ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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イメージ・ファイト

 

 軌道ステーション・アンカレッジ、女子更衣室。

 パイロットスーツに着替えている士官候補女子達の緊張感はかつてないものだった。初めての実機教練でもここまで緊張していなかった。

 

 銀髪の首席候補生、アンゼリカ・フェルトは上質な白いレースのショーツを脱ぎ始めたところだった。これは義母から送られた大切な下着だ。この少女は宇宙軍提督アダム・フェルトの養女だった。

 

 隣を見れば赤毛の美少女の裸体がある。ネーナは既に生まれたままの姿になっていた。鍛え抜かれた筋肉質な肉体に無駄はない。彼女自身は胸にボリュームが欲しいと思っていたが、アンゼリカの憧れの肉体だった。

 

「今日こそ大河に引導を渡してやれるわね! ミエリ・ライオネル様様よ!」

 

 気合を入れるためか、ネーナは腰に両手を当て、つとめて明るい声を出した。室内に張り詰める空気を断ち切るかのようでもある。

 

 彼女の言葉通り、大河は鬼教官のロザリアでさえ手に負えない男だった。実戦経験豊富な教官が必死になって互角というほどで、とにかく腕が立つのだ。

 

「引導って……独断専行癖を治してもらうだけだから」

 

 ここで、アンゼリカはふと思った。あの悪癖がなくなったら、全く新しい大河になると言える。生まれ変わり、新生だ。

 つまりよろしくない大河は死ぬわけで……妙な思考の連鎖を頭を振って払った時、銀髪が揺れた。気を取り直してアンダースーツを着込む。

 体に馴染んだ極薄特殊被膜を引っ張り上げていく。隣ではスーツのフィッティング音がした。腹に響く重さのある、蠢くような奇妙な音だ。

 

 パイロットスーツを着込んだネーナに見られながら、スイッチを入れる。空気が抜け、ただでさえタイトな樹脂が肢体を完璧に縁取っていく。

 

「んぅぅ……!」

 

 全身、特に下腹部やお尻に感じる圧力は強い刺激となって、少女に悩ましい吐息を漏らさせた。

 豊満なバストが身動ぎで弾んだ。白くて柔らかい、肉厚なお尻の間に装甲板が深々と食い込む。

 

 圧力に体が馴染むと、アンゼリカはため息をついた。周りを見渡す。このスーツを着ると気持ちが引き締まるのは誰も皆同じのようだ。

 

「それじゃ、行こうか!」

 

 アンゼリカの胸部を羨まし気に見つめてから、ネーナは声を掛けた。

 

「ちょっと待って。少し心配が」

 

 改めてトイレパックの位置を確かめるアンゼリカであった。今日の訓練はかつてないほど厳しく、体に多大な慣性荷重がかかると見て間違いない。

 だからこそ、万が一に備えておく必要があった。トイレパックの性能そのものには全幅の信頼を置いている。かつてアンゼリカはコクピットで最悪の事態を起こしたが誰にも悟られずに処理することができたからだ。

 

「心配性だなぁ、アンゼリカは」

 

 笑いながらも自分も心配になってきたネーナ。赤毛の士官候補は股間の装甲に触れ、ポジションと密着度を確かめた。

 

 

 デルタセイバーが並んだ格納庫。整列した士官候補の少年少女達は、眼帯の女性教官ロザリアの言葉を固唾を飲んで待つ。

 彼女は教官カラーのぴっちりパイロットスーツを身に着けている。当初は男子が鼻の下を伸ばした、成熟した肉体ではある。だが、今ではロザリア教官を思い描く度に辛く厳しい訓練が思い出された。

 

「まず、貴様らを騙していたことを詫びよう。既に気付いているだろうが、親善の名目でやってきたあの娘達は、実戦を幾度も経験したベテランであり、《袰月》のエース部隊の一つだ。貴様らの中の成績優秀者が卒業後に預かることになるデルタセイバーと同じく、ゾンネンキント帝国という脅威に対抗するべく、彼女達は招かれたのだ。

 貴様らを鍛え上げ、より上等なアロウライダーに仕立て上げるのも任務の一つ。今日の訓練は日頃の教練とは比べ物にならん、覚悟して臨め!」

 

