D.C.4 〜ダ・カーポ4〜 先視の魔法使い   作:トウリ

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リアルで忙しかったり執筆してる中でダ・カーポリチューン、発売……! 新ヒロインルート、皆もやるんだ……!耳が幸せになる声なんだ……!

それはそれとしてお待たせしました。ひよりとのデートを終えた主人公のあれやこれやです。


EPISODE 41

 

 

 

 

____時刻は丑三つ時。場所はワンダーランドの入口前。

 

 

 

 

白河との遊園地デートと言うある意味で弩級の一大イベントを、ナイトパレードまでしっかり見てから無事に終えた後、デート相手である白河を寮まで送り届けたおれは魔法使い用のCOMUに、観覧車で感じた鵺の魔力と気配のことを共有した。

 

盾石の感知には何も引っかかっては居なかったが、そもそも鵺自体が規格外の怪異だった事もあり、再調査のために人気のなくなる時間___星空と空に漂う人工妖精による暗さをあまり感じない夜中にワンダーランド前に集合する事となった。

 

……なったのだが、

 

 

「___それで!? ひよりん先輩とのデートはどうだったの!? 告白したの!? 愛を語り合ったの!? 付き合うの!? 婚約したの!?! 結婚しちゃうの!?!?!」

 

「どこまで行ったん?! ABCのどこまで行ったん!? ちゅー!? ちゅーまでは行ったん!? 濃厚なのやったん!?! …………まさかっ!えっちまでしたん!? ずっこんばっこんやったん!?! どないやの!?!」

 

「やっかましいわこのスットコドッコイの色ボケ共がァッ!!!!」

 

 

このザマである。

 

この色ボケたバカタレ共のやかましいほどの追求により、バカ共を呼んでしまったことを早々に後悔し始めてる事態となっていた。

 

つか、話が飛躍すぎである。恋愛脳拗らせすぎだろテメェら。

 

マトモなのは此処に来てから魔力感知を続けてる氷室くらいだ。氷室が真面目で良かった。おれだけだとこの凸凹ボケコンビ相手に成す術も無かっただろう。ちょっとは見習え。

 

 

「芳乃」

 

「なんだ? なんか分かったのか?」

 

「つまり白河さんは君の“コレ”になったのか?」

 

「おのれもかヒムロータス!?」

 

 

真顔のまま振り向きもせずに器用に小指だけをピコピコと動かす裏切り者のブルータスことヒムロータスにもキレ散らかす。頭の血管辺りもブチィと切れたかも知れない。

 

今この瞬間、おれだけがアウェーとなっていた。味方として呼んだ筈の奴らが味方として全く機能してねぇ不具合が発生してる。炎上待った無しのバグである。

 

……と言うか氷室、おのれそんなキャラだったか!? 意外にお茶目属性か!? おれの中のおのれの人物像が崩壊していってるんだが!?

 

ええい! この三人は後で正座で説教だ! 加えて盾石はライン超えの発言しまくってるのでミニガンの刑に処す! 慈悲なんざない! テメェの結末は視えた!

 

ハイ、以上、閉廷! 本裁判は一身上の都合により閉廷ったら閉廷! うがーーーっっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-EPISODE 41-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そんな感じで年相応のバカタレ共の処遇を脳内裁判で有罪に決めた所で、小指をピコピコする苛つく動作と魔力探知を終えた氷室が戻って来る……が、その表情はあまり乏しくない。

 

 

「本当に【(ぬえ)】の魔力を感じたのか? 間近で対峙したから、鵺の残滓が残ってるなら僕も気付くようなものだが、今の所何も感じない……先輩はどうです?」

 

「んー……ウチの感知にも全然引っ掛からへんねんなぁ……。ミオちゃんは? なんか感じ取ってへん?」

 

「……実は、ちょっぴり嫌な感覚がしてるよ。本当に微かな気配だけど、特定はまだ出来ないかな」

 

 

鼻をスンスンとさせながら眉を潜める犬耳パーカーを着た妹分の言葉に思考を回していく。

 

【先視の魔法使い】の正統後継者である海央の“悪意の感知能力”はおれよりも高い。ワンダーランド内に怪異が潜んでることは間違いないだろう。……問題はそれの影も形も掴めてない所か。

 

盾石の隔離結界を使おうにも、肝心の術者である盾石が怪異の存在を認知出来ないせいで結界が使えない事もあって、現状はどう切り込むか話し合ってる所だ。

 

 

「どないしよ……ウチの感知能力は魔力やマナに依存してるから、こんな風に魔力ごと隠れられるとお手上げなんやわ」

 

「隠形に優れた能力は、まず持ってるんでしょう」

 

 

隠形や魔力の隠蔽に優れた性質を持っていて、しかも怪異を構成する負の感情とは真逆の感情で溢れてそうな遊園地に出現する怪異、か……。

 

