少女はそう結論付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-EPISODE 11-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で、少女とは正反対に不動の姿勢を貫く少年が居た。

 

 

「……………………」

 

 

口元まで隠したマフラーが、冷気を伴う風になびく。

 

【防人】の魔法使い・氷室仁はその場を一歩も動かず、待ちの姿勢を持って蜥蜴達を次々に葬っていた。

 

既に炎で弱体化してる上に弱点も変わっていない。

 

氷室の魔法は、名を見れば分かりやすいが、主に氷を操る魔法……ではなく、実は熱の操作に近い。

 

周囲の空気からマナを通して熱を奪い、最終的には生物の活動限界を超えて凍てつかせる。

 

現に今、彼の周りには命の灯し火すら凍てつき、熱を失った蜥蜴の死体で溢れている。 それらは凍結を解けば、塵となって消えるだろう。

 

氷の精製や操作はあくまで副産物でしかない。

 

加えて相手が相手だ。熱を奪い、凍てつかせる為の領域を展開するだけで話が済む。

 

魔力量と言う限界はあれど、それでも手負いの獣の群れくらいなら、相手にもならない。

 

 

「だけど、数はまだ多い。……範囲を広げるか」

 

 

魔力の出力を更に上げて、冷気の支配領域を広げていく。

 

その範囲に入るだけで蜥蜴達は動きが鈍り、やがて動けなくなり、絶命する。

 

天候を支配することも出来るその魔法を使うが故に、恐らく、今この場にいる魔法使いの中で、彼が一番魔法使いらしいとも言えるだろう。

 

 

「(……お嬢や当主みたいに、前に出て第一線を張れる魔法使いの方が珍しいんだろうけど)」

 

 

彼も接近戦が出来なくはないが、この場ではこのやり方の方が効率がいい。

 

 

「例外は……やはり彼か」

 

 

視線を向けた先は、この中で唯一【防人】に所属してない魔法使い。

 

芳乃灯火。

 

その戦いぶりは、異端そのものだ。

 

少なくとも、魔法使いの戦い方ではないと、氷室は思った。

 

___ドパァンッ!!と、火薬の炸裂する音が何度も響く、そしてその度に必ず蜥蜴を葬っている。

 

手に持つ大型のリボルバー拳銃を楽々と使いこなし、魔法はそのリボルバーの弾丸の装填のために使っている。

 

少なくとも、自身の知る魔法使いの定義からは外れているだろう。

 

しかし、それでもその異端の魔法使いは、この場にいる誰よりも成果を上げている。

 

……負けてられないな。

 

凍える領域の中にて、おのれの心に火を灯した少年は、己の支配領域を更に広げる為に魔力の制御に集中する。

 

氷死体の数は、増える一方だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかくトーカ君が弱らせて、ミオちゃんやジン君達が張り切って数を減らしてってるって言ってもなぁ、やっぱり多いもんは多いわぁ」

 

 

荒れ狂うかのような無双。自然災害の再現。それらから逃れて自身に迫りくる蜥蜴の群れに向けて、掌をかざしながら独りごちる。

 

構わず突っ込む蜥蜴達は、しかし突っ込もうとして透明な壁にぶつかる。

 

もし蜥蜴達に人間並みの知能があるなら、その表面は六角形の細かい結晶が重ねられていることが分かっただろうが、獣ではそこまで気がつくことはない。

 

 

「物質干渉型の結界壁やで。許可のないお触りはあかんよ? ウチ、そんな安い女じゃないんよ」

 

 

許可があればいいのかよ。と、ツッコめる人材はその少女___【防人】に所属する魔法使い・盾石晶の周りには今はいない。

 

この殲滅戦に参加した他の三人は、少し離れたところでそれぞれ戦いを始めている。

 

 

「一番心配やったトーカ君がまさかの活躍してくれたから、ウチも少しはかっこつけたいんよ。だからな___」

 

 

そこで言葉を切った少女は、先程までの掴み所のない雰囲気を一変させ、蜥蜴達に向ける目を細める。

 

 

「ちょっとばかり、本気でいかせてもらうわ?」

 

 

パンッ!!両手を合わせると同時に、砂浜の真下に展開されていた“半透明の結晶状の結界”が、まるで本を閉じる様に畳まれて迫っていた蜥蜴達を潰す。

 

 

