D.C.4 〜ダ・カーポ4〜 先視の魔法使い   作:トウリ

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グレムリン決着。なお、卒業式→デート→怪異退治なので一切日数が進んでないという。

今回早く投稿出来たのは元々1話で出す筈が書く量増えたので2話に分けただけだったりするので、更新速度が上がった訳でもないのです。


EPISODE 42

 

 

 

 

_____香々見ワンダーランドに潜むものこと【グレムリン】は【鵺】の残滓から変異した怪異だ。

 

 

 

 

 

本来、この世界における怪異とは、万物の源たるマナが土地に残留している人の思念や怨念などに触れることで、自然的に発生した魔法現象がカタチとなったものだ。

 

その発生条件故に、悪意とは無縁の明るい感情が集う場所にはまず怪異として発生しにくいのだが、元となった【鵺】の発生経緯が特殊だったことと、その存在規模の高さ故に鵺と言う存在そのものが破壊されてもなお残滓が色濃く残ってしまったこと。

 

そしてもう一つ……ワンダーランドと言う一見すると明るい場所であるか故に生まれる“なんらかの悪意”があったからこそ、その残滓が怪異を象る条件を偶然にも満たしてしまい、【グレムリン】と言う怪異は発生した……と見ている。実際の所はグレムリンしか知らないだろうしな。

 

最も、あの【鵺】の残滓が元となったとは言え、戦闘力はないにも等しい。それは【グレムリン】もよく分かってるのだろう。自分を消しに来たであろう魔法使い達を一人も削ることが出来なかったことから、そう判断出来る。

 

出来るのはせいぜい、思いつく限りの嫌がらせくらいか。それで隙を作ればいつかは勝てる……そんな考えが奴にはあったのかも知れない。

 

 

 

____まぁ、現在進行系でワンダーランド内を必死で駆け回る羽目になってる以上、それが浅はかな考えだったとはグレムリン自身も理解してるのだろうが。

 

 

 

「逃ーがーすーかぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」

 

 

 

人気のないワンダーランド園内を必死な表情で走るグレムリンと、そのグレムリンを完全に補足して《ドドドドドドッ!!》と言う勢いで追いかける一人の魔法使いの姿を、【取替の悪戯】で愛銃と取り替えた双眼鏡越しにて捉える。

 

その魔法使い____後輩にして妹分である海央は、グレムリンが放送設備を乗っ取っておれ達を挑発してからあまり間を開けずにグレムリンを補足して追い回していたりする。

 

それも既に“1時間”近く。逃げるグレムリンをひたすらに突かず離れずの位置を維持しながら、だ。

 

恐ろしいことに、その1時間の間、魔法使いとは言え人間であるはずの海央の体力は全く衰えを見せず、鬼の形相でずっとグレムリンを追いかけてるのだ。

 

グレムリンは怪異であるが、元は人間の悪感情から生まれただけあって、心なしか結構焦ってるようにも見える。

 

まぁ、それに関しては海央の奴が気配を消せるはずのグレムリンを完全に捕捉している上に、少しでも追い付かれれば人外の腕力で殴りかかっていくのだ。非力なグレムリンでは逃げるしか手がないのだろうし焦りもするだろう。

 

かれこれ1時間はこれなのだ。対抗手段があれば既に切っている筈だ。それが無いという事は、グレムリン側の手札で対抗出来るものが無いと言っていいだろう。

 

おれ達は確かにグレムリンを甘く見ていたが、グレムリンもまた、魔法使い達を甘く見ていたのだろう。

 

なにせ、コチラの手札は鼻の利く海央だけじゃないのだから。

 

 

「グレムリンさん、いらっしゃーい♡ 」

 

 

そんな間の抜けた声を聞いたグレムリンが 『ハ?』と言いたげな表情を浮かべたが、その直後、地面から生えてくるように飛び出た幾つもの結晶の槍を寸前で避けきる。

 

銃弾をも見切る動体視力はやはり伊達ではないのだろう、その全てをグレムリンは見事に回避しきった。逆に言えばグレムリンで無ければ、今ので大抵の怪異は足を止めて串刺しになってただろう。

 

 

「んー、やっぱトーカ君の銃撃を避けれるくらいやし、動体視力は大したもんやな。ウチの魔法の発生速度じゃ仕留めきるんは難しいわ。……所で、ウチばかり気にかけててええんか?」

 

 

意識を少しでも割けばどうなるのか?

