D.C.4 〜ダ・カーポ4〜 先視の魔法使い   作:トウリ

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EPISODE 17

 

 

 

「___っと、ソラ姉と白河、海央ちゃんに灯火、ここにいたのか」

 

「おつかれさま、いっちゃんー!」

 

「おつかれ常坂兄!」

 

「先輩!おめでとうございます!」

 

「よう一登。一位、おめでとさん」

 

「ありがとよっと」

 

 

逢見先輩が手を振ると、主役の一人である一登がコチラに近付いてきた。

 

取りあえず一登も入れて舞台袖の関係者用の扉から講堂の裏方に回る。

 

それから、取りあえずしっかり一位を取った健闘を称えると同時に親友とハイタッチを決めておく。

 

 

「まぁ、最後の問題はやばかったけどな……やたら難しかったし」

 

 

その時のことを思い出したのか、軽く苦笑する一登。……ふむ、そんなに難しい問題だったのか? 有里栖関連のクイズだろ?

 

おれが気になってると、それを察した一登がTABを取り出してその問題を見せて来た。

 

一登からTABを受け取って、その問題文を確認してみる。えーと、なになに?

 

 

「『鷺澤有里栖=0 香々見学園=2 香々見島=2 この式が成り立つ時、【パパとママがムラムラ】これは幾つになるか答えよ』…………これクイズじゃねぇ! 謎解きだ、これ!?」

 

「だよな。そう言うリアクション取るよな……!」

 

「問題文も、如何にも杉並らしいアホさ全開ですね」

 

 

杉並の遊び心が全開だった。

 

有里栖に関わる部分が最初の例題しかねぇじゃねぇかよ……!あまりのアレっぷりに逢見先輩と海央も苦笑い気味だ。

 

しかし、奴が如何にアホとは言え、式と言っている以上は解き方は必ずあるだろう。

 

有里栖の部分とアホみたいな文面に気を取られそうになるのはトラップだな。よく考えてやがる。

 

鷺澤有里栖が0。

 

香々見学園と香々見島が2。

 

さぎさわありす、かがみがくえん、かがみじま、そして、ぱぱとままがむらむら。

 

…………ふむ、母音でも子音でもねぇ。

 

文字数も形も違うってなると、アレか。

 

取りあえず思考をブン回して思い浮かんだ答えが合ってるか確かめる為に口パクで文面を確認してみると、しっくり来たので、恐らく“当たり”だろう。

 

 

「唇が触れる回数だな。となると、答えは6か」

 

「いや早ぇよ!?」

 

 

答えてみると一登が心底びっくりした表情を浮かべていた。

 

やはり当たりだったらしい。

 

 

「先入観もアホな文面も取りあえず横に置いた上で考えたら、それぐらいしか式が当て嵌まる答えがなかったぞ? おのれらが苦戦したのは、直前まで有里栖関連のクイズをしていた先入観もあったろうし」

 

「いやそりゃそうかもだけど……何時にも増して頭の回転が早くないか?」

 

「あー……それはそうかもな。さっきまでマジで戦争レベルで頭を回してたし」

 

 

取りあえず運営側でしていた事を話すと、もれなく一登が悔しそうな顔をし始める。

 

 

「俺が全力を出してる間に、別の面白い事が起きてやがる……! そっちも出来たら参加したかったー!」

 

「おのれも大概ノリノリでバカするタイプだったの、改めて思い出したわ」

 

「うちの男性陣、よもやバカしかいないのでは……?」

 

 

見た目こそ爽やかイケメンな一登だが、中身は年相応。と言うよりバカ。

 

おれが編入する前から既に杉並と叶方と合わせて【3バカ】呼ばわりされてたのは伊達じゃないのである。

 

白河の言葉に苦笑いする逢見先輩と海央の表情が、絶妙に突き刺さる。視線がイタイ、イタイ……。

 

流石に一登にもダメージがあったのか、コホンと小さく咳払いしてから改めて周りを見渡して、今度は死んだ魚のような目になる。

 

 

「……にしても、集まりすぎだろ」

 

「急に現実が見えて死にかけるんじゃない。まだ肝心な大一番が残ってんだぞ。盛大に爆死する様をカメラに収めるまでは生きろ、一登」

 