「せーのっと!」

 

 

更に間を置かず踊る様にその場で回りながら、周囲の蜥蜴の位置を把握して、止まると同時に打ち上げるように掌を上げると、把握された蜥蜴達の真下から結晶状の槍が突き出され、蜥蜴達を絶命させ、塵へと変えていく。

 

彼女が得意とするのは結界だが、 本来の盾石の魔法は【結晶】と呼ばれる魔法である。

 

マナを結晶化させて物質に干渉出来ると言う特異な性質を持っていて、それを防御に攻撃にと変幻自在に操ることが出来るものだ。

 

 

「取りあえず足を止めてー」

 

 

かざした掌を蜥蜴達の足元へ向けて振るうと、その足を細長い棒状の結晶が、まるで編み込むように展開されて、蜥蜴達の足を絡め取る。

 

 

「今度は上から___どーんっ!ってな!」

 

 

動きの止まった蜥蜴達の頭上に、マナの結晶の塊が生成される。質量のあるそれは重力に引かれて落ちていき、蜥蜴達を次々に潰していく。

 

結晶の魔法は想像の赴くままに姿形を変えて放たれる。

 

盾石晶の思考が止まらない限り、蜥蜴の化け物程度では彼女に傷一つ付けることもないだろう。

 

 

「さて、さっきから派手に暴れ回ってるミオちゃんや、おるだけで災害になるジン君はともかくとして、トーカ君は……っと、こっちも心配せんでも良さそうやね」

 

 

自分より年下の魔法使いの3人。

 

一人はこの蜥蜴達とは相性のいい後輩魔法使い。氷室仁。

 

彼は自身の領域を広げる事で結果的に数多くの蜥蜴を行動不能にしている。この場においては問題はないだろう。

 

もう一人は次期当主として、そして自分自身の夢に向かって進むため研鑽を重ねた少女。咲三海央。

 

彼女はその鍛え上げた格闘術と魔力の出力を活かして、次々に蜥蜴を屠っていた。

 

あの調子なら彼女も問題はないだろう。……いや、攻撃に傾倒し過ぎて時折危ない面もあるにはある。

 

今も背後から飛び掛かろうとした蜥蜴が出てくるが、その蜥蜴の脳天へ狂いなく弾丸が着弾して、仕留められる。

 

見れば、この場においてのダークホースとも言える存在が、その大型のリボルバーの銃口を蜥蜴へと向けていた。

 

 

「視野が広いんよなぁ……。さっきから危ないのは全部トーカ君が対処してるわ」

 

 

それも自分自身も蜥蜴の群れと相対しながら、である。

 

海央もそれが分かっているのか、口元に笑みの形を作りながら、更に勢いを増して蜥蜴を屠っていく。

 

それでもまだ数は多い。

 

結界はまだ破られていないが、あまり長引くと蜥蜴達が結界を破壊する事もしかねない。

 

 

「ウチも速度上げて行こうか……!」

 

 

終わりの見えないマラソンが始まった様な気分になりながらも、気合を入れる。

 

これでも、やる時はやる女なのだ。決してふざけ倒すばかりが能ではないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____四方八方から迫りくるクソトカゲども。

 

コイツらと相対したのは、コレで3度目。

 

1度目は海央を助ける為の介入。

 

2度目は自主的な巡回での発見。

 

いい加減に、慣れたものだと思う。

 

ましてや、今はあの厄介な物理耐性持ちの鱗が弱体化している。

 

弾丸一発で仕留められるので楽と言えば楽なのだが、問題はやはりその数だろう。

 

 

「…………チッ」

 

 

無数に蠢くクソトカゲ達の中から攻撃に移る個体を見極め、その脳天に弾丸を叩き込んでいく。それでも捌ききれない攻撃は、避けるしかない。

 

使い慣れた化け物リボルバーは威力も速度もあるが、6発ごとにリロードしなければならない弱点もある。

 

普段は【取替の悪戯(チェンジリング)】を使ってリロード時間を最小限に抑えられるものの、この数が相手では些か相性が悪い。

 

 

「ミニガンはもう銃身が焼き付いたしな……仕方ねぇ。もう一枚、手札を切るか」

 

 

決心すると同時に魔法……【取替の悪戯(チェンジリング)】を発動。使い慣れたリボルバーから、この場に適した得物へと切り替える。

 