 

その答えは、空から落ちて来た。

 

 

 

「____天、鷲、撃ぃいいいいい!!」

 

 

 

天から回転しつつ人外の勢いで放たれる踵落とし。

 

あんなのが当たればタダで済まないことはグレムリンにも分かるのだろう。決死の表情を浮かべてその場から急いで離れる。

 

海央の踵落としこと咲三式の体術・天鷲撃は地面を穿ち、陥没させる。

 

いつぞやマネキンに放った時とは違い、殺意とか怒りとかも込めた本気の一撃だ。どう考えても人間が出せる威力じゃない。つか、マトモに受ければ塵も残らんわ、アレ。

 

その破壊の中心で海央はゆらりと立ち上がると、目を光らせてグレムリンを睨む。……ホラー映画みたいだな、これ現実だけど。めっちゃリアルだけど。

 

 

「 絶 対 に 、 逃 さ な い 」

 

 

一息、深く息を吸い、吐いてから魔法で全身を強化して海央が再び走り出す。……いや怖ぇよ。どこのキラーだよアレ。

 

あんなの、ジェイソンやターミネーターにエイリアンも真っ青になるわ。

 

当然ながらグレムリンは逃げた。あんなのに捕まったらマトモな死に方なんて期待できやしないからだ。もういっそ可哀想なくらいに表情が恐怖で歪んでる。

 

人間ならば泣き出し失禁しかねないほどの恐怖が迫ってくるのを理解してるからか、グレムリンは逃げ続ける。と言うよりも逃げる事しか出来ないと言うべきか。

 

双眼鏡から目を離して一息つく。ワンダーランドのあちこちに見える氷だったり結晶だったりには見ないふりをしておいて。

 

 

「……………不意打ちの迎撃魔法でも仕留め切れないか。なら、次だ」

 

「あわ、あわわわ……!」

 

 

ワンダーランド内で一番高い位置にある観覧車から逃げるグレムリンと追う海央の様子を眺めつつ、次の手札を切るために罠を仕掛けてるだろう氷室へと連絡を取り始める。

 

その後ろで、自分の職場兼家でもあるワンダーランドが戦場になっていく様に恐怖を感じ、顔を真っ青にして慄いてるホログラムのAI少女がいたりするのだが、うん、今は見ないふりをしておこう。

 

文句なら、煽ってきたグレムリンにどうぞ。当店はクレームは受け付けておりません、あしからず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-EPISODE 42-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー……取り敢えず、どない始末つけたろか? あのミニマムゴブリン」

 

 

 

____話は約1時間前にまで遡る。

 

 

 

屈辱的な敗北をしてしまったおれ達は、取り敢えず溢れんばかりの怒気をなんとか収めてから、件の怪異ことグレムリンへの対策を話し合っていた。

 

先ほど思いっ切り煽られたのが効いたのか、おれ含め魔法使い達には油断も慢心もなくなってるが……ちょっと怒りが前に出過ぎてるか?

 

魔法使いは感情豊かな面があるので仕方ないんだろうが……。や、だからこそ、『魔法の強さは子供のような純粋さから。魔法の精度は分別のある大人の精神力から』と言う師匠の教えは大事になる訳か。

 

 

「あ、それじゃまずあたしが全力で追い回します。アレの気配はもう覚えたから逃げた所で居場所はすぐ分かるので。うん……地獄の果てまで追い回すね?」

 

 

先ほど馬鹿にされたことを思い出したのか、一切笑ってない表情で海央がそう提案……と言うか死刑宣告をする。

 

実際、体力無限かってレベルの海央に追い掛け続けられるとか拷問でしかない。少なくともおれなら御免被る。勝ちの目がない【鬼事】とか大概にしろ。

 

 

「では僕と先輩は罠でも仕掛けましょうか。お嬢が奴を追い回して指定場所に誘導。そこで盛大に罠に掛ける方向で」

 

「ええな。コケにされた分はやり返したいしなぁ」

 

 

やられた分はやり返す。報復は必ず行う。と言う昏い決意による笑みを浮かべた氷室と盾石が罠を仕掛けることに同意する。……ここらへんはなんというか年相応だよな。

 

ただ、この2人の魔法は自由度が高い上に応用も効くのでエグいのを仕掛けそうなのが気になるが。

 

 

「……問題は奴の危険察知能力、それからマグナム弾をも見切る動体視力の高さから来る回避能力だな」

 

 

そんな四人のうち三人が……それも普段冷静な氷室すら血気盛んとなっているので、敢えておれは冷静さを保ちながらプランの修正をしていく。

 

一度は出し抜かれたのだ。二度目があればその時点で自分への怒りで憤死しかねない。なので努めてクールを保つ。

 

そう、クール、Koolだ。……なんか違うな。まぁいいか。誤差だ誤差。※正確にはCoolである。誤差で片付けてはいけない。

 

なお、奴の厄介な能力の一つに存在の隠蔽能力もあるが、既にその気配を完全に掴んでる海央が追い掛け回すと宣言してるので、そこは無力化してる。グレムリンは泣いても良い。

 

……なので、後はどう“詰み”にまで持っていくか、だな。

 

 