 鋭い声が格納庫に木霊する。しばしの沈黙の後、ロザリア教官は続けた。口元には微笑みが浮かぶ。

 

「しかし! この私が鍛え上げた貴様らであれば必ずや今日一日の訓練で多くを学び、あの娘っ子どもに痛い目をみせてやれると信じている! 名前の長い、ちんまい飛行隊長殿に目に物見せてやれ!」

 

 アンゼリカを筆頭に生徒達は「はいっ!」と応えた。やる気十分だ。

 とりわけ、熱血小僧の大河は気合の入った大声を出していた。あまりの声量に周囲の生徒達は鼓膜が破れるかと思ったほどだ。

 

 格納庫内は無重力だ。床を蹴って舞い上がり、デルタセイバーに乗り込む。今回は十六人全員が搭乗する。

 

 アンゼリカが左右の操縦桿を握ると機体のOSがスリープから覚める。神経直結が開始され、銀髪の主席候補生の視界に外部の映像が投影された。

 

 主席である彼女が最初にカタパルトに動く。アームで固定された18メートルの機体が露天式レールカタパルトまで運ばれていく。

 デルタセイバーのアイカメラを通して眼下に見る青い星は、まるで肉眼で捉えているかのよう。

 

『カタパルト、1、2、3、4、チェック』

 

 戦術支援AIが通達する。発艦は四機小隊単位で行う。プリフライトチェックを開始。

 視界にダイアログが流れていく。それに合わせてブースター、スラスター、各部スタビライザーが可動。最重要機関である慣性制御デバイスも問題なし。

 

「発艦します! エンジンスタート! スロットル解放、テイクオフ!」

 

 共に出撃する三機に合図を送りつつ、アンゼリカはスロットルを上げた。アロウヘッドの加速は瞬間的に起こる。

 重圧が銀髪の優等生に容赦なく襲い掛かった。発艦の度にかかるこの慣性のきつさにもだいぶ慣れた。

 

(うぅ、この揺れだけは慣れない……!)

 

 苦悶の表情で加速に耐えながら踏ん張るアンゼリカは、被膜に覆われた自分の胸が弾むのを実感する。見た目的にもとても恥ずかしい。

 

 付け加えると、この極薄のパイロットスーツは年頃の男女の羞恥心を煽るデザインだし、完全に慣れる日は来ないと確信している。

 体に張り付く保護被膜でラインが裸そのまま浮き出るし。胸に装甲板はないのに、股間はしっかりガードされていて目立つ。ネーナなど女子を見かけても、股間アーマーに視線が誘導されてしまうほどに。

 

 

 プラズマ噴射によって加速されたデルタセイバーは、固定アームから切り離される。すぐに後続の機体が発艦位置に送られる。

 続けて変形を行う。ネーナ、大河、ヴァーシャが乗るデルタセイバーと揃って飛行形態になり、アンゼリカを先頭とするフォーメーションを組む。

 

『三番機ポジションよし!』

 

 通信でもやはりうるさい。赤毛のアスリート風少女ネーナは、きっちり編隊のポジションを取る熱血迷惑少年を横目で見ていた。

 

(編隊飛行とかはちゃんとできるのよね、大河って)

 

 実機教練の度にそう思わされた。毎度毎度お騒がせだが、訓練自体は身に着いている。だからこそ厄介なのだが。

 

(だけど、今日こそは見てなさいよ!)

 

 偶々他所からきた娘を頼った、他力本願な作戦なのは正直情けないと思ってる。だがしかし、この熱血漢の欠点を正す、またとない機会なのだ。

 機会は極限まで活かせ、それが教官の教えでもある。

 

「私は勝てる、勝てるったら勝てる気持ちで勝てば勝てる勝つ……!」

 

 一方、メガネの低身長女子ヴァーシャは独り己に言い聞かせていた。背の低さから妹的な扱いを受けがちな彼女を微笑ましく思いながらも、アンゼリカは緊張の汗を滲ませていた。

 

 残りも小隊長役の指示の元で編隊を組んでいた。演習宙域まで飛行する。ロザリアのデルタエッジは後方から様子を見守っている。

 推力に差があるため、教官用機は装甲を削ってまで速力を高めたライトアーマータイプだ。彼女自身もこの軽量かつ高機動なカスタムを気に入っている。

 

『へーこれが昔のミエリちゃんの機体か』

 