取り替えるのは『イングラムM10』通称MACと呼ばれる……いわゆるサブマシンガンって奴だ。

 

コイツはその中でもマシンピストルと言われるほど小さく、ベトナム戦争で使われて兵士から高い評価を得たモデルだ。

 

 

「オ、ラァアアッ!!」

 

 

安全装置を解除したそのMACを振り回しながら引き金を引く。

 

フルオート機構により1.5秒で32連装弾倉を撃ち尽くせるほど連射力があるが、簡潔な造りが災いして精密性はない。けれど、この場においてはピッタリたろう。

 

 

ズガガガガガガガガガガガッッ!!!と言う発射音と共に、振り回しながら発砲した事で周囲を取り囲んでいたクソトカゲ共に9x19mmパラベラム弾が直撃して絶命させる。

 

とは言え、やはり精密性がないのはおれとは相性が悪過ぎる。トリガーハッピー運用でなら充分な性能なので、今回みたいな状況ならうってつけではあるのだが。

 

連射力がある分、弾はすぐ切れる。けれど、外した空の弾倉をすぐに【取替の悪戯】で新しい弾倉と取り替える事でまたすぐに撃てれる様になる。

 

銃身が焼き付きそうなら本体ごと取り替える。更に手札はこれだけじゃない。

 

左手に取り出したビー玉を【取替の悪戯】で、今度は手のひらに収まる物と取り替える。いわゆる手榴弾。

 

それの安全装置を外して接近してくる複数のクソトカゲの方に投げ、向かって来たタイミングで爆発して爆風がクソトカゲを巻き込む。けれど、まだおれのターンは終わらねぇ。

 

隠し持っていたビー玉でまたまた【取替の悪戯】を発動して、左手にもイングラムM10を持ち、両手持ちサブマシンガンスタイルでまた周囲を一掃する。

 

弾切れになっても、またすぐに取り替える。あとはもうそれの繰り返しだ。

 

 

「【取替の悪戯(チェンジリング)】の本領発揮だ。弾切れのない恐怖って奴を思い知らせてやる」

 

 

言いながら、手早く弾倉を取り替えリロードを済まし、パラベラム弾とその薬莢を周囲に振り撒く。

 

それでも向かってくるトカゲども……いい加減に鬱陶しい。

 

身体強化の魔法を発動させ、大きく横に跳躍。自身がさっきいた場所にトカゲどもが殺到するのを確認してから、【取替の悪戯】を使用。

 

持っていたサブマシンガンから取り替えるのは___2丁のM79グレネードランチャー。

 

 

「くたばれ」

 

 

構えた2丁のM79から擲弾が発射されて、爆発音と共にトカゲを何匹も肉片へと変える。

 

それからすぐに薬莢を取り出し……その薬莢を新品の擲弾に取り替えて再装填し、もう一度撃つ。

 

擲弾も含め、予め用意してある弾にはまだまだ余裕がある。流石に使い切るまで撃つ訳には行かないので、その場合はまた別の武器を使う事になりそうだが。

 

 

「アキ姉ぇ! 四方八方に結界張って!」

 

「任されたわぁ!」

 

 

少し離れた所で戦っていた海央の声にが響くと同時に、盾石が海央の周囲に六角形型の結界を展開する。

 

その結界を足場に使い、地面とトカゲと結界、それぞれを蹴りその反動で徐々に速度を上げていき、しまいには残像を残しながら跳び回り、範囲内のトカゲを蹴り飛ばしていく。

 

 

「狼蹴脚・参式ーーー!! アキ姉コラボバージョン!」

 

「なんか見たことねぇ技出してるし」

 

 

咲三式の体術の一つ、狼蹴脚。

 

壱式は魔力を放出しながら威力を増した後ろ廻し蹴り。

 

弐式いわゆる飛び蹴りで、海央がおれと再会した時に放った人体ミンチキックが弐式に当たる。

 

しかし参式があるのは聞いてなかったな。見た感じ、周りの壁とかを蹴りまくって全方位攻撃するタイプらしいが。

 

どうやら盾石は海央とも仲が良いらしいし、連携もそれなりに鍛えてるのだろう。

 

 

「……ちょうどいい。利用するか」

 

 

身体強化を施してから、盾石の展開した障壁の中でも特に高い位置に展開されてる奴に乗る。

 

 

