ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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イン・ザ・ブルースカイ

 

 やはり、というかべきか。

 外交的な任務はアロウライダー一筋な金髪碧眼のオレ娘にとってはハードなものとなった。

 

 空港での大々的な出迎えに始まり、歓迎セレモニーでは国の王族やら首相に軍参謀本部の幕僚まで、要人が直々に挨拶してきた。

 

 ここでは頭脳と反射神経が頼りだ。アロウヘッド戦隊は余所行きの笑顔と態度で各自、見事に対応した。

 

 ミエリは狂暴不良姉御で通しているラヴィが「私」などという一人称を使って、敬語で話しているのを見た時は、ひっくり返りそうだった。

 目立たないところでは、子分のクーリエや喧嘩相手のエイリと普段の口調で話していたが。

 

 シルフの王族に名を連ねる久遠は人格を入れ替えたような、悠然たる態度で微笑みながら会話に興じていた。

 輝くような金髪に至高の美を備えた異種族。しかも高身長。おまけに高次元的性質のために否応なしに存在感が溢れ、人目を集めるため、覚悟を決めざるを得なかった。

 

 御付きのシルフ、火狩はその傍らに静かに立ち、語らずとも貴人とその従者という立場を周囲に示している。

 

 久遠が汗を掻いているのがミエリには分かった。この式典が終わったらホテルのベッドでぐったりだろう。

 金髪碧眼オレ娘当人は航空宇宙軍の上級将校と話していた。

 この人物は航空宇宙機マニアらしく、デルタエッジ導入に一役買ったということなので、それを話題にしておく。

 

「旧式ではありますが、デルタエッジには乗ったことがあります。操縦性が素直な、優れた機体です。それにこの国と同じく歴史があり、多くの伝説を打ち立てた機体でもある」

「おお、嬉しいお言葉です。お嬢さんのような優れた資質を備えた若者がいる《袰月》は安泰でしょうな」

 

 軽く褒めただけで、我が事のように喜ぶ上級将校であった。

 足取りが軽くなった、小太りな後ろ姿を視線で追う。

 

 小太り将校殿がハレとククリスと話し出した。女子高生らしい中身のない会話をする陽気JKとそれに突っ込む黒髪褐色のクールJK。

 結果、将校殿はミエリと交流した時以上に上機嫌になられた。アロウヘッドのような戦闘マシンも好きだが、美少女も好きなようだ。

 

「たく、男ってのは」

 

 一瞬、自らが男であることを忘れ、金髪のオレ娘はジンジャーエールをぐいと煽った。

 

 

 ミエリの気を張った振る舞いは、あまりにも理想的な士官学校のエリートお嬢さんだった。

 これを気に入ったお子様先生は面白がって追加の任務を与えてきやがった。

 

 クラス委員長にしてフェンリル艦長のゼフィリスを差し置いて、ミエリは親善交流団の統制役を任されたのだ。

 

「なんでオレが? 入って一か月も経ってない新入りだぜ」

「ここではそんなことは関係ないのだよミエリ君。それにだ、見ただろう? 君が真面目をすると対抗意識を燃やしてシャキっとするんだ不良とか殲滅の小隊の娘達がさ」

 

 ゼラが指しているのは主に狼を連想させる灰髪の不良隊長と、紅のシルフの姉のほうだ。

 どちらの小隊にもまとめ役兼ストッパーがいるが、安全策は多いに越したことがないのだ。

 

「私としても賛成です」

 

 ゼラだけでなくゼフィリスまでもが推してくる。二対一、空戦では極めて不利な状況だ。

 

「ちょっゼフィリス……!」

「大丈夫。ミエリならできるわ」

 

 妖艶に微笑む赤髪ツインテの委員長とお子様先生に押し負け、ミエリは任務を引き受けた。

 

 この一大星系国家の歴史、文化、社会を学ぶ数日間は結構な過密スケジュールだった。

 

 親善交流団一同のオルランドへの印象は極めて良いものだった。

 応対する側も、積極的に質問を投げかける容姿端麗で溌剌とした女子高生達に上機嫌だった。

 ついでに言うと、魅力的な長い脚が良く映えるミニスカートも効いているようだった。

 