 殲滅小隊のアラヒナが操縦桿を押したり引いたりする。思考操縦のみに切り替えてあるので、この操作によって機体が動くことはない。

 

『その後継機だ。性能は遥かに上だぞ』

 

 長距離打撃戦隊の戦乙女達は、教習機を借りている。オレンジ色のデルタエッジ二十二機は別のカタパルトから遅れて射出された。

 こちらも編隊を組んでの飛行中。先行しているデルタセイバーの推力には追い付けない。

 

 《袰月》で運用されているFAR-31"ガントレット"と性能は違えど操縦性に差はない、むしろこちらのほうが良好なくらいだ。

 

『多くの訓練生を乗せてきたのでしょうな。よく使い込まれて、それでいて整備が行き届いている』

 

 コクピットに漂う雰囲気が気に入った女侍風な褐色シルフであった。この大人びたJKは使い込まれ、かつ手入れが行き届いた物を好いていた。

 

 基本的な訓練を手短に終え、本番が始まった。デルタセイバーによる八対八の模擬戦闘だ。

 王立士官学園側は班ごと、ミエリ達ロングレンジ戦隊はランダム選出で中隊を組む。

 その上、《袰月》側のデルタセイバーには加速度制限が課せられ、反応系を遅らせるハンデもつく。

 要するに調律による身体能力に頼って戦うことができない状態にされる。

 

 士官候補生達の技量向上が目的の訓練だ。圧倒的な力で叩きのめすだけでは無意味なのだ。

 

 

 ミエリは教習用デルタエッジとデルタセイバーとで機体を交換する。

 パイロットスーツのスラスターを噴射して、小柄な金髪オレ娘が宇宙空間を進む。

 女子の候補生とすれ違い、デルタセイバーのコクピットへ滑り込んだ。

 

「それじゃあ、いっちょやりますかね」

 

 デルタエッジの敬礼を受けながらミエリは発進。デルタセイバーを戦闘機形態に変形させた。

 

『あー栄えあるロングレンジ戦隊に告ぐぞ。君らのコールサインはレッドだ。了解したかな』

『勿論だぜ、先生! レッドか。いいねぇ。私の一番好きな色だ』

 

 ランダム選出の結果、中隊長を任されたのは紅のシルフ、邪悪な姉のほうエイリだった。

 

『あはは…これは刺激的な戦闘になりそう』

 

 ちょっとばかり心配するのは妖艶な黒髪の試作小隊員リーゼだ。

 

『姉様のことはお任せください。私が手綱を取ってみせます』

『この私が妹如きに手綱を取られるかよ。心配すんな、普段通りにやってやるからよ』

 

 エイリの双子の妹、エルザレドは眼鏡を掛けている以外は姉と見分けがつかない。

 

 ブルー小隊と名付けられたオルランド側は前方から急接近してくる。

 

『各機、さっき指示した二機編隊(エレメント)で散れ! どうせ攪乱からのバスター砲撃狙いだ!』

 

 戦闘機形態のレッド中隊は散開。エイリはエルザレドを伴い、急上昇した。

 紅シルフの姉妹はコンビネーション抜群で、宇宙に二重螺旋の軌跡を描いた。

 

 ミエリの僚機は金髪シルフのお目付け役、火狩だ。今回のような作戦にうってつけの優秀なハンターだった。

 

『オープン・コンバット――――グッドラック、アンゼリカ』

「ありがとうエスリー」

 

 アンゼリカは戦術コンピューターに笑顔で答えた。この名前はデルタセイバーに搭載されている戦術コンピューターのニックネームだ。

 

 操縦桿を強く握ってから、声を張り上げる。

 

『ブルー1から中隊各機! ECMを最大に! バスターチャージ開始! 初撃でできる限りの損害を与えて優位を得ます!』

 

 アンゼリカは次々に指示を飛ばした。ハンデあり、数は同じとはいえ相手のほうが技量で勝る。数を減らして追い込むことが最優先だ。

 大河も含めて全員が従い、広帯域にジャミングが掛けられる。《袰月》側も同じくジャミング。ECCMは殆ど役に経たず、レーダーにはノイズが走り、多数の欺瞞信号が踊る。士官学校の生徒達は有視界戦闘の訓練を徹底しているので、自信があった。