「耐久力も見た通り貧弱なんだろうが、それを補って有り余る回避能力の高さをどうにかしないと延々と逃げ続けられて、タイムアップになるぞ」

 

「タイムアップって……あ、そっか。ここ遊園地だから明るくなってくるとお客さんとか来るもんね」

 

「それ以前に器具の調整とかで職員が園内を徘徊しだすんちゃうかな? アリスちゃんはウチらの味方やし、認識阻害の魔法を使えばバレへんと思うけど……怪異の討伐は難しくなるんよな」

 

「怪異の脅威が残ったままになれば、ワンダーランドのマシントラブルも無くならない。……寧ろ、今の今まで人的被害が出てない事の方が奇跡なんだ」

 

 

そうなるとやはり空が白け始めるまでに奴を仕留めたい所だな。

 

制限時間も設けた上で怪異の排除達成までの流れを、回り始めた思考でカタチにしていく。

 

 

「よし、取り敢えず海央は今から早速グレムリンを追い回してこい。おのれなら2時間くらい余裕で走り回れるだろ? ____奴に機械を誤作動させる暇もないくらいに徹底的に追い詰めろ」

 

「りょーかいです! あの怪異に朝日は拝ませません!」

 

 

割と洒落にならない事をのたまってビシッと敬礼した後、表情を魔法使いとしてのものに変えてからとんでもない速度で走り出す海央を見送り、残った面子で更に詳細を詰めていく。

 

 

「よっしゃ、それじゃウチらも動こうか。ウチはメリーゴーランド付近と【ジャッジコースター】、【ハートクイーン城】らへんで」

 

「僕は【カガミの迷宮】とショップエリア、逃げられても面倒なので出入り口ゲート付近にも罠を仕掛けて来ます」

 

「万全を期すなら奴の反応速度の上限を知りたい。おれは見晴らしの良い高所で待機して俯瞰に徹するから、二人はさっき言ってたように罠の設置を頼めるか? 10分もあれば怪異用のエグい奴を幾つか仕掛けられるだろ。でもって、あわよくばブッ殺せ」

 

 

最後の台詞に関しては親指で首を掻っ切る仕草も付け加えておく。罠で仕留められるなら越したことはないからな。

 

 

「オッケーやで。指示出しは任せるわ」

 

「承知した。……所で、僕と先輩で無理な場合はどうするんだ?」

 

「やっぱ【先視の魔法】で詰めるん?」

 

「【先視の魔法】でも良いだろうが、さっきは不発になっちまったし、確実に仕留めるなら奴の知らない未知の手段……こっちの手札を一枚切った方が合理的だな」

 

 

それに____

 

 

「どうせなら、コケにされた銃技でトドメを刺してやる方が、煽った側から見れば屈辱的だろ?」

 

「うわぁ、見たことない嗜虐的な笑顔浮かべとるぅ……」

 

 

ニヤァと欠けた月のような笑みを浮かべると盾石からドン引きされた。

 

言っとくけど、テメェも罠について考えてるときは似たりよったりな表情してたからな?

 

 

「あ、あのー……一つ質問があるんですけど……」

 

 

ふと、控え目に手を挙げたのは、今の今まで黙って文字通り空気になっていた存在。

 

人工妖精からのホログラムにより投影されたエプロンドレスの少女、ワンダーランドのメインキャストことアリスだ。

 

 

「その、罠とかってワンダーランドを傷つけたりしませんよね……? さ、流石に頼んだ身でこんな事言うのは烏滸がましいのかも知れませんが、一応明日……と言うか今日も開園しますので……」

 

 

そのちょっと必死な懇願するアリスから視線を盾石と氷室へと向ける……が、揃って視線を逸らされた。……おのれら。

 

 

「まぁ、アレだ。修復する魔法もあるから何とかなるだろ」

 

「それやっぱり色々と被害が出るってことですよねぇ!? ワンダーランド、大丈夫なんですよねぇ!?」

 

 

必死という概念をカタチにするならば、今のアリスの表情が正しくそれなのだろう。

 

だがしかし、普段ならストッパーになる氷室ですらコレなんだ。諦めてくれ。

 

恐怖と苦悩に塗れるアリスの姿に、おれは心の中で密かに合掌するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………よし、そのまま海央はグレムリンを追い続けて、氷室が待機してる【カガミの迷宮】に誘導しろ。で、あわよくば追撃。盾石はその次のポイントで罠の起動準備。氷室、奴の回避能力の想定を更に高くした上で対応してくれ。間違っても海央は凍らすなよ?」

 

『了解だよ!』

 

『了解したでー!』

 

『了解。準備は既に済んでる。いつ来ても良い』

 

「わ、ワンダーランドが、どんどん戦場になっていくぅ……傷ついていくぅ……!」

 

 