 ラヴィやエイリが心配されていたトラブルを起こすこともなく、むしろ率先して真面目な士官候補生を装っていた。

 

 ミエリとしては安心したことが一つあった。かつては大抵の勢力で危険な突然変異種として蔑まれていた異能者(イデアプラスド)の扱いだ。

 権利に制限はなく、軍や政府も積極的に登用されており、実際何人かの異能者と会ったが国に不満はない様子だった。

 

 そもそも異能者への差別的な感情が強ければ、教師及び生徒全員が高レベルな異能者であるこのクラスの訪問を拒否していただろう。

 

 

 

 ミエリは明日からの体を使った任務に向けてのミーティングを終え、ホテルの部屋に戻った。

 

「明日からは手加減なしでいく。学生モードはおしまい」

 

 ベッドに腰掛ける灰音は地味なスウェットパジャマ姿だ。

 銀髪赤眼のエースは燻っていた戦意を燃焼させて、シュッシュッとシャドーボクシングする。

 

「随分、気合入ってんだな」

「ここの人達の殆どが、私達のことをマスコットだと思ってる。任務とはいえ、それ、気に入らない」

 

 灰音にはアロウライダーのプライドがあった。

 この銀髪は浮世離れした、無機質な美少女パイロットという印象だが、内面は豊かで程よく俗だ。

 

 一騎当千の長距離打撃戦隊のアロウライダーどもは、ここオルランド星系王国には《袰月》教導学園の生徒という立場で訪ねている。

 オルランド政府側からの意向で、《袰月》防衛艦隊群のエース部隊であるということを伏せ、あたかも正規パイロットを目指すエリートなお嬢さん達を装っているわけだ。

 

 オルランドは年々、脅威となっている近隣星系のゾンネンキント帝国を刺激することを防ぎつつ、防衛戦力の拡大を目指していた。

 王家と議会が共に重視してきた内政を多少軍事に傾けてでも、自衛能力を高める必要がある情勢なのだ。

 

 技術面、戦略、戦術面。あらゆる点で《袰月》が有しているものは極めて有益で、現国王及び軍参謀本部から是非と声を掛けられている。

 

 数の上では超小規模の艦隊であり、戦争は男だけの仕事という価値観が時代錯誤でなくなった現在では、外見上若い女性が過半数を占める《袰月》の"舐められやすさ"はうってつけなのだ。

 

「ミエリも本気モードになろ?」

「程々にやるさ。ここのアロウヘッドがどんなのか気にもなるしな」

 

 灰音に答えつつ、ミエリはバスルームの方に意識をやった。ハレとククリスは一緒に風呂に入っている。

 身長170オーバーでおまけにチチもケツもでかい二人が同時に入浴できるくらい、ここの風呂は広い。

 

 二人は全裸で出てきた。白い肌と褐色の極上な女子高生がミエリの目の前で並ぶ。

 隠さねばならない、あらゆる部分が全く隠れていない。

 

「なんでパンツも穿かずに出てくるんだよ! ククリスまで!」

 

 ミエリは両手で顔を覆って叫んだ。

 

「明日からこの国のアロウヘッドに乗るわけでしょ? 下手打たないように今夜はリラックスして、体の調子を整えておきたいなって」

「今回はハレに賛成です。明日は勝負の日なのですから」

 

 悪戯っぽく笑って両手を腰に当てるハレ。ククリスは全裸でも平然としている。

 

「たくっもう。風邪引くなよな!」

 

 すっぽんぽんの陽キャJKと黒髪褐色の実直クールなJKの横を抜け、ミエリはバスルームに入った。

 金髪碧眼オレ娘の入浴時間は長めだ。すべすべな白い肌を隈なく洗い、お湯の心地良さをたっぷりと味わうのが好きになっていた。

 

 

 

 《袰月》防衛艦隊群、長距離打撃戦隊がオルランド星系王国のアロウヘッドをその身で体験する日がきた。

 演習場の関係で隊は二つに分かれることになった。荒野のド真ん中の空軍基地と沿岸部の基地だ。

 ミエリは前者だ。青い海を一望しながらのフライトは少しだけ、羨ましかった。

 