「って、トーカ君?」

 

「そのまま展開しとしいてくれ」

 

 

言いながら【取替の悪戯】で両手の武装を取り替える。それを見て盾石と、暴れていた海央がギョッと目を剥く。

 

 

____RPG−7。

 

 

対戦車ロケットランチャーとしてロシアで開発され、長い事兵士達に愛用されてた兵器。

 

それを2丁、両手持ちで構えて、照準を合わせる。

 

 

「ちょ、それは洒落にならへんよ!? 洒落にならへんよー!?」

 

「お兄ちゃんは自重って言葉を知らないよね!?」

 

「やかましい!巻き込まれたく無かったらとっとと退避しろ駄後輩!」

 

 

言いながら引き金を引く。と、凄まじい衝撃と共にロケット弾がトカゲの一団に突っ込み、爆発する。

 

流石は対戦車と銘打つだけはある。威力はお墨付きだ。

 

爆風と共に来た砂やらトカゲの塵やらは盾石の結界で防ぐ。

 

 

「……ホンマに一人で戦争出来るんやないかなぁ? と言うかどこで手に入れたんよ」

 

「芳乃の家で修行中に、じいちゃんと師匠に連れられてアメリカに渡った際にちょっと戦場でパクって来た」

 

「やってる事、完全にアウトやろそれーーー!? 大犯罪やろそれーーーー!?」

 

「証拠は残してない。立証は不可能だ。つまり無罪だ」

 

「……それで助けられてるから何も言えないのがもう、ね」

 

 

などと、割とどうでもいい会話をしながらもトカゲの殲滅を続ける。

 

流石に、最初に弱体化させた上で戦闘特化の魔法使い4人で殲滅戦をしてるだけあって、もうトカゲの数も少ない。

 

武器を使い慣れた愛銃(シリウス)に取り替えてから、そのまま盾石の展開した障壁の上で射撃を続ける。

 

 

「氷室が広範囲に魔法を広げて行ってるから、逃げた奴らがそのままこっちに来るな」

 

「巻き込まれたら一溜まりもないから、あっちには絶対に行かない方がいいよ」

 

「だな」

 

 

大勢は既に決した。このまま行けば、無事に殲滅を遂行できるだろう。

 

……って、しまった。これはフラグなんじゃなかろうか?

 

それを裏付けるかの様に、トカゲの気配が一つ大きく膨れ上がったのを感じ取った。

 

反射的にシリウスをさっきも使ったRPG−7へと取り替える。

 

 

「っ! トーカ先輩ッ!」

 

「分かってるッ!」

 

 

同じく気付いた海央の呼びかけと同時に、気配を感じた方へロケット弾を発射。

 

バシュンッ!と、勢いよく向かうロケット弾。しかし、その横っ腹を掴む“大きな異形の腕”。

 

それは、確かにクソトカゲではあった。

 

違うのは他のトカゲよりも筋肉により大きく膨らんだ肢体。

 

一回りどころかその更に4倍ほど体躯を大きくさせたソイツの口の端には、他のトカゲの足やら手やらの残骸がはみ出ている。

 

……共食いによる強化、だと?

 

 

「……海央、それから盾石」

 

「知らないよあんなの!?」

 

「ミオちゃんが押収した資料にもなかったで、あんなの……!」

 

 

ってことは……自己進化による能力獲得か?

 

ホントにどんだけ厄介な奴を創ってくれたんだ、その魔法使いとやらは……!

 

そんな風に分析をしていたが、不意にオオトカゲが掴んでいたロケット弾を振りかぶった。

 

___不味い、投げてくる気だ。

 

 

「二人とも! 後ろに下がっててな!!」

 

 

盾石の声と共におれと海央が下がると、盾石は自身の前に両手を突き出す。

 

それと同時に周囲のマナが盾石に集まる。……自分だけの魔力じゃ駄目だと判断して周囲のマナを魔力に変換しているのだろう。

 

 

「多重障壁、展開!」

 

 

 

 

 

__■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!

 

 

 

 

 

盾石が複数の障壁を展開すると同時に、オオトカゲが掴んでいたロケット弾を投げてくる。

 

普通に撃つより勢い良く向かって来たそれを、盾石の障壁が受け止め、同時に爆発する。

 

 

「くぅ……!?」

 

 

