ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
大気圏内でデルタセイバーの戦闘能力を体験した一同は軌道に上がっていた。
アロウヘッドは標準的にオプションなしで大気圏を行き来可能なのだ。
ミエリ達のグループは士官候補生の三機に先導されている。
眼下に広がる、青い星の輝きに目を奪われていると通信のコールが入った。金髪碧眼オレ娘は反射的に応答する。
『ようチビ助! そっちは乱入されたんだってな!』
不良小隊のラヴィだ。灰髪の不良娘はデルタセイバーが気に入ったようで上機嫌だ。
『乱入と言っても訓練が終わった後に、興奮してすっ飛んできただけだ。自称オルランドのミエリ・ライオネルだってんだぜ』
『んだよそれ? お前のファンか?』
『多分、昔のオレのファンだ。いやーまあできれば同姓同名の別人のファンであって欲しいんだが』
大笑いするラヴィ。対して苦笑いしながら返事するミエリ。これからあの熱血小僧とどう接するかお悩み中だ。
『あの軌道ステーションMLOS-03、コードネーム"アンカレッジ"が私達の学び舎です』
緊張した少女の声音で通信が入る。士官候補生のアンゼリカからだ。表情や雰囲気から、とても真面目な娘なのだとミエリは察した。
ミエリは改めて、巨大な軌道ステーションを見た。あそこに着艦して、しばらく世話になるわけだ。
軍事用なのだろうが、その印象が薄い外観になっている。青色のアクセントラインが鮮やかな白い外殻。
アンカレッジから視線を動かす。他の方向からもスラスターの青い光の軌跡がステーションに向かっていた。AIが反応して拡大映像を出してくれた。デルタセイバーの視線照準システムは非常に優秀だった。
(賑やかなもんだ。動きは――――まずまずだな)
教習機らしいオレンジ色のデルタエッジが多数。それにデルタセイバーが一機。その隣、教官機であろう白いデルタエッジ。
先に士官学校生が着艦する。十分に減速して、カタパルト・アームで各部を固定して内部に引き込む方式だ。
『まあ、皆様お上手ですわ』
幼い美声が通信から聞こえた。試作小隊長アナスタシアは純粋に感心している。
『アナスタシアの評価は甘いですわ。わたくしからすれば、及第点というところです』
そこに乗っかる不良小隊の残酷お嬢様風、紅黒。悪そうな笑顔で候補生達を評していた。
艦隊運用を一変させた航空母艦が戦場にデビューして以来、問題となったのが幅も長さも心許ない甲板に下りる着艦という行為の難易度だった。
レシプロからジェットへ。アビオニクスが進歩に進歩を重ねてなお、パイロットの確かな技量と度胸が求められていた。
そして、それは航宙戦闘機やアロウヘッドにまで引き継がれている。オートパイロットの進歩で着艦そのものは容易になったものの、スムーズにこなすには腕がいる。ミエリから見ても、この士官学校の生徒は中々の腕前をしていた。
二手に分かれていてロングレンジクラスは全機集結。そこからゼラ機が編隊を離れ、着艦に入る。
『ではまずお子様先生が着艦する! よく見ているのだぞ皆!』
生徒達とお揃いの極薄パイロットスーツ姿で、可愛らしい顔と裏腹に鍛えられた肉体をはっきりと出しているゼラ。
意気揚々と宣言してアプローチを開始する。お子様先生はステーションの管制に従い、百点満点の着艦を披露してくれた。
エース部隊の飛行隊長という立場でもあるため、実際この金髪碧眼の成人済みお子様の腕前は並外れたものだった。
『はははは! どうだい! 可愛い教え子達に褒められるのは気分がいいなぁっ!』
通信に響き渡る教え子たちの歓声に気を良くして胸を張るゼラであった。
全機が無事に着艦に成功した。格納庫まで機体が運搬され、整列する。アロウヘッド大隊を格納できる広い格納庫だ。
オレンジのデルタエッジは別の格納庫に収められているようだ。姿が見えない。
カタパルトに続くハッチが閉じ、与圧が完了してからコクピットを開いた。
五個小隊に艦長及び飛行隊長。総勢二十二名の親善交流団は無重力を流れて着地する。
大気圏離脱前に被ったヘルメットを外し、互いの素顔を見合う。
ロングレンジクラスと同じデザインのパイロットスーツ姿の士官候補生らが格納庫に入ってきた。