そんな約1時間前の作戦会議のことを思い出しながら、魔法使いだけのCOMUで全員に指示を出す。

 

こんな感じでグレムリンを追い掛けてはひたすら罠に嵌めていくと言う作業を繰り返していたりする。

 

後ろで顔を青褪めてるアリスには悪いが、こっちもこっちで余裕が無いのである。それでも敢えて言うなら本当にすまねぇ。思ってたよりも派手にやってやがる。

 

あと今も奴を仕留め切れてないことから分かるだろうが……野郎、盾石や氷室の仕掛けた罠を全回避した上に海央の追撃も掻い潜ってやがる。回避能力を想定より更に高く見積もった方が良いだろう。

 

それも含めて氷室にも指示を出したが、氷室の魔法……氷を発生させたり周囲全体の凍結だとかは発生速度そのものはそんなに速くない。恐らくこれも避けられると見ている。

 

TABの時計表示は午前の3時を過ぎた頃だ。……アリスから聞いた話だと営業時間外の保守点検を行うスタッフ達はアリスの方で情報を錯綜させて動きを止めたり誘導しているらしいが、開園前のチェックなどで人が増え始めれば流石に止められないとのこと。

 

最低でも朝の4時半までに奴を片付けなければタイムアップだ。……そうなる前に仕留める必要がある。

 

営業時間外の為に機能を停止している観覧車の頂点にあるカゴの上から、再度双眼鏡でグレムリンと、それを追う海央を捕捉する。

 

誘導は上手くいってるようで、氷室が罠を仕掛けてる【カガミの迷宮】内に奴を追い詰めることに成功____直後、【カガミの迷宮】ごと凍てつかせるかのように、氷室の魔法が起動する。

 

 

「いやぁぁああ!? 【カガミの迷宮】が氷漬けになっていくぅ!?」

 

 

ムンクの叫び声のような表情をしたアリスの言う通り、【カガミの迷宮】を中心とした周辺の熱が瞬く間に奪われ、生物の存在できない極寒の環境を作り出していく。

 

……なるほど、逃げ場を無くした上での範囲凍結か。

 

 

『ァァァァアアアッ!?』

 

 

もしかしたら、これで行けるか? と思ったが、身体が完全に凍てつく前にグレムリンが【カガミの迷宮】、そして氷室の魔法の範囲外に脱出。……チッ、ダメか。

 

 

「海央!」

 

『ダメ、追い打ちは間に合わない!このまま追い続けます!』

 

 

あわよくば追撃と行きたかったが、海央の間合いから既に離れていた為、断念したようだ。

 

小柄な体躯と合わさって、生存能力と危機回避能力だけなら今まで戦ってきた怪異より遥かに高い。

 

持ち得る手札で奴を仕留めるなら……威力や速度より、奴の意表を突けるものが効果的だろう。

 

…………そうなると、やっぱり“アレ”の出番だな。

 

 

「盾石、次の罠の場所は?」

 

『【ジャッジコースター】付近やよ。さっきの奴よりも速度の速い地雷式の奴にしたけど、多分グレムリンには効果は薄いと思うで?』

 

「奴の意識を一瞬でも向けられるならそれでいい。……おれが動きを止める。氷室もこっち来てくれ、海央も合わせて次で決めるぞ」

 

『なにか策があるんだな? 承知した』

 

『あたしも了解、そっちに誘導してみる!』

 

 

全員に情報共有を終えて、双眼鏡を愛銃へと魔法で取り替えてから、観覧車の骨組みを伝って素早く地上に降りる。

 

 

「勝機が見えたんですか!?」

 

「ああ。早い話、勝機なんざ無理矢理にでも作っちまえば良いんだよ」

 

「暴論過ぎませんそれ?」

 

「怪異相手に常識なんぞ持ち合わせてたらやってらんねぇよ」

 

「非常識の具現化みたいなものですもんね! 納得です! 非常識な存在には非常識な存在です! 目には目を!歯には歯を!ですね!」

 

「遠回しにおれらも非常識だって言ってるよなそれ!? 言っとくけどAIでホログラムなおのれも常識に喧嘩売ってる側の存在だからな!?」

 

 

なんなら魔法ではない科学側の産物なので、この中では今一番の非常識であると言っていい。と言うか現在ワンダーランドには非常識な存在しかいないらしい。夢の国がなんてざまなんだろうか。

 

そんな感じで着いてくるアリスと軽口を叩き合いながら、ジャッジコースターの入場口まで走り続ける。

 

もちろん身体強化済みではあるが、そんな強化した脚力に平然と併走……と言うか隣で浮きながら着いてきてるアリスに内心でこっそり驚く。ホログラムの投影をぴったり併走するって、一体どうやってるのか。

 