 

 偽のターゲットコンテナを伴い、レッド中隊が散開していく。遮蔽物が殆ど存在しない宙域だ。各自で本物に当たりを付けてバスターキャノンを発射する。両者の初撃はほぼ同時。

 

『外れた!?』

 

 大河とアンゼリカの声が重なった。確実に命中するコースだったバスターキャノンだが、敵は加害範囲を掠めるのみだった。

 殆どの生徒の攻撃が本物の敵機を捉えていたのは、練度の高さを物語る。しかし、敵を減らす目的は果たせず、逆に損害を受けてしまった。

 

 アンゼリカの視界の端で青色の光が広がり、その中心には味方機が飲みこまれていた。

 

『きゃっ! ごめんやられた……!』

『うわっ! 向こうは当ててくるのかよ!』

 

 男女それぞれ一名が撃墜される。攻撃は全てCG描写されたもの、仮想戦闘(イメージファイト)なのだ。

 本来なら影も形も残らずアロウヘッドを消滅させるバスターキャノンを受けても機体は全くの無傷。指示に従い、戦域から離脱する二機。

 

『三機編隊で組み直し! それから――――』

 

 主席候補生はすぐに気を静めて戦術を練り直す。それを編隊に伝達しようとした時、危惧していた事態が起こった。

 突然、最大戦速でかっ飛び始めるデルタセイバーが一機。縦横無尽に宇宙を跳ね飛び、敵の弾幕を突き抜けている。大河だ。

 

『行くぜえ! 俺が敵を引き付ける! 皆は続いて攻撃してくれ! うおおおおおお!!』

『ちょっと大河! 戻りなさい!』

 

 ネーナが引き留めるが、当然、聞く耳を持たない。

 

『アロウ魂全開だぁ!!』

 

 大河のマニューバーは標準的人類を想定したG制限を12.8パーセント超えたものだった。

 生徒側の機体にはリミッターは掛けられておらず、戦術支援コンピューターの判断で保護が解除されていく。

 

 単騎で突っ込んだデルタセイバーが人型に変形。迎撃に出向いたミエリにロックオンをかける。

 

 

『火狩』

『ああ、任せてくれ。奴を追い込めばいいのだな?』

 

 ミエリから離れた火狩の機体が人型モードへ。左腕のレーザーキャノンの狙撃とマシンキャノンの掃射。ミエリに突っ込んでくる大河を牽制した。

 反応速度を抑えられているが、それでも機関砲弾を当てている。しかし、火狩でさえ獲物の腕に舌を巻いた。装甲の厚い部分に被弾することでダメージはほぼ0に抑えているのだから。

 

『サポート助かったぜ火狩、ここからはオレがやる』

『この程度はお安い御用だ。ミエリは久遠に良くしてくれているのだからな』

 

 ラフに敬礼してからミエリも変形する。四肢を踏ん張り、急減速のGに耐え、シートに背中とお尻をくっつける小柄な金髪碧眼娘。

 同型機同士、アイカメラ越しに闘志をぶつけ合う。大河との距離は十分に遠い。火狩はロッテ戦術に忠実な警戒行動を開始している。

 

 先ほどの牽制射撃を避けるために大河機は大回りに旋回していた。

 

『ミサイルは狙わなくても当たるぜ!』

 

 依然、ECMの影響でレーダー誘導はダウンしているが、大河はノーロックでミサイルを発射。その間も大鉈を振るうような旋回と慣性制御による直線機動を組み合わせていた。一瞬のタイムラグで、異なる射点から攻撃が飛んでくる。

 機体性能に制限を掛けられている今のロングレンジクラスには真似できない、超高Gのマニューバーだった。

 

 ここだな、と当たりをつけミエリはマシンキャノンでミサイルを撃ち落とす。そこを突き抜けて、やや上昇。レーザーキャノンが脚の間を抜ける。

 お返しはチャージしていたバスターキャノン。アロウヘッドの最強兵器たる砲撃がぶつかり合う。

 青い光の余波を浴びつつ、戦闘機形態で高速降下するミエリ。

 

「くぅぅぅっ!!」

 

 背後から追撃。こちらよりも高速で大河が追いかけてくる。搭乗者保護を緩めなければ出せない加速度である。本当に驚くような身体能力だ。

 

