ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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ウェルカム・トゥ・フェンリル

 

 アンゼリカは雪景色を眺めながら湯に浸かっていた。

 航空宇宙軍新進気鋭の提督アダム・フェルトを義父に持つ、主席士官候補はリラックスしている。

 

 本物の露天風呂ではない。

 

 《袰月》防衛艦隊群所属の特務巡洋艦フェンリル。その大浴場である。本物と見紛う雪景色は投影されたホログラムだ。

 しかし、アンゼリカが浸かっているお湯はただの温水ではなく温泉だった。

 体の内側に染み渡るような心地よい感覚に浸りつつ、銀髪の首席候補生は先日のささやかな勝利を想い返す。

 

 合同訓練の午後から大河は別人になった。中隊長であるアンゼリカの指示に忠実に従って戦うようになったのだ。

 時には独自の判断で動いたが、それも必要があったためで、単なる感情任せの暴走ではなかった。

 

 大河の独断専行癖がなくなっても、長距離打撃戦隊との実力差は埋まらなかった。

 しかし、連敗を重つつも士官候補生達は戦術を磨き続け、驚くほどの成長を遂げたのだ。

 

 午後の訓練は大気圏内で行われた。そして、戦場がこれまでの教練で慣れ親しんだ渓谷地帯であったのも幸いした。

 

 最後の一戦でアンゼリカは切り札である自らの異能を解き放った。士官候補生には彼女の他にも異能者がいるが、低強度の能力者だった。

 ほんの少し人よりも頑強、反射神経が優れている、あるいは他人の意図を読むのが上手い。といった類だ。

 

 そんな中でアンゼリカは別格の異能者だ。

 自身の知覚を拡大し、周辺の情報を直感できる。さらに自らの意志や取得した情報を他者に投射することができた。

 アンゼリカはジャミングを受けない高性能なレーダーであり、センサーであり、通信機器だった。

 

 最初は逃げに徹した。複雑に入り組んだ渓谷に逃げ込み、《袰月》のJKとお子様先生を翻弄。

 

 ECMを全開にして攪乱しつつ異能により敵部隊の位置情報を取得、送信。大河を中心として奇襲攻撃を仕掛けた。

 これが成功し、ロザリア教官の雪辱を果たしたのである。

 士官候補の少年少女達は心を一つにした反撃で飛行隊長のゼラを墜とした。

 さらにメガネの低身長女子ヴァーシャがアンゼリカから送られた情報を元に狙撃を成功させた。

 

 綺麗だけど残酷な紅のシルフ、エイリを撃墜することに成功。

 その後、灰音とミエリというダブルエースから怒涛の反撃を喰らって全滅してしまったが、素晴らしい達成感が残った。

 異能を行使したアンゼリカはしばらく頭痛をはじめ猛烈な不調で悶えた。だが、それだけの価値があった。

 

 

 物思いに耽っているとホログラムの幕の向こうから、赤毛の親友ネーナがやってきた。

 隣には背が高く、筋肉を鍛え上げた長身の女子高生がいる。ラヴィという名の小隊長だ。

 サウナに二人で入っていたのだ。

 

 バスタオルを巻いていないネーナとラヴィの肉体美に見惚れ、灰髪の筋肉美少女のバストに圧倒される。豪快に揺れていた。

 

「おう、どうだフェンリルの風呂は?」

「いつまでも入っていたくなるわ」

 

 アンゼリカの視線に気付いた背の高い不良娘は、しかし笑いかけるだけだった。

 ラヴィの粗野な態度が最初は怖かったが、小隊長を任されるだけあって精神的な余裕があり、親しみやすい娘だった。

 

 湯舟に浸かったネーナが近寄ってくる。アンゼリカは親友としばらく取り留めのない話をした。

 ロングレンジ戦隊の料理上手なメンバーが手掛けるフェンリルの食事が美味しいとか、巡洋艦と思えないほどの設備の充実度合いだとか。

 