考えても答えは出なさそうなので脳の片隅に追いやりつつ、最短距離で目的地まで走り抜けると、近付いてくるおれの魔力を察してか手を振っておれ達を迎え入れる盾石と、先に来たであろう氷室と合流する。

 

 

「準備は?」

 

「モチのロンやで!」

 

 

盾石側の準備はよし。おれもおれで愛銃に弾丸が装填されてることを確かめてから揃って物陰に隠れる。

 

あとはグレムリンを誘導して来る海央を待つだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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____逃げるグレムリンを追う。隙を見つけたら殴る、蹴る。

 

……そんな感じでかれこれ1時間近く走りながら隙を見つけては攻撃しているけども、致命的な一撃を与えられる気がしないのは、あたし自身の不覚もあるけどグレムリン自身の危機回避能力が異常に高いからだ。

 

あたしの体力にはまだ余裕があるとは言え、ここまで攻撃が当たらないとなると、分かっていても苛つきが蓄積していく。

 

隔離結界に閉じ込められるなら、範囲系の大技でブッ飛ばすことが出来るのに……と、兄と慕う人に聞かれたら呆れられること待ったなしなことを考えてしまった。

 

トーカ先輩(お兄ちゃん)トーカ先輩(お兄ちゃん)で物騒極まりない兵器を持ち込む事もあるので、あたしとしては納得出来ないのだけど。脳筋なのはお兄ちゃんだって同じなのだー。

 

 

『ミオちゃん、こっちの準備は完了や! 【ジャッジコースター】まで誘導頼むで!』

 

『盾石とおれで追い込んで氷室の魔法で完全に動きを止める。海央、おのれは盾石の罠が発動した時点で魔力を溜めて待機、氷室が凍らせるまで絶対に動くなよ』

 

「了解!」

 

 

とかなんとか考えてる間に向こうの準備も整ったので、こっちのギアを上げながら指定された場所に向かうように拳や飛び蹴りを交えて誘導していく。

 

それから数分も経たない内に見えて来たのは巨大なチェスの駒の周りに配置されたレールが特徴的なジェットコースターのアトラクションこと【ジャッジコースター】。

 

その入り口付近まで近づいた所で、逃げるグレムリンの足元から結晶で出来た巨大なトラバサミが、コンクリの地面を砕きながらグレムリンに襲い掛かる。

 

 

『ギィイイイイイィ!!』

 

 

完全な不意打ち。人間なら反応出来ないだろうその罠を、グレムリンは跳躍することで回避する。

 

一瞬の判断で安全圏を把握出来た辺り、生存能力特化は伊達ではない。

 

……でも、空中なら、もう身体は動かせない。

 

 

「……チャージ1」

 

 

『!?』

 

 

跳躍しきった所を狙うは、アキ姉の後ろで化け物銃に魔力を纏わせたトーカ先輩だ。

 

鷹より鋭い目がグレムリンを確かに捉え、両手で狙いを付けた化け物銃の引き金を引く。

 

《ドパァンッ!!》と言う炸薬の破裂する音と共にほぼ同時に放たれた二つの弾丸。

 

早撃ち・二連(ダブル·クイックドロウ)】。トーカ先輩(お兄ちゃん)が得意とする絶技の一端。

 

グレムリンは空中にいる胴体と頭に向かってくる弾丸を見て……《ニヤリ》と笑い、身体を捻ることで空中にいながら弾丸を回避する。

 

 

「嘘……!?」

 

 

あの状態で更に避けるの!?

 

口から出た驚愕の言葉と共に思わずカバーをする為に身体を動かそうとして……ギリギリで踏みとどまる。

 

何故なら見えてしまったから。

 

弾丸を外したはずの兄の口が、三日月を象るような笑みを浮かべているその様を。

 

 

 

 

「____テメェの結末は、もう視えた」

 

 

 

 

そして次の瞬間、あたしはその理由を思い知る。

 

グレムリンが避けた二つの弾丸が、ジェットコースターのレールを支える支柱や床に当たり、跳ねてからまた別の支柱や障害物に当たり、また別のモノへと当たり跳ね続け____

 

 

 

 

 

____最後はグレムリンの背後(視覚外)から、跳ね続けた二つの弾丸がそれぞれグレムリンの両脚を貫いた。

 

 

 

 

 

……嘘でしょ!? そんなのアリなの!? 跳弾をコントロールして狙って当てたの今!? 最初に外れるのも鑑みた上で?!

 

と言うかあの漫画の技だよねそれ!? 着物の女の子と主人公が使ってたアレを再現しちゃったの!? 再現出来ちゃったの!? 流石にドン引きだよ!?