眼帯が強者風な女教官に先導されている。その後ろには銀髪のアンゼリカ。
余所様の格納庫でもリラックスして我が道を征く、親善交流団に対して緊張が色濃い面持ちだった。あの大河とかいう熱血だけは平気そうだ。
ゼラが合図するよりも早く、ミエリ達は並び、士官候補生らの挨拶を受けた。こういう時の統制はしっかりしているのが、この女子高生達なのだ。
「改めて挨拶させていただきます、主席候補生のアンゼリカ・フェルトと申します。ようこそ、アンカレッジへ」
ミエリはなんとなく予想していたが、やはり主席だった。アンゼリカに続き、挨拶していく候補生達。今回の交流に際して、オルランド代表として選出された士官候補生は一班八人の二班編成。総勢十六名、男女比は半々だ。教官の眼帯姐さんはロザリアと名乗っていた。
訓練後に大気圏突入してきた大河は、彼らの中で唯一の日系人であり、その起源文化に沿って名乗っている。
「歓迎痛み入る。ボクはこの長距離打撃戦隊の飛行隊長を拝命しているゼラフィム・ラ・エーデルハイムだ。正式にはゼラフィム・アウグスト・ミッダ・トールバルク――――」
ここぞとばかりにフルネームを名乗るお子様先生。中世から脈々と血を継いできた貴族の生まれである彼女の名乗りは、いつまでも果てることがない。あまりにも嬉しそうに名乗る、その子供みたいな態度にだんだんと相手の緊張が解れてくる。
そこを見計らい、名乗りを止めた。
「とまあアホほど長いため、ゼラと気軽に呼んでくれたまえ、オルランド王立士官学校の諸君」
この発言に笑みを漏らす者もいた。解れた空気の元で《袰月》からやってきたJK達も挨拶していく。
これまで教導学園の生徒と名乗ってきたが、ここにきてはじめて長距離打撃戦隊と名乗っていた。
自分の番が近くなると、ミエリは胸の高鳴りを感じた。
(たく、どうしてただの挨拶で緊張することになるんだよ)
お前のせいだぞ熱血命令違反小僧と心で叫びつつ、意を決して進み出る。
「ミエリ、ミエリ・ライオネルだ。よろしく」
高身長美少女が目立つなかで小柄な金髪碧眼。そんなオレ娘が微笑みながら名乗った瞬間、どよめきが生じていた。
大河だけは「お前の父ちゃんと母ちゃんもライオネルの大ファンなんだな! わかるぜ!」と何やら納得して暑苦しく拳を握っていたが。
格納庫での対面の後、訓練の汗を洗い流して制服に着替えた。歓迎と交流のための立食パーティーが一時間も経たないうちに開かれたのである。
ホールの窓からオルランド本星が一望できる。厳密には壁に外部映像を投影しており、そのモニターを窓と表現しているだけである。
ステーション・アンカレッジはその規模に見合った優れた設備を有しており、居住性も良好だった。
ミエリは詳しくはないが、ホールに敷き詰められた絨毯を極めて上質だと感じた。
食事の味は抜群に良いが、食ってばかりはいられない。率先して交流せねば恥という意識を戦闘JKどもの誰もが持っていた。
数で勝る《袰月》側はオルランドの士官候補生達を取り囲み、優先な戦況下で歓談中だ。
ド派手な女王様メティスと不良隊長のラヴィが相対しているのは黒髪低身長、気怠い感じの士官候補ヴァーシャ。
ハイテク情報機器を兼ねたメガネを装着している。大河、ネーナと共にアンゼリカの小隊に加わっていた彼女が大河の暴走を教官に報告していた。
「最初に顔を合わせた時は随分緊張していたわね」
「そりゃ緊張もしますよ。あの訓練の様子見たら。大河はバカだし操縦は抜群にできるから平気そうだけど」
「へえ、あいつが一番なのか」
ラヴィは獰猛に笑っていた。
「ええ、実技の成績だけなら士官学校の歴代三位に入れるレベルですよ。体力も反射神経も異能者並みなフィジカルお化けです。大昔のエースライダーの後継を名乗っているだけあります。まあ学科の成績が最悪なのとアロウ魂?とかいうので命令違反を繰り返すのでチャラどころかマイナスですけどね」
ここでメガネの士官候補はソフトドリンクを一口。既にこの親善交流団の意図を察しており、明日が少し怖かった。所詮士官学校の生徒同士だのと油断させてくれた眼帯の教官を少し恨んだ。
絶世の美少女達に浮足立ち、奮い立っていた男子たちだが、逆に圧倒されていた。
「そんなに怖い顔しないで♪――――あれれ、近寄ったらお顔が赤くなってきたね。熱でもあるのかな?」