流石に対戦車ロケット弾の爆発にはそれ相応の衝撃があったのか、盾石の顔が僅かに歪む。

 

障壁の方も一枚目を破壊するに留まっている。が、

 

 

 

 

 

___■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

雄叫びを上げたオオトカゲが、発達した四肢の筋力を発揮して盾石の結界に向かって来る。

 

おれは愛銃を、海央は拳を構えて、それぞれ迎撃準備をするが、奴の進行方向の地面から鋭い氷の柱が生成されて、オオトカゲに突き刺さり動きを止める。

 

 

「……こっちは大方片付いたから合流したけど、なんだあれは?」

 

 

そう言ったのは体に霜を取り付かせた氷室だ。

 

どうやら氷室の周りのトカゲは殲滅できたしい。

 

 

「恐らくだが、自己進化で共食いして強化したらしい」

 

「目茶苦茶だな……ここに来てそんな進化をするか」

 

 

端的に状況を説明すると、心底疲れたような表情で氷室はそう呟く。……その感想には心底同意するぜ。

 

 

「僕の氷もあまり効いてないな。……どうする?」

 

「仕留めるしかないよね。残ってるのは、アレだけだし」

 

「でもどうやって? それなりに能力も上がってそうやけど」

 

 

氷の槍が突き刺さったと言うのに、オオトカゲの方はまだまだ元気そうだ。複数のトカゲの生命力とマナも取り込んでいるからだろう。

 

こちらの戦力と相手の能力、そして状況を踏まえて奴の処理方法を考える。

 

……まぁ、単純なやり方で問題ないだろう。

 

 

「海央、全力でやれば、奴の拳なら打ち返せるか?」

 

「んー、全力でやったら大丈夫だと思う!」

 

「よし。次に……氷室、盾石、協力して足元を凍らせてから奴の動きを止めれるか?」

 

 

そう聞くと、氷室と盾石が一瞬顔を見合わせてこちらに頷く。どうやら可能らしい。

 

 

「……出来ないことはないが、あのオオトカゲの筋力なら、無理矢理でも動くぞ」

 

「ウチのフォロー入れても数秒くらいちゃう?」

 

「数秒あれば十分だ___後は、一撃でおれが仕留める」

 

「……出来るんだな?」

 

「やれない事は言わない」

 

 

“切り札”を見せずに、あの化け物を仕留める武器はあるにはあるが、如何せん接近しないと使えない。

 

が、ここにいる魔法使い達の力を借りればその条件もクリア出来るだろう。

 

 

 

 

 

___■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

空気を震わせてオオトカゲが叫んで、こちらに向かって来る。

 

うるせぇ。いい加減にテメェらの声には飽きた。

 

そして、もう夜も良い時間だ。……さっさと終わらせて休ませてもらおう。

 

 

「海央!」

 

「うん! せぇーーーのッッ!!!」

 

 

オオトカゲの振りかぶった拳に合わせて、海央も魔力を込めた拳を振りかぶる。

 

 

「はッッッ!!!!!」

 

 

次の瞬間、化け物の拳と、妹分の魔力を放出しながらの拳がぶつかり合った。

 

衝撃が拡散し、砂浜の砂が海央と化け物を境目に派手に吹き飛ぶ。

 

……素のフィジカルに魔力の放出によるブーストをプラスしたとして、よくもまぁ相殺出来るよな。

 

 

「氷室! 盾石!」

 

「承知した」

 

「任せといて!」

 

 

衝撃の相殺でオオトカゲの足が止まると同時に、おれも駆け出し、更に後ろの二人に指示を出す。

 

氷室の創り出した氷の槍が、オオトカゲの足元に刺さり、そこを起点に奴の足ごと凍らせる。

 

更に、盾石の創り出した結晶魔法が、凍り付いた奴の足を編み込む様に展開されて動きを封じる。

 

そのままおれは海央を飛び越えて、奴の腕の上を走りながら右目に魔力を集中。

 

 

 

___先視、起動。

 

 

 

数秒先の一瞬の未来。

 

そこには左の拳を振りかぶるオオトカゲの姿。

 

その確かな未来を確認してから、先視を解除すると同時に、奴の頭へ向けて跳躍。

 

次の瞬間、自分のいた所に奴の左の拳が振られるが、当然空振りとなる。

 

跳躍から自由落下する間に、【取替の悪戯】を発動。

 