 

 

「目が良いのも考えものだな。なまじそれに自負がある分___それは驕りとなって致命的な隙を生む。……氷室、海央! トドメだ!」

 

「君はホントになんでもアリだな!? 今のは流石に曲芸が過ぎるだろ?!」

 

 

ツッコミつつ叫びながら、仁先輩の氷結魔法が足を撃ち抜かれたグレムリンの全身を凍てつかせて、その動きを完全に止める。 あたしもハッと意識を戻しながら踏み込む。

 

太牙拳砲だとグレムリンには威力が強すぎる。なので拳一発分に抑えた咲三式の技を選択。

 

 

「虎咆___」

 

 

地を踏み抜き、拳で殴りかかると同時に拳を通じて籠手に込めた魔力を開放する。

 

イメージ的には中華拳法の発勁。“氣”の代わりに魔力を使うけど、原理は変わらない。

 

インパクトの瞬間に相手に魔力を放出、対象に流し込む……!

 

 

「___衝破ッッ!!!」

 

 

動きが止まればこの程度の怪異、なんてことない。

 

怪異としての存在を繋ぎ止める悪意に汚染されたマナごと、その凍り付いた胴体を猛る虎の咆哮のような荒々しい魔力の衝撃波で貫く。

 

身体を貫かれ、存在を維持する為の汚染された魔力も吹き飛ばされたグレムリンが地面に落ち、やがてその身体の端から崩れていくように消え始める。

 

……随分と手間取っちゃったけど、これで終わりだね。

 

 

「……マ……シイ。……ウ……ヤマ…………イ」

 

 

ふと、消えかけのグレムリンが、うわ言のように何か呟く。

 

 

 

 

「____ネタマシイ……ウラヤマシイ……シアワセ ナ ヤツ ガ ……ニクイ……!」

 

 

 

そう、ありったけの憎しみでもって、言葉を紡ぎ出したあと、グレムリンと言う存在は完全に解かれて、マナへと完全に還っていった。

 

今のは……妬み?

 

 

「……なるほどな。ワンダーランドって言う悪意とは無縁そうな場所で、悪意から生まれる怪異がどうやって発生して住み着いたのか、ずっと疑問だったが」

 

「____【幸せな人達への嫉妬】。それが、あのグレムリンを構成していた悪意の正体って訳やな」

 

 

……その悪意は、恐らく人が人である限り無くならないものだろう。

 

それでも本来ならこのくらいの悪意で怪異が発生することはまずない。元となった鵺が如何に強力だったのか、よく分かる。

 

それから化け物銃をビー玉と取り替えた兄と、大きく溜息一つ吐いたアキ姉が近付いてくる。

 

 

「おれの感覚じゃ、もう奴の気配は感じない。海央の方は?」

 

「……うん、あたしの方も同じ。もうワンダーランドに怪異はいないよ」

 

 

トーカ先輩___お兄ちゃんとあたしの言葉にアキ姉がもう一度大きくため息を吐く。

 

なんだかんだで長丁場になったもんね。ジン先輩も珍しく顔に疲れを見せてるし、お兄ちゃんも一息吐いて……それから一瞬で表情を固くする。

 

 

「……おい、気を抜くのはまだ早いぞ」

 

「え?」

 

「おれ達にはまだ、大事な仕事が残っている」

 

 

冷や汗を書きながら至極真面目な表情を浮かべるお兄ちゃんに思わずあたし達はゴクリと唾を飲み込む。

 

ま、まさか、グレムリン以外にも怪異がいるとか……?

 

 

「行くぞ、今から全力で後片付けだ……!」

 

 

………………………………ああ、うん。ワンダーランド、結構傷つけちゃったもんね、あたし達。

 

スンッと夢から覚めるように現実を直視する。

 

時間もあまりないので怪異を倒した達成感にも浸れぬまま、あたし達は傷ついた(傷つけた)ワンダーランドを魔法もフルで使って戦う前にまでなんとか戻すのでした、まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふにゃー……もうつかれたよぉー……うごけないよぉー……!」

 

 

 

____3/16(土) 朝日の眩しい早朝にて。

 

 

 

「同感やよぉー……存在規模で言ったら雑魚でしかない怪異にあそこまで手を焼くとは思わんかったわ……」

 

「どっちかと言うと後片付けの方で疲弊した感じがありますけどね……余分に残った罠の解除とかも時間掛かりましたし」

 

「たいりょくはありあまってるのにぃー……せいしんてきひろうがー……」

 

 

後片付けと偽装工作を朝日が昇る前になんとかやり遂げ、スタコラサッサとワンダーランドを後にしたおれ達は、激闘の場となったワンダーランドからほんの少し離れた海岸のベンチにて、精根尽き果てた状態でそれぞれ項垂れていた。

 

おれは薬莢の回収もそうだが、地味に弾痕の処理が大変だった。……グレムリンを仕留めるために使った跳弾の痕もそうだが、ハートクイーン城で結構ブッパしたのがいただけなかった。

 

 