『つえー! これがお前の実力か! 増々燃えるぜ!』

 

 大声が通信から響いて、思わず片目を瞑る。そのまま音響兵器になりそうなパワーだ。

 

 高出力で垂れ流していたECMが切れた。ミサイルアラートが五月蠅く、HUDが赤色に点滅する。大河が撃ち込んできたのは対高機動兵器向けの中距離高速ミサイルだ。数は八発。ハンデありではかなり厳しいが、ミエリ・ライオネル本人として負けてやれない。

 

 チャフ・フレアが機体後部からバラ巻かれ、宇宙に明るく輝く。高性能なシーカーはその欺瞞を見破り、本体のブースターを目掛けてくる。

 スラスター噴射の航跡を残しながらミエリは大河機からの攻撃を避けつつ、ミサイルを振り回す。三発まで数を絞った。

 

 確実な一瞬を掴み、機体脚部を前方に突き出すことで、急停止。人型への変形を開始する間に高速ミサイルが通り抜ける。

 宙返り中に腕部のロックが外れた。すぐさま可動させた左腕でマイクロミサイルを墜とし、変形してきた大河を迎え撃つ。

 バレエダンサーさながらに四肢を躍動させ、ブースター機動と関節可動域の極限に挑む両機。

 

 距離を詰めながらの戦闘を制したのはミエリ・ライオネルだった。

 突っ込んできた大河のデルタセイバーのコクピット目掛けて、銃剣を突き付ける。実戦であれば装甲を貫通してパイロットは即死だ。

 

『はぁ――――!』

 

 どこか艶めかしい、ミエリの吐息。体温が上がり、アドレナリンをチリチリと感じる。僚機であるシルフの狩人に向けて、サムズアップする。

 

『畜生負けたぜ、けどまだ俺の仲間達が――――全滅ぅ!?』

 

 撃墜判定を下された大河はヘルメットを取って咆えた。そして、HUDの表示を見て目を剥いた。

 ミエリとの二十秒にも満たないドッグファイトの最中、士官候補生達は順調に撃ち落されていた。通信が耳に入らないほど大河は戦闘に熱中していたのだ。だから、ミエリはお前らと言ってやった。

 

『まだだ、次は勝つぜ! 俺はオルランドのミエリ・ライオネルなんだからな!』

 

 負けなしだっただけに内心では強いショックを受けている大河だったが、この程度ではヘコたれない。それはミエリも想定していた。

 

『予言するがな、大河。お前は一度も勝てないぜ。オレにも他の奴らにもだ』

 

 少なくとも、午前中はなと心の中で付け加えつつ断言する金髪碧眼オレ娘。

 その言葉通りになった。次の試合ではミエリに気を取られている間に不良小隊のお嬢様、紅黒に狙撃された。

 ミエリが参加していない試合では、お子様先生ゼラに指導されながらボコられてもいた。

 チームに貢献できないまま、大河の被撃墜スコアは積み重なったのである。

 

 

 午前中最後の模擬戦が終わった。デルタセイバー同士の戦闘では、オルランド王立士官学校の生徒達は誰一人敵機を撃ち落とせなかった。

 

『そっ想像の十倍くらい』

『きっきつい……!』

 

 コクピット内で荒い呼吸をしている候補生の二人。ミエリと大河更生作戦を企てた間柄だが、手加減は何一つされてない。

 アンゼリカもネーナもシートに倒れ掛かり、少々はしたない姿だった。脚を大きく開いたままであり、ぴっちりパイスーと相まって官能的な有り様だ。

 そうならざるを得ない。操縦桿を握る腕の力が弱るほどの疲労度なのだ。

 

 スーツの下は当然、汗でびっしょり。もし今脱いだら蒸れた熱気が恥ずかしいほどに広がるだろう。

 士官候補達は敗北に敗北を重ねた。がしかし、徐々にトップクラスの実力者達に食い下がれるようになっている。確かに有意義な訓練だ。

 

 二人は揃って大河の様子を確かめた。通信画面では熱血小僧は完全に鎮火している。俯いて何やら独り言を言っている。

 

『俺はミエリ・ライオネルになれない……!』

 

 少年の慟哭がデルタセイバーのコクピットに木霊した。その後、腹の虫が鳴った。昼飯の時間だ。

 

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