ダメだな、特定しようとしても情報が足りなさ過ぎる。

 

 

「人工的に作られたとは言え、鵺の怪異としての存在規模は規格外だった。だから、その残滓が新たな怪異となるのは十分にあり得る話だが、僕と先輩じゃこうも何も気配を捉えられないとは……」

 

「おれや海央は、物心付いたときから咲三の防人として“悪意”を察知する力を教えられていたからな。そこら辺の察知能力は折り紙付きだ」

 

 

まぁ、おれは咲三から追い出された後は我流で磨くしか無かったから、感知能力は海央には劣るんだが。その分、おれのそれは戦闘時の先読みに発展していたりするので一概には言えない面もある。

 

 

「……こうなったら、園内に乗り込んで直接調べるか?」

 

「言うても、ワンダーランド内は私有地なんよ? ウチらの認識阻害の魔法は生きてる生物には効果あるけど、監視カメラとかの機械とは相性が悪いで?」

 

「そこなんだよな……」

 

 

魔法は決して万能ではない。

 

今まで戦ってきた蜥蜴の怪物とか怪異は、人気の無い所で発生してたから、隔離結界が使えなくても人払いや認識阻害の魔法だけで事が済んだが、今回はそれとは訳が違う。

 

この深夜でも施設の保安のために警備員や技術者達が残っている上に、このワンダーランドを作ったのは大企業の鷺澤グループだ。間違いなく”最新のセキュリティ”が敷かれていて____

 

 

 

____そこで、ゾクリと、謎の悪寒を感じ取って思考が止まる。

 

 

 

……なんだ、今の悪寒は?

 

今、何か、致命的なミスにようやく気付いたような……。

 

 

「トーカ君? どないしたん?」

 

 

盾石に呼び掛けられてハッとする。

 

いかん、気が散っていた。慌てて思考を元に戻していく。

 

 

「すまん、なんか見落としてるような気がしてな」

 

「と言うかお兄……トーカ先輩はしばらく出撃禁止って、あたし言ったと思うんだけど? なんでちゃっかり来てるの? バカなの? 大牙拳砲喰らいたいの?」

 

「テメェはその大技ポンポン出す悪癖を直しやがれ。……しゃーないだろ。おれ、その怪異の気配を見つけた当事者なんだからよ」

 

 

……おれだってデートした後の余韻くらいには浸りたかったっての。

 

でも感じ取った気配がよりにもよってあの“鵺”なんだぞ? 流石に休んでいられるか。

 

だから構えを解け駄妹。魔力を拳に練るのをやめろ。辺り一帯を吹き飛ばす気かテメェ。

 

 

「原因が明確にあるとは言っても、こうも連続で真っ先に怪異に遭遇してんのは流石に心配になるんやけどなぁ……トーカ君、一回お祓いしてもらったらどうなん?」

 

「………………昔やってもらったけど、このザマだぞ?」

 

 

そんなおれ達のやり取り笑いながら見てた盾石が、一転して真剣な様子で言ってくるが、それに対しておれは半ば遠くを見ながら答える。

 

アメリカ帰りに巻き込まれた事件があまりにも……怪異関係でもないのにそれはそれは酷かったせいで、そのまま師匠と有名な神社に行ってきて祓ってもらったんだけどな……。ここ最近のアレコレを考えると効果はなかったようだ。

 

 

「……君、素で運が悪いんだな」

 

 

やめろ氷室、おれをそんな憐れみの目で見るな。

 

海央と盾石も便乗するな。頼むからやめろ、運が悪いっていう現実を直視して流石に辛くなるんだ。ホントにやめろ。やめろください。

 

 

……閑話休題。話が逸れ過ぎたな。

 

 

「ワンダーランドに潜入したとしても最新式のセキュリティをどう潜り抜けるかだな。……ちょっと時間が掛かるかも知れないが、カメラ対策に周囲の景色に紛れ込める迷彩の魔法を構築してみるわ」

 

「出来るの!?」

 

「魔法の構築は清隆じいちゃんからお墨付きだ。なんとかしてみる。……取り敢えず認識阻害の魔法をベースにして術式(フォーマット)を弄っていけば形には___」

 

 

 

 

 

「___あの、“魔法使い”の皆さん、よろしければ私がお手伝いしましょうか?」

 

 

 

 

 

直後、耳元に“聞き覚えのある”鈴の音のような声が響いた瞬間、全員が後ろに下がると共に戦闘態勢を取る。

 

おれはいつものビー玉を【取替の悪戯(チェンジリング)】で愛銃と取り替え、海央は手甲を付けた拳を構え直し、氷室は氷の双剣を創り、盾石は隔離結界の発動準備を終え、それぞれがお互いの背中を庇うように陣取る。

 

その動きに乱れも遅延もなく、最速で動けたと言っていい。

 

……だと言うのに、声のした方向には誰の姿もない。気配もない。魔力も感じない。

 