 ラヴィは派手な女王様みたいなメティスの隣だ。親し気に話しているが、二人の間に漂う雰囲気は妖しく、迂闊に近寄れない。

 同じ小隊のクーリエは独り湯舟で極楽に浸っているし、紅黒はなぜか雪景色を背景に風を受けるようにポーズを決めている。

 

「そういえば教官は?」

 

 アンゼリカは訊いた。

 

「ゼラさんと一緒にサウナで頑張ってるよ」

「そっか、一応出る前に様子見しておこう」

「私もそれがいいと思う」

 

 あの二人は妙に対抗意識を抱き合っていた。

 

「艦は快適だしロングレンジの人達は皆綺麗でフレンドリーだし。なんか気が抜けちゃうな~」

 

 ネーナが大きく伸びをして「極楽極楽」と呟く。

 

「相変わらずアンゼリカの幸運の分け前は最高ね! 《袰月》の娘達が来てから素敵なことしか起きてないわ!」

「もう……偶然だってば。お礼ならミエリ達にすべきよ」

「あはは、それもそうだね」

 

 ネーナ曰くアンゼリカはとてつもない幸運の持ち主だそうだ。確かにそうだと思う。

 

 主席士官候補であるこの少女は、オルランドの生まれではなかった。

 

 コールドスリープされて救命ポッドで漂っているところを義父が指揮する艦に救助されたのだ。

 記憶はなく、名前さえ覚えていない。その上、場所によっては即時処分される高強度の異能者。

 一糸纏わぬ姿でポッドに封じ込められ、ショーツ一枚の財産さえ持たない少女をフェルト家の人々は温かく迎え入れ、名前を与えてくれたのだ。

 自分を受け入れてくれた家族や友人、オルランドという国に報いたい一心でアンゼリカは士官学校に入学したのである。

 

 

 オルランド王立士官学校の生徒達がフェンリルに乗艦したのは訓練の一環だった。

 

 積み荷を降ろし月から無人で発進したフェンリルはアンカレッジに到着後、士官候補生らと本来の乗員を揃って乗せた。

 今度はオルランド側が衣食住を提供されている立場だ。衣服として《袰月》で用いられている艦内着兼用宇宙服、ナノシェルスーツが提供されていた。

 

 スーツの構造はオルランドのパイロットスーツに似ているが、よりスマートだった。

 快適性能を極めたスキンタイトスーツで、身軽に動き回れるし、高度な生命維持機能やパワーアシスト機能さえある。

 事実上、ナノシェルスーツは、死ぬまで着用し続けられるようになっていた。

 

 着脱は簡単で負担も殆どない。サンプルが提供されており、オルランド全軍が導入を検討しているとのこと。

 

 また、ナノマシンの変成によってハイテクなトレーニングウェアとしても利用できる。

 大浴場の利用時間が来るまで男子たちはスーツ装着の上で、トレーニングルームで汗を流していた。

 

 同じく《袰月》の女子高生達も利用しており、殆どの男子は美少女なJK達を堪能しつつ筋トレを目論んでいた。

 しかし、そこに広がっていたのは、力と熱と汗が織り成す戦乙女の鍛錬だった。

 

 最適な負荷がかかるようナノシェルスーツを設定して、試作小隊と突撃小隊の面々が体を鍛えていた。

 体重の十倍の重量でのバーベルスクワット。腕立て伏せ、腹筋、スクワット等を一セット千回、短時間でこなす。

 さらには、実戦さながらの格闘訓練。

 

 標準的な人類が行うのなら、無意味なほど過酷だ。

 しかし、《袰月》の戦乙女の肉体は殺人的な鍛錬によって、より強くしなやかになるようできている。

 

 男子士官候補生らを圧倒したのは、調律による人間離れした身体能力だけではない。

 

 鍛錬に取り組む眼差しの真剣さだ。艶めかしい吐息を漏らし、大股を開くなど女子高生がするには恥ずかしい姿勢を欠片も気にしていない。

 

 徹底的に鍛え抜くという意志が熱気として発散されていた。

 