 空軍基地に向かう輸送ヘリの機内でミエリは仲間達の様子を眺めた。やる気満々なのは灰音だけではなかった。

 士官候補生に擬態したJKどもの本質は宇宙を駆けての超高速超ハイG戦闘、一騎当千のアロウライダーだ。

 

 お気楽お嬢さん達としてお行儀よく過ごした数日で知らず知らずのうちに戦意を溜め込んでいた。

 

 いつもなら姦しくお喋りしている場面だが、今日は各々の方法で集中している。

 付け加えれば、今回搭乗する機体が有している、ある機能も各自の緊張とやる気を高める一因になっていた。

 

 左隣の妖精小隊のボーイッシュ片目隠れ忍者、葉隠は座席で座禅を組み、瞑想の真っ最中。

 右隣の灰音はぐっと拳を握っては開き、深呼吸している。

 

「デルタセイバーの戦術支援コンピューターは雷仙新世代電子社のAAAモデル、キャロル方式かぁ。オートマチック・アシストが抜群だから、確かにこれなら機種転換訓練なしで乗り換えできるな。アビオニクスの構成もスタンダードから変わってないみたいだ。うーんでもこれちゃんと飛ぶのか? いやでも実際飛んでるのか……」

 

 気弱なトーンの独り言を呟くシルフの姫君、久遠の姿がある。

 昨晩から星内ネットを巡って集めて回った情報を情報端末で確認するのに合わせて、和風な髪飾りが雅やかに揺れる。

 

 フライトマニュアルは提供されてない。

 

 今回搭乗するデルタセイバーは、他機種のアロウライダーが即座に機種転換できるというのがウリの一つの新型機であり、その実証のためだ。

 

 だが、心配性な久遠はこうしてネットで調べ回っていた。

 

 お目付け役シルフ、火狩は窘めたりせず、その様子を静観していた。

 シルフという種族は自然を好む一方で探求心が強く、最先端技術にも目を向けている。

 この主従は揃ってハイテク好きであり、口を出すとヒートアップしてしまいそうなので黙っているのだ。

 

 

 本業:戦乙女なJK達の基地到着まで高めた集中力は、別のことに消費された。

 パイロットスーツの装着である。ミエリ達は更衣室に用意されたオルランド航空宇宙軍のスーツを着込むのに苦戦していた。

 ナノシェルスーツとは異なり、スキンスーツと装甲ユニットが分割されているのだが、新品は着脱が難しいという欠点があった。

 

「これ、かなりきつい……!」

 

 金髪の圧倒的陽キャJK、ハレは苦しそうにスキンスーツを引っ張り上げている。豊かなバストの下でつっかえているところだ。

 特殊樹脂製、パールホワイトカラーの艶やかなスーツが、ラバーのような音を立てながら伸びる。どうにか首元まで覆い切った。

 

「フィッティング時の着圧が強烈です。気を付けてください、ミエリ」

 

 ククリスは褐色肌に映える白系統のパイロットスーツを装着してから警告。

 ミエリは彼女の言葉に緊張しながら、装甲部分首元のフィッティングボタンを押す。

 

「くっ本当に強烈だなこれ。トイレパックの部分が特に」

 

 スーツが覆う全身にかけての強い圧力で思わず呻く金髪碧眼のオレ娘だ。思わず装甲に覆われた股間に手をやった。

 排泄物パックとしての機能を完璧に果たすためなのだろう、滅茶苦茶吸い付いてくる。

 

「んっ白もいいな」

 

 普段は黒系統のスーツを着ている灰音は白いパイロットスーツを新鮮に感じた。

 ミエリをはじめ、皆に見てもらいたくて、くるりとターンする銀髪のエース美少女だった。

 

 妖精小隊では珍しい光景が広がっていた。

 

「ふふーん、意外と火狩も不器用だな! ちょっとコツを掴めばこんなのは楽チンだぞ。私より薄い胸と尻をしてるんだから、頑張れほらほら!」

「久遠が一人で着替えられたのは立派だ。だけど、そうやってすぐに調子に乗るんじゃない……!」

 