そして悪意すらも感じない。

 

 

「盾石!」

 

「あかん、何も感知出来ひん……! でも今ウチらじゃない声やったやんな!?」

 

 

戦闘特化の魔法使いが四人もいて反応出来なかった……ましてや既に人払いと認識阻害の魔法を使ってるのに補足されたと言う事態に、おれ達の警戒度は一気に最大にまで引き上げられる。

 

 

「それなら……ジン先輩!」

 

「承知した、僕達を中心に範囲型の凍結魔法で炙り出して____」

 

 

「わぁぁぁあああ!? 待って! ちょっと待ってくださいー! ストップ! ストップーーー!! お願いですので早まらないでーーー!?」

 

 

「…………あ?」

 

 

氷室が広範囲の凍結魔法を発動する前に、やはり聞き覚えのある慌てた声がおれ達を止める。その声のする方へ視線を向ければ、そこには虚空から水色のエプロンドレスを身に纏うクラスメイトの少女……と同じ姿をしたワンダーランドのメインキャストが現れた。

 

 

「「「アリス(ちゃん)!?!?」」」

 

 

おれと、海央、盾石の驚愕の声が響き渡る。なお、氷室は驚いて逆に声が出なかったらしい。

 

や、そんなことどうでも良くてだな。今コイツ、おれ達のこと【魔法使い】って分かってて言ったよな?

 

当然ながらおれ達は魔法使いであることを公言したりはしない。寧ろ全力で隠している。

 

 

 

……コイツ、一体いつからおれ達のことを認識してやがったんだ!?

 

 

 

降って湧いた未知に対して、最大限に警戒しながら銃口をアリスの脳天に向ける……が、相手は“人工妖精によって映されたホログラム”。弾丸なんざ効かない……いや、待て。

 

人工妖精……香々見島に試験的に散布された、妖精とは名ばかりの人工物……___ッ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……お兄さん、お兄さん。変なことを聞いちゃいますけど、民家の屋根とかを爆速で移動したこととかあります?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、かつてアリスと初めて対面した時のことを思い出して動きが止まってしまう。

 

確か、あの時アリスはそんなことをおれに尋ねていた。

 

あの時は軽く流してしまったが、普通なら知り得ないはずの、“認識阻害の魔法を使っていた”筈のおれの行動を、このアリスは知っていたと言うことになる。

 

あの魔法はあくまで人に対して作用する。なら、“人でないもの”には?

 

この見た目が有里栖そっくりなワンダーランドのメインキャストは、いつもどうやって消えたり現れたりしているのか?

 

___回り始めた思考が一つの推論に辿り着くと同時に先程の悪寒の正体が分かり、冷たい汗が滝のように一気に流れ出す。

 

 

「え、トーカ先輩どうしたの?」

 

「こんな滅茶苦茶焦ってるトーカ君、初めてちゃうか?」

 

 

海央や盾石がなにか言ってるが、今はそこを気にしてる暇はない。

 

今は可及的速やかに、このワンダーランドのメインキャストに確認しなければならないことがあったからだ。

 

 

「…………アリス。おのれさ、“何時から見ていた”?」

 

「あー…………えーとですね……私自身はまだ開発中でしたが、そこの方がお兄さんに戦いを挑み始めた時からです。あ、その後の蜥蜴の怪物のことも知ってます」

 

「おい、ウソだろ?」

 

 

おれの抽象的な問いにアリスは一瞬だけ逡巡する素振りを見せた後、海央を指差して答える。

 

その当たってほしくない想定通りの答えを聞いた瞬間、おれは恥も外聞もなく崩れ落ちてしまった。

 

………………ふっざけんな、本っっっっ当に最っ初からじゃねぇかぁぁぁぁぁああああ!?

 

 

「え、え? どういうこと?」

 

「……まさか、いや、でもどうやって……?」

 

「………………なぁ、トーカ君、これ、ひょっとしてやけど……ウチら、とんでもないやらかしをやってもうた感じ?」

 

 

なんのことか分からなくて戸惑う海央。遅れて理由を察して顔を青くする氷室。同じく全部察して口元を引き攣らせる盾石。

 

これ、説明しないと、ダメだよな……?