「トドメ刺す気満々じゃねぇかッ!」

 

 

くわッと叫ぶ一登に満面の笑みでサムズアップすると拳が顔面に向かって来たので回避する。

 

割と本気の打ち込みだったな。まぁ一登の場合、おれが絶対に避けると想定してるから本気で打ち込んでるんだろうが。

 

なお、前日に叶方にカメラの確認を改めてしておいたので、特等席での撮影は約束されている様なものだ。

 

後日、SSRのテントでお披露目会をしたいと思う。

 

参加者はSSRメンバー全員な。きっと愉しい……もとい、楽しい時間になる。

 

 

「満員御礼の札を貼った方がいいかもしれないね。立ち見する人まで出て来そうだよ」

 

「はぁ……あまり見られたく無いんだけどな……」

 

「盛大に見られる事が目的だろうが。腹括れって」

 

 

レジェンドバトルの本来の目的を考えるなら、ターゲットからは多少外れていても寧ろ好都合と言うものだ。

 

 

「今から弱気でどうするのかな? 本番はこの後すぐだよ?」

 

「そうそう、一世一代の告白をするんだから、びしーっとカッコいいところ見せないとね!」

 

「一登先輩、大丈夫です。誠心誠意、心を込めればきっと思いは通じます!」

 

「いや、振られることは確定してるんだって! ……あー、いや、しゃーない。形だけでも気合入れるか!」

 

 

パンッと両の頬を自分で叩いて文字通り気合を入れる一登。

 

ようやく腹を括ったらしい、死んだ魚の目が元の力強さを取り戻していく。

 

よし、一登は一度こうなればそうそうに止まらんはずだ。

 

玉砕してこい。しっかり見取って骨を拾ってやるから。

 

 

『テステス。……それではっ!、これよりレース優勝者による、鷺澤有里栖さんへの告白を行っちゃいます!』

 

「来た……!」

 

 

本日のメインイベント。

 

親友と、ある少女の晴れ舞台。

 

特等席で存分に楽しませて貰うことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-EPISODE 17-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファイトだよ、いっちゃん!」

 

「女子の観客も多いから、男をアピールするチャンスだと思って、思いっきりやっちゃってください!」

 

「よし、逝って来い親友」

 

「おう、逝ってくるわ!」

 

「なんか字が違う気がするよ!?」

 

 

激励と、ボケとボケのツッコミを受けながら、一登が右側から壇上に上がっていく。

 

壇上に上る前に気合を入れていたはずだが、一瞬その顔が強張る。

 

恐らく改めて沢山の人間が来てることを意識してしまったのだろう。

 

ふと、舞台袖にて音響を担当してる悪友二人の方を見てみると……音響チェックしながらしっかりカメラを回してるのを確認出来た。

 

コチラの視線に気が付いた二人がサムズアップしたので、コチラもサムズアップで返しておく。

 

それに気づいた一登の拳が震えてるのを見た気がしたが、見てないフリをしておこう。

 

 

『そして……皆様! 左の舞台袖に御注目です! 今イベントのヒロインでもあり、学園のアイドル___』

 

 

カッ!と、幾つもの照明が、舞台の左袖へと向けられる。

 

光に照らされるのは、白く煌めく華やかなドレス……こう言うのに疎いおれでも分かる。

 

恐らく女子が一生に一度は着たいと思うだろう花嫁衣装。

 

 

 

 

『____鷺澤有里栖さんの、御登場です! どうぞー!』

 

 

 

 

其れ即ち、ウェディングドレスを纏った鷺澤有里栖である……!

 

 

「な、な……!」

 

 

間近で有里栖のウェディングドレスとか言う核兵器レベルの組み合わせに脳が破壊されたのか、とにかく完全に予想外なのは間違いないだろう。一登の思考が完全に停止していた。

 

と言うか講堂に集まったほぼ全ての生徒の脳を破壊したらしい。

 

呆然と見惚れる者、感嘆の溜息を吐く者、一位になれずに今一登がいる場所に立てなかった事を嘆く者やら、バリエーションは様々だ。

 

 

「驚愕。やりますね杉並、ド直球でとんでもない衣装を持って来ましたか……!」

 

「ほんとにきれい……! ふふ、いっちゃんも相当驚いてるわね」

 

「こんなの反則だよぉ! 有里栖先輩が綺麗すぎる可愛すぎるー!」

 

 

そして、SSRの女性陣ですらこの驚き様なのだ。サプライズとしては間違いなく大成功だろう。

 

……と言うか事前に知ってたおれですら、実物を見て驚愕してるわ。

 

あと、なんか音響担当の杉並が両手を振り上げて優勝ポーズで固まってる。

 

恐らく、己の見立て通り以上の結果に満足したが故の優勝だろう。いや、なんだ優勝って?