奴を確実にブチ殺すのにうってつけの兵装を、右腕に装着した状態で取り替える。

 

それを見た海央が、氷室が、盾石が、この場にいる魔法使い達の目が丸くなる。

 

……それは、かつて師匠が悪ノリして作成したロマン兵装。

 

 

「テメェの結末は、もう視えた」

 

 

その発射口をオオトカゲの脳天に叩きつけて、トリガーを引く。

 

 

「これで……くたばりやがれッ!!!」

 

 

搭載された炸薬により、兵装内部に組み込まれた鉄杭が爆発的な勢いで打ち出され、オオトカゲの脳天を穿つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___炸薬式杭打機(パイルバンカー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱロマン武装の一つや二つは必須だろ!! と、年甲斐も無くはっちゃけた師匠がノリノリで手伝って……と言うかほぼ一人で創り上げた近距離兵装。

 

特性のカートリッジに搭載した炸薬により 、内蔵された鉄杭を高速射出する兵装であり、本来なら硬い壁や守りを破壊するために使い、間違っても生物相手に使う奴じゃないが、今回はそもそも生物の範疇に入らない化け物だったので遠慮なく使わせてもらった。

 

当然ながらその破壊力は凄まじく、凄まじい爆発音と共にオオトカゲの脳天どころか、衝撃が奴の体を貫通して足元の氷も結晶も粉砕する。

 

 

「ッ……!」

 

 

その威力に比例して、おれの腕にもそれなりの反動が襲いかかるも、なんとか抑え込む。

 

……身体強化入れても、連発は出来ないな。

 

初めて使ったが、なんつーモン作ってんだ師匠。ノリノリだからってやり過ぎだと思う。迷わず使うおれもおれだが。

 

 

「あ、わきゃぁあああ!?」

 

 

あ、しまった。

 

海央が近くにいる事を忘れていた。

 

衝撃に煽られて吹き飛んじまったか。まぁ海央は頑丈なので大丈夫だろう。直接当たった訳じゃないし。

 

当然、直接当たったオオトカゲは別だ。

 

頭どころか肩周りすらごっそり弾け跳んだオオトカゲは力無く倒れて、その体を塵と化して消えていった。

 

ガシャンッと特性のカートリッジを排出したパイルバンカーをビー玉と取り替えて、それをポケットに仕舞う。

 

……もう、この場には動く敵はいない。

 

殲滅、完了だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ちょっとお兄ちゃーーん! 説明! 流石に説明を求めるんだけど!? なにあれ! なんなのあれーーー!?」

 

「なにって、パイルバンカー。炸裂式杭打機。ロマン兵装」

 

「武器の名称と種別と評価は聞いてないから! と言うかあたしボロボロなんだけど! さっきの余波で砂塗れなんだけど!!」

 

 

最後の一撃の余波を受けたお嬢が、その原因となった芳乃に詰め寄る。

 

流石に芳乃は謝るべきだろう。と思いつつも、頭の中ではそれとは別にさっきまでの戦闘のことを考えていた。

 

あらゆる兵装を使いこなし、巨体化した化け物すら一撃で屠る妙な兵器まで使う存在。

 

 

___芳乃灯火。

 

 

今回の任務達成は、明らかに彼の功績が大きい。

 

これだけの力を持つ魔法使いがいるとは思わなかった。

 

……魔法使いと言うには、戦い方があまりにも程遠いけど。

 

 

「取りあえず、後片付けはウチらでしよっか。大きい借りが出来てもうたもんやしね」

 

 

いつの間にか隣に立っていた【防人】の先輩の声で思考が引き上げられる。

 

……考えるのは後にするか。今、考えても仕方ない事だしな。

 

 

「了解です」

 

 

盾石先輩にそう返事しながら、今もギャーギャー騒いでる兄妹を見やる。

 

 

それだけ見るなら、年頃の少年そのものだろう。

 

 

けど、最初の邂逅の時に感じた尋常じゃない殺意。

 

 

そして状況を即座に把握して戦術を変える対応力。

 

 

なにより、迷わず死地に飛び込むその迷いのなさ。

 

 

戦場で見せたその姿と、今の年相応な少年の姿。

 

 

 

……そのあまりの切り替えの速さに、僕は心の底で言い知れない“恐れ”を抱いてしまった。

 

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