 

 

「…………この香々見島には試験的にあるものが散布されてるのは知ってるよな?」

 

「……えっと、【人工妖精】だよね? 冬には少し暖かくして、夏には少し涼しくさせる……今も蛍みたいに夜空を漂ってる光」

 

「あ」

 

「うわちゃー……やっぱりかぁ……」

 

 

氷室もようやく合点が行ったのか、間抜けな声を出した後に更に顔を真っ青にさせ、予想の当たったらしい盾石はなんとも情けない声を出す。

 

分かっていないのは海央だけだった。

 

仕方ないので更に情報を出すとしよう。

 

 

「それを踏まえた上で、そこのアリスは【人工妖精】からホログラムで姿を投影してる訳だが、ここで問題だ。コイツ、どうやっておれ達のことを“見たり聞いたりしてる”と思う?」

 

「え? え? えーと、今見えてる有理栖先輩似の可愛い姿はホログラムだから……ホログラムで見たり聞いたりは出来ないから……あ、分かった! 人工妖精で周囲の様子を見たり聞いたりして…………っっっ!?」

 

 

そこまで言った所で、ようやく今の状況を理解したのか。海央の顔までもが真っ青に染まる。

 

そうなんだよ。今目の前にいるアリスはあくまで人工知能(AI)のキャラクターを、人工妖精によりホログラムとして投影させてるだけ。なのにアリスは投影された辺りの人とのコミュニケーションが普通に成立している。

 

 

 

____それはつまり、人工妖精には周囲の状況を事細かに把握出来る機能がある事に他ならない。

 

 

 

そんな人工妖精だが、基本的には科学の産物と言うこともあり、おれ達の使う人払いや認識阻害の魔法とは相性が最悪と言っていいだろう。

 

これらの魔法は、あくまで生きてる生物にのみ作用するが、純粋な機械にはあまり効果がない。

 

しかも、アリスの言葉を信じるなら、この島で最初に本格的な戦闘行為が始まったクソトカゲの魔法生物との戦いから見られていたと言う。

 

それはつまり、これまで香々見島内で行った全ての戦闘行為が、人工妖精を通じて第三者に見られていた可能性があると言うことになる……!

 

 

「あー! あー! 始末書もんのやらかしやん、これー!?」

 

「いや、始末書で済まないでしょう、絶対……!」

 

「すまん、これ完全におれの失態だ。一番長くこの島にいるのに今の今まで全く気付けなかった……!」

 

「あわ、あわわわわ……!」

 

 

その可能性に思い浮かばなかった辺り、未熟どころの沙汰ではない。完全な失態だ。海央に至っては完全に動揺してる。正直おれも「あばばばば」って感じで気絶して現実逃避したい。ダメか? ダメだよな。

 

 

「あのっ、大丈夫ですよ? あなた達の記録は基本的に人に見られない所に……と言うか私のメモリーにだけ格納してますので!」

 

「……因みに聞くが、それ人に見られることあるか?」

 

「そこも問題なく! 伝説のハッカーさんだろうがスパコンだろうが解析に数兆年は掛かる暗号で保護してますので!」

 

「なにそのクソ化け物セキュリティ」

 

 

解読に数兆年かかる暗号ってなんなんだ? あまりのスケールの大きさに思わず頬が引きつる。

 

や、言いたいことはそうじゃなくてだな。コイツ、一体なにが目的なんだ……?

 

現状、この神出鬼没な夢の国のマスコットキャラクターの意図が分からない。おれ達の戦いのことを知ってると言う時点で、生殺与奪の権利を握られてると言わざるを得ないし。

 

……場合によっては……と、思わず銃を握りしめる。

 

未だ慌ててる駄妹はともかくとして、同じく魔法使いとしての姿を撮られてろうる氷室と盾石も、臨戦態勢は解いていない。

 

 

「…………大丈夫です。私はあなた達に敵対するつもりもありません」

 

「どう言う意味だ?」

 

 

そんなおれ達の心境を知ってか、安心させるような声色でそう断言するアリス。

 

警戒を解かないまま、この場を代表しておれが問い掛ける。

 

 

「現状、おのれはこっちの弱みを握ってる様な立場なんだがな。……なにが狙いだ?」

 

「よ、弱みを握るつもりもそれを利用するつもりもありませんよ!? ……ただ、あなた達のことを知ってる身として、お願いしたいことがあるんです。

 

____このワンダーランドに潜んでるものの対処を」

 

 

 

 

普段のテンション高めな夢の国のメインキャストとしての姿は鳴りを潜め、おれ達の良く知る少女と同じ顔を真剣な色に染まらせて、アリスはそう切り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……で? おのれの言う【ワンダーランドに潜んでるもの】とやらは一体なんなんだ?」

 

 

 

____それから、おれ達はアリスの手引きでワンダーランド内に侵入。

 

 

 

で、今いるのはシンボルマークの一つである【ハートクイーン城】内部のエントランスホール。

 

どうにも城のリアリティを出す為に、城の内部にはカメラなどの現代の機械などは極力配置しない方針らしく、あったとしても日本の建築法規などにより必要不可欠な防災機能以外は存在しないらしい。

 

その代わり、人工妖精で内部の確認も出来るし、周囲のセキュリティはワンダーランド内で開発室並みにしてるらしいが、アリスのお陰でそこは難なく突破。まさかのフリーパスであった。……いよいよもって、なんでもありになってきたな、このメインキャスト。

 