 するりとパイロットスーツを着こんで鼻高々の久遠である。この姫様は調子に乗ると大変なので、火狩も意地でアンダースーツを引っ張り上げた。

 引き締まったアスリート体型の肉体が艶やかに縁取られる。溜め息をついてから装甲ユニットを取り出す。

 

「はっ!」

「おっやるね八坂」

 

 女侍風の褐色シルフの八坂とボーイッシュ片目隠れ忍者の葉隠は素早く装着して、軽くストレッチ中だ。

 長身の八坂は長い脚が際立つI字バランス。目を瞑った余裕の笑みで強調される美脚や股間の装甲板。

 

 一方、葉隠は片脚を後ろに向かって高く上げる、見事な柔軟ぶりで魅せる。

 ボーイッシュで小柄なこのシルフは体が特に柔らかく、忍術の他に踊りを嗜んでいた。

 

 試作兵器を扱うアナスタシア小隊には主従の美しい光景がある。

 

 大人びた八坂とは真逆で、女子高生とはとても思えぬ幼い美貌のアナスタシアの前に静かに立つノエッタ。

 白髪のメイドは目を閉じてその時を待っていた。

 

「では参りますわ、じっとしていてねノエッタ」

「卑しい身に慈悲を賜り、心より感謝いたします」

 

 超然とした微笑みのアナスタシアが背伸びをして、ノエッタのスーツのフィッティングスイッチを入れる。

 息を漏らしながら、着圧に耐え抜くメイド女子高生。完了すると恭しく主人に一礼する。

 

「準備完了っと! うん、そのスーツのイリシアも格好いいよ」

「うむ、そう言われると嬉しいな」

 

 蠱惑的で淫魔や堕天使を連想させるリーゼは金髪ツインテのイケメスに明るく声をかけた。二人とも背が高く、大人びた女子高生だ。

 

 涼やかに微笑みつつ、軽くツインテールをかき上げてみせるイリシア。

 振り返り、片手を腰に当てて今回のチームのリーダーであるゼフィリスを見た。赤髪の上品かつ妖艶なる美少女艦長はアロウライダーとしても腕が立つ。

 

「全員、スーツの装着を完了したようね」

「ばっちりだ」

 

 腕を組んで、豪快に笑うミエリの言葉が皆の気持ちを代弁した。

 

 

 ゼフィリスを先頭とした《袰月》屈指のアロウライダー達は格納庫に姿を見せた。

 整列して敬礼する整備員達は女子高生らの輝くような美貌と肉体美。そして光沢眩しい極薄被膜から浮き彫りになった腹筋に度肝を抜かれた。

 

 地獄の鍛錬を積むことでしか培えない本物の筋肉だ。

 全身の鍛え方も凄まじく、それでいて無意味な筋肥大を起こしていない、戦うための肢体だった。

 おまけにどう見ても十二歳前後にしか見えない、王侯貴族の子女めいた娘までいる。

 

 ハレなど明るい性格の戦隊員は、華やかな笑顔で整備員らに礼を言いながら進んだ。

 

 ミエリ達が乗り込むデルタセイバーは戦闘機(ファイター)形態で駐機している。

 オルランド星系王国が独自に開発したデルタエッジの改修機であるこの新型は、《袰月》から提供された技術を発展させ、可変機構を実現したのだ。

 

 機体の概要を知らされた時、戦隊員の多くはかなり興奮していた。

 

 コクピットに滑り込み、ミエリは機体のジェネレーターに火を入れる。

 アロウヘッドのコクピットは標準的にモニターがなく、網膜投影される方式であり、このデルタセイバーも例外ではない。

 

 起動プロセスを順次こなし、各部に電力を配分する。ミエリに古い記憶が蘇ってきた。

 変形機構を実装し、機体性能も大きく向上していたが、こういった点は数百年前のデルタエッジから殆ど変わっていないのだ。

 