「流石に今日はもう動けねぇぞ……」

 

「とか言ってるが君、怪異が出て来たらあの化け物銃を取り出して即ブッパするだろ?」

 

「それはそう」

 

 

若干ジト目な氷室の言葉にノータイムで返答を返す。

 

怪異を生かしとく理由も放って置く理由もないしな。見敵必殺。グレムリンの反省はちゃんと生かすさ。

 

 

「てか、グレムリン仕留める決め手になったアレなんなん?」

 

「【リフレク・ショット】のことか? 要は跳弾だよ、跳弾。好きな漫画のキャラが使ってたのを再現した」

 

 

経験が浅いせいで演算速度上がらなくて、まだ2連射での運用が限界なんだよな。

 

 

「漫画の技は普通は再現出来ひんもんばっかなんやで!?」

 

「あい、あむ、まほーつかい」

 

「魔法使いでも出来ること出来ひんことあるからなぁ!?」

 

「ましてや魔法でもない素の銃技だろうアレ!?」

 

「……最初の同時撃ちが躱されることを考慮した上で弾道計算完璧に済ませてブッパしてるけど、冷静に考えても頭おかしいことしてるよね!?」

 

「直で観測してた私から見ても訳が分かりませんでした。あの一瞬で周辺情報を読み取って弾道予測をして跳弾を当てるとか、物理法則に喧嘩売ってません……?」

 

 

解せぬ。戦果的には決定打を放った功労者の筈なのに、なぜ味方の魔法使い達+αにドン引きされた上で、ここまでフルボッコにされなければならないのか。

 

ホントに解せぬ。

 

 

「ま、まぁ、それはともかくとして……こほん」

 

 

エプロンドレスを翻したAI少女がわざとらしく咳をする。ホログラムなので必要ない動作だと思うが、恐らく流れを変えるためにもわざとやってるのだろう。

 

それから元となった友人とよく似た溢れんばかりの笑顔を浮かべて、アリスは頭を下げた。

 

 

「改めまして、ありがとうございました! 皆さんのおかげで、ワンダーランドに潜んでた脅威も無くなりました!

 

……その、すごく怖い光景も一緒に見てしまった気もしますが」

 

 

最後の言葉で、怒りとかで通常よりハッちゃけてしまってた3名ほどが視線を泳がせる。うん、おのれら嬉々として暴れてたもんな。

 

や、おれもだけどさ。と言うか初手で油断しなきゃこんなメンドイことにならなかったんだし。

 

油断、慢心、絶対ダメ。それを改めて認識出来た。

 

 

「取り敢えずお願いがあるんやけど、ウチらのことは内緒にしといてな? バレると大変なことになるし」

 

「それは重々理解してます。……皆さんはまだ戦う必要があるんですよね?」

 

「……まぁな」

 

 

少なくとも怪異を生み出してる【人形遣い】の野郎をブッ飛ばさない限りはどうしようもないからな。

 

問題は、奴の尻尾もまだ掴めてない所なんだが。……ってアレ? そういや今回の怪異は奴が絡んでないのか。

 

 

「あのっ、私で良ければご協力致します! グレムリンの一件や、皆さんのことを知ってしまった以上、無関係ではいられ____」

 

「やめとけ。それはおのれの仕事じゃないだろ」

 

 

意を決した表情のアリスの言葉に、思考を中断してから遮りバッサリと斬る。……確かにアリスの助力を得られると言うのは心強いのかもしれない。

 

けど、そこは譲れない一線だ。

 

 

「おのれの仕事はワンダーランドのメインキャスト。夢の国の水先案内人として訪れた人達に楽しい時間を過ごさせるものだろ。……こんな危なっかしい、血なまぐさい道に安々と関わるもんじゃねぇよ」

 

 

つか、見た目が有里栖そのものな、このAI少女をこれ以上巻き込むのは流石に心情的に受け入れられない。

 

……戦うのは、命を賭ける覚悟を決めた奴だけでいいんだ。

 

 

「ん、そだね。これはあたし達がやらなきゃいけないことだよ」

 

「ただでさえウチらのことバレてんのに、巻き込みでもしたら当主様にゲンコツ貰ってまうわ」

 

「お父さんのゲンコツ、ホントに頭が割れそうになるんだよね……」

 

 

修行とかで恐らく一番ゲンコツを食らってるであろう海央が頭を擦りながら呟く。

 

ぶっちゃけゲンコツどころじゃないだろうが……まぁ、それは今は置いておこう。

 

 

「だから、悪いなアリス。気持ちだけ受け取らせて貰う」

 

「……分かりました。でも、もし私の力が必要なことがあればいつでも言ってください! 人工妖精のある香々見島の中なら、いつでも応えますので!」

 

 