まぁ、結果として、内緒話するには好都合な場所が出来上がっていた。……人気の無い夜の城というのはそれなりに雰囲気が出るものの、此処にいるのは人ならざるものと戦うことを自ら望んで来てる魔法使い達だ。不気味さは感じても臆することはない。

 

適当な壁に背を預け腕を組みながら、ぷかぷかと浮かんでるエプロンドレス姿のメインキャストに声を掛ける。

 

おれ達の視線を受けながら、アリスは真剣な様子で頷いた。

 

 

「……話は、数日前に遡ります。あなた達が【(ぬえ)】と呼んでいた怪物が消滅した後、ワンダーランド内で不可解なマシントラブルが頻発するようになったんです」

 

 

……隔離結界で覆われていたはずの【(ぬえ)】の存在も把握してる、と。や、この際それはどうでもいい。あの結界も最後はマナの残骸で崩れてた上に、ヴァナルガンドのチャージショットで鵺諸共ブッ飛ばしたし。

 

問題はその【(ぬえ)】が消滅した後でワンダーランドに頻発したマシントラブルについてだ。

 

 

「芳乃さんも、今日1日ワンダーランドで遊んていた時に、【ジャッジコースター】と【観覧車】でトラブルに遭遇しましたよね?」

 

「……ああ。特に観覧車では微かだが【(ぬえ)】の気配も感じた」

 

 

おれも白河とのデートの最中にジャッジコースターと観覧車でトラブルが起きたことは確認している。なるほど、どっちの件も【怪異】絡みって訳か。

 

……まぁ、そのおかげで白河の色んな表情を見れたってことには感謝したいが。と、思わず思い出してしまったアレコレに慌てて首を振って煩悩を締め出す。

 

しかし、そんなおれの所作を逃さないバカタレ共が背後からヌッとやって来る。

 

 

「あれあれぇー? なんか顔赤くしてんなー?」

 

「そうだねぇー? これは相当ひよりん先輩と楽しくやってたのかなー?」

 

「アオハルしてんなー。ストロベリってんなー」

 

「イチャイチャしてるよねー。もっとイチャイチャしてしまえー」

 

「ハッ倒すぞテメェら……!」

 

 

おれの周囲を回りながら心底愉快そうな色ボケ二人が生暖かい視線でイジリ倒してくるの、果てしなくうぜぇんですけど!

 

コイツらどんだけこのネタでおれを弄り倒したいんだ!? つか、今はまだ検分中だろうが。真面目に話を聞けや……!

 

あと、バカ2人の後ろで無表情で小指をピコピコ動かしてる氷室も一体何してやがるバカタレが!? バレねぇと思ったか、モロバレじゃボケぇ! しまいには纏めてロケットランチャー撃ち込むぞテメェら!

 

 

「はい! 芳乃さんと白河さんはそれはもう仲睦まじくデートを堪能しておりまして、大変微笑まし《 ドパァンッ! 》ひゃっわーーっ!?」

 

 

鳴り響く発砲音と共にプライベートな情報を許可なく開示しようとしたアリスの脳天をマグナム弾が撃ち抜く……いやそのまま透過する。

 

チッ、ホログラムに撃った所でやっぱり無傷か。命拾いしたな。

 

取り敢えず、バカに便乗したアリスを「ころしや」の視線で睨みながら一言だけ告げておく。

 

 

撃つぞ

 

「撃ってから言わないでくださいー!? 脳天撃ち抜きましたよね!寸分違いなく撃ち抜きましたよね今!? ホログラムじゃ無かったら今ので私、終わってましたよねぇ!?」

 

「チッ」

 

「舌打ちした!?」

 

 

分かっていたことだが、此処でおれ達が見ているアリスは人工妖精の投影で写しただけのホログラム。脳天をブチ抜いた所で意味はないか。

 

 

「と言うか、ハートクイーン城に銃痕が残っちゃうので物騒なことしないでくださいよ!?」

 

「だったら、とっとと話の続きをしろ」

 

 

次、話が逸れたら分かってるな? と、リロードをしながら圧をかけるとアリスがブンブンと必死で頷く。

 

 

「ええと、その妙なマシントラブルはスタッフさんが幾ら調べても分からないバグを出していたんです。ここまでなら原因不明のバグでしかなかったんですけど……つい先日、人工妖精越しにその姿を捉えることが出来まして」

 

「姿を見たのか?」

 

「はい! あ、今メモリーから映像を引っ張り出しますね」

 

 

そう言ってから、「てやっ!」と、アリスが手を翳すと人工妖精から、その件の怪異の姿がホログラムとして投影される。

 

 

「小さな……ゴブリン?」

 

 

おれ達の腰より更に低い背丈で、角の生えた長い鼻を持つ頭部。皺くちゃの赤い上着に緑色の半ズボンを着た姿で、海央の言う通り、ゴブリンのようにも見える。

 

ただ、ゴブリンにしてはあまりに小さ過ぎる。

 

 

「大きさは投影されたものと同じなのか?」

 

「人工妖精を通じて多方面からデータを取れてるので間違いないです!」

 

「鵺と比べると随分と小さいな……」

 

 

氷室の言葉に同意する様に頷く。

 

鵺は【人形遣い】が満月の時に貯めたであろう魔力を注ぎ込んで作られた大型の怪異だった。

 

核としてる【人形遣い】製の悪趣味な人形を貫かれても自力で存在を保てるほどの存在規模のせいで倒すのに苦労したが、目の前に投影されたゴブリンもどきはあまりにも鵺の面影がない。

 

これが、アリスの言う【ワンダーランドに潜んでるもの】……おれが感じ取った【怪異】なのだろうか?