 

 

「あ、有里栖? そのウェディングドレスは……」

 

 

なんとか再起動に成功したのか、それでもこの場の誰よりも間近でその威光に触れてるせいで顔を真っ赤にしながらも一登が有里栖にドレスについて尋ねる。

 

尋ねられた有里栖は有里栖で、こちらも恥ずかしさからか、ブーケで口許を隠して顔を真っ赤にしている。

 

その恥じらい方まで絵になるせいで、観客側から意識を失う人間が何人も現れた。

 

とうとうノックアウトされる生徒も出て来た様だ。いや、どんだけなんだよ。

 

 

「これは、その……杉並くんが用意してて……」

 

 

バッ!と一登が杉並の方へ視線を向ける。

 

杉並は、それはそれはもういつにも増して愉快で胡散臭い笑みを浮かべている。

 

うーん、恐らく今年一番の殴りたいこの笑顔。今年の間に後どれだけ更新されるのだろうか。

 

 

「絶対着ろ、必ず着ろ、着ないとレンタル代がお釈迦になるって言われたら、もう着るしかないよね……!?」

 

「杉並め、わざわざ借りて来たのか……!」

 

 

わざわざ借りたんですよ、これが。

 

聞いた話では、服屋の店主に有里栖の写真を見せて事情を説明したらノリノリで用意してくれたらしい。……絶対に香々見学園の出身だろその人。

 

ノリがもう完全におれらなんだよな。

 

そんなにノリノリで用意してくれただけあってか、ドレスはかなり豪華かつ、細部の装飾にも拘りが見られる。

 

それが有里栖と化学反応を起こして、まるで物語の中から現れた童話のお姫様そのものに見えてしまう辺り、御見事と言わざるを得ない。

 

ホントに良い仕事をしてくれたようだ。

 

 

「私……こんなすごい服着るの初めてで、だからよく分からなくて、だから、あの、その……へ、変じゃ……ない、かな……?」

 

 

上目遣いで一登に尋ねる有里栖。

 

それにまた意識を持ってかれそうになりながらもハッと我に返った一登が、改めて有里栖を見据える。

 

 

「……安心しろ。全然変じゃないって。凄く似合ってる」

 

「ほ、本当に……?」

 

「本当だって。ほら、見てみろよ」

 

 

一登が会場にいる生徒達……主に見惚れてる男子達を見るように促す。

 

恥じらい+上目遣いのコンボで、また数人持ってかれていた。

 

そろそろメディック(医療班)を呼ぶべきか迷う。

 

未知の症状なので、医者も匙を投げるだろうが。

 

 

「本当のアイドルになったな」

 

「えへへ……一日限定だけどね」

 

 

そこでようやく有里栖の緊張が解けたのか、安心した様に柔らかい笑みを見せて……それでまた何人かの男子が沈んだ。

 

しかも、なんか「我が生涯に悔い無し」と言わんばかりの安らかな顔になってる。

 

恐らく一生ものの思い出になったに違いない。……それで良いのか、おのれらの一生。

 

有里栖は男子限定の制圧兵器かなにかなのだろうか?

 

過去最高レベルの被害者多数である。

 

そろそろ被害が増える前に決めた方が良いのかも知れない。

 

 

『さぁ、それでは常坂さん! 優勝者の権利を、いざ、遠慮なく使っちゃってください! あなたが日頃から鷺澤さんに募らせていた熱い思いを! 今ここでぶつけてみちゃいましょう!』

 

 

そんな思いが通じたか否か、ちょこの煽りにより進行が進み、一登の一挙手一投足に注目が集まる。

 

これでもう、一登が逃げることは不可能だ。

 

 

「ふふ、どうする? どうしちゃう?」

 