『なんか、こうやって座ってるのがちょっと違和感あるよ』

『脚閉じて座ってたからな、この何日か。まっそのうち元の感覚に戻るだろ』

『言われてみると、むずむずしますね』

『そうか? 私は平気』

 

 ミエリ達は脚を開いてシートに座しているが、装甲が守る股間を曝け出した格好が妙に恥ずかしく感じた。

 女子として恥じない上品な座り方を続けていたためであった。

 

 可変型アロウヘッドが滑走路にタキシングしていく。

 

『お手並み拝見させてもらうねゼフィリス!』

『小隊長を譲ってもらったからには完璧にこなさせてもらうわ。見ていてね』

 

 最初に離陸するのはハレ達の突撃小隊だが今回はゼフィリスが加わり、彼女が小隊長となる。

 

『レイピア1から5、離陸を許可する』

 

 管制塔からの許可が下り、ゼフィリス機から順次、飛び立つ。

 

 レイピア4のコールサインを与えられたミエリも、スロットルを上げて離陸推力まで加速する。

 体にかかる慣性が心地よい。機体が滑走路を離れた瞬間、枷から解き放たれたように思えた。

 

 HUDのピッチ角を示す目盛りが上がり、速度計の数値は秒単位で跳ね上がる。

 戦闘機として離陸するのは初体験だが、戦術支援AIが完璧にサポートしてくれた。

 

(なるほど、アロウヘッドの操縦経験があれば転換なしでいけるというのは本当だな)

 

 金髪碧眼のオレ娘は感心した。高度を上げ、旋回の後に小隊の五機で編隊を組む。

 

『こちらCP(戦闘指揮所)、レイピア小隊は進路を維持し、演習区画B-11に向かわれたし』

『レイピア1了解! それじゃ、行きましょうか皆!』

 

 後続の小隊もそれぞれ指示された演習場に向かって飛ぶ。巡航速度は極めて控えめで、マッハ0.8に留めてある。

 

 空気抵抗を受ける人型を慣性制御ドライブで無理矢理飛ばす従来の機体に比べて、空力を活かすデルタセイバーの飛行形態は滑らかに飛ぶ。

 

 操縦面が人型とほぼ変わらないのは、AIが思考直結システムを通してライダーの思考を汲み取り、機体制御を仲立ちしているからだ。他機種の操縦をこの機体に当て嵌めて翻訳している。

 

 それを可能としているのがキャロル方式と呼ばれる三基による多数決・並列処理型コンピューターだった。完全な自律思考を持たないスレイブ型に分類される。

 特筆すべき点として、高価だが複雑な処理を高速で実行でき、バグやエラーが理論上あり得ないというものがある。

 

 開発当初はこのタイプのコンピューターを積んだ機動兵器が戦場を席巻したが、普及が進んだ頃になって大きな問題と悍ましい事態を招いた。

 

 電子戦でも抜群のパフォーマンスを発揮したキャロル方式だったが、直接的なクラッキングには脆かった。

 接触クラックでプログラムを書き換えられたコンピューターは命令に忠実に暴走して、高性能な兵器を虐殺マシンや高価な棺に変えたのだ。

 

 非現実的な状況まで想定したクラッキング対策と、当時のAIに依存しきった操縦システムを改善することでこの問題は解決した。

 しかし、悪名は今日まで残った。

 

『うわっすご。私の考えた事に応えたよこの子!』

 

 驚くハレの声が通信越しに聞こえた。

 同時にミエリの思考に反応して、機体のAIがキャロル式の問題点は全て解決済みだという反証を視界に表示してきた。

 これは決められたパターンでの応答であり、開発者の遊び心だった。

 

「へいへい、すみませんでしたコンピューター様っと」

 

 機体を共有するAIに雑に詫びつつ、ミエリは外の景色を眺めた。

 

 青くて澄んだ空。自由な世界だ。地表は荒野だが、汚染されてはいない。

 

 アロウヘッドの装甲を照らす灼熱の太陽は、大地に陽炎を立たせている。

 生命は見当たらないが、エネルギーのある光景だ。ミエリの小柄な体に熱と闘志が漲ってきた。

 

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