女子中学生くらいに見える小柄な蠱惑魔アラヒナは、気弱そうな男子に近寄り揶揄っている。
その横には殲滅小隊最後の隊員、レギの姿がある。長身に褐色肌、そして無口な不思議系だ。特技は軽業と柔軟。
レギは助けを求めるように視線を向ける気弱な男子に対して無表情でピースするのみ。
チャラい男子も、気障なイケメンも、ガタイのいい堅物も。揃って《袰月》のJK達の積極性に翻弄されている。
態度も所作も洗練されており、一挙手一投足が魅力的。
心技体が完璧に揃った美少女揃いな上に、その良すぎる顔を近づけ、必要以上に近い距離に肉薄してくるのだ。
制服を押し上げる、豊かな乳房の迫力に男子の誰もが情けなく視線を吸い寄せられていた。
「へーやっぱ筋トレやってるんだぁ。私も結構好きでさ、腹筋には自信あるんだよね~」
そう言ってハレはガタイのいい男子の手を取り、制服越しに鍛え込んだ腹筋を感じさせた。
悪戯っぽく笑う陽気なJKに手玉に取ってやろうという意図は欠片もない、ただ無邪気に触らせている。
「しっ失礼します!」
「ありゃりゃ、どうしちゃったのかな?」
「そっとしておいてあげましょう、ハレ」
男子側は同年代異性との過去最高レベルの身体接触に硬直し、赤面し、やがてホールを後にしてトイレに向かっていった。
「くっ! このままじゃ終われねえ! そこの君たしか灰音ちゃんだっけ? 日系の名前なのに銀髪なんて――――」
「悪いけどそういうのは、間に合ってる」
素っ気無く袖にする銀髪赤眼のエース。あえなく撃沈するチャラ男男子のルークであった。翻るミニスカートがやけに眩しい。
視線を泳がせたルークは一番小柄、というか幼いアナスタシアに目を向けた。あの娘は飛び級してクラスに入ったらしい。チャラ男のハードルは下がり、プライドも地に落ちる。こうなれば小さい子とでも――――
「ひっ」
瞬間、背筋に冷たいものが走った。傍に控える白髪のメイドちゃんが、本気の殺気を放ってきたからだ。
悪い虫を払い終え、ノエッタは向き直ると、主人に付き添って女子の歓談に加わった。
仲間達の心が撃ち落されるなかで、ただ一人、新嶋 大河は違った。
同好の士と認定した金髪碧眼の美少女に接近して、ライオネル語りを続けている。
(こいつが近寄ってから室温が二度は上がった気がする!)
暑苦しい語りに苦しむミエリであった。反撃の隙を掴むと、質問を投げかける。
「なんでミエリ・ライオネルなんだ? エースライダーなんて他にもたくさんいるだろ」
大河の語りをそれとなく遮り、ミエリは問う。
「最高に熱いアロウ魂を持っているのがミエリだからだ! 異能者として差別されて、ずっと酷いこと言われていたのに軍でエースになって、たくさんの味方を助けて英雄になった! それだけじゃねえ、ミエリはただ命令に従うだけじゃなく、自分の意志に従って逆らってもいた。熱いぜ!」
今やぴっちりスーツを纏って艦隊を守護する金髪のオレ娘となった、かつての拡散派の英雄はしばし考えた。
(友軍を助けて回ったのも、戦果を上げたのもただ認めて欲しかっただけだ。力がついて生き残れるようになって欲が出ちまった)
大河が憧れている事柄にはすべて、打算があったのだ。
蔑まれてきたミエリ・ライオネルは、ただ少しでも暖かい居場所が欲しかっただけだ。
結局それを得ることはできずに朽ち果てる末路を辿ったが。
この熱血少年の命令違反癖もどうやら自分のかつての行動を解釈してのものらしい。ミエリはこれだけは正さねばならないと決意していた。
「なるほどな。それじゃ、オレはそろそろお前のボスに会ってくるぜ」
「おう! アンゼリカと仲良くしてやってくれ!」
今日のところはクールに立ち去るミエリだった。悪い奴じゃねえんだよな、この熱血小僧。
銀髪と赤毛の美少女に歩み寄る。会話を弾ませていたゼフィリスが接近に気付いてくれ、上品に立ち去る。
実力も品性も兼ね備えた王女様みたいなアンゼリカと、制服の下に鍛え抜いた細身の肉体を隠したネーナは親友のようだった。
二人に「よう」とラフに話しかけるミエリ。アンゼリカは身を強張らせていた。少し話してみると、事前に学んだ《袰月》の社会とミエリの名前から素性を察したとのことだった。大河の事もネーナを交えて話し合い、明日の合同訓練で一計を案じることになった。