 

 

「この謎の存在が触れたアトラクションに、謎のバグが発生して行くんです。止めようとしても、実体のない私では止められないですし……こんな不可思議な存在じゃ、守衛さんでも無理でしょうし」

 

「なるほどな……つまり、おのれの頼みたいことってのはコレの討伐で良いんだな?」

 

「は、はい! このままだとワンダーランドで大きな事故が起きてしまいます! ……ワンダーランドは来てくれた人達を精一杯楽しませるテーマパーク、誰かが傷付く場所になんてさせたくないんです! だから、お願いします! 力をお貸しください!」

 

 

それは必死な懇願だった。とてもAIが言ってるとは思えないほどに感情の乗ったそれに、おれ達は顔を見合せてから頷く。

 

 

「……分かった。その依頼、引き受ける」

 

「! ほ、ホントですか?!」

 

「もちろんだよ! 人々の為と言うならなおさら! あたしの目指す【正義の魔法使い】なら、絶対に見逃せないもん!」

 

「どのみち怪異がいると分かってて放置しておく理由はないんよ。ウチら、その為にこの島に来てるんやから」

 

 

言葉こそ出さなかったが無言で頷いた氷室も同じ気持ちだろう。

 

SSRの連中のことを言えないくらい、コイツらもお人好しなのだ。誰かが困っていたら、助けずにはいられない。

 

アリスの頼みを引き受けるには、充分に過ぎる。

 

 

「さて、取り敢えずこの怪異はブッ飛ばす方向になったが……これ、なんの怪異なんだよ?」

 

 

少なくとも日本における妖怪だのアヤカシでは無さそうだ。

 

 

「小さな姿に、機械を誤作動させるか、もしかして……」

 

「氷室、心当たりがあるのか?」

 

「ああ。【牛鬼】や【鵺】みたいに【怪異】は元となる伝承や謂れがあるものがカタチになりやすい。そうなると、ここにいる怪異の正体も絞られる。

 

……なにせ、“機械に影響を及ぼす謂れ”のある怪異や現象なんて限られてる。格好からしても、この怪異の正体は恐らく____」

 

 

と、氷室が怪異の正体を口に出そうとした所で……突如としてハートクイーン城の照明が乱雑に点灯と消灯が繰り返される。

 

同時に、観覧車のゴンドラに乗ってた時に感じたのと同じ……鵺の悪意の気配を捉えた。

 

 

「っ! ハートクイーン城の制御システムにバグが発生してます!?」

 

「……! 外で微かに感じてた嫌な感じ、近くにいるよ!」

 

 

アリスの困惑の声から間を置かずに海央の警告が入り、即座におれ達は戦闘態勢を整える。

 

 

 

 

____ウ…ラ………シ…。……タ…………イ……。

 

 

 

 

同時に聞こえてきた声。怨嗟に満ちたそれを聞き取ろうと試みるも、音量が小さすぎて言葉として捉えられない。

 

 

「……あかん、ウチの感知じゃやっぱり姿を捉えられへん!?」

 

「察するに、機械の誤作動を起こす能力に加えて魔力を極限まで隠蔽する能力もあるって所か。……今まで見つからなかったのはそのせいだな」

 

 

魔力探知を基本とする盾石との相性は最悪だな。

 

盾石の隔離結界を使えれば良かったが、その対象の魔力を確認出来ない以上は隔離結界に入れる事も出来ない。便利な隔離結界の弱点とも言えよう。

 

……だが、魔力は感じなくても、怪異特有の“悪意”を発してるなら、幾ら隠れてもおれには分かる。

 

それを証明する様に、感じ取った“悪意”の出所___背後のシャンデリアに潜んでいたゴブリンもどきへと愛銃【シリウス】の銃口を向けて引き金を引く。

 

 

「そこだ!」

 

 

ドパァンッ! と、放たれた魔力を纏った弾丸は、おれの狙いに反して怪異の横を掠めるだけの結果となる。

 

外した……いや、避けられた!?