おれ達の言葉に一応は納得してくれたのか。ともかくこれ以上コイツを巻き込むことがないように気を付けなければ。

 

 

「取り敢えず【防人】本部に怪異の討伐報告しとくわー」

 

「そっちは勝手にしてくれ。おれは【防人】じゃねぇし」

 

「……そうなんですか? てっきり、同じ魔法使いの組織のお仲間だと思ってたのですが」

 

「おれは野良の魔法使いだ。真っ当なのは他の三人だけだ」

 

「何が真っ当なのかの基準も分からないのですが!?」

 

 

アリスのツッコミにおれも考える。うん、それはそれとして、取り敢えず言えることはあるな。

 

 

「アリス、良いことを教えてやる。……真っ当な魔法使いは、そもそも銃をメインウェポンにしねぇ……!」

 

「とうとう自分がマトモでないことを自白したか」

 

「魔法使いもマイノリティ側の存在なのに、お兄ちゃんは更にその中でもイロモノ枠にいるよねー」

 

「イロモノ……と言うよりはゲテモノだな、うん」

 

「つまりつまり……お兄ちゃんはゲテモノゴリラ」

 

「聞こえてんぞテメェら。あと誰がゴリラだ誰が。ペンギンみてーな大王直伝のハンマー食らわせるぞコラ」

 

「星の◯ービィのボン◯ース!? っていうかやっぱりゴリラじゃないゴリラー!」

 

 

トリガーハッピー思考のデタラメ戦法なのも、魔法使いとしての常識をかなぐり捨てた異常者の極みなのも自覚してるけど、人に言われると腹立つのはなんでだろう。

 

シメる気力があれば速攻でシメに行ったので、命拾いしたな貴様ら? でもゴリラ呼びは許さないので今日の晩飯も駄妹の嫌いなピーマンをふんだんに使った野菜炒めだ。残すのは絶対に許さん。

 

 

「……あれ、変やなぁ。【防人】の本部に繋がらへん……?」

 

 

ふと、聴こえてきた盾石の困惑の声。

 

動けないまでもこの場にいる全員がそちらに意識を向ける。

 

 

「時間も時間だし誰もいない……って訳でもねぇよな?」

 

「せやな、宿直の人達もおるからね……って、あ、当主様から直接掛かってきたわ」

 

 

一瞬、【防人】側で何か起きてるのか?と思ったが、おじさんから掛けてくるなら、そっちで聞けばいいか。

 

……ここ最近【防人】ではクソオヤジのシンパが活発になってるらしいし、嫌な予感がするしな。

 

 

「よし、繋がったで! 当主様、どないしたん 『無事かオマエらァ!?』 んなぁーー!?」

 

 

 

 

キーーーーーーーーーーーーーーン……ッッッッ!!!

 

 

 

 

と、遠い位置にいると言うのに大音量で聴こえてきた親戚兼昔の師の爆音ボイスに、この場にいる全員が顔を顰める。

 

 

「こ、鼓膜が……鼓膜がぁ……!」

 

「これは、トドメを刺したな」

 

「おじさん、今ので負傷者が出た。盾石が耳に大ダメージでダウンだ。再起不能かも知れん」

 

『へ? あ、あぁ、すまねぇ!?』

 

「もうっ、お父さんってば……!」

 

「約100デジベル超え……通話でのスピーカー越しとは言え、そこまでの声を人間が出せるなんて……」

 

 

一気に工事の騒音を超える音量を食らったのかよ、盾石の奴。

 

ただでさえヘロヘロだったのに今のが決定打とか、ギャグにするにしても笑えんぞオイ。ギャグ補正でどうにか回復することを祈るとするか。

 

 

「ってギャグとか漫才とかしてる場合かっての。おじさん、そっちで何かあったのか?」

 

『ん、ああ。【防人】の本部周辺で、怪異が大量発生した』

 

「「「はぁ!?」」」

 

 

スピーカーモードとなったTABから、サラリと言われたとんでもない事態に氷室と海央と揃って驚愕の声を上げる。

 

いや怪異の大量発生って……サラッと言うことじゃないだろオイ!? と言うか大量発生出来るようなもんでもねぇだろ?!

 

 

『安心しろ。殆どはオレが片付けた。雁首揃えただけの有象無象だったからな。……だが、すまねぇトウカ』

 

「は?」

 

 

真剣な声色でいきなり謝られて面食らう。だが、その理由はすぐに明らかとなった。

 

 

 

 

 

 

『このドサクサに紛れて、奴が……クソアニキが国の収容施設から姿を消した』

 

 

 

 

 

 

_____そうして齎されたのは最悪の現実にして……来ると分かっていたはずの、クソッタレな未来への始まりだった。

 

 

 

 

 

 




ダ・カーポ リチューン。新ヒロインにものの見事に焼かれたので皆もやるんだよぉ……!
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