「……やるしかないだろ。ここで逃げる一手はあり得ないって」

 

「だよね……じゃあ、よろしくね」

 

 

退路はない。ならば突き進むのみ。

 

舞台上の親友は大きく深呼吸して、

 

 

「___鷺澤有里栖さん!」

 

 

会場の隅々まで響くように、声を張り上げた。

 

 

「一目見た時から、あなたのことが好きでした。そして、会話を重ねるごとに、もっと好きになっていきました!」

 

「……………………っ!?」

 

「俺でよければ……付き合って貰えませんか? よろしくお願いします!」

 

 

台本通りの流れ。

 

台本通りの台詞。

 

けれど、その言葉に込められた思いは、きっと真実だろう。

 

そう思うくらいには一登の言葉は真に迫っていて、それを間近で受けた有里■が、一瞬だが動揺したのが分かった。

 

台本通りなら、ここで彼女一登の告白を断れば任務完了となるが。

 

……なんでだろうな、そのまま終わる気がしないんだ。

 

 

「……常坂くん?」

 

「え?」

 

「……私のどこが好きなのか、教えてくれる? 見た目? 性格? それとも他のところ?」

 

 

その予感を裏付けるかの如く、有里■が台本にはない台詞を……アドリブをしてくる。

 

ふと、隣の恋愛請負人を見てみると、「面白くなってきましたよー!」と言わんばかりにお目々をキラキラさせ始めた。

 

ブレねぇなぁ、コイツも。

 

 

「あー、えーっと……」

 

「恥ずかしくて言えない? でも告白されたこっちとしては、ちょっと知りたいな」

 

 

とうとうこの状況を楽しみ始めた有里■の追撃に「うっ」と言葉を詰まらせる親友。

 

……あー、楽しんでる所を悪いが、それはきっと悪手だと思うぜ、有里■。

 

やると決めた一登の爆発力は舐めちゃいけない。

 

 

「……最初は見た目です。凄い可愛いなと単純に思いました」

 

 

会場からも囃し立てる声が上がった所で、一登は動き出す。

 

その目にはもう迷いはない。

 

反撃開始だ。

 

 

「けど、それからは……色々と見つかりました。屈託がなくて、人懐っこい笑顔とか。人を思いやる心があって、困ってる人がいたら、すぐ手を差し伸ばせることができて……」

 

「わわっ……」

 

「友達として、あなたを知れば知るほど、その思いは、気持ちは、どんどん強くなりました」

 

 

もはや演技には見えない。

 

いや、実際にもう演技ではないのだろう。

 

だからだろう。気がつけば、会場がその雰囲気に呑まれていた。

 

即興のアドリブだからこそ、それは嘘偽りがない、心から溢れて来る本心からの言葉となる。

 

……それはつまり、一登が目の前の女の子のことを思う気持ちそのものだ。

 

 

「……誰よりも鷺澤有里栖と言う女性が大好きです。付き合ってください」

 

 

なにせ、これはもう本当の告白となんら変わりないからだ。

 

有里■が息を呑む。一登の言葉は確かに彼女に届いたと思う。

 

……けれど、まだだ。

 

あの頑固者の考えを変えるには、まだ足りないらしい。

 

 

___ズキリと頭が痛んだ。

 

 

幸い、一瞬だけだったので支障はないだろう。

 

 

「あ……あはは、うん、そっか……。ありがと、常坂くん。好きって気持ち、凄く伝わってきました。

 

……でも、ごめんなさい」

 

 

“有里栖”の台詞がアドリブからまた台本へと戻る。

 

隣の白河が「ちょっとー!鷺澤ー!そこで断るんですかー?!」と言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

うん、思う所はあるだろうし気持ちも凄く分かるが、今は落ち着こうな? と念を入れながら、立ち上がろうとした白河の頭を抑えつつ止める。

 

一瞬驚いたようだが、苦笑するおれの顔を見ると我に返ったようで少し顔を赤くしながらも縮こまる。

 

……その様子を近くにいたソラさんと海央にバッチリ見られていたが、必要経費としておこう。

 

「あらあら」「おやおや」とかも言ってる気がするが無視だ無視。

 

ただし駄後輩、今日の晩飯はテメェの嫌いなピーマンを使ったピーマンの肉詰めにするから覚悟しろゴルァ。

 