 

ならばと続けて引き金を引くも、放たれた魔弾の全てを、その怪異は“見てから”回避しきった。

 

 

「うそ、トーカ先輩が外した!?」

 

「……いや違う。野郎、弾丸の軌道を見てから全部避け切りやがった」

 

 

海央がギョッとした表情でこちらに振り返る。

 

見てから避けるってのが特にヤバい。動きを予測して知覚する前から回避するよりも遥かに力技と言えるだろう。それも魔力を纏って強化されたマグナム弾を視覚で捉えてから避けるなんて、海央が身体強化してやっと出来るかどうかだぞ。

 

そのまま地面に降り立った【怪異】。その姿はアリスの見せた映像そのままに、あまりにも小さい。

 

しかし、見た目のしょぼさに反して随分と厄介な能力を持ってるのは、たった今この怪異自身が証明していた。

 

 

《クヒ……キャハ……キャハハハハッ!!》

 

「気色悪い声で笑いやがって……馬鹿にしてやがるのか?」

 

 

言いながら更に引き金を引いてもう一発魔弾を叩き込むが、やはり奴は見てからそれを回避する。

 

「いやぁーー!? ハートクイーン城が、銃痕だらけにぃーー!?」とアリスが絶叫してるがスルーしておこう。や、流石に悪いとは思ってるけど状況が状況なので許してほしい。後でなんとか魔法使って誤魔化すので。

 

 

「トーカ君ばっか意識してると痛い目ぇ見るでー!」

 

 

と、怪異の回避方向に結晶の檻を展開した盾石の声が響く。動きを封じ込めれば隔離結界に閉じ込めることも可能だろう。

 

しかし奴もバカじゃない。檻に飛び込む直前で方向転換をして閉じ込められるのを避けつつ、更に追撃しようとしていた氷室と海央からも距離を取り、嘲るように嗤う。

 

 

「ちょ、逃げるなー!?」

 

「あの野郎、おれ達の動きを先読みしてんのか」

 

「厄介やな……ホントになんの怪異なんよ!」

 

「____多分、【グレムリン】だ」

 

 

嫌らしく嗤うゴブリンもどきから視線を外さないまま盾石が聞いてくるので、さっき言いかけた怪異の正体を氷室が言葉にする。

 

その名前にはおれも聞き覚えがあった。確か西洋の妖精の一種だったか?

 

 

「グレムリン? あのネクタイ着けたゴリラさん(トーカ先輩)の敵キャラのワニ?」

 

「そりゃクレ◯リンだろ。あと小声でちゃっかりおれとゴリラを結び付けようとしてんじゃねぇよ。クレム◯ンのボスワニみたいにパンチで吹っ飛ばすぞコラ」

 

「そのパンチ繰り出したのも主人公のゴリラだよねゴリラー!」

 

 

毎度毎度、白河といい駄妹といい、なぜおれをゴリラと同一視しようとするのか。ホントにそろそろネタが尽きそうなので勘弁して欲しい。と言うか鉄火場でふざけてる場合かコラ!?

 

 

「……【グレムリン】はイギリスに伝わる機械に悪戯をする妖精の一種だ。なんでも、機械やコンピュータが原因不明の異常な動作をする事を【グレムリン効果】とも呼ばれるらしい」

 

 

そんなおれ達のやり取りに溜息を吐きながらも、氷室が【グレムリン】について解説していく。

 

西洋における妖精などは、世間一般的で知られてる様な可愛げのあるものと違い、自由気ままで悪辣なものも多い。

 

コイツもその類なんだろう。仮にも鵺の悪意を継ぐ存在なんだし。

 

 

「……まさしく、今の状況にピッタシな怪異やな」

 

「姿に関しても諸説あるが、50cmくらい小さい。さっき見た姿そのままです。……あのふざけた回避能力については訳が分かりませんが」

 

 

能力が機械に誤作動を起こすってだけなら大したことはないだろうが、たった今見せた回避能力に存在の隠蔽能力も含めれば厄介極まりない。

 

だが、これで手詰まりになるほど、こっちの手札も乏しくはない。

 

 

「見てから回避するって言うなら、“更にその先”を視れば問題ねぇだろ」

 

 

数秒先の未来を視る【先視の魔法】で奴の動きを捉え、そこに魔弾(チャージショット)を叩き込む。単純だが、それで詰みに持っていけるはず。

 

なので右目に魔力を回そうとした所で、【グレムリン】がニタァと言う表現が似合う嫌らしい笑みを浮かべ、振り上げた腕を落とす。

 

それに嫌な予感を感じると同時に、今まで乱雑に点滅を続けていたハートクイーン城の照明が全て落ち、辺りを暗闇が包み込む。

 

 

「……んな!?」

 

 

____先視の魔法には、明確な弱点が存在する。

 

 

それは未来を視るのが術者の視力、そして視界に依存すること。

 

今回の場合で言えば中途半端に光に慣れてた所、一気に暗闇になったため、視界が潰れてしまい未来を視ようとしても視えなくなった。

 