「もっと強く! なるんだ! オレは! 誰にも! 負けたく! ない!」

「おっやるねえミエリ!」

「負けません」

「うむ」

 

 特に、ミエリは皆に追いつこうと必死だ。小隊の仲間であるハレ達をこの時ばかりは競争相手と見做し、己の肉体と精神を追い込んでいた。

 

「うおおおお!! 俺だって負けないぜ!!」大河がまず《袰月》の少女達に触発され、残りの男子が続いた。

 

 室内に充満する魅惑的な汗とフェロモンの香りや、すぐ傍で大胆に弾むバストやヒップに惑わされることなく、トレーニングに勤しんだ。

 

 明らかにオーバーではあり、くたくたになって呻くことになったわけだが。

 

「流石は士官候補生だ。鍛錬にも一切手を抜いていない。良かったら飲んでくれ」

「すっすまない、イリシア…さん。こんな格好で」

「頑張った証だ、気にすることはない――――それと、それと呼び捨てで構わない。イリシアと気軽に呼んでくれ」

 

 男子一の堅物にして巨漢マルコは、金髪ツインテの長身美少女から差し出されたスポーツドリンクを受け取った。

 床に四つん這いになっており、片手を伸ばすのがやっとだった。

 

 マルコは金髪ツインテの涼やかな美貌に硬直していた。イケ雌、そう形容するしかない格好良すぎる美少女なのだ。

 イリシアはV字懸垂二万回を終えたばかりだ。疲れ切っているだろうに、金髪ツインテールのイケ雌JKは他者を労わることを忘れない。

 

 他の男子達にもそれぞれ、熱と汗で化粧した《袰月》の女子高生がドリンクを手渡し、言葉を掛けている。

 

 怪力と美しい筋肉を誇るだけではないのだ。

 凛々しく優しい心を兼ね備えた戦乙女達の慈悲に、男子の大半は感激の叫びを上げそうになるのを堪えた。

 ここにきて、絶対的な上下関係が完成しつつある。

 

「はー疲れた。ほれ大河。飲めるか?」

「ああ、百杯でも飲みたい気分だぜ!」

 

 なお、大河は平常運転でミエリから飲み物を受け取っている。

 

 

 士官候補生男子達はそれから大浴場の利用時間がくるまで体力の回復に専念することになった。

 

 一方。心地良い疲労感を楽しみつつ、ミエリ達突撃小隊は大浴場に向かう途中だ。アンゼリカ達とすれ違った。

 

 銀髪赤眼。一見すれば無感情な強化人間、灰音がアンゼリカを見つめる。

 

「明日の慣熟訓練はもっとハードに、やる。だけど、アンゼリカなら乗り越えられる」

 

 冷たくも、熱意が籠った灰音の言葉。

 

 フェンリルは数日の航程を経て、星系外縁部の惑星サフィロスに向かう予定だ。

 オルランド星系一の豊かな自然を誇る観光惑星ではお楽しみが待っている。水中活動専用の装備、すなわち水着の出番がやってくるのだから。

 

 その間もデルタセイバーを使った訓練が実施される他に、《袰月》の超兵器への試乗を行う。

 

 FFR-14A9"ファイアイーター"、18メートル級機動兵器でありながら次元兵装を搭載し、規格外の戦闘力を有するアロウヘッドだ。

 攻防ともに性能を発揮するには、異能者としての高いポテンシャルが求められる。

 幸運にもアンゼリカは合格であり、身体能力に合わせたリミッター付きではあるものの、その性能を体験する特権に預かった。

 

 灰音が教官を担当しており、アンゼリカは乗艦当日である今日からシミュレーターで徹底的にシゴかれていた。

 

「そのつもりよ。サフィロスに着くまでにファイアイーターをモノにしてみせるわ。必ずね」

 

 強い意志を込めて士官学校の主席の少女は答えた。

 自分がこの銀河最強のアロウヘッドを乗りこなせるか否かが、オルランド王国の防人達の今後を決めるかもしれないのだから。

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