 

「私は今、誰とも付き合うつもりはないんです。恋愛に興味がない…………って言った方がいいのかな? 彼氏を作るとか、全然考えてなくて……」

 

 

会場の客席から、思い敗れた野郎どもの落胆による溜息の音が聞こえてきた。

 

これで本題だった有里栖の意思表示は会場中に届いただろう。

 

あとの情報拡散は……まぁ、杉並が上手くやるだろうさ。

 

 

「常坂くんの気持ちは嬉しい……本当に嬉しいです。でも、付き合うとかは“今”はしたくない。だから……今の友達という関係のまま、“もっと仲良くなれたらな”って思います」

 

「……ん?」

 

 

ん?

 

んん?

 

ふと、有里栖の台詞の違和感に気づいて思考が止まる。

 

思わず横の恋愛請負人と顔を見合わす。向こうもキョトンとしてた。

 

あー……ちょいまて、その言い方だと……。

 

 

「……あれ? 今、私、まち……え? ふぇ?」

 

 

台詞がズレた。

 

と言うか、その言い方だと、後々友人以上の関係になるって宣言してるようなものでは?

 

 

「か、確変が来ましたーーー!?」

 

 

「言質とったどー!」と、一応舞台袖なので小声で盛り上がる横の恋愛請負人。

 

よし、落ち着け貴様。大変嬉しいのは分かるが落ち着け貴様。いや、ホントに落ち着け。

 

それに反して有里栖はもう、それはもう盛大にテンパりだした。目がグルグル回ってる気もしなくもない。

 

 

「……あ、あっそうだ違った。え、えーっと、えーっと……そうじゃなくて。と、友達! そう友達! いっ……じゃなくて、えと、その、と、常坂くんとは友達のままでお願いします、ずっとね!」

 

「うお……」

 

 

無理矢理な方向修正のせいで死体蹴りになってるなぁ、これ!?

 

流石にピエロ感が増強して一登が哀れになってくるぞ……!

 

なんかもう会場の皆も同情の視線を浴びせてるもんな!?

 

 

「とにかく……そ、そういうことで……。恋愛とかまだ早いし、興味もそんなにないので……」

 

「わ……分かりました……」

 

「えっと……い、良い友達だと思っているので、是非今の関係のままでいましょう……はい……」

 

 

フォロー!? フォローの仕方ァ!?

 

追い打ちになってるから! なんかもう一登にグサグサ刺さってるから!

 

いや、流れ的にはこれで良いんだけどな?!

 

余分にダメージを負ったのは一登だけだから良いんだけどな!? いやでも見ててやっぱりいたたまれねぇよ!

 

「くっ、やはり手強いですね鷺澤は」と、恋愛請負人がまたなんか言ってるが、正直同感である。

 

難攻不落の要塞をイメージしてしまった。ただし一登には弱い要塞だと思う。さっきもあと一息って感じだったし。

 

……いやもうホント、おのれさっさと付き合えよって言いたくなる。

 

 

『ざーんねん! せっかく頑張って優勝したにも関わらず、常坂一登さん玉砕となりました!』

 

 

ここで、ぐだぐだになりかけた空気を司会のちょこが引き戻す。

 

ナイスちょこ。後でおのれにも昨日作ったチョコ菓子とか和菓子分けてやるからな。

 

司会席から飛び出たちょこは、そのまま舞台の有里栖へと近づいて余分に持っていたマイクを渡す。

 

 

『あはは……本当にごめんなさい。せっかくのイベントなのに盛り下げちゃって』

 

『いえいえ、そこは個人の自由意志なので、鷺澤さんはお気になさらずオッケーですよ! ……ちなみに聞いちゃいますが、鷺澤さん、今は誰とも付き合うつもりはない、ってことですか?』

 

『はい、今のところは全然。正直に言っちゃうと……興味がないというか……恋愛以上に、今の私の周りには、楽しいことがいっぱいあるんです』

 

 

有里栖は一度目を瞑り、胸に手を当てて噛み締める様に続ける。

 

 

『それは友人だったり、毎日の生活だったり、今日みたいなイベントだったり、それって絶対に今楽しんでおかないと将来絶対に後悔することばかりです』

 

 

有里栖の言葉には一理あった。

 