咄嗟に【取替の悪戯】でライトを取り出すも時既に遅く、ワンダーランドに巣食っていた怪異、【グレムリン】はその姿も、気配も消し去っていた。

 

 

「〜〜〜〜〜〜ッッ、あのクソゴブリンもどきめぇ……!」

 

 

おめおめと【怪異】を取り逃がしてしまったことに、そしてそれを許してしまった自分の不甲斐なさに、頭が沸騰しそうになる。

 

 

「海央ちゃん、どないや?」

 

「……ダメ、気配遠ざかったよ。逃げられた」

 

「してやられたな。……いや、【鵺】と比べて、あの【グレムリン】に対してあまりにも脅威を感じなかったからか、僕達全員が油断してしまっていた」

 

「……あーもうっ、やらかしてもうた……!」

 

 

冷静に自分達の動きを分析する氷室の言う通りだ。ここにいるおれ達全員、奴をあまりにも舐めてかかってしまった。

 

そもそも先視の魔法だって、奴が出て来た瞬間に使ってれば無駄弾を撃つ事もなかったし、ハートクイーン城にも傷なんて付けずに済んだ。

 

人工妖精の件といい……今日は失態続きだ。

 

 

「あ、あの、大丈夫ですか皆さん……?」

 

 

心配そうに声を掛けてくるのは一部始終を見ていたアリスだ。

 

この情けない体たらくを見て不安を感じてしまったのなら大変申し訳ない。

 

 

「……悪いなアリス、随分と情けない所を見せちまった」

 

「い、いえ。私が見る限りでも今まで見てきた【カイイ】とはどこか毛色が違う様にも見えましたし」

 

「いや失態は失態だ。……これがもっとタチの悪い【怪異】だったら、下手すりゃ一般人への被害が出てたかも知れない。その事実は、重く受け止めねぇといけないだろ」

 

 

そもそも最初の段階で空気が緩みまくっていた。白河とのデートに浮かれてたおれも、それを年相応にからかってた他の三人も。

 

その結果が【怪異】をおめおめと取り逃がすって言う特大の失態だ。

 

特に現役の【防人】である三人は、おれが言うまでもなく自分達の不甲斐なさを受け止めている。

 

 

『クヒヒ……クキャキャ……キャハハハハハハハハッ!!!』

 

 

と、そこに園内放送用のスピーカーからグレムリンの嘲るような嘲笑が響く。放送設備も乗っ取れるのか、あの怪異。

 

 

『オエルモノナラ オッテコイ マヌケ ナ マケイヌ ドモ! キャハ! キャハハハハハハ! 』

 

 

 

 

「「「「…………は?」」」」

 

 

 

そしてあろうことか、まさかの挑発までして来やがった。と言うか煽って来やがった。

 

流石にこれにはおれだけでなく他の三人も心穏やかでは居られない。

 

 

「あ、あの、皆さん……?」

 

 

ブツンッ!と放送が落ちた後、無言のまま顔を俯かせるおれ達を気にかけるようにアリスが声を掛けてくる。

 

 

「……フッ、どうやら失敗したのおれ達だけじゃないらしい」

 

 

わざとニヒルっぽい笑みを浮かべながらグレムリンについて語る。

 

確かに、おれ達は失態を犯したが、それと同時に奴もまた致命的なミスを犯している。

 

犯してしまった、と言うべきか。

 

 

「そ、それは、どう言うこと、でしょうか……?」

 

 

明らかに異様な空気の中、恐る恐る問いかけてきたアリスに対して、学生としてではなく“意識を完全に切り替えて”から、魔法使いの芳乃灯火として、簡潔に答える。

 

奴の失敗はただ一つ、

 

 

 

 

「____おれ達を、本気にさせたって事だよ……!」

 

 

 

 

わざわざ姿を晒しておちょくるだけおちょくって逃げるくらいなら、おれ達の一人くらいは行動不能にさせておくべきだったんだ。

 

なのに奴はそれもせずに姿を見せてから姿を消して安全圏から煽り倒す始末。

 

……これは至極、当たり前の話になるが、馬鹿にされてそのままでいられるほど、おれ達はまだ大人ではないのだ。

 

 

 

 

要はアレだ、キレた。それはもう盛大にブチギレた。

 

 

 

なので次の瞬間、虚仮にされまくった魔法使い達の本気の怒気とか殺気とか闘気とか魔力とかの諸々が周囲を飲み込み、AIであるはずのアリスの顔が恐怖に歪む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………これは後にアリスから聞いた話だが、この後始まる情けも容赦もない蹂躙劇について、

 

 

「……私の体験したメモリーの中で、最も恐ろしいものを見た記憶として保存する事にします。でも出来たら忘れ去りたいです」

 

 

と言う、割と結構酷い感想を貰うことになる。当然ながら今のおれ達には知る由もないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




怪異のグレムリン、実は1話以上の生存達成という快挙を成し遂げてる。なお、次回、爆散予定。
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