おれにも、“使命”と“約束”がある。

 

いつか、その時が来たら命を賭けなくちゃいけない。

 

だからこそ日々の営みも、今日のようなお祭りも全力で楽しむんだ。それまで過ごした日々は、必ず糧になるから。

 

でもな___

 

 

『だから……誰かを好きになったり、付き合ったりするのは、もっと先のことになるんじゃないかって』

 

 

___でもな、だからといって、恋心は封じる必要はあるのか、有里■……?

 

ズキリと、また頭痛が走る。

 

 

『だから優勝した常坂くんには悪いけど、断らせて頂きました』

 

『なるほどなるほど、貴重な意見ありがとうございました! 今のままの学園生活を送りたい……鷺澤さんの気持ちは、きっと皆さんにも届いたはずです!』

 

 

会場を見てみれば、諦めの悪そうな男子も流石に諦めたのか、苦笑してたり本気で悔しそうにしてたりしている。

 

それは裏を返せば、有里栖の思いが届いたとも言える訳で、当初の目的であった有里栖からの依頼の達成も意味していた。

 

 

『鷺澤有里栖さん、常坂一登さん、どうもありがとうございました! そしてレースに参加した皆さん、会場にお集まり頂いた皆さん、長い時間お疲れ様でした

 

___以上で、SSR主催【恋のレジェンドバトル】、閉幕となります! 今日は本当にありがとうございました!』

 

 

最後にちょこが締めて、SSR過去最大規模のイベントは幕を閉じた。

 

会場から鳴り響く拍手喝采の中、全て滞りなく終わったことに思わず安堵の溜息を出す。

 

 

「お、終わったぁー……!」

 

「ふふ、海央ちゃんもお疲れさま」

 

「諳子ししょーもお疲れさまです!」

 

 

海央とソラさんがハグしながらお互いを労う。それに思わず苦笑してると、白河がおれの袖を引っ張った。

 

 

「芳乃も、お疲れさま」

 

「そっちもな、お疲れ白河」

 

 

おれも隣の白河と取りあえず労い合う。

 

張り詰めてた緊張が解かれてどっと気を抜きそうになる。

 

取りあえず、世話になった美嶋さんにCOMUでメッセージを入れる。『恋のレジェンドバトルは無事に終了。おかげフィナーレを見れた。会長達にも礼を言っておいてほしい』、と。

 

そんなおれの様子を見て、ニヤニヤする白河。

 

 

「おや、何時の間にか未羽と仲良くなったんですねー?」

 

「まぁ、今日一日限定の相棒だったからな。最後のフィナーレを見に来れたのも、美嶋さん達が気を利かせてくれたからなんだ」

 

 

気が付いたら普通に話せるくらいにはなってたしな。

 

最初はどこか遠慮がちだった頃を考えると、えらい違いだ。

 

 

「ふふ、良い子でしょう未羽は」

 

「……そうだな。健気で頑張り屋な良い子だと思うよ。まぁ風紀委員だし、今日が終わったらまた迷惑かけることは確実なんだが」

 

 

確かに今日は美嶋さん達の味方になったし、問題児達を取り締まる側に回ったが……おれはやっぱり、バカやってる側の方が良いかな。

 

それを聞いた白河は一瞬キョトンとしたあと、ホッとしたような表情を浮かべた。

 

 

「それを聞いて少し安心しましたよ。芳乃が敵になったら色々と厄介ですからね」

 

「? おれが白河に敵対することはないだろ。」

 

 

そう言うと白河は何故か一瞬固まってから視線を逸らす。

 

と言うか顔を背ける。しかもすごい勢いで。

 

 

「……ホントにタラシなんじゃないですかね、このゴリラ」

 

「なんかゴリラって言葉だけは聞こえたんだが。誰がゴリラじゃ誰が。ココナッツのバズーカ持ってきてぶっ放すぞコノヤロウ」

 

「やっぱりゴリラじゃないですかゴリラー!!」

 

 

こんな時にも、何時もの言葉の応酬が始まる。

 

きっとイベントが大成功したことで気が抜けていたのだろうか。

 

ソラさんと海央のなんだか生暖かい視線を取りあえず無視しつつ、白河とぎゃーぎゃー騒ぐのであった。

 

 

 

 

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